レビュー

値上がりしてもやっぱり人気! 「iPad」(第10世代)の“ちょうどよさ”を体感

ホームボタンを廃止し、“オールスクリーン”モデルに生まれ変わったアップルの人気タブレット端末「iPad」。第10世代となる新しい「iPad」は、デバイス自体の進化点よりも価格の話題が先行してしまった感はあるが、実機を試してみると、いろいろな用途に“ちょうどいい”完成度の高いモデルだと感じた。その理由を詳しくチェックしていこう。

「iPad」(第10世代)

「iPad」(第10世代)

ホームボタンなしの新デザインに生まれ変わった“無印iPad”

アップルの「iPad」はタブレット端末の先駆け的な存在で、初代「iPad」が登場して今年で12年と歴史のあるシリーズだ。12年の間、さまざまな変化を繰り返してきたが、最近の大きな変化と言えば、ホームボタンの廃止による“オールスクリーン”化だ。「iPad Pro」からはじまり、「iPad Air」「iPad mini」もホームボタンのないスタイルに変化してきている。12年間ホームボタンが付いていた、いわゆる“無印iPad”も、今回取り上げる第10世代の「iPad」でホームボタンが廃止され、オールスクリーン化された。

オールスクリーン化にともない、デザインも一新されている。見た目は現行の「iPad Air」(第5世代)に近く、角張ったフォルムだ。画面サイズも10.2インチから「iPad Air」(第5世代)と同じ10.9インチへと大画面化されている。

第9世代の「iPad」までにあったホームボタンがなくなった最新の「iPad」(第10世代)

第9世代の「iPad」までにあったホームボタンがなくなった最新の「iPad」(第10世代)

背面のデザインは、現行の「iPad Air」や「iPad Pro」などほかの「iPad」シリーズによく似ている。カラバリはシルバー、ブルー、ピンク、イエローの4色。今回はベーシックなシルバーを試した

背面のデザインは、現行の「iPad Air」や「iPad Pro」などほかの「iPad」シリーズによく似ている。カラバリはシルバー、ブルー、ピンク、イエローの4色。今回はベーシックなシルバーを試した

丸みのあるフォルムから「iPad Air」(第5世代)と同じ角張ったフォルムに変更された

丸みのあるフォルムから「iPad Air」(第5世代)と同じ角張ったフォルムに変更された

ホームボタンがなくなって、大きく変わるのがロック解除だ。第10世代の「iPad」は、縦持ち時に上部右側にあるトップボタンにある「Touch IDセンサー」を使ってロックを解除する。ホームボタンが上部に移動したと考えるといいだろう(ホーム画面への移動が画面の下からスワイプして行う)。

なお、「iPad」のロック解除スタイルはモデルによって違いがあったが、無印「iPad」が「Touch ID」化されたことで、「iPad Pro」が「Face ID」、それ以外が「Touch ID」とシンプルになった。

現行の「iPad Air」や「iPad mini」でおなじみのトップボタン/Touch IDセンサー。ゆっくり押す(押して少し指をボタンから離さない)と、画面の点灯からロック解除までワンタッチで行える

現行の「iPad Air」や「iPad mini」でおなじみのトップボタン/Touch IDセンサー。ゆっくり押す(押して少し指をボタンから離さない)と、画面の点灯からロック解除までワンタッチで行える

本体サイズは、「iPad Air」(第5世代)よりも少し大きいだけで、ほとんど変わらないサイズ感だ。手に持つと少し厚みがあるように感じたが、持ちにくいほどではない。100%再生アルミニウムを使ったボディの質感も上々だ。

iPad(第10世代):248.6(高さ)×179.5(幅)×7(厚さ)mm、重量447g(Wi-Fiモデル)/481g(Wi-Fi+Cellularモデル)
iPad Air(第5世代):247.6(高さ)×178.5(幅)×6.1(厚さ)mm、重量461g(Wi-Fiモデル)/462g(Wi-Fi+Cellularモデル)

入門モデルとしては及第点のディスプレイ

コンテンツを“見る“ことの多いタブレット端末にとって、ディスプレイの表示品質は重要だ。「iPad」(第10世代)のディスプレイの画面サイズや解像度、輝度は「iPad Air」(第5世代)と同じだが、スペックには違いがある。それはフルラミネーションと反射防止コーティングの有無。それに色域も「iPad Air」(第5世代)がP3、「iPad」(第10世代)がsRGBという違いがある。

画面サイズは10.9インチ、解像度は2360×1640/264ppi、輝度は最大500ニト(標準、SDR輝度)。これらのスペックは「iPad Air」(第5世代)と同じ

画面サイズは10.9インチ、解像度は2360×1640/264ppi、輝度は最大500ニト(標準、SDR輝度)。これらのスペックは「iPad Air」(第5世代)と同じ

フルラミネーションは、液晶パネルからカバーガラスまでの層を圧着し一体化させる技術。反射を抑える効果があり、「Apple Pencil」を使って線を引くときやタッチ操作するときに視差がなくなるなどのメリットがある。「iPad」(第10世代)の画面の縁をよく見ると、少し後ろ(下側)に画面があることがわかる。これは液晶パネルとカバーガラスが一体化されていないためだ。反射防止コーティングも年々進化しており、その効果は軽視できない。屋外や蛍光灯の下だと、「iPad」(第10世代)は反射が気になるシーンがあった。

