レビュー
5万円台で購入できる5G対応のXperia

ソニー「Xperia 10 III」レビュー。突出した機能性はないものの、安定した性能を持った5G中堅機

ソニーの5Gスマートフォン「Xperia 10 III(エクスペリア・テン・マークスリー)」が、NTTドコモ、au、ワイモバイルの各キャリアから、2021年6月18日より順次発売された。5G対応のミドルレンジ機という位置づけの製品だが、どんな特徴があるのだろうか?

小さなボディで手ごろな価格のXperia

Xperiaシリーズの今夏モデルは、15万円以上のハイエンド向け5Gモデル「Xperia 1 III(エクスペリア・ワン・マークスリー)」、NTTドコモ専売で22,000円という低価格の4Gモデル「Xperia Ace II(エクスペリア・エース・マークツー)」、そして今回取り上げる5G対応で5万円台の「Xperia 10 III」という3機種のラインアップだ。海外では価格を抑えた小型のハイエンド機「Xperia 5 III」もあるが、現状の国内向けラインアップのなかでは、性能的にも価格的にも、手ごろな価格のミドルクラスに位置づけられる。

「Xperia 10 III」は、約68(幅)×154(高さ)×8.3(厚さ)mm、重量約169gのボディに、2,520×1,080のフルHD+表示に対応する約6.0インチの有機ELディスプレイを搭載する。ボディは、前モデル「Xperia 10 II」よりも幅が約1mm、高さが約3mmそれぞれ小さくなり、0.1mmだけ厚くなった。大型化の進むAndroidスマートフォンとしてはコンパクトの範ちゅうに入るだろう。カラーバリエーションは、ブラック、ブルー、ホワイト、ピンクの4色が基本だが、NTTドコモではオンラインショップ専用カラーのイエローも用意されている。カラフルな色が選べる点も魅力だ。

ボディはIPX5/8等級の防水仕様とIP6X等級の防塵仕様をクリアしている。また、モバイルSuicaやモバイルPASMOといった交通系ICカードの併用に対応するFeliCaポートを備える。「Xperia 10 II」と同じように機能性は高い。

横幅は約68mmで、重量は約169g。近ごろのAndroidスマートフォンの中ではボディは小さいほうだ

横幅は約68mmで、重量は約169g。近ごろのAndroidスマートフォンの中ではボディは小さいほうだ

板ガラスのようなシルエットと、左上にまとめられたトリプルカメラの配置は、Xperiaシリーズに共通するデザイン

板ガラスのようなシルエットと、左上にまとめられたトリプルカメラの配置は、Xperiaシリーズに共通するデザイン

ボタンは右側面に集中して配置される。写真左(ボディ上方)から、ボリューム、指紋認証センサー付きの電源ボタン、Googleアシスタントの呼び出しボタンという並び。シャッターボタンは搭載されない

ボタンは右側面に集中して配置される。写真左(ボディ上方)から、ボリューム、指紋認証センサー付きの電源ボタン、Googleアシスタントの呼び出しボタンという並び。シャッターボタンは搭載されない

ボディ下面に、USB Type-Cポートを配置する

ボディ下面に、USB Type-Cポートを配置する

ボディ上面にヘッドホン端子を配置する。これもXperiaシリーズ共通の配置だ

ボディ上面にヘッドホン端子を配置する。これもXperiaシリーズ共通の配置だ

本機のディスプレイは、約6.0インチのフルHD+表示に対応した有機ELディスプレイで、ノッチのない平面ディスプレイだ。縦横比は前モデルから引き続き21:9の超縦長である。かつてはかなり異質な感じだった超縦長ディスプレイだが、近ごろは、本機の縦横比に合ったワイド画面の映像作品やゲームも増えている。なお、リフレッシュレートは通常の60Hz駆動にとどまる。近ごろは、オッポ「OPPO A54」、シャオミ「Redmi Note 10 Pro」、シャープ「AQUOS sense4 plus」といった低価格モデルでも高速駆動ディスプレイを搭載しているモデルが増えているので、この点は、映像やゲームにこだわりのあるXperiaシリーズとしてはやや見劣りを感じる。

