特別企画

音声ARガイドから仮想旅行まで! AR/VRテクノロジーで旅行を満喫する

近年、観光事業にICT(情報通信技術)を活用する事例が増えています。身近なところでは、AR(拡張現実)を使った観光ガイドアプリや、VR(仮想現実)旅行などです。ひと味違った旅行を手軽に楽しんでみましょう。

観光ガイドアプリの利用により、新しい旅行体験ができる

観光ガイドアプリの利用により、新しい旅行体験ができる

ARを使った観光ガイドアプリ

旅行・観光関連のアプリというと、紙のガイドブックのデジタル版をイメージするのではないでしょうか。地図と文字、写真、動画、イラストを使った観光スポットや周辺情報の案内、といった内容のものです。

しかし、今回紹介する観光ガイドアプリは、スマホのGPS機能と連動し、あらかじめ設定された観光スポットに近づくと自動で音声による観光ガイドを始めたり、現実では見られない歴史建造物などを実際の風景と照らし合わせて見ることができる、といったものです。

まだ、対応するエリアの数は少ないのですが、新しい観光体験ができる3つのアプリを紹介します。

音声ARで観光案内
「SARF - 君の日常を、音声が拡張する」

「SARF - 君の日常を、音声が拡張する」は、”音声AR”で観光ガイドを聞くことができるアプリです。iPhoneとAndroidスマホで利用できます。

ARというと、現実世界にビジュアルを重ね合わせて表現する技術というイメージですが、現実世界にそこでしか聞けない音声や音楽を重ね合わせるというコンセプトから、”音声AR”という表現が使われています。

観光スポットに近づくと、自動で音声ガイドが流れ、テキストデータを読むこともできます。アプリから定額制音楽配信サービスの「AWA」と連携設定しておくと、スポットによっては音楽が再生されます。

今回は、福岡市の博多旧市街を音声ARで楽しむために「博多伝統文化めぐり」を試してみました。なお、SARFには31個(2022年8月現在)のエリアが用意されています。

アプリを起動すると、現在地から近い順にエリアの一覧が表示されます。ここから、観光するエリアをタップして選択。エリアの説明が表示され、「スタート」ボタンを押すと観光スタートです。

このとき、歩きスマホとイヤホンの使用に関する注意事項が表示されます。

大きな音で再生するのはまわりの人の迷惑だし、通話時のようにスマホを耳に当てていると手がふさがってしまいます。そのため、イヤホンの利用がおすすめですが、その場合は外部音が遮断されないよう注意してください。

今回はアップルの「AirPods Pro」を使いましたが、iPhoneの「設定」→「Bluetooth」→「AirPods Pro」で「外部音取り込み」に設定しておきました。

エリアを選択して「スタート」をタップする

エリアを選択して「スタート」をタップする

現在地周辺の地図が表示され、地図上に音声ARの設定がされている大きめの青いポイントが表示されます。この地図を頼りにスポットに向かって歩けば、初めての場所でも迷う心配はありません。

スポットをタップすると、施設等の写真とテキスト情報を確認することができます。

スポットの薄い青色部分がおおよその視聴可能エリアですが、ここに近づくと、iPhoneのバイブレーションが知らせてくれます。そのため、ある程度方向を確認しておけば、地図を見続ける必要はないでしょう。

視聴可能エリアに入ると、自動的に音声ARが再生されます。同時に、画面上にはスポットの説明を表示。視聴可能エリアの外に出ると、途中でも再生は停止します。

このように、地図でスポットをめざし、音声ARを聞きながら周辺の観光スポットを見て回ることができるのです。

地図上の観光スポットを目指して歩き、視聴可能エリアに入ると自動で観光ガイドの音声が再生される

地図上の観光スポットを目指して歩き、視聴可能エリアに入ると自動で観光ガイドの音声が再生される

●アプリの入手先
価格:無料
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/sarf-君の日常を-音声が拡張する/id1540921229
Android:https://play.google.com/store/search?q=SARF&c=apps&hl=ja

