NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアから2022年6月3日に発売されるソニーの5G対応ハイエンドスマートフォン「Xperia 1 IV(エクスペリア・ワン・マークフォー)」をレビュー。ユニークな配信機能や、光学ズーム搭載のカメラ機能など魅力が多く、注目の1台だ。au版の「SOG06」を使い、その実力に迫ろう。
6月3日にNTTドコモ、au、ソフトバンクから発売される「Xperia 1 IV」。コンセプトを先鋭化し、クリエイター志向のユーザーに向けた製品になっている
Xperiaの今夏モデルは、エントリー機「Xperia Ace III」、ミドルレンジ機「Xperia 10 IV」、ハイエンド機「Xperia 1 IV」の3製品がラインアップされている。今回取り上げる「Xperia 1 IV」は価格が19万円台というハイエンド機の中でも高価格帯に属する。
「Xperia 1 IV」のボディサイズは、約71(幅)×165(高さ)×8.2(厚さ)mmで、重量約187gだ。従来モデルの「Xperia 1 III」から1g軽くなっただけで、サイズは変わっていない。シルエットやディスプレイのサイズ、背面のデザインもそのままだ。しかし、よく見ると側面のフレームの形状が鋭角的になり、ディスプレイの保護ガラスが、縁まで平面のガラスに変更されている。また、「Xperia 1 III」の右側面に配置されていたGoogle アシスタントボタンが廃止されるなど、細かな改良も施されている。
IPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様、FeliCaポート、Qi規格のワイヤレス充電は従来モデル同様に対応している。なお、通信機能は、5GのSub-6とミリ波両方をサポート。3キャリア版ともにSIMロックはかかっていない。また、nanoSIMカードとeSIM両方に対応している。
ボディ上面にヘッドホン端子を配置する
ボディ下面には、USB Type-CポートとSIMカード、増設用メモリーカードスロットを配置する
右側面に、ボリュームボタン、指紋認証センサー一体型の電源ボタン、伝統のボタン式シャッターを配置。「Xperia 1 III」に搭載されていたGoogleアシスタントボタンは廃止された
側面のフレームは、鋭角的なデザインに変更された。これにより旧モデルとは異なる感触になっている
ディスプレイの保護ガラスを「Xperia 1 III」の2.5Dガラスから平面に変更しつつ、フレームと高さを揃えることで、ガラスの縁部分の破損を起りにくくしている
ディスプレイは3,840×1,644の4K表示に対応した約6.5インチの有機ELディスプレイで、従来モデルから変更はない。120Hzのリフレッシュレート(残像低減機能付き240Hz駆動)と、240Hzのタッチサンプリングレート、プロ用モニターを再現した画質モード「クリエイターモード」にも引き続き対応している。なお、最大輝度が「Xperia 1 III」よりも50%向上しているほか、HDRコンテンツの画質を自動で調整して視認性を高める「リアルタイムHDRドライブ」という新機能を備えている。
パンチホールやノッチのないディスプレイ。4K表示、クリエイターモード、21:9という独特の縦横比も、従来モデルから変わりはない
サウンド機能を見てみよう。横画面にした際に左右対称の配置になるステレオスピーカーを備える点はそのままだが、スピーカーの容量を増やすことで「Xperia 1 III」よりも音圧が約10%向上した。音質も良好で、一般的なスマートフォンではそこまで重視されない定位感や音の拡がりが感じられる。ヘッドホン端子も引き続き搭載しており、サウンドエンハンサーの「Dolby Atmos」や、ソニー独自のサウンド補正「DSEE Ultimate」、ステレオ音源をマルチチャネル音源に変換する「360 Reality Audio Upmix」に対応している。
対応するBluetoothのオーディオコーデックにaptX Adaptiveやapt X TWS+が加わっており、ソニー製以外のワイヤレスイヤホンも使いやすくなった
