レビュー

税込22,000円のシンプル志向なスマホ、シャープ「AQUOS wish2」を試した

NTTドコモおよびワイモバイルで発売中のエントリースマートフォン「AQUOS wish2」が、最安22,000円からという価格もあって話題を集めている。NTTドコモ版「SH-51C」を使ったレビューをお届けしよう。

処理性能を高めつつ、価格は安くなった「AQUOS wish2」

処理性能を高めつつ、価格は安くなった「AQUOS wish2」

「AQUOS wish」をベースにSoCを強化。Android標準に準じたシンプルな操作画面は継承

スマートフォン全体の値上がりが続いているが、今は3Gネットワークの末期でもあり、ケータイからスマートフォンへの移行が進んでいるタイミングでもある。そのため、初めてスマートフォンを使うユーザーに向けた、安価でバランスのよい端末のニーズが高まっているのだ。

「AQUOS wish2」はその名前から察せられるように、2022年1月に登場した「AQUOS wish」の後継となるエントリーモデル。「AQUOS wish」は大体3万円台前半の製品だったが、本機はそれよりもかなり割安で、NTTドコモ版「SH-51C」は22,000円、ワイモバイル版「A204SH」は26,640円(いずれも、割引を考慮しない税込価格)となっている。なお、両社の2022年夏モデルラインアップでは最安クラスの製品だ。機能性も高く、防水・防塵、耐衝撃対応で、おサイフケータイで使用するFeliCaポートも搭載している。デザインはシンプルで、性別や年齢に関係なく幅広いユーザーに受け入れられそうだ。誰が持ってもしっくりくるのは、エントリーモデルとしては大切な要素だろう。

「AQUOS wish2」と「AQUOS wish」の大きな違いは2点ある。ひとつは、基本性能を大きく左右するSoCを、「Snapdragon 480 5G」からよりグレードの高い「Snapdragon 695 5G」へ変更したこと。もう1点は、プリインストールされるOSを、Android 11から最新のAndroid 12に変更したことだ。なお、シャープの保証する発売後2年間最大2回のOSバージョンアップは、本機でも適用される。そのため、Android 14世代までは最新のソフトウェア環境が維持されることになる。

ロゴや型番を除けば外見は「AQUOS wish」と共通となっており、ボディサイズは、約71(幅)×147(高さ)×8.9(厚さ)mmで、重量は約162gだ。ディスプレイは、1520×720のHD+表示に対応した約5.7インチの液晶が使われる。スマートフォン全体が大型化している今の基準で見ると、本機はコンパクトスマホと言ってよいだろう。

背面は再生素材を使った樹脂製でマットな質感。シンプルなデザインで、幅広いユーザーに受け入れられそうだ

背面は再生素材を使った樹脂製でマットな質感。シンプルなデザインで、幅広いユーザーに受け入れられそうだ

ボディ正面にヘッドホン端子を配置する

ボディ正面にヘッドホン端子を配置する

ボディ下面はスピーカーホールとUSB Type-Cポートを備える。なお、スピーカーはモノラル出力だ

ボディ下面はスピーカーホールとUSB Type-Cポートを備える。なお、スピーカーはモノラル出力だ

左から、指紋認証センサー、電源ボタン、Googleアシスタント呼び出しボタン、ボリュームボタンという配置。電源ボタンは長押しでGoogle Payなどの決済アプリの起動に割り当てることができる

左から、指紋認証センサー、電源ボタン、Googleアシスタント呼び出しボタン、ボリュームボタンという配置。電源ボタンは長押しでGoogle Payなどの決済アプリの起動に割り当てることができる

ボディは、IPX5/7等級の防水仕様、IP6X等級の防水仕様に加えて、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」の18項目をクリアしたタフネス仕様だ。落下への耐久性を備えるほか、浴室での使用や、アルコール除菌シートで拭くこともできる。

外見は比較的シンプルだが、音声検索などを行うGoogle アシスタントなどの呼び出しボタンを備える点と、電源ボタンの長押しでGoogle Payなどの決済アプリを起動する「Payトリガー」を備えている点がユニークだ。なお、Google アシスタントなどの呼び出しボタンについては、不要であれば機能をオフにできる。

操作画面は、「AQUOS」シリーズの特徴であるAndroidの標準的な操作方法を採用している。設定画面も大きなカスタマイズが行われておらず、本機の操作になじんでいれば、ほかのAndroidスマートフォンもスムーズに操作できるだろう。また、不明な点を人に相談する場合にも、本機ならスムーズに行えるはずだ。

