オッポ「OPPO Reno3 A」と、シャープ「AQUOS sense4」は、いずれも3万円台で買える手ごろな価格設定ながら、FeliCaポート搭載、防水・防塵対応ボディといった機能性を兼ね備えており、価格.comでも人気のスマートフォンだ。そんな両製品の比較レビューを行った。
オッポ「OPPO Reno3 A」(2020年6月発売。以下「Reno3 A」)とシャープ「AQUOS sense4」(2020年11月発売。以下「sense4」)は、ともに、人気シリーズの最新モデルで、通信キャリア版とSIMフリーモデル版の両方が発売されており、さまざまな販路で手軽に購入できる点も魅力だ。価格.comの人気ランキングでは「Reno3 A」が7位、「sense4」は1位という位置にあり、その人気のほどがうかがえる(いずれも2020年12月14日現在の数値)。
まずは両機のボディに関して比較してみよう。
6.44インチのディスプレイを備えた「Reno3 A」は、最近のスマートフォンとしては標準的なサイズだろう。いっぽう「sense4」は、前モデル「AQUOS sense3」よりも大きな約5.8インチのディスプレイを備えるが、近ごろの製品としてはややコンパクトな部類と言える。
「sense4」のボディが備えるタフネス性能は、大きなアドバンテージだ。落下や高温や低温、氷結などさまざまな条件に対応し、浴室でも使用できる。また、アルコールを含んだ除菌シートでボディを拭くことができるなど、現在の時流に合った衛生機能も魅力的だ。いっぽう「Reno3 A」のボディはタフネス性能を備えていない。
両機のディスプレイの違いを見てみよう。有機ELディスプレイを採用する「Reno3 A」は全般に発色が濃く、多くの人がキレイだと感じるだろう。いっぽうIGZO液晶を備える「sense4」は淡泊な印象だが、最大輝度が高いため、屋外での視認性にすぐれる。また、最小単位のドットを構成する赤・青・緑のサブピクセルの配置方法が異なるため、電子書籍のルビのような細かな文字は「sense4」のほうがクッキリ見える。静止画や動画などの、いわゆる“画質”では「Reno3 A」が有利、いっぽう「sense4」は全体的に明るく、文字などが読みやすいという傾向がある。
白の背景で電子書籍を表示させた。ややマゼンタ気味の「Reno3 A」(左)よりも、「sense4」(右)のほうが、白が自然に見える
画面輝度を最大にしてみた。IGZO液晶を搭載した「sense4」(右)のほうが明るい
両機の人気のポイントである機能性を比較してみよう。
機能面では両機とも、FeliCa・NFCポート搭載、指紋認証と顔認証の生体認証に対応、FMラジオチューナー搭載など、共通点が多い。ただし、細かく見てみると「sense4」のFeliCaポートは交通系ICカードの併用に対応しており、「モバイルSuica」と「モバイルPASMO」を切り替えて使うことができる。いっぽう「Reno3 A」は1枚のICカードのみの対応となる。「私鉄⇔JR⇔私鉄」のように、1枚のICカードでは定期券をフォローできないような場合、「sense4」のほうが使い勝手がいい。
指紋認証センサーについては、「sense4」はディスプレイの下にセンサーを備えるが、「Reno3 A」はディスプレイ内にセンサーを備えたディスプレイ指紋認証方式を採用する。指紋の認証速度では両機とも目立った違いはない。認証精度は両機とも検証期間中、数百回は使ったはずだが1回も認証ミスが見られず、ちょっとでき過ぎなくらい良好だった。また、両機とも顔認証機能を併用できるので、マスクを付けておらず、明るい場所であれば、画面をのぞき見るだけでロックが解除される。
「Reno3 A」(写真左)は流行のディスプレイ指紋認証、「sense4」(写真右)はディスプレイ下に指紋認証センサーを備える。認証精度は両機とも不満のないものだった
次に、基本的なスペックや処理性能を比較しよう。
