レビュー

サウンドもカメラもハイレベルなゲーミングスマホ「Black Shark 5 Pro」レビュー

ゲーミングスマホの「Black Shark 5」シリーズが2022年7月下旬に発売された。スマホゲーマーなら垂涎(すいぜん)の1台だが、意外な懐の深さがある。上位機種の「Black shark 5 Pro」のレビューを通じてその特徴に迫ろう。

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「Black Shark 5 Pro」と「Black Shark 5」の2機種が登場

Black Shark社は、ゲーミングスマホやその周辺機器を手がけるシャオミ傘下のメーカー。国内では4世代目となる最新モデルとして「Black Shark 5 Pro」および「Black Shark 5」の2機種が、2022年7月下旬に発売された。今回は上位モデルの「Black Shark 5 Pro」を検証機として使用した。

「Black Shark 5 Pro」と「Black Shark 5」は、搭載するSoCのほか、ディスプレイの仕様、通信性能など細部の違いは多岐にわたる

「Black Shark 5 Pro」と「Black Shark 5」は、搭載するSoCのほか、ディスプレイの仕様、通信性能など細部の違いは多岐にわたる

SoCとメモリー・ストレージの仕様が異なる

簡単に「Black Shark 5 Pro」と「Black Shark 5」の比較を行おう。大きな違いは搭載されるSoCとメモリー周辺だ。「Black Shark 5 Pro」は、「Snapdragon 8 Gen1」に、6400MHzで動作するLPDDR5メモリーを12GB、Enhanced UFS 3.1規格のストレージを256GBを搭載する。いっぽう「Black Shark5」は、「Snapdragon 870」に5500MHzで動作するLPDDR5メモリーを8GB、UFS 3.1規格のストレージを128GB搭載する。OSはともに、Android 12をベースにした「JOYUI13」だ。なお、microSDメモリースロットは搭載されない。

「Black Shark 5」のほうがわずかに小さい

「Black Shark 5 Pro」のサイズは、約76.5(幅)×163.9(高さ)×9.5(厚さ)mm、重量約220gなのに対して、「Black Shark 5」は、それより少しだけ小さい約76.3(幅)×163.8(高さ)×10.0(厚さ)mm、重量約218gとなっている。両機ともFeliCaポートは非搭載で、耐水性能はIPX2等級の防滴仕様にとどまっている。

「Black shark 5 Pro」は10bitカラーやHDR10+に対応

ディスプレイは、いずれも2400×1080のフルHD+表示に対応する約6.67インチの有機ELディスプレイで、144Hzのリフレッシュレートと720Hzのタッチサンプリングレート、後述する感圧タッチ「マジックプレス」に対応する。また、DCI-P3の色域に111%対応している。「Black Shark 5 Pro」に限り、10bitの階調表現とHDR10+に対応している。サウンド面では、両機ともステレオスピーカーを備えるが「Black shark 5 Pro」については、DxOMARKのスピーカーランキングで86ポイントの1位を獲得している(ランキングは2022年8月上旬時点のもの)。

両機種ともディスプレイの形状やサイズは同じ。画面サイズ6.67インチ、パンチホールを備えた平面ディスプレイを採用する

両機種ともディスプレイの形状やサイズは同じ。画面サイズ6.67インチ、パンチホールを備えた平面ディスプレイを採用する

「Black shark 5 Pro」は5Gのn79に対応する

通信性能にも多少の違いがある。両機種ともに、NTTドコモ系、KDDI系、ソフトバンク系、楽天モバイル系の5Gおよび4Gに対応している。詳細を見ると「Black Shark 5 Pro」の5G対応バンドはn41/77/78/79で、「Black Shark 5」の5G対応バンドはn7/41/77/78、n79に対応していない。「Black Shark 5」はn79を使用するドコモの5Gネットワークではエリアの制約がある。

両機の価格差は約5万円だが、性能の差も確かに無視できない。ただし、「Black Shark 5」でも、処理性能は、2021年型のハイエンドSoC「Snapdragon 888」をやや下回る程度。144Hzのリフレッシュレートや720Hzのタッチサンプリングレート、「マジックプレス」などゲーミングスマホらしさは保たれており、コスパにすぐれた1台と言えるだろう。

