2020年12月18日にNTTドコモから発売された「LG VELVET L-52A」は、夏モデル「LG V60 ThinQ 5G」に続くLG製の2画面スマホ。前モデルからデザインを一新し、価格を抑えることで、2画面スマホの魅力をより多くのユーザーにもたらす製品だ。この両機種を比較しながら、その違いを明らかにしていこう。
※本記事中の価格は税込で統一している。
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NTTドコモの「LG VELVET L-52A」(以下、「LG VELVET」。価格70,488円)は、2020年春に登場した「LG V60 ThinQ 5G」(以下、「LG V60」。5G WELCOME割適用時の税込価格118,008円)の弟分となる2画面対応5Gスマートフォンである。NTTドコモの5Gスマートフォンのラインアップの中では、サムスン「Galaxy A51」、富士通「arrows NX9」と並ぶ、5G普及の先兵となるミドルレンジモデルだ。
まずは、「LG VELVET」と「LG V60」のボディサイズや機能の有無を以下の表にまとめたので見てほしい。
いずれもかなりの大型ボディだが、特に「LG V60」については、重さが218gもある。ディスプレイは両機種とも約6.8インチだが、「LG VELVET」は持ちやすさを重視した曲面ディスプレイなのに対し、「LG V60」は平面ディスプレイとなっている。
なお、両機はデザインの傾向がかなり異なる。「LG V60」は、角張った武骨な雰囲気なのに対し、「LG VELVET」は水滴をイメージしたというメインカメラ周辺のデザインや、曲面ディスプレイの採用、可能な限り凹凸を減らした背面のデザインなど、なるべくコンパクトに感じさせようとする意図が読み取れる。
そのいっぽうで、機能面では共通する部分が多い。いずれも、ボディはIPX5/8等級の防水仕様、IP6X等級の防塵仕様に加えて、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810G」の14項目(浸漬、雨滴、粉塵、衝撃、振動、太陽光照射、湿度、塩水噴霧、高温保管、高温動作、低温保管、低温動作、低圧動作、温度衝撃)をクリアしたタフネス性能を備える。また、NFC・FeliCaの各ワイヤレスポート、ヘッドホン端子、Googleアシスタントの起動ボタンに加えてQi規格のワイヤレス充電に対応している。ミドルレンジ機では数少ないQiへの対応は、「LG VELVET」のライバルに対するアドバンテージと言える。
左が「LG VELVET」、右が「LG V60」。いずれも約6.8インチの大画面を備えた大型スマートフォンだ
「LG VELVET」の背面デザインは、水滴をイメージしたというメインカメラ周辺のデザインが特徴。今回の検証機であるオーロラホワイトは虹色に光を反射する
「LG VELVET」のディスプレイは、手にした際に持ちやすく、厚みを感じにくい曲面ディスプレイを採用している
「LG VELVET」の左側面には、ボリュームボタンと、Google アシスタントの呼び出しボタンが備わる。なお、右側面には電源ボタンが配置される。「LG V60」もボタンのレイアウトは共通だ
ボディ下面に、ヘッドホン端子とUSB Type-Cポートを備える点は、「LG VELVET」「LG V60」ともに共通となる(写真は「LG VELVET」)
両機の最大の特徴である2画面表示は、いずれもディスプレイを備えた専用ケース「LGデュアルスクリーン」を装着することで行う。この「LGデュアルスクリーン」は、「LG VELVET」も「LG V60」も機能的には共通で、本体と同じ約6.8インチの平面有機ELディスプレイを備え、バッテリーは内蔵されておらず、電力は本体のバッテリーから供給される。なお、防水・防塵、タフネス仕様には対応していない。また、「LG VELVET」については、「LGデュアルスクリーン」が同梱しない本体だけ(70,488円)のパッケージも用意されている。
以下に、「LGデュアルスクリーン」装着時のサイズや機能をまとめた。
こちらは「LG VELVET」に付属する「LGデュアルスクリーン」(表側)。フリップ型のスマホケースのような形状で、表側にはモノクロのサブディスプレイを備える。デザインは異なるが、概要や機能的には、「LG V60」のものも同様となる
両機とも、2画面表示でできることは変わらず、Android OSの基本機能であるマルチウインドウを使い、左右それぞれに別のアプリを表示させることができる。この機能はアプリを選ばずに利用でき、SNSアプリを開きつつニュースや動画を見たり、攻略情報を見ながらゲームをプレイすることが可能。また、位置情報ゲーム「ポケモンGO」と「ドラゴンクエストウォーク」を同時にプレイすることも可能だ。また、両機にプリインストールされるWebブラウザー「Whale」は、2画面表示に最適化されており、リンク先のURLを別のディスプレイで開くなど、PCのタブブラウザーのように使えるのが便利だ。
左右のディスプレイに別々のアプリを表示させることができる。Android標準の機能を使うため、対応アプリの制約は基本的にない
両機種とも、プリインストールされる8種類のアプリ(「Whale」「Chrome」「Gmail」「Google」「YouTube」「YouTubeMuisc」「Google Photo」「Google Map」)については、両画面をひとつの画面として利用する全画面表示に対応する。これら以外のアプリについても、Google Playで配布されている専用アプリ「WideMode for LG」(無料)を使うことで、全画面表示が可能なものがある。なお、このアプリは、「LG G8X ThinQ」や「LG V60 ThinQ」向けのものだが、検証に使った「LG VELVET」でも問題なく利用できた。
2画面表示にすることで画像や文字をかなり大きく表示でき、タブレットのように使える。
全画面表示の状態でも画面の回転表示が行える
全画面表示に対応するのは上記の8アプリのみ。ただし、専用アプリ「WideMode for LG」を使うことでこのほかのアプリも全画面表示に対応できる
