第3世代の「iPhone SE」が本日2022年3月18日に発売される。2020年4月に発売された第2世代モデルのデザインはそのままに、スマートフォンの頭脳であるチップを最新世代の「A15 Bionic」に刷新したモデルだ。iPhoneの中ではエントリーモデルの位置付けながら、最強の頭脳を備えたアップルだからこそできたモデルと言える。実機を使いながら、iPhone SE(第3世代)の魅力を整理していきたい。
長年愛されてきた無駄のないシンプルなデザインのiPhone SE(第3世代)。4.7インチのディスプレイを備えたコンパクトなボディに、マスク生活に便利な「Touch ID」を備える
iPhone SE(第3世代)のデザインは、人気の第2世代モデルのデザインを踏襲している。画面の下にホームボタンを備えた伝統的なデザインだ。前面と背面には、「iPhone 13」シリーズの背面に使われている、スマホ用としてはトップクラスの強度を誇るガラスを採用する。フレームは航空機にも使われているグレードの7000シリーズのアルミニウムを使用。ガラスとアルミニウムというiPhone伝統の組み合わせだ。
今回はミッドナイトというモデルを試用。ブラック系の色味だが、見る角度では紺色にも見える高級感のある仕上がり
フレーム部分の素材はアルミニウム。ガラス素材の背面と正面の境目がわかりにくいほど精巧な作りだ。色もしっかりマッチしている
フォルムは「iPhone 6」から受け継がれている丸みのある形状。本体がコンパクトなこともあり、親指をメインとした片手操作がしやすい。大画面のスマホは使いにくいと感じている人にピッタリのモデルだ。第2世代のiPhone SEとサイズが変わっていないので、ケースはそのまま使えるし、店頭には数、種類ともに多く揃っている。
片手でホールしやすいコンパクトボディ。本体サイズは67.3(幅)×138.4(高さ)×7.3(厚さ)mm、重量は144g。4.7インチの「Retina HDディスプレイ」は、有機ELではないが、「True Tone」やP3の広色域をサポート。触覚タッチにも対応する高品位なディスプレイだ
各種認証はホームボタンに搭載されたTouch IDを利用する。コロナ禍でマスクをするのが日常になっており、Touch IDの便利さは多くのユーザーが求めているものだ。なお、「iOS 15.4」では、「iPhone 12」以降のモデル限定ではあるが、マスク姿でもFace IDが使えるようになったので、マスクの不便さは解消されている。
Touch IDを搭載するホームボタン
カラーは(PRODUCT)RED、スターライト、ミッドナイトの3色。赤、白、黒というバリエーションは変わらないが、今回試したミッドナイトは少し青みがかっており、第2世代のブラックとは色味が若干変わっている。
実機は見ていないが、各色ともに第2世代モデルから少し色味が変わっているようだ
iPhone SE(第3世代)の大きな変更点であるチップは、6コアCPUと4コアGPU、それに16コアのNeural Engineを搭載する最新世代のA15 Bionicだ。iPhone 13にも搭載されているもので、アプリの起動や切り替えなど日常的な操作が快適なのはもちろん、「Apple Arcade」のゲームも高画質なグラフィックで楽しめる。Neural Engineを使ったテキスト認識など、iPhone 13と同じ機能も利用できる。
定番ベンチマークアプリ「Geekbench 5」の結果。同じA15 Bionicを搭載するiPhone 13やiPhone 13 Proとスコアはほとんど変わらない
Apple Arcadeのバスケットボールゲーム「NBA2K21 ARCADE EDITION」をプレイ。選手のリアルな描写と滑らかな動きが魅力のゲームだ。普段は「iPhone 12 Pro Max」で遊んでいるが、iPhone SE(第3世代)でも問題なくプレイできた
「カメラ」設定で「検出されたテキストを表示」をオンにすると、カメラで表示した文字をテキスト認識できる。日本語は非対応だが、電話番号やQRコードを読み取れるので意外と便利に使える
iPhone SEを選ぶ人は、ひんぱんにiPhoneを買い替えるというよりも、できるだけ長く使いたいという人のほうが多いのではないだろうか。そんな人に対して、最新世代のA15 Bionicを搭載するiPhone SE(第3世代)はまさにピッタリのモデルだ。なお、A15 Bionicは、Androidスマホでいえばハイエンドのチップなので、それが5万円台のモデルに搭載されていると考えるとお得という見方もできる。