144Hz対応や押し込み判定に対応したディスプレイを搭載

手にした実機の「Black shark 5 Pro」は、ほかのゲーミングスマホと同様、大きく重め。デザインはいかにもゲーミングスマホらしい主張はあるが、そこまで派手というほどではない。外見では、ボディの右側面に備わる2個のショルダーボタンが特徴だろう。このショルダーボタンは、磁石の力で使わないときは本体内に収納できる。また、ショルダーボタンは、ASUSの「ROG Phone 5s」やNubia Technologyの「REDMAGIC 7」のようなタッチセンサー式ではない物理ボタンなので、操作感がはっきりしているのは魅力だ。

大きめなボディだがベゼルに余裕を持たせているため、うっかり側面に触れることは少ない

大きめなボディだがベゼルに余裕を持たせているため、うっかり側面に触れることは少ない

なお、ヘッドホン端子は非搭載で、変換アダプターも同梱されない。イヤホンを使う場合、USB Type-C接続のものか、変換アダプターを別途手に入れる必要がある。なお、手元にあったDAC内蔵タイプの変換アダプターで試したところ、有線イヤホンを使うことができた。なお、Dobly Atomsには対応していない。

背面のデザインは、ゲーミングスマホらしい主張があるが、そこまで強烈なものではない

背面のデザインは、ゲーミングスマホらしい主張があるが、そこまで強烈なものではない

背面にはLEDが備わり、インストールされるアプリ「Light Effect」でカスタマイズが行える

背面にはLEDが備わり、インストールされるアプリ「Light Effect」でカスタマイズが行える

ボディ下面にSIMカードスロットとUSB Type-Cポートを備える。ヘッドホン端子は非搭載だ

ボディ下面にSIMカードスロットとUSB Type-Cポートを備える。ヘッドホン端子は非搭載だ

右側面には左右のショルダーボタンとそのポップアップスイッチ、指紋認証センサー内蔵の電源ボタンを配置する

右側面には左右のショルダーボタンとそのポップアップスイッチ、指紋認証センサー内蔵の電源ボタンを配置する

ショルダーボタンは、磁石を使って使わないときは本体に収納される。ショートカットボタンとして、カメラの起動などを割り当てることもできる

ショルダーボタンは、磁石を使って使わないときは本体に収納される。ショートカットボタンとして、カメラの起動などを割り当てることもできる

左側面にはボリュームボタンを配置する

左側面にはボリュームボタンを配置する

ディスプレイは、リフレッシュレート144Hz、タッチサンプリングレート720Hzというきわめて高速なものだ。ただし、ゲームアプリの120Hzリフレッシュレートへの対応が少しずつ始まっている状況で、144Hz駆動に対応するアプリはあまり多くない。

いっぽう、アプリの対応が不要なタッチサンプリングレートは、シングルタッチで720Hz、マルチタッチで360Hzという高速ぶりで、この点はいかにもゲーミングスマホといった印象だ。

リフレッシュレートは可変式で、アプリなどの対応状況に応じて自動で最適なものが選ばれる

リフレッシュレートは可変式で、アプリなどの対応状況に応じて自動で最適なものが選ばれる

効率のよい熱処理システムとの組み合わせで、熱ダレを抑えて高性能が長持ち

本機の魅力である処理性能を見てみよう。冒頭で触れたように、「Black Shark 5 Pro」は、「Snapdragon 8 Gen1」に12GBのメモリーと256GBのストレージを組み合わせる。また、冷却システムとして、SoCを含む発熱部位を挟むように2個のベイバーチャンバーを配置しているのがポイントだ。また、ベイパーチャンバー自体の構造も改良されており、前モデル「Black Shark 4」と比較して放熱性能が50%向上している。この強力な冷却性能と、発熱の多さで知られる「Snapdragon 8 Gen1」との組み合わせは大いに興味をそそられるところだ。