ディスプレイはやや暗め。HDRや高速駆動などには対応していないシンプルなものだ

ディスプレイはやや暗め。HDRや高速駆動などには対応していないシンプルなものだ

ディスプレイ上部に大きめのノッチがある。なお、設定でノッチを隠すこともできる

ディスプレイ上部に大きめのノッチがある。なお、設定でノッチを隠すこともできる

搭載されるディスプレイは、なかなか鮮明だ。ただし、最大輝度が暗めで、真夏の直射日光が差し込むような状況では明るさが不足しやすい。また、ディスプレイのリフレッシュレートが60Hz駆動にとどまっている。リフレッシュレートを高めると、残像感が減り、体感速度の改善にも効果がある。2万円台前半の製品でも90Hz駆動に対応したものが珍しくないので、本機は少々見劣りを感じる。

設定項目の並びや(左画面)通知メニュー(右画面)もAndroidの標準的な操作に準じている。そのため、設定方法を人に相談しやすく、ほかのAndroidスマートフォンにスムーズになじめるという利点がある

設定項目の並びや(左画面)通知メニュー(右画面)もAndroidの標準的な操作に準じている。そのため、設定方法を人に相談しやすく、ほかのAndroidスマートフォンにスムーズになじめるという利点がある

ホーム画面は、文字やアイコンを大きくする「AQUOSかんたんホーム」を選ぶこともできる(左画面)。なお、検証機の「SH-51C」は、これに加えて、「AQUOS Home」と、ドコモ専用の「docomo LIVE UX」という3種類のホーム画面を選ぶことができる

ホーム画面は、文字やアイコンを大きくする「AQUOSかんたんホーム」を選ぶこともできる(左画面)。なお、検証機の「SH-51C」は、これに加えて、「AQUOS Home」と、ドコモ専用の「docomo LIVE UX」という3種類のホーム画面を選ぶことができる

「AQUOS wish」よりも3割の処理性能向上を実現

上述の「Snapdragon 695 5G」を搭載した影響を調べよう。このSoCは、ソニー「Xperia 10 IV」やシャオミ「Redmi Note 11 Pro 5G」、オッポ「OPPO Reno7 A」といった、3〜5万円台のミドルレンジモデルで広く採用されており、2万円台の本機には少し豪華なSoCだ。そのほか、メモリーは4GB、ストレージは64GB、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを搭載する。

実際の処理性能を、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X+AnTuTu 3D Lite)」を使って調べたところ、総合スコアは、345173(内訳、CPU:119752、GPU:78692、MEM:63188、UX:83541)となった。なお、価格.comマガジンが調べた「AQUOS wish」の同アプリの総合スコアは、278480(内訳、CPU:93842、GPU:66715、MEM;58328、UX:59595)だった。処理性能を示すCPUは大体3割、グラフィック性能を示すGPUのスコアは2割ほど向上している。

体感速度は期待するほどスムーズとは言えず、同じSoCを備えるものと比べても引っかかりを感じることが多かった。その理由として、Android 12搭載機としては少なめな4GBという本機のメモリー容量が影響していることが考えられる。ただし、描画性能がものを言うゲームでは、「AQUOS wish」よりもコマ落ちは減少する。

AnTuTuベンチマークの結果。左が「AQUOS wish2」で、右は「AQUOS wish」のもの。総合スコアでは本機が2割ほど高い。サブスコアを見ても、処理性能を示す「CPU」は約3割、グラフィック性能を示す「GPU」は2割ほど本機のほうがスコアが高い

AnTuTuベンチマークの結果。左が「AQUOS wish2」で、右は「AQUOS wish」のもの。総合スコアでは本機が2割ほど高い。サブスコアを見ても、処理性能を示す「CPU」は約3割、グラフィック性能を示す「GPU」は2割ほど本機のほうがスコアが高い

操作は簡単だがキレイに写すにはひと工夫必要なカメラ

本機のメインカメラは、約1300万画素のシングルカメラで、自撮りや顔認証などに使うフロントカメラは約800万画素だ。なお、カメラアプリは、シンプルな操作性が特徴のGoogle製「Camera Go」が使われる。本機のカメラは、ハードウェアとソフトウェアの両面でシンプルだ。

メインカメラは約1300万画素のシングルカメラだ

メインカメラは約1300万画素のシングルカメラだ

以下に、本機のメインカメラを使って撮影した静止画の作例を掲載する。初期設定を基本としつつ、撮影モードを切り替えた場合はその旨を記載している。

順光だが、空の明るさに引きずられたため、駅舎が肉眼の印象以上に暗くなっている。明暗差に弱いところがあるので、こうした日中の屋外でもHDRを使ったり、明るく写したい部分をタッチして、露出を調整したほうがよいだろう撮影写真(4160×3120、4.54MB)