スペック面では5Gに対応したのもトピック。iPhone 13と同じく「5Gオート」も搭載しており、5G通信が可能な状態でも際立った通信速度向上メリットがないと判断されると、自動で4G通信に切り替わり、消費電力を節約できる。周波数帯はiPhone 13と同様、「Sub6」のみをサポート。iPhone 13は4×4 MIMOなのに対して、iPhone SEは2×2 MIMOとスペック的には劣るが、2×2 MIMOでも4G通信よりも高速なのは間違いない。世界中の多くのキャリアと5G対応を進めるアップルなので安心感もある。
5Gに対応。SIMカードはnanoSIMとeSIMをサポートする
対応エリアはまだまだ拡大途中の5G通信に対応。状況に応じて、4G通信と5G通信を使い分けて消費電力を節約できる「5Gオート」を備える
第2世代のiPhone SEの価格.comのクチコミやレビューを見ると、概ね好評だが、バッテリーの短さに不満を持っている人が多かった。第2世代iPhone SEのバッテリー駆動時間は最大13時間(ビデオ再生)。iPhone 13が19時間(同)と考えると確かに短い。iPhone SE(第3世代)では最大15時間(同)と2時間長くなっている。サイズを変えず、かつ5Gに対応しながら2時間も伸びているのは立派だ。
A15 Bionicの搭載によりカメラも進化している。A15 Bionicのパワーを使ったコンピューティショナルフォトグラフィーにより、簡単に高画質な写真を撮影できるのだ。具体的には、「Deep Fusion」「スマートHDR4」「フォトグラフスタイル」という機能が利用できるようになった。
背面カメラは1200万画素の広角カメラというシングル構成。複数のカメラを搭載するiPhone 13と比べると表現の幅は狭いが、気軽にキレイな写真が撮れるという、iPhoneのカメラの伝統をしっかり引き継いだカメラとも言える。
手元に「iPhone 8」があったので、iPhone SE(第3世代)と撮り比べてみた。順光で花などを撮影する分には劇的な差はなかったが、スマートHDR4の効果なのか、逆光時の写真では明確な差が出た。コンピューティショナルフォトグラフィーにより、iPhone SE(第3世代)のカメラ機能は着実に進化していることがわかる。「ナイトモード」がないのは残念だが、ふだん使いからSNS用の撮影まで幅広い使い方ができそうだ。
左がiPhone SE(第3世代)、右がiPhone 8。バスケットゴールを逆光で撮影してみたが、スマートHDR4の効果は絶大で、iPhone SE(第3世代)は逆光で撮影したものとは思えないほどゴール部分がクリアに撮影できている
左がiPhone SE(第3世代)、右がiPhone 8。こちらも少し逆光のシチュエーションだが、葉っぱの色が全然違うのがわかる。5年の進化を感じる写真だ
左がiPhone SE(第3世代)、右がiPhone 8。順光では劇的な差は見られなかったが、じっくり見比べると枝のシャープさが違う
左がiPhone SE(第3世代)、右がiPhone 8。Deep Fusionの効果が出るかと撮影したハンカチ。布の細かさ、シャープさはわずかにiPhone SE(第3世代)のほうが上だが、大きな差は見られない。ホワイトバランスが変わっているのか、iPhone 8のほうが青白く見える
長く愛されている伝統的なデザインに最新世代のA15 Bionicを搭載したiPhone SE(第3世代)。IP67等級に準拠した防沫、防水、防塵ボディで、長く快適に使えるはずだ。尖った機能こそないが、選んで損はない圧倒的な安心感が魅力と言える。アップルストアでの価格は64GBモデルが57,800円(税込)、128GBモデルが63,800円(税込)、256GBモデルが76,800円(税込)。iPhone 13の半額とまではいかないが、かなりリーズナブルな価格設定なのも見逃せない。
また、楽天モバイルは最大35,000ポイント(各種条件あり)を還元するなど、各キャリアではさまざまなキャンペーンや割引を実施しており、売る気満々だ。5Gへの移行を加速させる端末としての期待値が高いのだろう。3月末でKDDI(au)の3G(CDMA 1X WIN)停波があるので、ガラケーからはじめてのスマホという人にもiPhone SE(第3世代)は最適かもしれない。日本では新生活がスタートするタイミングで発売されるので、進学や就職に合わせて入手するという人も多くなりそうだ。第2世代モデルと同じく、第3世代のiPhone SEもロングセラーは間違いないだろう。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!