SoCや電源管理など、熱を持ちやすいパーツを2個のベイパーチャンバーで挟みこむことで高い放熱効率を実現している

SoCや電源管理など、熱を持ちやすいパーツを2個のベイパーチャンバーで挟みこむことで高い放熱効率を実現している

今回は、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を5回立て続けに動作させた。高負荷が45分ほど持続する状態だが、計測初回のスコアは1,030,393、2回目1,010,526、3回目996,924、4回目992,869、5回目992,326という推移だった。CPUの温度は、最高で52.4℃を記録したが、総合スコアの下落は4%未満に抑えられている。

AnTuTuベンチマークを5回連続して動作させた際のスコア。左は十分冷えた状態の1回目のもの、右は5回目の計測。45分ほど動作させ続け、CPUの温度は50度℃軽く超えていたがスコアの低下は4パーセント未満だった

AnTuTuベンチマークを5回連続して動作させた際のスコア。左は十分冷えた状態の1回目のもの、右は5回目の計測。45分ほど動作させ続け、CPUの温度は50度℃軽く超えていたがスコアの低下は4パーセント未満だった

押し込み操作対応ディスプレイはショルダーボタンの代わりなどに利用できる

「Black Shark 5 Pro」と「Black Shark 5」のディスプレイは、通常のタッチ操作に加えて、画面を強めに押し込む感圧操作「マジックプレス」を備える。マジックプレスは任意の機能を割り当てることができ、ショルダーボタンなどと組み合わせて、ジャンプしながら攻撃するといった連携操作もより簡単に行えるという。実際に試してみたところ、慣れの要素はあるが、ショルダーボタンよりも素速く操作ができる。また、「原神」のフィールドマップの呼び出しのように、利用頻度は多いが画面の隅にアイコンがあって操作しにくいような場合にも有効だった。

このほか、注目の機能として、内蔵バッテリーを介さず、外部電源から直接給電する「バイパス充電」に対応。有線接続になるが、バッテリーの不要な劣化を防ぐほか、ボディの発熱を抑え、安定した性能を発揮できる。ゲームを長時間プレイする場合にメリットの多い機能だ。

マジックプレスは、画面の右半分と左半分で個別に設定できる。押し込みの強度などチューニングも可能で、タッチ操作との誤判定も少なかった

マジックプレスは、画面の右半分と左半分で個別に設定できる。押し込みの強度などチューニングも可能で、タッチ操作との誤判定も少なかった

バイパス充電は、ゲーム専用ゾーンShark Spaceに登録したアプリで利用できる

バイパス充電は、ゲーム専用ゾーンShark Spaceに登録したアプリで利用できる

タッチ操作についても、感度や精度などを細かく調整できる。こうした操作の追い込みができるのもゲーミングスマホらしい点だ

タッチ操作についても、感度や精度などを細かく調整できる。こうした操作の追い込みができるのもゲーミングスマホらしい点だ

バッテリー持ちはよくないが、最短15分の急速充電器でカバー

「Black Shark 5」と「Black Shark 5 Pro」はいずれも、4650mAhのバッテリーを内蔵している。バッテリー持ちに関する指標は明らかにされていないが、「Black Shark 5 Pro」は、検証に際し、待受け主体でも3日以内でバッテリーはフル充電からゼロになった。また、720Hzのタッチや120Hz駆動など機能をフル活用して重量級のゲームをガンガン行った場合、半日も持たずにバッテリーを使い切った。こうしたバッテリーの消費ペースは、本機と同じSoCを備えた通常のハイエンドモデルとは明らかに異なる傾向で、本機をメインの端末として使う場合は注意が必要だろう。

そうした欠点を補うものとして、上記の「バイパス充電」に加えて、独自規格による120Wの急速充電器が利用できる。急速充電は、同梱されるACアダプターとケーブルを使うことで、最短15分、バッテリーの負担を抑えた定温充電モードで24分という短時間でフル充電が行える。なお、バッテリー自体も相変化素材を採用することで1200回以上の充放電サイクルに対応しており、より長期間にわたってバッテリー性能を維持できる。

