アップルがMacのために設計したSoC「Apple M1チップ」の爆速ぶりが話題になっています。アーキテクチャーの変更で問題となるアプリケーションの互換性も、アドビやグーグル、マイクロソフトなど主要メーカーが積極的に対応を進めており、今のところ大きな問題も起きていません。今回は、年末年始に新しいMacの購入を検討している人のために、Apple M1チップを搭載した3モデルの特徴を紹介します。
※記事中の価格.com最安価格やランキング順位は2020年12月16日時点の情報です。
Apple M1チップ搭載の第1弾モデルである、「MacBook Air」「13インチMacBook Pro」「Mac mini」
MacBook Air
Apple M1チップは、iPhoneやiPadのSoCと同様、高いパフォーマンスとすぐれた電力効率が特徴です。つまり、持ち運ぶ機器にピッタリのSoCと言えます。そんなApple M1チップの特徴を最大限に引き出せるのがMacノートのモバイルマシン「MacBook Air」でしょう。インテルCPUを搭載したモデルからバッテリー駆動時間(ビデオ再生)が6時間も伸びており、パフォーマンス面はCPUが1世代前のモデルより最大3.5倍、グラフィック処理性能は最大5倍も速くなっています。ファンレスで動作音がしないのもポイント。それでいてボディが熱くなることもありません。モバイル用としてはもちろん、メインマシンとしても使えるモデルに進化しています。
価格.com最安価格は115,200円から。MacBook AirはMacノートの入門モデルという位置づけですが、Apple M1チップを搭載した最新モデルは入門モデルと枠を超えた高性能で万能なモデルと言えるでしょう。
13インチMacBook Pro
「13インチMacBook Pro」は、MacBook Airと同じ13.3型のディスプレイを搭載する高性能なモデルです。500ニットの明るいディスプレイや「Touch Bar」、Apple M1チップを冷却するファンを搭載するのが、MacBook Airとの大きな違いです。バッテリー駆動時間はカタログスペックで約20時間と、MacBook Airの約18時間よりも2時間長いので、持ち運びにも適しています。
価格.com最安価格はSSDの容量が256GBのモデルが130,998円、512GBのモデルが150,999円。MacBook Airがパフォーマンスアップしたことで、性能面での有利さは薄れましたが、Touch Barや高輝度なディスプレイなど機能面では13インチMacBook Proのほうが充実しています。
Mac mini
「Mac mini」はコンパクトなボディが特徴のデスクトップマシン。本体サイズは幅19.7cm、奥行き19.7cm、高さ3.6cmで置き場所を取りません。大きなディスプレイや好きなキーボードとマウスを使えるのもいいところ。Windowsパソコン用の周辺機器がそのまま使えるので、在宅ワーク用にディスプレイやキーボード、マウスを購入したという人は、Mac miniを購入するだけで、Apple M1チップのパワーを体験できます。
価格.com最安価格はSSDの容量が256GBのモデルが79,000円、512GBのモデルが95,853円。ディスプレイやキーボードは別売ですが、Apple M1チップのパワーを一番安く入手できるモデルと言えるでしょう。
続いて3モデルの性能を比較して行きましょう。今回試した3モデルのスペックは以下の通りです。
●MacBook Air:8コアCPUと7コアGPUを搭載したApple M1チップ、8GBユニファイドメモリー、256GB SSD
●13インチMacBook Pro:8コアCPUと8コアGPUを搭載したApple M1チップ、8GBユニファイドメモリー、512GB SSD
●Mac mini:8コアCPUと8コアGPUを搭載したApple M1チップ、8GBユニファイドメモリー、512GB SSD
CPUは3モデルとも8コアで同じですが、GPUのコア数がMacBook Airだけ7コアと少ない。メモリーは3モデルとも8GBのユニファイドメモリー。SSDの容量はMacBook Airが256GBで、ほかの2モデルが512GBです。
定番のGeekbench 5の結果は以下の通り。若干のばらつきはあるものの、3モデルともほぼ同じ性能であることがわかります。
●MacBook Air:シングルコア1734、マルチコアが7526
●13インチMacBook Pro:シングルコア1724、マルチコアが7429
●Mac mini:シングルコア1730、マルチコア7656
冷却ファンのあるほうが長時間使用した場合に差があるか調べるために、「CINEBENCH R23」の30分のテストを実施してみた結果は以下の通り。
●MacBook Air:シングルコア1490、マルチコア6344
●13インチMacBook Pro:シングルコア1492、マルチコア7548
●Mac mini:シングルコア1519、マルチコア7795