価格.comに寄せられる本機のユーザーレビューでは、ディスプレイの輝度を下げた際に、暗部の階調飽和と色かぶりが発生するという指摘が何件か見られる。検証機で状況を再現したところ、確かに輝度を低下させた状態で、これらの現象が確認できた。ディスプレイの輝度を上げれば症状が改善されるが、それも限界がある。暗めの場所で映像作品を楽しみたい場合は注意したい。

上が「Xperia 1 II」、下が本機。輝度が確保されている状態なら、両機の発色はかなり近い

上が「Xperia 1 II」、下が本機。輝度が確保されている状態なら、両機の発色はかなり近い

表示設定に関して「Xperia 1 II」などに搭載されるクリエイターモードには対応していない

表示設定に関して「Xperia 1 II」などに搭載されるクリエイターモードには対応していない

サウンド機能の注目点として、「Xperia 1 II」などに搭載されていた、新しいサウンドエンハンサー「DSEE Ultimate」を搭載したことがある。このサウンドエンハンサーは、音声ファイルやストリーミング音源を含むスマートフォンで扱われるさまざまな音源に対して、ハイレゾ相当の音質へのアップスケーリングと、圧縮音源の欠損部分の補完を行うもの。また、イヤホンやヘッドホンで利用する立体音響技術の「360 Reality Audio」にも対応した 。なお、なお、本体のスピーカーはモノラル出力となる。

「Xperia 1 II」などの上位モデルに搭載されていたサウンドエンハンサー「DSEE Ultimate」を搭載。さまざまな音源に対してハイレゾ相当へのアップスケーリングを行う

「Xperia 1 II」などの上位モデルに搭載されていたサウンドエンハンサー「DSEE Ultimate」を搭載。さまざまな音源に対してハイレゾ相当へのアップスケーリングを行う

基本スペックだが、5G対応のミドルレンジSoC「Snapdragon 690 5G」に、6GBのメモリーと、128GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSはAndroid 11だ。本機のSoCは、シャープ「AQUOS sense5G」と同じだが、メモリーとストレージ容量は本機のほうが多い。

CPUの処理性能を「Geekbench 5」を使って計測したところ、シングルコアが586、マルチコアが1,710となった。前モデル「Xperia 10 II」と比較すると1.5〜2倍程度のスコア向上となっている。なお、「Geekbench 5」のコンピュートテストを使ってグラフィック性能を計測したところ、新しいAPI「Vulkan」を使った場合のスコアは931、GPUの演算能力をしめす「Open CL」のスコアは963となった。「Xperia 10 II」では、「Vulkan」が450前後、「Open CL」が370前後だったので、グラフィック面では2倍以上性能が向上していることになる。

Geekbenchの結果。シングルコアは586、マルチコアは1,710となった。「Xperia 10 II」に比べて2倍近いスコアアップとなっている

Geekbenchの結果。シングルコアは586、マルチコアは1,710となった。「Xperia 10 II」に比べて2倍近いスコアアップとなっている

左がグラフィックAPIのVulkanの速度を示す「Vulkan」でスコアは931、右はGPUの演算能力をしめす「Open CL」でスコアは963となった

左がグラフィックAPIのVulkanの速度を示す「Vulkan」でスコアは931、右はGPUの演算能力をしめす「Open CL」でスコアは963となった

体感速度的にも、メモリーの容量に多少の余裕があるため、全体として動作はスムーズだ。グラフィック性能も向上しており、よほど高負荷なものでない限り、ゲーム目的でも十分楽しめるだろう。ただし、長時間ゲームをプレイすると、ボディの一部が熱を持ちやすく、コマ落ちが発生することがあった。なお、上位モデルの「Xperia 1」シリーズや「Xperia 5」シリーズに搭載されるゲーム最適化機能「GameEnhancer」は搭載されない。「GameEnhancer」はゲーマーのニーズに合ったユニークな機能が多く、Xperiaの特徴となっている。また、「AQUOS sense5G」や「Reno5 A 5G」にも類似するゲーム最適化機能が搭載されているだけに、この点はちょっと残念だ。

