レビュー

円安に逆らうような値下げを行った格安エントリースマホ「OPPO A77」レビュー

オッポのオープンマーケット向け(いわゆるSIMフリー)エントリースマートフォン「OPPO A77」(以下、「A77」)が、2022年10月6日より発売された。昨今値上がりが続いているスマートフォンだが、本機は24,800円(税込)という価格で、前モデル「OPPO A55s 5G」の販売当初の価格である33,800円(税込)より3割ほど安い。競争の激化しているエントリースマホの中で、本機はどのような特徴を持つ製品なのか。詳しくレビューしよう。

オッポのエントリー向けAシリーズに加わった「A77」。円安の影響など値上がりが続くスマートフォンだが、前機種よりも3割ほど安いという攻めた価格設定だ

オッポのエントリー向けAシリーズに加わった「A77」。円安の影響など値上がりが続くスマートフォンだが、前機種よりも3割ほど安いという攻めた価格設定だ

ステレオスピーカーと指紋認証センサーを搭載するエントリー機

オッポのスマートフォンは、ミドルレンジの「Reno(リノ)」シリーズが人気だが、エントリー向けのAシリーズも2018年の初代「OPPO AX7」から1年ごとに新製品を投入している定番シリーズだ。今回取り上げる「A77」は、その最新モデルとして、2022年10月6日に発売が開始された。その市場想定価格は24,800円で、前身となる「OPPO A55s 5G」の33,800 円(税込)と比較すると3割ほど安い。円安の状況下での値下げは注目に値する。

「A77」のサイズは、約75.0(幅)×163.7(高さ)×8.0(厚さ)mmで、重量は約187gだ。このボディに、1612×720のHD+表示に対応する約6.5インチの液晶ディスプレイを組み合わせる。なお、IPX4等級の防水仕様と、IP5X等級の防塵仕様をクリアしているが、FeliCaとNFCには非対応となる。いっぽうで、「OPPO A55s 5G」では省略されていた指紋認証センサーが復活し、ボディ側面に配置された。加えて、2基のスピーカーを搭載し、本体のみでステレオ再生が行えるようになった。エントリーモデルでステレオスピーカーを搭載するものは、このほかにシャオミ「Redmi Note 11」くらいなので、この点でも貴重な選択肢と言える。

手にしたボディは、背面に施されたさらさらとした感触の表面加工「OPPO Glow(オッポ・グロウ)」が印象的だ。この表面加工は、指紋汚れの目立ちにくいという機能性もある。総じて質感は良好で、見た目の印象からは2万円台の製品とは思えない。

表面加工「OPPO Glow」が施された背面。サラサラとした感触で指紋汚れも目立ちにくい

表面加工「OPPO Glow」が施された背面。サラサラとした感触で指紋汚れも目立ちにくい

ボディ下面には、スピーカーホール、USB Type-Cポート、ヘッドホン端子を配置する

ボディ下面には、スピーカーホール、USB Type-Cポート、ヘッドホン端子を配置する

ボディ右側面の電源ボタンは指紋認証センサーを内蔵している。「OPPO A55s 5G」で省略された指紋認証センサーの復活は歓迎したい点だ

ボディ右側面の電源ボタンは指紋認証センサーを内蔵している。「OPPO A55s 5G」で省略された指紋認証センサーの復活は歓迎したい点だ

ディスプレイの上部に備わるスピーカー。下面のスピーカーと合わせて、ステレオ再生が行える

ディスプレイの上部に備わるスピーカー。下面のスピーカーと合わせて、ステレオ再生が行える

ディスプレイは、「OPPO A55s 5G」のフルHD+よりも解像度が低いので、細かな文字の表示では粗さを少し感じる。なお、リフレッシュレートは90Hzから60Hzへ、タッチサンプリングレートも180Hzから60Hzに引き下げられている。また、HDRにも対応していない。スペックの面ではミニマムなものと言ってよいが、黒浮きも抑えられているし、視野角も十分、輝度による画質の変化も少ないなど、一定レベルの性能はクリアしている。スゴいとは言えないが多くの人が不満なく使えるディスプレイだろう。

フロントカメラを収めるノッチのある平面ディスプレイを採用。画面サイズに対して解像度が低いので、細かな文字などで多少粗さを感じるが、視野角や輝度などディスプレイに求められる性能は十分にクリアしている