マルチコアの結果を見ると、ファンレスのMacBook Airよりも、ファンを内蔵する13インチMacBook ProとMac miniのほうが高いスコアを記録しています。13インチMacBook ProとMac miniのファンの音ですが、ベンチマーク中に回転する音は聞こえますが非常に静かで、まだまだ余裕がある印象を受けました。ファンがないため冷却性能が心配になるMacBook Airですが、ベンチマーク後に数字キーの中央がほのかに暖かくなる程度でした。
今回、MacBook Airだけ7コアのGPUを搭載していますが、8コアとの違いはどれくらいなのでしょうか。Geekbench 5のComputer(Metal)の結果は以下の通りです。やはり、7コアGPUと8コアGPUの差はあるようです。
●MacBook Air::19073
●13インチMacBook Pro:21836
●Mac mini:22250
SSDのスピードはどうなのか、「Disk Speed Test」を測定した結果が以下の通り。
●MacBook Air:書き込み2140.8MB/s、読み込み2800.4MB/s
●13インチMacBook Pro:書き込み2791.1MB/s、読み込み2772.3MB/s
●Mac mini:書き込み2944.0MB/s、読み込み2895.8MB/s
容量の差のためか、MacBook Airの書き込み速度が遅かったが、ほかの2モデルについては書き込み、読み込みともに3GB/sに迫るスピードを記録しました。Apple M1チップのストレージコントローラーと最新のフラッシュテクノロジーにより、従来モデルより最大2倍速くなっているということで、確かに高速です。
最後に、MacBook Airと13インチMacBook Proの違いについてもう少し深く見ていきましょう。
上記の性能比較でもわかるように、両者の性能に大きな差はありません。冷却用のファンがあるため、高負荷な作業を長時間行う場合は13インチMacBook Proのほうが安定した動作をすると予想されますが、ベンチマークではハッキリした差はありませんでした。
携帯性についても実はそれほど違いはありません。本体サイズは以下の通りですが、サイズ感はほぼ同じです。重量は0.11kgほどMacBook Airが軽いですが、前述の通りバッテリー駆動時間はMacBok Proのほうが2時間ほど長いです。
●MacBook Air:30.41(幅)×21.24(奥行)×0.41〜1.61(厚さ)cm、1.29kg
●13インチMacBook Pro:30.41(幅)×21.24(奥行)×1.56(厚さ)cm、1.4kg
MacBook Air(上)と13インチMacBook Pro(下)。実は最厚部はMacBook Proのほうがわずかに薄い
重量の実測値は13インチMacBook Proが1365g、MacBook Airが1260g。その差は約100g
2台を使い比べて感じた違いは、キーボードとサウンドの2点です。キーボードはどちらもシザー構造のMagic Keyboardで、キーレイアウトも同じですが、タイピングしてみるとMacBook Airのほうが底につく感じがします。キーボード部分の厚みの違いからくるものだと思いますが、13インチMacBook Proのほうが底につく感じがなくタイピングがしやすかったです。
キーボードはどちらもシザー構造のMagic KeyboardでキーレイアウトもTouch Bar以外はほとんど変わりません。ただ、打鍵感は13インチMacBook Proのほうがすぐれているように感じました
サウンドは、MacBook Proのほうが明瞭で音楽や動画を高音質で楽しめました。スピーカーの体積の違いなのか、MacBook Proのスピーカーは音量を大きくしてもバランスがよかったです。ビデオ会議が多い今だと、13インチMacBook Proのほうが使いやすいかもしれません。
ディスプレイはどちらも13.3型のRetinaディスプレイ。P3の広色域をカバーし、True Toneテクノロジーも備えます。違いは輝度で、MacBook Airは400ニット(右)、13インチMacBook Proは500ニット(左)
Apple M1チップを搭載した最新のMacは、パフォーマンスが劇的にアップしながら、価格が抑えられているのが魅力です。これまでは、CPUの性能で松竹梅がありましたが、Apple M1チップは基本的に処理性能が同じなので、ストレージ容量や機能、ノートかデスクトップかという形で選ぶことになります。iPhoneやiPadと同じような選び方と言えるでしょう。
インテルCPUモデルからApple M1チップ搭載モデルへ乗り換えたいが、アプリが動くかどうかが心配な人は、「Is Apple silicon ready ?(https://isapplesiliconready.com/)」というWebサイトをチェックしてみてください。アプリがネイティブで動作するのか、Rosetta 2で動作するのか、動作しないのかが調べられるWebサイトで、メジャーなアプリをカバーしています。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!