レビュー
Android端末でも普及する? 2021年はHDR撮影元年だ!

「iPhone 12 Pro Max」だけでドルビービジョンの撮影&編集をしてみた

アップルの「iPhone 12」シリーズは、Dolby Vision(ドルビービジョン)での撮影に対応した史上初のスマートフォンです。人間の眼がとらえる世界に近い滑らかな階調表現を実現するという次世代映像フォーマットの実力を、撮影から編集、視聴までを全て「iPhone 12 Pro Max」で完結させるお手軽ワークフローでチェックしてみました!

ドルビービジョンとは?

ドルビービジョンのロゴ(画像出典:Dolby Laboratories, Inc)

ドルビービジョンのロゴ(画像出典:Dolby Laboratories, Inc)

米国のドルビーラボラトリーズが提供するHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)対応の映像規格がドルビービジョンです。撮影や配信、劇場や家庭用テレビの視聴といった幅広い環境をカバーし、旧来のフォーマットでは記録できなかった鮮やかな映像が記録できます。ちなみに、ドルビーラボラトリーズは、米国企業らしくちょっとおおげさな(?)感じで、以下のように説明しています。

“ 驚異的な輝度、比類のないコントラスト、感じ取れる素晴らしいカラーによって、ドルビービジョンの映像があなたの感覚を魅了するたびに感激を覚えるはずです。

広範な色域とハイダイナミックレンジ(HDR)により、ドルビービジョンは、TVの視聴体験に革命をもたらしています ”
 
参照:ドルビーラボラトリーズ

HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)映像とは?

SDR(スタンダード・ダイナミック・レンジ)と比べて、より広いダイナミックレンジを記録できる規格の総称です。明るい部分と暗い部分がある映像を、白飛びや黒つぶれなしに表示できるので、たとえば。アクションシーンなどで「暗闇にいる相手が銃を撃つ」といったシーンでも、闇を表現する黒が締まった状態を維持しつつ、銃の閃光(マズルフラッシュ)も極端に白飛びさせずに映像に収められるのです。

※ 本項は動画にフォーカスした内容のため静止画のHDRについては割愛しています。

撮影・編集・配信(放送)・視聴など段階でそれぞれ必要な規格や設定、テクニックなどがある複雑な仕組みですが、「iPhone 12」シリーズを使ってドルビービジョン HDRの設定をしておけば1台で全てが完結しグッとHDR動画が身近になります。

「iPhone 12 Pro Max」で撮影・編集したドルビービジョンの動画

ドルビービジョンの特徴・強み

HDR10とドルビービジョンを比較すると、HDR10はビット深度が10bitであるのに対して、ドルビービジョンは12bitとなっており、より広いダイナミックレンジのデータを記録できます。このおかげで階調表現が豊かになり、肉眼で見た世界に近い明暗や色の変化が滑らかに撮影できるというわけです。また、ドルビービジョンはメタデータをフレーム単位で保持できるため、昼と夜のシーンが混在するような映像に強い、といったメリットがあります。

なお、HDR10の後継規格として12bit表示とフレーム単位のメタデータ保持に対応したHDR10+が登場したため、現在ではビット深度やメタデータの扱いに関してはドルビービジョンとの差はありません。

ちなみに、ドルビービジョンは映画館での採用が多いいっぽうで、家庭用テレビでの採用はハイエンドモデルに限られ、HDR10/HDR10+はBlu-Rayや家庭用テレビでの採用が多い、という傾向があります。ドルビーラボラトリーズがアップルと組んだ背景には、iPhoneを橋頭堡(きょうとうほ)として、家庭向けHDR映像におけるスタンダードフォーマットの地位を奪取したいという狙いがあるのかもしれません。

「iPhone 12」シリーズで撮影可能なドルビービジョンは完全版ではない

記事作成時点(2021年1月)でドルビービジョンが撮影可能なアップル製端末は「iPhone 12 mini」「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 ProMax」の4機種のみです。これらの端末で、標準のカメラアプリなどを使用することでドルビービジョンに対応した録画が可能になります。

ただし、撮影可能なビット深度は10bitまでとなっており、ドルビービジョンの上限である12bitより低い設定になっているのはちょっと残念。とはいえ、10bitでもミッドレンジのミラーレスカメラ(ソニー「α7III」など)を上回るビット深度ではあります。

映像のビット深度が8bitから10bitになることで「色の再現数は60倍に」なるとアップルは説明(画像出典:アップル)

映像のビット深度が8bitから10bitになることで「色の再現数は60倍に」なるとアップルは説明(画像出典:アップル)