フロントカメラを収めるノッチのある平面ディスプレイを採用。画面サイズに対して解像度が低いので、細かな文字などで多少粗さを感じるが、視野角や輝度などディスプレイに求められる性能は十分にクリアしている

常用するには厳しいAndroid 12世代ではボトムレベルの処理性能

搭載されるSoCは、メディアテック社のエントリー向け「MediaTek Helio G35」。メモリーは4GB。128GBのストレージはコスト優先のeMMC 5.1規格が使われる。microSDカードスロットは1TBまで対応だ。OSは、Android12をベースにしたColorOS 12となる。
仮想メモリー機能を使うことで、ストレージ容量を最大4GBまでメモリーとして利用できる(実メモリーとの合計容量は最大で8GB)。なお、初期状態では1GBが仮想メモリーとして設定されている。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)」のスコアは、114789(内訳、CPU:34295、GPU:17060、MEM:28470、UX:34964。UXの評価項目のひとつ「画像処理」にエラーが発生するためUXの値だけは参考値とする)。なお、
「OPPO A55s」は280000前後なので、本機の性能はその4割程度となる。

Android 12搭載機としてみると、ベンチマークテストの結果どおりで、体感速度は総じて良好とは言いがたい。「OPPO A55s 5G」では気にならなかったWebページや地図アプリのスクロールも本機では引っかかりが目立つ。本機の搭載するSoC「MediaTek Helio G35」は、2020年の登場時点では、ゲームに適した性能を備えたエントリー向けSoCというポジションだった。しかし、登場から2年後の基準で見ると厳しい。もし、スムーズな動作や体感速度を重視するのであれば旧モデルの「OPPO A55s 5G」のほうがベターだろう。また、本機と競合するシャオミ「Redmi Note 11」は、ミドルレンジ向けSoC「Snapdragon 680」を搭載しており、基本性能では有利だ。

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AnTuTuベンチマークの結果。左が「A77」、右は「OPPO A55s」のもの。総合スコアとサブスコアはいずれも本機のほうが低い

AnTuTuベンチマークの結果。左が「A77」、右は「OPPO A55s」のもの。総合スコアとサブスコアはいずれも本機のほうが低い

メインカメラは実質シングルだが構図を注意すれば十分使える

「A77」に搭載されるメインカメラは、約5000万画素の広角カメラに、映像の記録には使用しない約200万画素の深度センサーを組み合わせたもので、実質的にはシングルカメラとなる。フロントカメラは約800万画素で、AIを使った美顔撮影機能「AIビューティー」を搭載する。なお、初期設定では1250万画素で撮影を行い、50MPモードに切り替えることで約5000万画素の撮影モードになる。動画は1080Pと720Pの対応にとどまる。

背面のメインカメラはかなり大きくデザインされているが、そのうちひとつは深度センサーなので、実質的にはシングルカメラとなる

背面のメインカメラはかなり大きくデザインされているが、そのうちひとつは深度センサーなので、実質的にはシングルカメラとなる

以下に本機のメインカメラを使った静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のまま、HDRオートで撮影を行っている。

順光の景色を撮影。アンバーに寄っているが昼下がりの撮影のためで、ホワイトバランスの乱れではない。低価格機で見られるコントラストの全般的な低下や、階調表現の不自然さも見られない。総じて画質処理はよい意味で抑制的だ

順光の景色を撮影。アンバーに寄っているが昼下がりの撮影のためで、ホワイトバランスの乱れではない。低価格機で見られるコントラストの全般的な低下や、階調表現の不自然さも見られない。総じて画質処理はよい意味で抑制的だ
撮影写真(4080×3072、3.34MB)

明るめの夜景を撮影。オートHDRが動作しているが暗めの仕上がりで、ハイライト部分に露出を合わせているようだ。長時間露光のナイトモードも備えるが、仕上がりに劇的な違いはなく、超現実的な写真が撮れるわけではない

明るめの夜景を撮影。オートHDRが動作しているが暗めの仕上がりで、ハイライト部分に露出を合わせているようだ。長時間露光のナイトモードも備えるが、仕上がりに劇的な違いはなく、超現実的な写真が撮れるわけではない
撮影写真(4080×3072、3.34MB)

ケイトウをできるだけ接写した。強い色だが色の飽和はかなり限定的だ。通常モードの1250万画素を使っているが、細部の描写もこれで十分だろう。光量のある構図なら十分撮影を楽しめる