VRでリアルな史跡散策ができる
「ストリートミュージアム 」

「ストリートミュージアム 」は、かつて存在した城郭や産業遺産などの史跡をVRで堪能できるアプリです。iPhone/iPad、Androidスマホ/タブレットで利用できます。

スマホのGPS機能と連動し、VRスポットに入るとその場所にかつて存在した史跡を現在の風景と照らし合わせながら見ることができます。すべてのスポットではありませんが、音声解説が再生されるところもあります。

アプリを起動すると、地図上にVRスポットを表示。現在地近くのスポットが自動的に選択されます。2022年8月現在、日本全国にある42個の史跡と、タイの日本人村が登録されています。

「下見」ボタンをタップすると、「100名城下見」画面を表示。地図上の城アイコンをタップすると、各城の概要を読むことができます。2022年8月現在、19か所の城が登録されています。

テキストの下に表示される「パノラマを見る」をタップすると、360°パノラマ写真で現在の風景を見ることも可能です。

「100名城下見」では、城の説明を読んだり、パノラマ写真を見たりできる

「100名城下見」では、城の説明を読んだり、パノラマ写真を見たりできる

今回は、福岡市にある福岡城跡で「ストリートミュージアム 」を使ってみました。

アプリを起動して福岡城を選択。画面下部を上方向にスワイプすると説明文を読むことができ、最下部にある「周辺情報」をタップすると地図上にVRスポットが表示されます。

福岡城跡の近くまで行くと、画面下部に自動で「START」ボタンが表示されたのでタップ。ここで、VRコンテンツのダウンロードをうながされました。

ダウンロードサイズは、福岡城跡の場合は134MBと大容量です。これは、事前にダウンロードしておくことができません。モバイル通信の契約データ通信量が少ない場合は要注意です。

ダウンロードが完了すると、歩きスマホに関する注意が表示されるので、「完了」をタップします。これで、ツアーが始まります。

目的地に近づくと「START」ボタンが表示されるのでタップ。VRコンテンツをダウンロードし、最後に「完了」をタップする

目的地に近づくと「START」ボタンが表示されるのでタップ。VRコンテンツをダウンロードし、最後に「完了」をタップする

全画面に周辺の地図が表示され、VRスポットを表示。このとき、画面左下の「MAP」ボタンをタップすると、地図が古地図に切り替わります。再度タップすると元に戻ります。

また、左上の「3D」ボタンをタップすることで、地図を3D表示にすることも可能です。

地図は、古地図や3Dマップに切り替えられる

地図は、古地図や3Dマップに切り替えられる

スマホのGPS機能と連動しているので、地図上には自分の位置と向かっている方向が表示されます。地図を確認しながら、VRスポットを目指します。

VRスポットに入ると、画面下部の「VR」ボタンが押せるようになるのでタップ。すると、VRコンテンツが表示されます。音声案内が登録されたコンテンツでは、音声ガイドの再生も始まります。

VRコンテンツは360°パノラマ画像で、かつてその場所から見えていた史跡や風景が再現されています。方位も正しく再現されているので、スマホを向けたその方向に、その場所に存在した史跡が表示されます。

VRスポットに着いたら、「VR」ボタンをタップ

VRスポットに着いたら、「VR」ボタンをタップ

360°パノラマ画像で、スマホを向けた方向にかつてその場所から見えていた史跡や風景を再現する

360°パノラマ画像で、スマホを向けた方向にかつてその場所から見えていた史跡や風景を再現する

VRコンテンツは、VRゴーグル(後述)による視聴にも対応しています。VRゴーグルのアイコンをタップすると画面が切り替わります。

旅先にVRゴーグルを持って行ってその場で装着するのはやや気が引けますが、より没入感を体感することはできるでしょう。

また、VRコンテンツの画面をキャプチャ(画像として保存)したり、音声ガイドのオン/オフを切り替えることも可能です。

VRコンテンツはVRゴーグルによる視聴にも対応。右下の横三本線ボタンをタップすると、画面キャプチャや音声のオン/オフができる

VRコンテンツはVRゴーグルによる視聴にも対応。右下の横三本線ボタンをタップすると、画面キャプチャや音声のオン/オフができる

●アプリの入手先
価格:無料
iOS/iPadOS:https://apps.apple.com/jp/app/streetmuseum-locationedvr/id1151091144?l=ja
Android:https://play.google.com/store/search?q=StreetMuseum&c=apps&hl=ja

