レビュー

Google「Pixel Watch」の使い勝手は? 実機レビューで検証

Googleが2022年10月13日に発売した、「Pixel」シリーズ初のスマートウォッチ「Pixel Watch」(ピクセルウォッチ)を実際に使ってみました。同社初のスマートウォッチということで、実機レビューで使い勝手を検証しました。

Google初のスマートウォッチ「Pixel Watch」レビュー

Google初のスマートウォッチ「Pixel Watch」レビュー

Googleらしさのあるミニマルなデザインは好印象

「Pixel Watch」は円形のディスプレイを搭載するスマートウォッチです。本体ケースのサイズは直径が41mmで、厚みが12.3mm。本体ケースはリサイクルステンレスが80%使用されていますが、重量はバンド部を除いて36g。高級感と装着感の軽やかさが両立されているように感じます。

レビューしたのは「Pixel Watch」(Polished Silverケース/Charcoalアクティブバンド)

レビューしたのは「Pixel Watch」(Polished Silverケース/Charcoalアクティブバンド)

ただし、ディスプレイのベゼルはかなり幅があります(手元で測って4mm程度)。AMOLEDディスプレイならではの深い黒みの表現で、デザインとしての違和感はさほどありませんが、アプリ表示によってはきゅうくつさを感じることもあります。

いっぽう、画素密度320ppi、最大輝度1000nit、色域DCI-P3対応というように、そのほかのディスプレイに関する仕様については、文句のつけどころはありません。

なお、ディスプレイには、「Pixel Watch」専用に開発された、耐久性の高い「カスタム3D Corning Gorilla Glass 5」が採用されています。加えて、防水性能は5気圧に対応します。

ウォッチ版の「Googleマップ」アプリを表示した様子

ウォッチ版の「Googleマップ」アプリを表示した様子

物理ボタンには、2時位置のボタンと、3時位置のリューズの2つを搭載。2時位置のボタンは1度押しで最近起動した機能の一覧表示、長押しで「Googleアシスタント」を起動できます。

同ボタンは、ややケース裏面に近い場所に位置しているため、指を裏面に潜らせるようにして手前に戻すようにクリックしないと心地よく押せません。これに気付かず真横から押下しようとすると、ボタンの押し心地が固く感じてしまうはずです。

物理ボタンは、2時位置のボタンと3時位置のリューズの2つ。2時位置のボタンはやや裏面に近い向きで配置されている

物理ボタンは、2時位置のボタンと3時位置のリューズの2つ。2時位置のボタンはやや裏面に近い向きで配置されている

リューズは、1度押しで機能の一覧表示、2度押しで「Google Pay」のウォレット表示、長押しで電源を切ったり、緊急SOSを発信したりするためのメニューが表示されます。

また、リューズを回すことでメニュー画面などでのスクロール操作が可能です。リューズの回転時には、やわらかく心地よい振動でのフィードバックがあり、操作感は良好でした。

ストラップバンドの「アクティブバンド」には、ソフトタッチコーティングのフルオロエラストマーを採用。フルオロエラストマーは「Apple Watch」など競合製品のスポーツバンドでも使用されている素材です。

ただし、「Pixel Watch」のアクティブバンドはやや硬めに調整されているようで、装着感も「Apple Watch」のそれと比べるとややキツく感じます。

フルオロエラストマー製のアクティブバンドは手入れも容易です

フルオロエラストマー製のアクティブバンドは手入れも容易です

バックルのデザインは、先端の平らなピンを穴に刺すものです。バックル部のデザインはGoogleが買収したFitbit(フィットビット)ブランドの「Sense」シリーズのバンドにかなり似ています。

なお、アクティブバンドとしては大小2サイズが同梱されていて、簡単な操作で脱着・交換が可能。Sサイズが手首周り130〜175mm向け、Lサイズが手首周り165〜210mm向けとなっています。

