Googleは、ミドルクラスのAndroidスマートフォン「Google Pixel 6a」(以下、Pixel 6a)の予約受付を2022年7月21日に開始した。発売は7月28日だ。「Pixel 6a」は、同社のフラッグシップモデル「Google Pixel 6」「Google Pixel 6 Pro」と同じく、プロセッサーに独自開発したSoC「Google Tensor」を採用。メモリー、ストレージ容量、ディスプレイ、カメラ、本体材質などで細かくコストダウンが図られているものの、カメラ機能や音声認識、セキュリティーなどについては、フラッグシップモデルと同じ使い勝手を実現している。今回は、発売前に製品版を借用したので、実機レビューをお届けしよう。
Google「Pixel 6a」をレビュー。公式サイトの直販価格は53,900円(税込)
「Pixel 6a」は、OSに「Android 12」、プロセッサーに「Google Tensor」を採用。メモリー(RAM)は6GB(LPDDR5)、ストレージ(ROM)は128GB(UFS 3.1)を搭載している。
ディスプレイは6.1インチの有機EL(20:9、2400×1080、429ppi、リフレッシュレート最大60Hz、高輝度モード、コントラスト比1,000,000:1、HDR対応、24ビットフルカラー)を採用。スピーカーはステレオ仕様で、マイクは2基を内蔵している。
メインカメラは、広角(デュアルピクセル、1220万画素、ピクセルサイズ1.4μm、F1.7、77度、1/2.55インチ、超解像ズーム最大7倍、光学手ブレ補正)、超広角(1220万画素、1.25μm、F2.2、114度、レンズ補正)のデュアル構成。フロントカメラは800万画素、1.12μm、F2.0、84°、固定フォーカスだ。
5G通信はSub 6のみの対応で、無線通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.2、NFC、FeliCaセンサーをサポートする。ただし、Wi-Fi 6Eは日本では利用できない。
本体サイズは約71.8(幅)×152.2(高さ)×8.9(奥行き)mm、重量は178g。4410mAhのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は24時間以上。ただし、「スーパーバッテリーセーバー」使用時は最大72時間とされている。
「Pixel 6a」は、Pixel 6/6 Proと細かく差別化が図られている。詳しくは下記の表をご覧いただきたいが、大きく異なるのはメモリーとストレージ容量、ディスプレイのリフレッシュレート、カメラのイメージセンサーおよび望遠カメラの有無、ミリ波への対応、前面と背面の本体材質といったところだ。このなかでも特に気になるのはカメラの差別化だが、「Pixel 6a」がどのくらいの画質を備えているかは、のちほど作例でチェックしよう。
パッケージには本体、USB-C to USB-Cケーブル(USB2.0、1m)、クイックスイッチアダプター、SIMツール、クイックスタートガイド、「Google Pixel 6aの安全、保証、規制に関するガイド」が同梱
本体前面と本体背面。今回試したモデルのカラーは「Sage」。涼しげな佇まいだ
「YouTube」、「Netflix」アプリでHDRコンテンツを再生できることが確認できた
本体上面にはマイク、本体下面にはマイク、USB Type-C 3.1 Gen1ポート、スピーカーを配置
右側面には電源ボタン、ボリュームボタン、左側面にはSIMカードトレイを用意
SIMカードトレイはnanoSIMカードに対応。microSDメモリーカードは装着できない
本体カラーに合わせた「Google Pixel 6a 純正ケース」(公式サイトでの直販価格は3,630円)も用意
前述のとおり、「Pixel 6a」は「Pixel 6/6 Pro」と同じ「Google Tensor」を搭載している。パフォーマンスは変わらないはずだが、念のためベンチマークを実施したところ、総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V9.4.2」の総合スコアは740234、3Dベンチマーク「3DMark」のWild Lifeのスコアは6645となった(どちらも3回計測して最もよかったスコアを採用)。
記事執筆時点のAnTuTu Benchmarkのランキングを見てみると、「Pixel 6」が703650、「Pixel 6 Pro」が7033706を記録している。また3DMarkのランキングには「Pixel 6」が6418、「Pixel 6 Pro」が6205と掲載されていた。つまりどちらのベンチマークでも「Pixel 6a」のほうが上位2機種を上回るスコアを叩き出したわけだ。
ただし、今回同じ条件で計測を行ったわけではない。特に、ベンチマークを実施した際のカーネルバージョンが異なっている可能性が高い。プロセッサーと、メモリーとストレージの規格が同じなので、条件を揃えればパフォーマンスに違いはないはずだ。