ドルビービジョン動画をiPhoneで撮影するための設定方法

iPhoneでの撮影設定は極めてシンプルで、設定からHDRビデオをオンにしておけば、あとは標準のカメラアプリで動画撮影をするだけでドルビービジョン HDR動画が撮影できます。

「設定→カメラ→ビデオ撮影→HDRビデオ」と進み、トグルスイッチを「オン」にする

「設定→カメラ→ビデオ撮影→HDRビデオ」と進み、トグルスイッチを「オン」にする

撮影後に「写真」アプリで動画をタップした際に「HDR」の表示があれば、ドルビービジョンで撮影できています

撮影後に「写真」アプリで動画をタップした際に「HDR」の表示があれば、ドルビービジョンで撮影できています

実際に「iPhone 12 Pro Max」でHDRとSDRで撮り比べた結果は以下の通り。ご覧のディスプレイによってはほぼ差がわからないかもしれませんが、HDR対応ディスプレイであれば、HDRのほうが豊かな階調表現であることがわかります。

実際の動画を「iPhone 12 Pro Max」で見るとその差は歴然ですが、HDR非対応のディスプレイなどでは同じ見える可能性も……。HDR表示が可能なディスプレイで見ると、左下のシャドーや右端のハイライトのグラデーションの滑らかさに違いが確認できます

実際の動画を「iPhone 12 Pro Max」で見るとその差は歴然ですが、HDR非対応のディスプレイなどでは同じ見える可能性も……。HDR表示が可能なディスプレイで見ると、左下のシャドーや右端のハイライトのグラデーションの滑らかさに違いが確認できます

「iPhone 12 Pro Max」でドルビービジョン動画を編集

無料のApple製アプリ「iMovie」を使用することで、撮影したドルビービジョン動画をそのまま編集できます。編集時に特別な設定をする必要もなく、ただファイルを開いて作業を進めればOKです。

書き出し時にオプションで「HDR」を選択することで、ドルビービジョン対応の動画が作成できます

書き出し時にオプションで「HDR」を選択することで、ドルビービジョン対応の動画が作成できます

Macなどで「Final Cut Pro X」を使用して編集する場合は、プロジェクトや書き出しの設定などを調節必要がありますが、iPhoneの場合は手間要らずになるのが魅力。ビギナーの人やめんどくさいことはキライという場合は断然こちらがおすすめです。

「iPhone 12 Pro Max」でドルビービジョン動画を視聴する

編集が終わったら、そのまま「iPhone 12」シリーズ で視聴するのがいちばん手軽な方法です。実際に自分で撮影と編集をした動画を視聴すると、確かにドルビービジョンの恩恵が感じられる結果となっており、特に日没前後のゴールデンアワーからブルーアワーにかけての夕焼け空のグラデーションなどは携帯端末で撮ったとは思えない仕上がりでした。

普段からこだわって映像を撮ったり、見たりしていない人にとっては差が感じられないかもしれませんが、スマートフォンの撮って出しでここまでの映像が手に入るというのは驚きです

普段からこだわって映像を撮ったり、見たりしていない人にとっては差が感じられないかもしれませんが、スマートフォンの撮って出しでここまでの映像が手に入るというのは驚きです

なお、大画面で視聴したい場合は、ワイヤレス映像伝送「AirPlay 2」を使用して「Apple TV」に映像を送り、大きなテレビに表示することも可能です。

また、「AirDrop」でほかの「iPhone 12」端末にファイルを送る方法でも共有が可能です。ただしその際は、iOSが互換性の高いフォーマットに自動で変換をしてしまわないように設定する必要があります。

「設定→写真」と進み「MACまたはPCに転送の設定」を「元のフォーマットのまま」に設定

「設定→写真」と進み「MACまたはPCに転送の設定」を「元のフォーマットのまま」に設定

なお、記事作成時点においては「YouTube」はアプリ版もブラウザー版もドルビービジョンには正式対応していません。HDRには対応しているため、iPhoneで撮影した10bit版ドルビービジョンの動画を視聴する分にはさほど問題はないかもしれませんが、最適化された状態ではない点には注意が必要です。

ドルビービジョンのこれから

クアルコムのAndroidスマホ向けSoC「Snapdragon 888」もHDR動画撮影への対応を発表していることから、ハイエンド寄りのAndroid端末にもHDR映像の波が押し寄せてきそうです。これからドルビービジョンで動画を撮れる機器が順調に増えていけば、2021年は「HDR/ドルビービジョン動画撮影元年」と言える年になりそうです。

Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50カ国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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