旅先での理解を深める
「ON THE TRIP 旅の体験をふくらませる」

「ON THE TRIP 旅の体験をふくらませる」は、神社やお寺、温泉地などで、観光スポットの見所などをスマホのGPS機能と連動し、音声とテキストでガイドするアプリです。

また、芸術祭や禅、寿司、天ぷらといったカルチャーコンテンツもあります。コンテンツはダウンロードして利用しますが、無料のものから有料のものまであります。

アプリは、iPhone向けしかありません。ただし、ブラウザーを利用するインターネット版も用意されていて、iPad、Androidスマホ/タブレットはこれを利用する方法があります。使い方は、共通です。

以下は、福岡県太宰府市の「太宰府天満宮とまち歩き」を例に使い方を解説します。

アプリを起動すると、現在地の近くにある観光スポットが表示されるので、目的のスポットをタップします。観光スポットのテキストガイドが表示され、画面下部に「Download」と「Tour Start」ボタンがあります。

はじめにコンテンツをダウンロードする必要があるので、「Download」をタップ。観光スポットの近くまで行かずに自宅でもダウンロードできるので、Wi-Fi環境でダウンロードしておくのがおすすめです。

観光スポットを選択し、コンテンツをダウンロードする

観光スポットを選択し、コンテンツをダウンロードする

ガイドを利用するときは、観光スポットまで行って「Tour Start」をタップ。これで、地図上にスポットが表示されます。

あとはスポットを目指せば、近くまで行くと音声ガイドが再生されます。また、テキストを読むことも可能です。

コンテンツをダウンロードさえすれば、現地に行くことなく音声ガイドを聞くこともできるので、自宅で擬似的に旅行気分を味わうことが可能です。旅の予習として利用するのもいいでしょう。

「Tour Start」をタップし、地図を参照しながらガイドツアーを楽しむ

「Tour Start」をタップし、地図を参照しながらガイドツアーを楽しむ

●アプリの入手先
価格:無料
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/on-the-trip-旅の体験をふくらませる/id1221976012

●インターネット版
https://on-the-trip.net
<有料コンテンツ(税込)>
大地の芸術祭 610円
建仁寺 370円
貴船神社 370円
平等院公式ガイド 490円
仁和寺 370円
東福寺 370円
伊勢神宮(内宮) 490円
壬生寺 370円
学芸員による、愛のあるガイド 490円
東京タワー 250円

自宅にいながらVR旅行を楽しむ

VR(バーチャルリアリティ)は、現地に居なくても、あるいは仮想的な世界で、まるで自分がそこにいるかのように360°全方位の立体的な景色を自由に見渡せる技術です。利用には、VRゴーグル機器を利用します。

新型コロナウイルスの蔓延により旅行を控える人も多い昨今は、このVRを使って旅行体験を提供するサービスが注目を集めています。

自宅で利用する場合、用意するのはVRゴーグルだけなので(貸し出しをするサービスもある)、安価に色々な場所への旅行を疑似体験できる、というのが最大のメリットだと思います。

VRゴーグルですが、大別すると「スマホを装着するタイプ」「パソコン/ゲーム機と連動するタイプ」「スタンドアローンタイプ」の3タイプがあります。

以下では、それぞれの特徴と代表的な機器を紹介しましょう。

スマホを装着するタイプ

VRゴーグルにスマホを装着して利用します。スマホのVRアプリを再生することで、VRを体験できるのです。

3,000円程度で購入できるので、最も手軽にVR体験ができます。

このタイプには、エレコムの「VRG-XEHR01BK」のような機器があります。操作性が格段に向上するので、VRリモコンが付属する製品がおすすめです。

ヘッドホン一体型で、高い没入感を実現する。ただし、スマホとの接続は3.5mmオーディオミニプラグなので、iPhoneのように端子がない場合は対応ケーブルを別途用意する必要がある