画面の基本操作はシンプルでわかりやすい

OSは「Wear OS 3.5」を搭載。画面操作については、下へスワイプでクイック設定画面の表示、上へスワイプで通知一覧画面の表示、左右スワイプでタイル表示というシンプルなものとなっています。

画面操作のイメージ

画面操作のイメージ

文字盤を変更するには、ディスプレイを長押ししてから文字盤を選択し、カスタマイズ操作を行います。コンプリケーション(追加の情報)を配置できるデザインも用意されていますが、筆者としては、「アナログ」文字盤を選んで情報を極力表示させないデザインが、「Pixel Watch」のデザインを生かすうえで特に魅力的に思えました。

なお、ディスプレイは常時表示にも対応。利用する際には設定で有効にしておく必要があります。

このように、スマートウォッチとして複雑な操作はなく、他社製品のスマートウォッチを使ったことがある人ならば、初期設定時に表示されるチュートリアルを確認する程度で、特に困ることなく扱えることでしょう。

初期設定は「Google Pixel Watch」アプリで行う。操作としてはポップアップ表示から「Playストア」へ誘導される

初期設定は「Google Pixel Watch」アプリで行う。操作としてはポップアップ表示から「Playストア」へ誘導される

なお、初期設定は「Google Pixel Watch」アプリ経由で行います。初期設定自体も画面指示にしたがって行えば問題なくできるでしょう。ただし、初期設定操作の流れのなかで、「Fitbitアカウント」との連携が求められます。これまでにFitbitデバイスを使ったことがない人は、ここでサインアップが求められるので、やや煩雑に感じるかもしれません。

チップセットにはSoC「Exynos 9110」を搭載し、「Cortex M33」コプロセッサも搭載。ストレージ容量は32GB、メモリーは2GB備えます。「Pixel Watch」の画面を操作している際、端末との接続待ちの時間などを除けば、画面切り替えなどでもたつきを感じることは、さほどありませんでした。

機能は豊富だが、設定操作は煩雑な印象

「Pixel Watch」の裏面には光学式の心拍センサーなどが搭載されており、各種のライフログデータを取得可能です。取得したデータは、主に「Fitbit」アプリで管理することになります。ただし、設定上「Google Fit」アプリとの連携も求められたため、準備手順は煩雑に感じました。

取得したデータは、「Fitbit」アプリで確認可能

取得したデータは、「Fitbit」アプリで確認可能

「Fitbit」アプリでは、心拍数や活動量などよくある健康指標を記録、管理できます。ただし、記録した睡眠のデータなどを有効に活用するためには、有料プランの「Fitbit Premium」を加入する必要があります。

「Pixel Watch」を購入すると、「Fitbit Premium」を6か月間無料で利用できるため、購入後半年間はお試し感覚で利用できますが、その後に継続利用する場合には、コストがかかります。

確かに、「Fitbit Premium」のサブスクリプションを契約すると、エナジースコアの算出や睡眠分析、ウェルネスレポート、マインドフルネスセッション、ゲーム&チャレンジなど、利用できる機能が増えます。しかし、そもそも他社製品では無料で詳細な睡眠計測が行えるものも多く、追加コストがかかるのは同製品のデメリットと言えるでしょう。

たとえば、8,000円弱で購入できるFitbit製のスマートバンドなら、「Fitbit Premium」を追加契約しても納得感があるのですが、約4万円の「Pixel Watch」を購入してさらに睡眠分析に+αを払わないといけないことを考えると、やや割高な印象を抱きます。

「Fitbit Premium」を購読するのは割高感が否めません

「Fitbit Premium」を購読するのは割高感が否めません

また、Fitbitデバイスでは、モデルにはよるものの、EDAセンサーによるストレス計測、SpO2の計測、皮膚温計測など測定も行えますが、「Pixel Watch」ではこれらの測定はできません(たとえば、仕様を見るとSpO2のセンサーは搭載されているものの、機能としては使えません)。どれも必須な機能というわけではありませんが、すでにスマートウォッチを使い慣れた人にとっては、物足りなく感じる部分はあるかもしれません。

