ロジクールからトラックボール「ERGO M575ワイヤレストラックボール」(以下、ERGO M575)が2020年11月に発売された。価格.com最安価格は4,990円(2020年12月25日時点)。従来モデル「M570/M570t」から約10年ぶりの刷新で大幅に機能がアップデートされ、付属レシーバーを使った無線接続とBluetooth接続の両方に対応。同社のトラックボールの最上位モデル「MX ERGO」の一部機能を備えた製品となっている。筆者が数年使ってきた「M570t」や「MX ERGO」との比較を交えつつERGO M575をレビューしていきたい。
ロジクールのERGO M575。付属レシーバーによる無線接続とBluetooth接続に対応する
ERGO M575の見た目やボタン配置はM570tに似ているが、手をのせた感触は少し異なる。横から見比べるとわかりやすいが、ボディのふくらみの頂点がM570tよりやや前にあり、横方向にも若干広くなっているのだ。さらに、M570tよりクリックボタンやホイールが大きくなり、角度も深くなった。そのため手の平へのフィット感が高くなり、しっかりホールドできる。特に、手が大きい人にはM570tより、ERGO M575のほうがホールドしやすいだろう。表面はサラりとした感触で、細い筋がつけられているので、置いた手が密着してベタつくことがない。
ERGO M575(左)と従来モデルのM570t(右)。ERGO M575はやや横幅が広く、ボタンやホイールも大きい。ボタンがある面の角度もM570tより深くなっている
横から比較したところ。微妙に形状が異なり、ERGO M575(左)のほうが手の平によりフィットする
底面も改良されている。マウスと違って、トラックボールは机の上にしっかり固定できないと使いづらい。底面には滑り止めのゴム足が付いているが、M570tでは4か所だったものが、ERGO M575では5か所に増え、手を置いて操作するときにずれにくくなり、安定感が増している。
底面には5か所にゴム足があり、机の上に置いて使うときの安定感が高まった
接続は、付属のUSBレシーバーを使った2.4GHz帯の無線か、Bluetoothによるワイヤレス接続で、底面のボタンで切り替えられる。M570tはUSBレシーバーのみだったが、Bluetooth接続に対応したことで、たとえばUSB Type-Cポートしか搭載しないパソコンでも使えるし、アップルの「iPad」などタブレットと一緒に持ち歩いて使うこともできる。電源はM570tと同じ単三形乾電池1本だが、電池寿命が延びており、USBレシーバー使用時で最大24か月になった。Bluetooth使用時は最長20か月となっている。
電源は単三形乾電池1本。USBレシーバーは、ロジクールのマウスで広く使われているUnifyingレシーバーだ。底面のカバーを外すと乾電池の隣に収納できる
底面のボタンで、USBレシーバーによる接続とBluetooth接続を切り替えることで、2台のデバイスで利用できる
実際にパソコンに接続して使ってみると、M570tよりも細かい操作がしやすい印象だ。ボールの遊びが少なくなっていて、指先の微妙な動きに反応してくれる。ホイールはM570tより大きく、トルクもやや増していて細かいスクロールがしやすい。クリックボタンは面積が広くなったことで、押しやく感じられる。握り心地も操作感もM570tよりかなり向上したように感じられる。
MX ERGOと比べると、手を置いた感触やボールの操作感、クリック感はよく似ている。ただしMX ERGOは大きく、また表面がラバー仕上げで使い込むとベタついてくる。ERGO M575のサイズ感や手触りのほうを好む人も多そうだ。
ERGO M575(左)と上位モデルに当たる「MX ERGO」(右)。手の平のフィット感や操作感は似ているが、MX ERGOのほうが高さがある
ソフト面では、MX ERGOや「MX MASTER」シリーズと同じように「Logicool Options」に対応する。このソフトでボタンの役割をカスタマイズしたり、カーソルの速度を調節したりできる。便利なのが、ボタンにアプリケーション固有の動作を割り当てられること。たとえばWeb会議サービス「Zoom」を追加して、デフォルトでは「進む」が割り当てられているボタンに「ミュート」を割り当てると、Zoom使用時にそのボタンを押すとミュートできるようになる。
ロジクールのLogicool Optionsで設定やカスタマイズができる。なお、1台のマウスやキーボードを複数のデバイスにまたがって使用できる「Logicool Flow」には対応していない
ボタンの役割をカスタマイズしたいアプリを登録して、それからボタンの役割を選択する
トラックボールのメリットは、マウスのように手を動かさなくてもカーソルを動かせることだ。手や腕が疲れにくく長時間の作業に向いているし、マウスを動かすためのスペースが不要なので、食卓の片隅などの狭い場所でも使いやすい。テレワーク向きのポインティングデバイスと言えるだろう。
ERGO M575はM570tをブラッシュアップし、MX ERGOの機能を一部取り入れることで完成度の高い製品に仕上がっている。接続先を選ばず、手によくなじみ、アプリケーションで自分に合わせたカスタマイズができる。価格はMX ERGOのおよそ半額なのもうれしい。今後しばらくトラックボールのスタンダードになりそうな製品だ。
音楽、プラモ、鉄道、アニメ、腰痛など趣味の多い元ジャズミュージシャンライター。日経BP社、マイナビなど各社でIT・ネット関連を中心に執筆中。愛用の2in1ノートの画面にヒビが入ってタッチパネルが使えなくなってしまったのが最近の出来事。