レスポンスが改善されたメインカメラ。課題はあるが画質は向上

本機のメインカメラは約1,200万画素の標準カメラ(27mm)、約800万画素の超広角カメラ(16mm)、約800万万画素の望遠カメラ(54mm)という組み合わせのトリプルカメラだ。超広角を起点にすると約3.38倍の光学ズーム撮影が行える。カメラのハードウェアは「Xperia 10 II」のものを踏襲しているが、標準カメラのレンズがF2.0からF1.8に変更され、やや明るくなっている。なお、上位モデルの「Xperia 1 II」や「Xperia 5 II」に搭載されているシャッターボタンおよび、一眼カメラ的な操作が行えるカメラアプリ「PhotographyPro」は搭載されない。フロントカメラは約800万画素だ。

縦に並んだ3眼のメインカメラ。カメラのハードウェアは「Xperia 10 II」とほぼ共通だが、標準カメラのレンズの明るさがF2.0からF1.8にアップしている

縦に並んだ3眼のメインカメラ。カメラのハードウェアは「Xperia 10 II」とほぼ共通だが、標準カメラのレンズの明るさがF2.0からF1.8にアップしている

フロントカメラの仕様も「Xperia 10 II」と共通の約800万画素

フロントカメラの仕様も「Xperia 10 II」と共通の約800万画素

標準カメラで撮影

標準カメラで庭園を順光で撮影。「Xperia 10 II」で目立ったハイライト部分の偽色は抑えられている。白いペリカンの彫像の白飛びもぎりぎりだが抑えられている

標準カメラで庭園を順光で撮影。「Xperia 10 II」で目立ったハイライト部分の偽色は抑えられている。白いペリカンの彫像の白飛びもぎりぎりだが抑えられている

超広角カメラで撮影

上と同じ風景を超広角カメラに切り替えて撮影。16mmという超広角のため、より広い範囲を構図に収めることができる。標準カメラと比べると少しアンバー寄りのホワイトバランスだ。樹木と空の境に偽色が現れ始めている

上と同じ風景を超広角カメラに切り替えて撮影。16mmという超広角のため、より広い範囲を構図に収めることができる。標準カメラと比べると少しアンバー寄りのホワイトバランスだ。樹木と空の境に偽色が現れ始めている

望遠カメラで撮影

上と同じ風景を望遠カメラに切り替えて撮影。同じ被写体でも、標準カメラや超広角カメラの印象と大きく異なる。こちらもホワイトバランスが標準カメラとはややずれているように見える

上と同じ風景を望遠カメラに切り替えて撮影。同じ被写体でも、標準カメラや超広角カメラの印象と大きく異なる。こちらもホワイトバランスが標準カメラとはややずれているように見える