ケイトウをできるだけ接写した。強い色だが色の飽和はかなり限定的だ。通常モードの1250万画素を使っているが、細部の描写もこれで十分だろう。光量のある構図なら十分撮影を楽しめる
(4080×3072、3.3MB)撮影写真

本機のカメラは特にハイスペックとは言えない。手軽な撮影を行うAIシーン認識もなく、極端な画質補正も行わないが、光量のある構図であれば色のりも良好で、総じて不満のない撮影が行える。夜景撮影はそれほど得意でないが、本機の価格を考慮すればバランスの取れたものと言える。

国内4キャリアのSIMカードが適合する2基のnanoSIMカードスロットを搭載

通信性能を見てみよう。本機は前モデル「OPPO A55s」と異なり、5Gには対応していない。4Gの対応周波数帯はB1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/26/28/38/41/66で、NTTドコモ系、KDDI系、ソフトバンク系、楽天モバイル(MNO)のネットワークと適合する。もちろん、これらの通信事業者のネットワークを使った格安SIMも利用できる。

また、DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)に対応する2基のnanoSIMカードスロットとmicroSDXCメモリーカードスロットのトリプルスロットを採用しており、2個のSIMカードを利用しつつメモリーを増設できる。こうした本機の通信機能を見ると、バックアップ用のサブ機として適していると言えるだろう。

2基のnanoSIMカードスロットとmicroSDXCメモリーカードスロットのトリプルスロットを採用

2基のnanoSIMカードスロットとmicroSDXCメモリーカードスロットのトリプルスロットを採用

同梱の充電器なら最短73分でフル充電可能

本機は5000mAhのバッテリーを内蔵し、約1800分の連続通話、約304時間の連続待受けが可能だ。オッポ独自の急速充電規格「33W SUPERVOOC」に対応するACアダプターを同梱しており、約73分でフル充電が完了するほか、約5分の充電で約3時間の連続通話が可能。エントリーモデルとしては充電時間が短く、大きな魅力だ。このほかAIがユーザーの夜間の充電習慣を分析して、段階的に充電の電流電圧を調整する「夜間過充電防止機能」も搭載している。

実際の電池持ちだが、SNSやメールを1日に1時間程度使うのであれば、フル充電で4日以上の電池持ちは期待できる。また、待受けが主体なら1週間の電池持ちも射程に入る。本機の性能に見合った使い方であれば不快に感じるような発熱も起こらない。

33Wの出力に対応する同梱のACアダプター。手のひらに収まるサイズで、持ち運びが苦痛になることはなさそうだ

33Wの出力に対応する同梱のACアダプター。手のひらに収まるサイズで、持ち運びが苦痛になることはなさそうだ

高コスパ機とは異なり絶対的な安さを求める人向け

価格と性能のバランスにすぐれた、お買い得感のあるミドルレンジスマートフォンが“高コスパスマホ”として人気を博している。本機の兄貴分となるオッポの「OPPO Reno7 A」はその代表的な製品だ。本機はそうした高コスパ機よりもさらに2〜3割ほど安い。そのため、128GBのストレージやステレオスピーカーといった機能を備えるが、基本性能の不足やFeliCa非対応など機能の制約は目立つ。また、ミドルレンジに近い性能を実現した2021年モデルの「OPPO A55s 5G」や、2020年モデルの「OPPO A73」ともキャラクターが異なる点にも注意したい。

本機と競合するエントリーモデルは近ごろ増えており、シャオミ「Redmi Note 11」や「Redmi Note 10T」、モトローラ「moto e32s」などの名前が挙がる。キャリア販売モデルまで対象を広げると、FCNT「arrows We」や、シャープ「AQUOS wish/wish2」、ソニー「Xperia Ace III」、サムスン「Galaxy A22 5G」や近々発売となる「Galaxy A23 5G」も競合するだろう。本機の処理性能やグラフィック性能は、これらの中でも劣る部類だが、国内4キャリアのネットワークと適合するデュアルSIM機なので、サブ機としてなるべくコストをかけたくない場合や、スマートフォンは必要だがそれほどヘビーな使い方はしない場合の選択肢としてならアリだ。また、今後価格がこなれてくれば、エントリーモデルとしての魅力はさらに増すだろう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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