ヘッドホン一体型で、高い没入感を実現する。ただし、スマホとの接続は3.5mmオーディオミニプラグなので、iPhoneのように端子がない場合は対応ケーブルを別途用意する必要がある

パソコン/ゲーム機と連動するタイプ

パソコンやゲーム機と接続して利用するタイプです。外部コントローラーが付属する製品が多く、操作がしやすいのが特徴です。

スマホを利用するタイプより高い没入感を得られますが、5万〜8万円程度と高価になります。

また、パソコンで利用するときに事前の設定が必要なので、使いこなしはやや敷居が高くなります。

このタイプには、HTCの「VIVE Cosmos Elite HMD」などがあります。

2880×1700の高解像度ディスプレイにより、高精細な映像を楽しむことができる

2880×1700の高解像度ディスプレイにより、高精細な映像を楽しむことができる

スタンドアローンタイプ

スマホやパソコンなどのほかの機器を必要とせず、単独で利用できるタイプです。CPUや内蔵ストレージを搭載し、内蔵ストレージにあるVRアプリを起動してVRを体験します。

外部コントローラーが付属するので操作性は高く、仮想空間の再現性が最も高いとされています。

5万〜8万程度と高価ではありますが、より没入感のある仮想空間を楽しむことができます。

このタイプには、Metaの「Meta Quest 2 128GB」などがあります。

Touchコントローラーが付属し、手や身体の動きがダイレクトにVRの世界に反映される

Touchコントローラーが付属し、手や身体の動きがダイレクトにVRの世界に反映される

大手旅行会社が提供する本格的なVR旅行もありますが、ここでは自宅で手軽にVR旅行を楽しむ方法を紹介します。

用意するのは、スマホを装着するタイプのVRゴーグルとスマホです。

ひとつは、YouTubeのVRコンテンツ「360度動画」を利用する方法です。

YouTubeで「360度動画」を検索すると、多数のVR動画が見つかります。

あとは見たいコンテンツを再生し、スマホをVRゴーグルに装着して仮想空間を楽しみます。

YouTubeで「360度動画」を検索して、見たい動画を再生する

YouTubeで「360度動画」を検索して、見たい動画を再生する

スマホをVRゴーグルに装着すると、VR旅行を体験できる

スマホをVRゴーグルに装着すると、VR旅行を体験できる

もうひとつは、トラベルバッグなどを販売するエースの「世界VR旅行」です。以下のURLを開くと、11か国12か所のVR旅行を体験できます。

VR動画の再生にはYouTubeアプリを利用します。

「世界VR旅行」(https://www.ace.jp/vr2019/)

11か国12か所のVR旅行を堪能できる

11か国12か所のVR旅行を堪能できる

なお、個人差はあるのですが、VRゴーグルの使用時に、乗り物酔いのようなめまいや吐き気を感じるVR酔いを起こす可能性があります。使用時に不快感を感じたら、すぐに使用を中止してください。

まとめ

今回、実際に観光ガイドアプリを使ってみた感想は、漠然と散策するよりも旅行体験が深まってよかった、というものです。

筆者は3年ほど前に福岡市へ引っ越してきたのですが、コロナもあってあまり市内観光などができていませんでした。そのため、3年住んでいても観光客と変わらない程度の知識しかありません。

博多旧市街にしても福岡城跡にしても知らないことばかりで、観光気分で興味深くガイドの内容に耳を傾けていました。地理も不安なので、地図上で観光スポットを確認できるのも便利でした。

今後は、ほかのエリアでも、使ってみたいと思います。

VR旅行も、新鮮な感覚です。肌で感じる風やその場の匂いなど、視覚と聴覚以外で感じるものは少ないのですが、現実問題としてなかなか訪れることのできない国々の風景を、自宅にいながら見ることができるのはとても便利です。

興味を持たれた方は、ぜひ新しい旅行スタイルを体験してみてください。

小野均

小野均

パソコンからモバイルまで、ハード&ソフトのわかりやすい操作解説を心がける。趣味は山登りにクルマという、アウトドア志向のIT系フリーライター。

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