SoCはハイエンド向け「Snapdragon 8 Gen 1」で、12GBのメモリーと256GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSはAndroid 12だ。AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)の結果は、725,568(内訳、CPU:139,093、GPU:341,987、MEM:124,565、UX:119,923)となった。
価格.comマガジンの調査では本機と同じSoCを備えるヌビア「REDMAGIC 7」が996,027というスコアを記録しており、本機のスコアはかなり見劣りする。CPUの処理性能を計測する「GeekBench5」の結果は、シングルコア1,160、マルチコアは3,276で、「Xperia 1 III」のスコア、シングルコア1,127、マルチコア3,584と同レベルである。本機のSoCには、CPUとGPUともに、ピーク性能に制限がかけられている可能性がある。
AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)を使った、ベンチマークテストの結果。左は本機、右は同じSoCを備えるヌビア「REDMAGIC 7」のもの、処理性能を示す「CPU」とグラフィック性能を示す「GPU」の値それぞれが、25%ほど本機のほうが低い
こちらは、処理性能を計測するベンチマークアプリ「GeekBench5」の計測結果。左は本機のもの、右は「Xperia 1 III」のものとなる。マルチコアの結果では、「Xperia 1 III」のほうが高いという意外な結果だ
アプリの起動など日常的な操作は、「Xperia 1 III」と比べると全般的に速い。そのいっぽう、処理性能と描画のピーク性能と、その持続性が重要な重量級ゲームでは、決定的な優位性は感じられない。「Xperia 1 III」でフレームレートが低下する状況では、本機も同じように低下した。
本機の特徴は、映像や音声の配信向け機能だ。ゲーム最適化機能「GameEnhancer(ゲームエンハンサー)」に「YouTubeライブ配信」機能が加わった。これは、プレー中のゲームの様子を直接YouTubeに配信できるというもので、視聴者のコメントを画面上に表示し、画面に簡単な編集を加えることもできる。
また、音声録音アプリ「Music Pro」も搭載された。これは、最大10トラックの録音に加えて、クラウドサーバーに音源ファイルをアップロードすることでノイズや部屋の残響特性の除去し、プロ用スタジオで収録したようなサウンドに修正できるというもの(月間100MBまで無料、それ以上は月額税込580円)。こちらも、楽器演奏や歌の配信を行う人には注目の機能と言えるだろう。このほか、動画記録アプリ「Videography Pro」にも、YouTubeへ直接動画配信を行う機能が追加されている。「Videography Pro」には、すぐれたオートフォーカス機能や画質調整機能が備わっているので、より高品質なライブ配信が本機だけで行える。
ゲーム最適化機能「GameEnhancer」に加わった新機能「YouTubeライブ配信」は、プレー中の画面を直接YouTubeに配信できるというもの。なお、YouTubeのコメントを画面に表示することができ、視聴者の反応を見ながら配信が行える
「Videography Pro」に、YouTube配信機能を追加。同アプリのオートフォーカスや画質調整機能を動画配信に活用できる
録音アプリ「Music Pro」は、最大10トラックの録音に対応するほか、有料のサウンド修正機能を備えるなど、本格的なスタジオ録音を本機だけで行える
上記の配信機能とともに本機の特徴となるのはカメラだろう。メインカメラは焦点距離16mmの超広角カメラ、焦点距離24mmの広角カメラ(標準カメラ)、85〜125mmの光学ズームに対応した望遠カメラ、3D iToFセンサーという組み合わせだ。いずれも有効1,220万画素で統一されている。「Xperia 1 III」では、70mmと105mmの切り替え式だった望遠カメラが、焦点距離を伸ばしたうえに光学ズームに対応しているのがポイントだろう。なお、フロントカメラも、イメージセンサーのサイズを1/4インチから1/2.9インチに大型化しつつ、約800万画素から1,220万画素に高画素化している。