4G LTEモデルならモバイル通信にも対応

4G LTEモデルならモバイル通信にも対応

通信仕様については、4G LTEモデルではモバイル通信が利用可能。日本国内ではauの「ナンバーシェア」か、ソフトバンクの「ウェアラブルデバイスモバイル通信サービス」という通信プランを契約した場合のみ、スマートフォンで契約している電話番号を「Pixel Watch」でも使えるようになり、スマートフォンの不携帯時にもウォッチ単体での通信が行えるようになります。

緊急通報機能もサポートしているので、たとえば、ランニングなどでスマートフォンを持たずに外出しているタイミングには、緊急時の連絡手段としての活用が期待できます。

FeliCaを搭載しており、Google PayのSuicaに対応

FeliCaを搭載しており、Google PayのSuicaに対応

「Pixel Watch」では、Google PayのSuicaが利用できることもポイントです。ただし、設定手順が煩雑で、さらにSuicaを発行できるアカウントの条件も複雑になっているようです。

筆者が半日ほど試行錯誤した範囲では、何をやっても常用しているアカウントの連携でエラーが出てしまい、Suicaの使用までたどり着くことができずにあきらめました。問題は「エラーが出た」ということが表示されても、ユーザーとして何を改善すればよいのか教えてくれず、対処ができなかったことです。

いっぽう、SNSやほかのレビュー記事などで利用者の状況を確認すると、問題なく登録できているユーザーも当然います。アカウントの使用状況や、そのアカウントのモバイルデバイスでのSuicaの過去登録状況などによって、登録がうまくいくかどうかは、やや複雑に分岐している可能性があります。Suica対応は「Pixel Watch」の目玉機能のひとつですが、購入検討時には、この点をあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。

バッテリー持ちは短め

「Pixel Watch」のバッテリー駆動時間は、仕様上の数値だと最大24時間とされています。この数値だけみると「Apple Watch」シリーズの最大18時間よりも長く見えますが、「Apple Watch」はワークアウトなどを実施しなければ体感的に1.5日程度持つようになっているので、単純な数値比較はできません。

いっぽう、「Pixel Watch」の最大24時間というのは、現実的な数値のようです。今回のレビューでは、正確な時間は測定しませんでしたが、実際に、常時表示ディスプレイをオンにした状態で「Pixel Watch」を装着していると、ワークアウトなどを実施せずに、朝から晩まで装着してバッテリーが概ね50%前後減る印象でした。同様に就寝時に7〜8時間装着していても、バッテリーは起床時には40〜50%前後減っている印象でした。

Pixel Watchに同梱される充電器。充電器の縁部分が黒ずんでみえるのは、薄い文字で仕様表記などが記載してあるからです

Pixel Watchに同梱される充電器。充電器の縁部分が黒ずんでみえるのは、薄い文字で仕様表記などが記載してあるからです

つまり、1日(24時間)以上を通してなるべく装着し続けるならば、1回はどこかのタイミングで充電が必要になります。

なお、「バッテリーセーバー」を有効にすると、「常に画面をON」と「傾けて画面をON」がオフになり、バッテリーを節約可能

なお、「バッテリーセーバー」を有効にすると、「常に画面をON」と「傾けて画面をON」がオフになり、バッテリーを節約可能

充電スピード自体はそこまで遅くはないので、こうした運用スタイルでも困ることはありませんが、同じく「Wear OS」を搭載する「Galaxy Watch」シリーズなどが、GPSを使わなければ数日はバッテリーが持つようになっていることも事実です。「Pixel Watch」の購入検討時には、2022年モデルらしからぬバッテリー持ちの短さを理解してから購入する必要があるでしょう。

井上晃

井上晃

スマートフォンや、タブレット、スマートウォッチなどを軸に、最新ガジェットやサービスなどについて取材。Webメディアや雑誌を中心に、速報や製品レビュー、コラムなどを寄稿している。Twitter:@kira_e_noway

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