同梱のACアダプターは独自規格による120Wの急速充電が可能。最短15分でフル充電が行える

同梱のACアダプターは独自規格による120Wの急速充電が可能。最短15分でフル充電が行える

専用のACアダプターを使って急速充電を使う場合、設定画面で「ハイパー充電」を選ぶ必要がある

15分の急速充電を使う場合、設定画面で「ハイパー充電」を選ぶ必要がある

期待を上回るよく写るカメラ

「Black shark 5 Pro」のメインカメラは1億800万画素の広角カメラ(標準カメラ)、約1300万画素の広角カメラ、約500万画素のマクロカメラという組み合わせのトリプルカメラだ。フロントカメラは約1600万画素となっている。

メインカメラは、広角、超広角、マクロという組み合わせのトリプルカメラだ

メインカメラは、広角、超広角、マクロという組み合わせのトリプルカメラだ

ゲーミングスマホのカメラ機能に期待する人はそれほど多くなさそうだが、メインカメラを使った静止画の作例をいくつか見ていただきたい。

標準カメラで撮影

曇天の街を撮影。周辺部分にノイズが見られるが、肉眼の印象に近い絵作りだ。これだけの画質があれば十分という人は少なくないだろう撮影写真(4000×3000、1.84MB)

曇天の街を撮影。周辺部分にノイズが見られるが、肉眼の印象に近い絵作りだ。これだけの画質があれば十分という人は少なくないだろう
撮影写真(4000×3000、2.31MB)

超広角カメラで撮影

上と同じ構図を超広角カメラで撮影。カメラを切り替えたことによる色調の変化は少ない。同じ構図で何枚も撮ったが、いずれも安定した画質だった撮影写真(4208×3120、1.83MB)

上と同じ構図を超広角カメラで撮影。カメラを切り替えたことによる色調の変化は少ない。同じ構図で何枚も撮ったが、いずれも安定した画質だった
撮影写真(4208×3120、1.84MB)

標準カメラで撮影

ダイナミックレンジが高いようで、ハイライト部分の階調が良好だ。手ブレも少なく、シャッタータイムラグも短いので使い勝手もよい

ダイナミックレンジが高いようで、ハイライト部分の階調が良好だ。手ブレも少なく、シャッタータイムラグも短いので使い勝手もよい
撮影写真(4000×3000、4.66MB)

超広角カメラで撮影

上と同じ構図を、超広角カメラに切り替えて撮影。光量の不足やハイライトの飽和などに、性能の限界を感じる。超広角カメラは十分な明るさのある構図で使うほうがよいだろう<br>撮影写真(4208×3120、2.9MB)

上と同じ構図を、超広角カメラに切り替えて撮影。光量の不足やハイライトの飽和などに、性能の限界を感じる。超広角カメラは十分な明るさのある構図で使うほうがよいだろう
撮影写真(4208×3120、2.9MB)

ゲーミングスマホのカメラと言うことで、あまり大きな期待はしていなかったが、実際に使ってみると、画質とその安定性、レスポンスなど総じて悪くなかった。画質の傾向はシャオミの上位モデルに近い。標準カメラは夜景でも安定した画質だ。スマホのカメラはこれで十分という人がいてもおかしくない。

映像、サウンド、カメラなどゲーム以外の用途にも強い。

「Black shark 5 Pro」は、「REDMAGIC 7」と並ぶゲーミングスマホの両雄と言える。両機の処理性能と冷却性能はほぼ互角だが、「REDMAGIC 7」は空冷ファンの駆動音がネックとなるだろう。いっぽう、本機はファンなしでも同レベルの冷却性能を備えている。また、ショルダーボタンがプッシュボタン式ではっきりとした操作性がある点や、ディスプレイ押し込み操作の「マジックプレス」も、操作の幅を拡げる意味で魅力的だ。

だが、本機の魅力はもう少し幅が広い。同じSoCを備えた一般のハイエンドスマホよりも概して安いうえに、HDR10+に対応した大画面(「Black shark 5 Pro」のみ対応)、や、ステレオスピーカーなど、動画などの視聴用途としても適している。確かに、FeliCaがない、バッテリー持ちもよくないといった注意点はあるが、ゲーム目的のサブ機ならそうした問題もクリアしうる。また、カメラ性能も特に標準カメラについていえばなかなか良好な部類だ。

ゲーミングスマホとしての魅力はもちろんだが、それにとどまらない完成度がある。懐の深い製品と言えるだろう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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