標準カメラで撮影

標準カメラでビル街の夜景を撮影。ノイズは少なめで手ぶれも抑えられている。HDRが動作しているものの全般に暗めで、ショーウィンドウのハイライト部分は飽和気味だ

標準カメラでビル街の夜景を撮影。ノイズは少なめで手ぶれも抑えられている。HDRが動作しているものの全般に暗めで、ショーウィンドウのハイライト部分は飽和気味だ

超広角カメラで撮影

上と同じ風景を超広角カメラに切り替えて撮影。こちらもノイズや手ぶれは抑えられているが、HDRが動作しているもののハイライト部分の飽和は見られる

上と同じ風景を超広角カメラに切り替えて撮影。こちらもノイズや手ぶれは抑えられているが、HDRが動作しているもののハイライト部分の飽和は見られる

望遠カメラで撮影

上と同じ風景を望遠カメラに切り替えて撮影。ISO感度が2,717という超高感度のため、明るく写るものの、ノイズが多くなり、鮮明とは言いがたい

上と同じ風景を望遠カメラに切り替えて撮影。ISO感度が2,717という超高感度のため、明るく写るものの、ノイズが多くなり、鮮明とは言いがたい

ナイトモードで撮影

長時間露光のナイトモードで撮影。全体的に明るく写っており、ショーウィンドウ内のハイライトも内部の様子がしっかりと写っている

長時間露光のナイトモードで撮影。全体的に明るく写っており、ショーウィンドウ内のハイライトも内部の様子がしっかりと写っている

本機のメインカメラは、焦点距離の異なる3種類のカメラを切り替えることで、さまざまな構図で撮影を楽しめる。前モデル「Xperia 10 II」の欠点だったダイナミックレンジの狭さも十分ではないが改善されており、撮影時のストレスは軽減された。また、ある程度明るい場所であれば、シャッタータイムラグも短くなっており、さくさくと撮影できるのも美点だろう。
気になった点だが、改善されたもののダイナミックレンジはまだ広いほうとは言えず、明暗差の大きな構図では限界が現われやすい。また、構図によって、カメラを切り替えた際のホワイトバランスにばらつきが感じられることがあった。

バッテリー容量が増加。5G対応でも電池持ちは良好

本機は4,500mAhのバッテリーを搭載している。前モデル「Xperia 10 II」が3,600mAhのバッテリーだったので900mAh の容量増加となった。カタログスペックを見ると連続通話時間が約1,940分から約2,550分へ、連続待受時間は約680時間から約770時間に伸びている(いずれもau版の値)。これらのことから見て、5G対応による電池持ちの悪化は心配ないと言えるだろう。なお、本機のバッテリーは劣化を抑えた新しいタイプのもので、3年間使っても容量の減少が、従来のものよりも少なく済む。

今回の検証は4Gエリア中心で行ったが、1日1時間程度の待ち受け主体の利用ペースなら、フル充電から5日経過した時点で15%のバッテリー残量があった。なお、ゲームを含んだ1日4時間程度の利用でも3日経過した時点でバッテリー残量は10%あった。うまく使えば充電器なしでも2泊の旅行くらいなら乗り切れそうだ。

なお、最大出力18WのUSB PD規格の急速充電に対応している。この規格に対応するNTTドコモの「ACアダプタ 07」やauの「TypeC共通ACアダプタ02」を使えば、約135〜140分でフル充電が可能だ。なお、ドコモ版とau版にACアダプターは同梱されない(ワイモバイル版は未確認)。

「Xperia 10 II」の魅力のひとつであった電池持ちは本機にも受け継がれている。1日1時間程度の利用では、5日経過した時点でバッテリーは15%も残っていた

「Xperia 10 II」の魅力のひとつであった電池持ちは本機にも受け継がれている。1日1時間程度の利用では、5日経過した時点でバッテリーは15%も残っていた

Xperiaらしい高機能性はないが、堅実に作られたミドルレンジスマホ

冒頭で触れたように、今期のXperiaは、ハイエンド、ミドルレンジ、エントリーという3機種のラインアップとなっている。15万円以上するハイエンドの「Xperia 1 III」に対し、本機は、NTTドコモ版「SO-52B」が51,480円、au版「SOG04」が53,985円、ワイモバイル版で54,000円と、いずれも比較的手を出しやすい価格だ。多くのユーザーにとって現実的な選択肢のXperiaとなるだろう。

ただ、本機の属する4〜5万円前後の5Gスマートフォンは、ライバルが多く、競争も激しい。防水・防塵対応、FeliCaポート搭載のものに限っても、シャープ「AQUOS sense5G」、オッポ「Reno5 A 5G」という強力なライバルが存在する。これらと比較すると、本機は軽くコンパクトながらバッテリー持ちがよく、メモリーやストレージ容量もしっかり確保されているので、動作が安定しているという美点はあるが、Xperiaというブランドに期待したくなるカメラやAV機能、ゲーム向け機能はそれほど強くない。こうした突出した機能性よりも、長く使い続けられる堅実な性能を有した「Xperia」と言えるだろう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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