性能の要となるSoCは、「sense4」のほうが、世代も新しくグレードの高い「Snapdragon 720G」を採用している。いっぽう、メモリーとストレージ容量は、6GBのメモリーと128GBのストレージを採用する「Reno3 A」のほうが多い。なお、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」で計測した両者のスコアは、「Reno3 A」が179,506なのに対して、「sense4」が267,328で、9万ポイントという大差がついた。
体感速度でも「sense4」のほうがキビキビ動作している印象で、3Dを駆使したゲームも「sense4」はかなりスムーズに動作した。ただし、64GBというストレージ容量は、ゲームなどの大型アプリを数本インストールすると一気に空き容量がなくなってしまうだろう。その点、「Reno3 A」は、処理性能ではやや劣るものの、10GBに迫るような大容量のアプリを数タイトルインストールできるだけの余裕がある。また、6GBというメモリーも、タスクの切り替えをスムーズに行えるなどの効果が期待できる。
AnTuTuベンチマークの結果。左が「Reno3 A」で、右が「sense4」のもの。グレードの高いSoCを備える「sense4」のほうが、総合スコアとサブスコアの両方で圧勝という結果になった
CPUの性能に特化したベンチマークアプリ「GeekBench 5」の結果。左が「Reno3 A」で、右が「sense4」のもの。シングルコアでは「sense4」のほうが倍近いスコアを出している
グラフィック性能に特化した「3DMark」の結果。左が「Reno3 A」で、右が「sense4」のもの。こちらも「sense4」の圧勝だった
続いて、両機のカメラ性能を比較しよう。
メインカメラは、「Reno3 A」がクアッドカメラ、「sense4」はトリプルカメラとなる。ただし、「Reno3 A」の4基のカメラは、階調を計測するためのモノクロカメラと、被写界深度センサーを含んでおり、実際のカメラとしては広角カメラと標準カメラの2基となる。いっぽうの「sense4」は、補助センサーの類いはなく、広角、標準、望遠の3基のカメラの組み合わせだ。画角を見ると「Reno3A」の広角カメラは15mmの超広角対応なのに対して、「sense4」は18mm。いっぽう、「sense4」は「Reno3 A」にはない53mmの望遠カメラを備えている。広角に強い「Reno3A」に対して、望遠に強い「sense4」という違いがあると言えるだろう。
カメラアプリの面では、いずれもAIシーン認識や美顔撮影に対応している点は同じで、電子式の動画手ぶれ補正機能も共通して搭載している。カメラ周辺のユニークな機能として「sense4」は、撮影した動画を15秒程度のビデオクリップに自動で編集してくれる「AIライブストーリー」や、動画撮影中に自動で静止画の撮影を行う「AIライブシャッター」といった機能を備えている。
以下に、両機で撮影した静止画の作例を掲載する。基本的に初期設定のままカメラ任せで撮影を行っている。
午後の冬の海を逆光で撮影した。フレアも抑えられており、画素数が高いため波の質感も良好だ。肉眼ではもう少し夕焼けの風景だったが、AIがより鮮やかに色を補正している
上と同じシーンで撮影を行った。夕焼けが近づく印象のシーンだが、こちらのほうが肉眼の印象に近い
15mmという超広角で撮影すると、砂浜や空の広がりが強調される。色調は標準カメラと似ており、肉眼よりも鮮やかに補正されている
上と同じシーンを撮影したが、焦点距離3mmの違いで印象はかなり異なる。「Reno3 A」と比べると拡がり感は今ひとつ物足りない。ただ、夕暮れの迫る雰囲気はこちらのほうがよく再現できている
一番上のシーンを望遠カメラに切り替えて撮影。サーファーの様子がよりはっきり写った。標準カメラに対して2倍相当のズームではあるが、構図の幅は広がるはずだ