ゲームアプリについては画面のいずれかをコントロールパッドとして使うこともできる。コントロールパッドは、4種類のデザインが用意されているほか、ユーザーで独自のデザインを作ることもできる。
両機の基本スペックを以下にまとめた。
搭載されるSoCを見ると、「LG V60」に搭載される「Snapdragon 865」はハイエンド向け、「LG VELVET」の「Snapdragon 765G」は価格と性能の調和を図ったミドルハイ向けと異なっている。また、メモリー容量も、「LG V60」が8GB、「LG VELVET」が6GBと異なっている。この違いが、実際の処理性能や体感速度でどれくらいの差となるのかがポイントになるだろう。
定番のベンチマークアプリAnTuTuベンチマークを使用して、両機の性能を計測してみたところ、総合スコアは「LG VELVET」が321,525(内訳、CPU:105,783、GPU:94,104、MEM:62,742、UX:58,896)で、「LG V60」が553,945(内訳、CPU:183,374、GPU:209,110、MEM:85,437、UX:76,034)となった。このスコアの差は確かに小さくない。
AnTuTuベンチマークの計測結果。左が「LG VELVET」、右が「LG V60」のもの。SoCのグレードがミドルレンジとハイエンドと異なるため、スコアの差は相応に出た
両機の体感速度を比較すると、やはり「LG V60」のほうが少し速い感じがする。ただし、「LG VELVET」もかなりスムーズなので、両機の価格差を考えれば、「LG VELVET」で十分だと思う人は多いだろう。
いっぽう、ゲームアプリなどで大きく差が出るグラフィック性能については、その差をより実感した。負荷の高めなゲームをプレイした際などに「LG V60」では問題なく表示されていたグラフィックも、「LG VELVET」では、フレームレートの低下が発生する状況が増え、描画設定を1段階、場合によっては2段階落とさざるを得ないケースもあった。「LG VELVET」のグラフィック処理は、ミドルハイモデルとしては悪いほうではないが、本格的なゲームプレイを行う場合には、ハイエンドモデルとの差はやはり無視できない。逆に、ゲームプレイの質をさほど重視しないのであれば、「LG VELVET」でも性能的には十分と言える。
両機の電池持ちに関係する指標を以下の表にまとめた。
この点では、バッテリー容量の大きい「LG V60」のほうがすべてにわたって良好な値となっている。また、2画面表示にした場合(LGデュアルスクリーン利用時)のバッテリー消費のペースも「LG VELVET」のほうが速かった。
「LG VELVET」を常時2画面表示で使ったところ、1日3〜4時間程度の利用ペースであっても、24時間でバッテリー残量は100%から1ケタ%まで消費された。これに対して「LG V60」の場合は、同じような利用状況でも、2〜3割ほどの残量があった。
両機のカメラ性能を以下の表にまとめた。
両機種とも、メインカメラに標準カメラと超広角カメラを搭載する点は共通で、それぞれの焦点距離も共通しているが、画素数は「LG V60」のほうが上だ。なお、構図の認識のための補助カメラとして、「LG V60」がToFセンサーを、「LG VELVET」が被写界深度センサーを備えている。
以下に本機のメインカメラで撮影した静止画および動画の作例を掲載する。いずれも初期設定のオートモードのまま、カメラ任せで撮影を行ったものだ。
「LG VELVET」は、青空をより青く、ビル影になる駅舎の明るさを落とすなど、青みが強い。いっぽう「LG V60」は、冬の昼下がりらしいくすんだ青空など、肉眼の印象に近い
超広角カメラに切り替えても発色の傾向は変わらない。「LG VELVET」は、青みがかっている「LG V60」はやはり肉眼の印象に近い画質だ
夜のビル街を撮影。「LG V60」のほうがハイライト部分のフレアが抑えられている。上記の画像だと違いがわかりにくいが、元データを見比べると背景のビルのディテールは「LG V60」のほうがよく残っていた
西日の差し込む逆光を差し込む構図であえて撮影を行った。フレアの量は「LG VELVET」のほうが多い。細かく構図を変えて30ショット以上撮影したが、逆光への耐性は概して「LG V60」のほうが高い傾向だった
両機のカメラは、スペック以上に、画質の方向性が異なっているように思える。「LG VELVET」は、SNSなどで好まれやすい印象的な写真に仕上げようとする傾向があり、色味などがやや不自然になることもあった画質だ。いっぽうの「LG V60」は、色味などをあまり誇張することはせず、よりナチュラルな仕上がりとなる傾向が見られた。また、フレアや逆光耐性、高感度撮影などでは「LG V60」のほうが総じて良好な結果が得られたほか、レスポンスも「LG V60」のほうが概して高速だった。
両機の性質を端的に表現すれば、持ちやすさや軽さを重視したフレンドリーな「LG VELVET」に対して、機能性重視の「LG V60」と言えそうだ。ただし、「LG VELVET」は軽量化の代償としてバッテリーの容量がやや少ないというデメリットがある。特に、2画面を多用する場合、せいぜい1日しかバッテリーが持たない点は注意したい。また、カメラの画質については「LG VELVET」がやや「盛った」感じの仕上がりになる傾向にあるのに対して、「LG V60」はナチュラルな写真が撮りやすいという違いがある。ゲームをより高画質に楽しみたいという場合も「LG V60」のほうがベターだろう。
注目される2画面表示機能は両機種とも基本的に共通なので、ひとまずデュアルディスプレイを体験してみたいのであれば、「LG VELVET」でも性能的には十分だ。もちろん、ワイヤレス充電のQiポートやタフネスボディを備えていることを考えれば、1画面のみの単体製品として使うのも、十分に魅力だ。逆に、よりヘビーに2画面用途で使いたいなら、「LG V60」を選んだほうが満足感は高くなりそうだ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。