順光だが、空の明るさに引きずられたため、駅舎が肉眼の印象以上に暗くなっている。明暗差に弱いところがあるので、こうした日中の屋外でもHDRを使ったり、明るく写したい部分をタッチして、露出を調整したほうがよいだろう
撮影写真(4160×3120、4.54MB)

明暗差の大きな構図なので、手動でHDRをオンにした。十分とは言えないが、暗い室内もつぶれておらず、窓の外の遠景も白飛びがいくらか抑えられている撮影写真(4160×3120、2.83MB)

明暗差の大きな構図なので、手動でHDRをオンにした。十分とは言えないが、暗い室内もつぶれておらず、窓の外の遠景も白飛びがいくらか抑えられている
撮影写真(4160×3120、2.83MB)

間接的に自然光が差し込む店内で撮影した写真。やはり明暗差に敏感で、丼の影部分はディテールがはっきりせず、ハイライト部分は白飛びを起こしている撮影写真(4160×3120、1.69MB)

間接的に自然光が差し込む店内で撮影した写真。やはり明暗差に敏感で、丼の影部分はディテールがはっきりせず、ハイライト部分は白飛びを起こしている
撮影写真(4160×3120、1.69MB)

明るめの夜景を撮影した写真。こちらも明暗差に課題があるようで、ハイライト部分が白飛びを起こしている<br>撮影写真(4160×3120、2.73MB)

明るめの夜景を撮影した写真。こちらも明暗差に課題があるようで、ハイライト部分が白飛びを起こしている
撮影写真(4160×3120、2.73MB)

本機のカメラアプリは、設定項目が少なく、基本的にシャッターを押すだけというものだ。画質だが、シーン内の明暗差に敏感なところがあり、暗い部分や明るい部分に写真全体が引きずられやすい。HDR撮影機能を使えば白飛びや黒つぶれは抑えられるが、シーン認識機能がないので、いちいち手動で設定する必要がある。確かにシンプルなカメラだが、よりキレイに撮影するなら、ひと工夫は必要そうだ。

バッテリー持ちはほどほど。エントリー機としては短めな充電時間は魅力

AQUOSシリーズの特徴である電池持ちを見てみよう。搭載されるバッテリーは3730mAhで、「AQUOS wish」と同じだ。ワイモバイルの公表しているスペックデータによると、連続通話時間(FDD-LTE)は約2350分で、「AQUOS wish」の約2290分より多少向上している。連続待受け時間(FDD-LTE)も約570時間から約630時間へ、こちらも向上している。なお、急速充電としてUSB PD Revision3.0規格に対応しており、同規格に対応する充電器を組み合わせることで、最短130分でフル充電が行える。

検証期間中におけるバッテリーの消費ペースは、5Gエリアで1日に1時間程度利用した場合、72時間を経過した時点で、バッテリーの残量は10%を切った。利用ペースを増やし、1日に3時間程度使うと48時間弱でバッテリー残量がほぼなくなった。電池持ちには定評のあるAQUOSシリーズではあるが、バッテリー持ちは特筆するほど長いわけではないようだ。

いっぽう、最短130分という充電時間は、エントリーモデルとしては悪い値ではない。この点、使い勝手は良好と言ってよいだろう。

安価かつシンプル。初めてのスマートフォンとしてバランスが取れている

「AQUOS wish2」は、クラス以上のSoCを備えつつ2万円台という価格で、FeliCaポートや防水・防塵、タフネスボディを備える手堅い製品だ。競合する製品として、性能やサイズで似た部分が多いソニー「Xperia Ace III」が想定されるが、1万円ほど安い本機のほうが価格性能比は上だろう。このほかに、シャオミ「Redmi Note 10T」、FNCN「arrows We」、サムスン「Galaxy A22 5G」といった、同価格帯の昨冬登場したエントリーモデルもライバルになるだろう。本機はそれらの製品よりも操作や機能がシンプルで、操作性もAndroidの標準に準じている。これは一見するとデメリットのように思われるが、本機の操作に慣れればほかのAndoird スマートフォンでもすぐになじめるはずだ。また、わからないところを人に相談しやすいのも、初心者向きだ。

自分なりの使い方やこだわりを見つける初めてのスマートフォン。「AQUOS wish2」はそんな製品と言えそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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