アップルから新型「iPad mini」(第6世代)が発売された。約2年ぶりにアップデートされたiPad miniは、新デザインのボディに「Touch ID」やUSB-Cポート、最新世代の「A15 Bionicチップ」を搭載し、第2世代の「Apple Pencil」に対応するなど、大幅なアップデートを果たしている。見どころ満載のiPad mini(第6世代)をレビューする。
8.3インチのディスプレイを搭載するiPad mini(第6世代)。ノッチやホームボタンのない前面オールスクリーンデザイン
新型iPad miniは、ユーザーがiPadに求めているものを詰め込んだモデルと言える。コロナ禍で復活を望む声が多かったTouch IDをはじめ、外部インターフェイスにはLightningではなくUSB-Cを搭載。Apple Pencilは第2世代に対応し、滑らかな書き心地を実現している。中身は、最新世代のA15 Bionicチップを搭載しており、小さくてもパワフルなiPadとなっている。
また、Wi-Fi+Cellularモデルは高速な5Gに対応しており、スマートフォン代わりにがんがん持ち出して、仕事に遊びに使えそうだ。「iPad Pro」で大々的に発表された「センターフレーム」にも対応。「FaceTime」や「Zoom」などのビデオ通話やオンライン会議で、自分の顔を画面に収めてくれる便利な機能だ。
シンプルなデザインのアルミボディ。今回試したモデルはスターライト。背面カメラは1200万画素の広角カメラ
FaceTimeは自分をカメラの中央に配置しれてくれるセンターフレームに対応。複数人がいれば、みんなカメラに収まるように調整してくれる。センターレフームに対応するため、フロントカメラが700万画素から1200万画素の超広角カメラに変わっている
iPad miniの一番の特徴は、その名前のとおり、コンパクトなサイズ感。本体サイズは134.8(幅)×195.4(高さ)×6.3(厚さ)mm、重量はWi-Fiモデルが293g、Wi-Fi+Cellularモデルが297g。第5世代のiPad miniと比べると、高さが7.8mm減、幅は同じ、厚さは0.2mm増、重量は7.5g〜11.2g減。片手で持てるサイズ感は、第5世代iPad miniからしっかりと継承している。
11インチiPad Pro(第2世代)との比較。半分までとは言わないが、iPad mini(第6世代)の小ささがよくわかる
このコンパクトなiPad miniをメモ帳やスケッチブックのように持ち運びたいと思う人も多いだろう。そんな人たちにとって、Apple Pencilが第2世代となり、マグネット接続で充電&ペアリングできるようになったのも朗報だ。第1世代のApple Pencilはマグネットで固定できず、Lightningコネクターにさして充電しなければならないので、利便性は劣る。
Apple Pencil(第2世代)に対応。左側面のマグネットに固定して充電できる。持ち運ぶときも、なくす心配はなし。Apple Pencil(第2世代)は別売で、アップルストア価格は15,950円
デザイン面ではエッジが垂直に切り立った、スマートなフォルム。さらりとした手触りのアルミニウムボディで、「iPad Air」(第4世代)をそのまま小さくした印象だ。カラーはスペースグレイ、ピンク、パープル、スターライトの4色が用意されている。
CPUにはA15 Bionicチップを搭載する。同日に発売された「iPhone 13」シリーズにも採用されている最新世代のチップだ。iPad mini(第6世代)のA15 Bionicチップは、5コアGPUのタイプで、スペック的には「iPhone 13 Pro」と同じようだ(iPhone 13は4コアGPU)。
ただ、「Geekbench 5」のテスト結果では、iPhone 13 Proよりもスコアは少し下だった。Geekbench 5によると、iPad mini(第6世代)はメモリーが4GBでiPhone 13 Proの6GBよりも少なく、その差が出ているのかもしれない。
それでも動作は快適そのもの。最新ゲームもサクサク遊べる。「MagiCut」という機械学習を利用した動画編集アプリを使って、人物の切り抜きを行ったが、グリーンバックでなくても、短時間で切り抜きが行えた。