フルラミネーションではないため、画面の縁をよく見ると、液晶パネルとカバーガラスの間が見える

フルラミネーションではないため、画面の縁をよく見ると、液晶パネルとカバーガラスの間が見える

それでも「iPad」(第10世代)のディスプレイは、日常使いには十分な表示品質だ。YouTubeも高画質で楽しめるし、Apple TV+の動画もキレイだ。粗を探せば、輝度や色域などいろいろとあるが、入門モデルとしては及第点と言えるだろう。

音質についても、スピーカーは横向き時にステレオ再生が可能。第9世代の「iPad」も2スピーカーだが、下部にしかなく、ステレオ感が弱かったので、サウンド面もしっかり改良されている。

2年前の「iPhone」のチップでも動作はサクサク

続いてスペックをチェックしていこう。SoCには「iPhone 12」シリーズに搭載されてい「A14 Bionicチップ」を搭載する。「Apple M1チップ」を搭載する前の「iPad Air」(第4世代)にも搭載されていたチップだ。

定番ベンチマークアプリ「Geekbench 5」の結果は、シングルコアが「1580」、マルチコアが「3005」、Compute(Metal)が「12621」。価格.comマガジンにて以前取り上げた、「Apple M1チップ」搭載「iPad Air」(第5世代)のスコアは、シングルコアが「1705」、マルチコアが「6917」、Compute(Metal)が「21273」なので、マルチコアとグラフィック性能に大きな差がある。

それでも動作自体はサクサクだ。「Apple Arcade」のゲームも快適に楽しめた。ファンレスなので動作音もしない。「Apex Legends Mobile」を20分ほどプレイすると、さすがに背面は熱くなるが、動作が重くなることはなかった。

「Geekbench 5」のCPUの結果

「Geekbench 5」のCPUの結果

「Apex Legends Mobile」の「グラフィックとオーディオ」の設定画面。「画質クオリティ」は「UltraHD」、「フレームレート」は「高」が推奨だった

「Apex Legends Mobile」の「グラフィックとオーディオ」の設定画面。「画質クオリティ」は「UltraHD」、「フレームレート」は「高」が推奨だった

「iPad」のフロントカメラは、これまで縦向きにしたときに上に配置されてきた。「iPad」(第10世代)は横向きにしたときに上にくるように搭載される場所が変わっている。「iPad」は横向きで使うことが多いので、これはうれしい改良だ。

フロントカメラのスペックは1200万画素、F2.4、2倍のズーム。「Face Time」などビデオ電話アプリ利用時に、自分の顔を中央に配置されるように調整してくれる「センターフレーム」も使える。いっぽう、背面のカメラは1200万画素F1.8と少し明るめ。スマートHDR3(写真)もサポートするほか、4K・60fpsの動画も撮影できる。

「Apple Pencil」(第1世代)はいいが、ペアリングにアクセサリーが必須なのは課題

「iPad」と言えば、「Apple Pencil」を使った手書き入力ができるのが魅力だ。イラストを描くクリエイターからビジネス文書にサインをするビジネスパーソン、漢字を練習する小学生などいろいろなユーザーに使われている。第10世代の「iPad」は、第1世代の「Apple Pencil」に対応する。最新モデルなので、第2世代の「Apple Pencil」に対応しない点は賛否両論あるが、メモ程度であれば第1世代でも十分だ。

ただし、外部インターフェイスがLightningからUSB-Cに変更された関係で、ペアリングに「USB-C to Apple Pencil」(アップルストア価格税込1,380円)という別売のアダプターが必須なのは不親切だ。これから第1世代の「Apple Pencil」を購入するという人は、このアダプターが同梱されるので問題ないが、手持ちのものを使う場合は別途購入しなければならない。

第1世代の「Apple Pencil」に対応するが、ペアリングには別売のアダプターが必要

外部インターフェイスがUSB-Cになった関係で、第1世代の「Apple Pencil」とペアリングするには別売のアダプターが必要

また、今回は試せていないが、新しいアクセサリーとして、「Magic Keyboard Folio」(アップルストア価格税込38,800円)というカバー兼キーボードがラインアップされた。取り外せるキーボードと、マグネットで取り付けられるバックパネルから構成されている。

価格は高いが、やっぱり「iPad」は人気

「iPad」の第10世代を試したが、新しい「iPad」の入門モデルとして非常に完成度の高いモデルだった。魅力を一言で表現すると万能性だろう。子ども用としても、仕事用としても、エンタメ用としても幅広い用途に向いた、“ちょうどよさ”の光るモデルだ。画面サイズ、性能、カメラ、ディスプレイの品質など隙のないモデルと言える。

悩ましいのはやはり価格だろう。2022年11月14日時点の価格.com最安価格は62,099円からで、継続販売される第9世代の「iPad」が45,880円からと、その価格差は16,219円。円安の影響を受けた形で、「iPad」の入門モデルとして価格的な魅力は半減してしまっている。ただ、値上がりの影響でもう少し苦戦するかと思ったが、価格.comの「タブレットPC」カテゴリーの人気売れ筋ランキングでは3位と好位置につけている(2022年11月14日時点)。値上がりしてもさすがの人気と言ったところだ。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!

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