「AnTuTu Benchmark V9.4.2」の総合スコアは740234
「3DMark」のWild Lifeのスコアは6645
バトルロイヤルゲーム「NEW STATE Mobile」をプレイしてみたが、処理性能的にはまったく問題なし。ディスプレイのリフレッシュレートが最大60Hzなのでヌルヌル感を味わえないのはちょっと惜しいが、筆者ぐらいの腕前なら勝率を左右するほどのマイナスポイントではない
「Pixel 6a」は、メインカメラにデュアルピクセル広角カメラ、「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」はOcta PD Quad Bayer広角カメラを搭載している。Octa PD Quad Bayer広角カメラは50MPの高画素センサーで、4つのピクセルを擬似的にひとつのピクセルとして扱う「ピクセルビニング」という技術を採用。Pixel 5のデュアルピクセル広角カメラと比べて2.5倍の光をとらえられるとうたわれている。
というわけで、「Pixel 6a」はイメージセンサー自体の性能は上位モデルに及ばないはずなのだが、実際に撮影してみると想像以上に画質がいい。十分な光量がある状況で良好な画質が得られるのはもちろんのこと、暗い空を多く含む夜景などでも明るく、低ノイズで撮影できた。
さらに厳しい条件に追い込めば、どこかでイメージセンサーの差が現われる分岐点があるだろう。しかし、Googleの「コンピュテーショナルフォトグラフィー」は、一般的な状況下であればイメージセンサーの差を大きく埋める効果があることは間違いない。
なお、望遠カメラを搭載していないため遠景は苦手だが、最大の7倍の超解像ズームでも、16インチぐらいのディスプレイで鑑賞するなら実用十分な解像感を備えている。ましてやスマホやタブレットで鑑賞するのであれば、不満を感じることはないはずだ。
右がデュアルピクセル広角カメラ、左が超広角カメラ
超広角カメラで撮影4032×3024、1/1721、F2.2、ISO47、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
広角カメラで撮影4032×3024、1/3891、F1.7、ISO58、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
広角カメラで撮影(2倍)4032×3024、1/4673、F1.7、ISO67、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
広角カメラで撮影(7倍)4032×3024、1/4673、F1.7、ISO83、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
広角カメラで撮影4032×3024、1/120、F1.7、ISO362、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
広角カメラで撮影(夜景モード)4032×3024、1/4、F1.7、ISO46、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
なお、「Pixel 6a」には、「消しゴムマジック」に「カモフラージュ」という新機能が追加された。従来の「消しゴムマジック」は、対象を背景に合わせて消す機能だったが、「カモフラージュ」は対象の色を変化させられる。たとえば写真の中にメインの被写体より目立つ色があった場合に、その色を変更することで背景になじませられるのだ。
今回Googleから提供された「カモフラージュモード体験BOX」を使ってみたが、実に自然にエフェクトが適用される。また、今回の「カメレオン」のような形状が複雑な被写体でも、大雑把に線で囲むだけで、かなり正確に認識、適用された。写真の意図をより明確にするツールとして便利に活用できそうだ。
「消しゴムマジック」に「カモフラージュ」というコマンドが追加。対象を円で囲むか、ブラシでなぞれば1秒ちょっとで素早く効果が適用される
「カモフラージュ」適用前の写真
「カモフラージュ」適用後の写真
「カモフラージュ」適用前の写真
「カモフラージュ」適用後の写真
直販価格が53,900円とミドルクラスの価格帯でありながら、上位機種と同じく「Google Tensor」を搭載した「Pixel 6a」は、それ以外の部品で大幅なコストカットを実現しつつも、カメラ機能、音声認識、セキュリティーなどについてはフラッグシップモデルと同等の使い勝手を実現している。Googleのソフトウェア技術の凄みを見せつけられた思いだ。ミドルクラスの新たな基準となるだろう「Pixel 6a」は、高価格化が進むスマートフォン市場において非常に貴重な1台と言える。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。