モノクロカメラと合成することで、鮮やかな暗所撮影を可能にする「ウルトラナイト」モードに切り替わる。夕焼けに引っ張られて全体的に暗くなっているものの、闇に沈みつつあるビルは細部までつぶれずにかなり残っている
上と同じ夜景を撮影。光量は増えているが、ディテールがぼやけている印象。ノイズも目立つものの、以前の「AQUOS sense」シリーズのように、画像がガタガタになるようなことはない
全体的に暗いものの、よく見るとビルは細部がさほどつぶれていない。ノイズは増えるが、まだ許容範囲内だ
こちらも光量は多く明るく撮れているが、細部はぼんやりしている。夜景が明るく撮れるが、高感度撮影についてはあまり得意とは言えない
電球色の照明の店内で料理を撮影。こちらは肉眼の印象に近いトーンだったが、プロシュートの色味やオリーブオイルのキラキラした質感など、適度に盛られている部分も見られる
白い皿にホワイトバランスを合わせたようで肉眼よりも白っぽく写った。料理の質感や色味など料理をありのままにキレイに撮る傾向がこの写真でも見られる
さまざまなシーンで両機のカメラで撮影して結果を比較してみたが、シーンによる違いはあるものの、「Reno3 A」は鮮やかさを増した“盛った”写真になりやすい。いっぽうの「sense4」は、色味などは肉眼の印象に近いが、高感度撮影などではノイズが出やすい。両機のカメラはそれぞれに得手不得手があり、どちらが有利とは言いがたい面があるが、ただ、手軽な撮影でもキレイに写る、というスマートフォンのカメラに求められる機能で考えると、「Reno3 A」のほうにやや優位性があるように思われる。
続いて、両機のバッテリー性能を比較しよう。
「連続待ち受け時間」や「連続通話時間」といったバッテリーの持続性に関しては、「sense4」にかなりの優位性がある。なお、価格.comに寄せられるユーザーレビューの「バッテリー」の評価は、「sense4」が4.79ポイント、「Reno3 A」は4.31ポイントだった。検証期間中、1日に2時間程度(3Dゲーム30分を含む)のペースで両機を利用したが、「sense4」は5日+α、「Reno3 A」は2日+α程度でバッテリーの残量がなくなった。「sense4」のバッテリー持ちは、Androidスマートフォンとしては現状最高レベルにあると言える。「Reno3 A」も決して悪くはないが、平均的だ。
両機とも急速充電に対応しており。4,000mAh以上の大容量バッテリーながら、充電時間は「Reno3 A」は約2時間、「sense4」は2時間半程度でフル充電が行える。急速充電の対応規格は「Reno3 A」がQuickCharge 2.0、「sense4」がUSB PDという違いがある。充電器の買い増しやモバイルバッテリーを選ぶ際は、それぞれの規格にあったものを選ぶのがよいだろう。
以上、両機の機能をさまざまな点から比較してきたが、「sense4」の魅力は、タフネスボディ、処理性能、バッテリー持ちといった点だ。気になる点としては、メモリーとストレージの容量が少ない点だろう。近ごろは、アプリの大容量化が進んでいるので、使い方によっては容量不足に陥りやすい。microSDXCメモリーカードを併用して、カメラの撮影データなどは待避させて使いたい。
いっぽうの「Reno3 A」は、カメラが扱いやすいほか、メモリーやストレージに余裕があり、全体的なバランスが取れている。気になる点としては、今となっては少々もの足りない処理性能だろうか。最新ゲームを快適にプレイするという意味では、「Reno3 A」のほうが限界が現われやすい。
両機のいずれかを購入するかで悩んでいる方は、こうした点を踏まえつつ、ご自身の利用シーンを想定しつつ、選んでもらいたい。なお両機とも、年末に向けて価格競争も活発になっている。購入する場合は、通信キャリアやMVNOなどのキャンペーンの動向にも注目しておきたい。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。