Geekbench 5の結果
MagiCutという動画編集アプリ。ゲーム実況動画でよく見る、配信者の切り抜きが、グリーンバックなしでできる便利なアプリ。機械学習を使っており、切り抜きの精度も高い
ディスプレイは7.9インチから8.3インチにアップ。解像度は2266×1488、326ppiという非常に高精細なディスプレイだ。最大輝度は500ニト、フルラミネーション、反射防止コーティング、P3の広色域、True ToneとiPad mini(第5世代)から変わらず、ハイクオリティなディスプレイを搭載している。
8.3インチの画面は、非常に高精細でハイクオリティ。ただ、縦向きでは文字が小さく、横向きだと縦方向の情報量がやや少ない
コンパクトなボディは持ち運びにピッタリだが、その分、画面の小ささは感じる。写真や動画は問題ないが、文字ベースのものは、人によっては拡大表示をするなどの工夫が必要かもしれない。
いっぽう、手帳としては最強だ。右下からスワイプするとすぐに表示される「クイックメモ」との相性もいい。ゲーム機としても使いやすかった。特に外で遊ぶなら、このくらいの画面サイズのほうがのぞき見されにくくて遊びやすい。
iPad miniとApple Pencilの相性は抜群にいい。手帳感覚で肌身離さず持ち歩き、アイデアを書き留めたりするのにぴったりだ
クイックメモはいつでもメモアプリを呼び出せる便利機能。手書き文字認識機能の「スクリブル」が日本語に対応。変換精度とスピードは十分実用的だと感じた。スクリブルは、メモアプリだけでなく。「Spotlight」や「Safari」の検索ボックスにも使える
Touch IDもマスク生活が続く中だと、やはり便利だ。iPad mini(第6世代)は家の中だけでなく、外出先でも使うことを考えると、マスクをいちいち外さなくていいのはありがたい。縦向きでも横向きでも使いやすいように、指紋登録時は2本の指を登録するようにうながされるのも見逃せない。
本体上部に搭載されたTouch ID
ボリュームボタンは、iPadでは初めて上部に搭載された。縦向きに持ったときは、左がボリュームアップ、右がボリュームダウン、横向きに持ったときは、上がボリュームアップ、下がボリュームダウンになるように工夫されている。ただ、長くiPadを使っている人だと、ボリュームボタンの配置が違うので慣れるまでは少しとまどいそうだ。
USB-Cポートになったのも大きい。「iPad Pro」を持っているユーザーなら同じアダプターを使えるし、Mac用のものでも充電できる。手持ちのアダプターやケーブルがUSB-Cという人にもありがたい。
上部にボリュームボタンとTouch IDを搭載。ボリュームボタンは本体の向きに応じて、ボリュームアップとボリュームダウンが入れ替わる
外部インターフェイスはLightningではなくUSB-Cを搭載。ヘッドホン出力は搭載されない。スピーカーは横向き時にステレオで再生されるように、本体上下に搭載されている
専用ケースの「Smart Folio」(アップルストア価格7,480円)。開くとディスプレイがつき、閉じると消える連携機能付き。Apple Pencilをつけた状態でも使える
新型iPad miniは、最新の機能や性能を小さなボディに詰め込んだ、魅力的なモデルだ。iPadやiPad Airだと大きすぎると感じている人にとっては、待ちに待ったモデルだろう。iPadの2台持ちという人も出てきそうだ。
ただし、当然のことながら、画面サイズが小さいことは覚えておいてほしい。ソフトウエアキーボードもフルサイズ表示だと、画面半分まで覆ってしまう(フローティングや分割でカバーできるが)し、アプリによっては文字が小さくて読みにくい場合もある。サイズと画面の見やすさはトレードオフなので、この点はアップルストアなどで実機を確認してから選ぶといいだろう。
iPad mini(第6世代)の価格は、64GBモデルが59,800円、256GBモデルが77,800円(税込、アップルストア価格、Wi-Fiモデル)。ストレージ容量はiPad Airと同じだ。価格はiPad Airのほうが1万円高い価格設定だ。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!