カメラ周辺の外見は一見すると変わっていないが、望遠カメラに光学ズームを備えている
以下に、本機のメインカメラを使った静止画の作例を掲載する。カメラアプリ「Photography PRO」は、オートモードに切り替えただけで、初期設定のままカメラ任せで撮影を行っている。
広角カメラでクレーンを撮影。スマートフォンではよく見かける24mmの焦点距離ということもあり、見慣れた構図と言える
上と同じ構図を望遠カメラ(85mm)に切り替えて撮影した。3倍以上のズームとなり、クレーンの細部までしっかりと写る。なお、オートフォーカスはクレーンを迷わずに認識していた
さらに、望遠カメラを125mmに切り替えて撮影した。広角カメラよりも5倍以上のズームとなる。望遠撮影で気になる手ブレは、日中であればさほど気にしなくてよいようだ
カルガモの親子を撮影。125mmの焦点距離なら野生動物との距離を保ちつつ撮影が行える。一般的なスマートフォンのカメラでは難しい構図や被写体が本機なら撮影できる
明るめな夜景を撮影。明るく鮮明で植栽のディテールも残っており、SNSウケする誇張を抑えた、カメラらしい画質だ。さすがに周辺部分ではノイズが現われるものの総じてかなりハイレベルである
上と同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。色調の統一感はさすがに高い。ノイズが少なく、ディテールの解像度が高く、手ブレもない、誰が撮ってもキレイに仕上がるカメラだ
さらに同じ構図を、望遠カメラ(85mm)で撮影した。光学式手ブレ補正が効いているため、手持ち撮影も十分可能だ。シャッター速度は1/10秒と長めだったが、ISO感度は320程度でまだ余裕がある
焦点距離を125mmに切り替えて撮影。シャッタースピードの限界で歩行者が被写体ブレを起こしているものの、こちらも手ブレはかなり抑え込まれている
注目の望遠カメラは、125mmという焦点距離を生かし、野生生物など、近寄りにくい被写体の撮影でも活用でき、表現の幅を広げる効果がある。良好なレスポンスやシャッターボタンを使った撮影など、シリーズの美点は継承されており、カメラに近い使い勝手だ。なお、85〜125mmの光学ズーム領域は、デジタルズーム特有のノイズが見られない。できることなら、広角、超広角領域でも光学ズームに対応してほしいくらいだ。
動画撮影機能も強化され、全カメラが4K120fpsのハイフレームレートに対応した。ただし、4K120fpsの動画撮影は、SoCにかかる負担が大きく、2分ほど撮影を続けると、機能の一部を停止する警告が現われる。また、バッテリーの消費も相当なもので、大体1分でバッテリーを1%消費する。長時間の動画撮影には注意だ。
高解像度の動画撮影では、発熱の問題が現われやすい。長時間の動画撮影には課題がある
本機は、5,000mAhのバッテリーを内蔵し、連続通話時間約2,000分、連続待ち受け時間約450時間となっている。なお、「Xperia 1 III」は、連続通話時間約2,040分、連続待ち受け時間は約420時間なので、バッテリー持ちが極端に悪化していると言うことはないようだ。検証に際して1週間ほど使ってみたが、1日に3時間程度の利用ペースなら2日ほどは電池が持つ。カメラや動画撮影を行うとバッテリーはハイペースで減るが、待ち受けであれば、バッテリーの消費はそれほど気にしなくてよさそうだ。
いっぽう、充電にかかる時間は、27W対応の充電器を使った場合で約130分、18W対応のものでは約200分と長めである。多少値段は上がるが、27W前後の出力を持つ充電器を用意したほうがベターだろう。
本機の価格は、NTTドコモ版「SO-51C」が190,872円(税込、以下同)、検証に使ったau版「SOG06」が192,930 円、オンライン専用数量限定発売のソフトバンク版(型番は非公開)は199,440円。いずれも相当な価格だ。値段が上がったことで、製品のコンセプトを純化させ、ゲームや映像、音楽の配信を行う、動画および写真撮影を楽しみたいなど、表現へのこだわりを強めたことは、今回の検証からも理解できるだろう。価格性能比とは異なる「Xperia I IV」ならではの機能や特徴を理解して選びたい憧れの1台だ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。