シャープの5G対応ミドルレンジスマートフォン「AQUOS sense7」が、2022年11月上旬に発売された。コストパフォーマンスにすぐれる定番のミドルレンジモデルだ。前モデル「AQUOS sense6」からの進化点やライバル機との比較を含めて、本機ならではの魅力をレビューしよう。
シャープのスマートフォン「AQUOS sense」シリーズは、日本市場で重視されるおサイフケータイ(FeliCaポート)や防水・防塵に対応したミドルレンジクラスの人気製品。今回レビューする「AQUOS sense7」は、同シリーズの2022年モデルで、NTTドコモ、au、UQ mobile、楽天モバイルといった通信事業者から発売されている。2022年11月25日からは、格安SIM事業社や家電量販店などでも発売される予定だ。
本機のボディサイズは約70(幅)×152(高さ)×8.0(厚さ)mmで、重量は約158g。前モデル「AQUOS sense6」と比べると、厚さが0.2mm、重量が約2g増加したものの、ほぼ同じレベルとコンパクトなサイズ感に収まっている。搭載される6.1インチの自社製有機ディスプレイ「IGZO OLED」は、2432×1080のフルHD+表示に対応する。
近ごろのスマートフォンは、重量が180g以上、画面サイズが6.5インチ前後のものが主流だが、「AQUOS sense7」は、それと比べるとコンパクトだ。また、アルミ合金製のボディは、IPX5/8等級の防水仕様とIP6X等級の防塵仕様に加えて、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810G/H」の16項目(耐衝撃性能を含む)をクリアしたタフネス仕様も備わっている。さらに、アルコールを含むシートで拭くことや浴室で使うことも可能。こうしたタフネス性能は、同じミドルレンジのライバル機と比較して大きな強みとなっている。
ボディの素材は「AQUOS sense6」と同じアルミ製。背面と側面が一体のユニボディ構造のため剛性感が高く、質感にもすぐれる
ディスプレイは、1Hzから60Hzの範囲で内容に応じてリフレッシュレートを変化させ、電力消費を抑えることができる。また、最大で1300nitの高輝度に加えて、色調を調整する「アウトドアビュー」を備えており、屋外での視認性も確保している。
ただし、オッポ「OPPO Reno7 A」、シャオミ「Redmi Note 11 Pro 5G」、モトローラ「moto g52j 5G」など、競合する製品が軒並み90Hzや120Hzの高速リフレッシュレートに対応しているのと比較すると、上限60Hzという本機のディスプレイはややもの足りない。なお、「AQUOS sense6」で対応していたHDRには非対応だが、搭載される「バーチャルHDR」機能を使えば、HDR相当として表示できる。
昨今の製品としては小さめのディスプレイ。クリアでクセのない画質は「AQUOS」シリーズに共通する特徴だ
輝度と色調を調整して屋外での視認性を向上させる「アウトドアビュー」機能を搭載する
サウンド機能を見ると、ヘッドホン端子はボディの下面に搭載しているが、スピーカーはモノラル仕様。サウンドエンハンサーの「Dolby Atoms」には対応していないが、イコライザーは備わっており、音質の調整は行える。
ボディ下面にヘッドホン端子、USB Type-C、スピーカーホールを配置する
操作性を見ると、「AQUOS sense6」に搭載されていたGoogleアシスタントの呼び出しボタンがなくなり、同機能の呼び出しは電源ボタンの長押しになった。また、電源ボタンの長押しでスマホ決済アプリなどを呼び出す「Payトリガー」は、指紋認証センサーの長押しに変更されている。なお、操作画面として通常のものに加えて、アイコンや文字を大きくした「AQUOSかんたんホーム」を選ぶこともできる。
ボタンは右側面に集中して配置。画面右上から、ボリュームと電源の各ボタン。黒い部分は指紋認証センサーで、電源ボタンとは独立している
文字やアイコンを大きくした「AQUOSかんたんモード」も用意。設定画面の「ホーム切替」で簡単に変更できる
電池持ちのよさは「AQUOS sense」シリーズの魅力。「AQUOS sense7」は、容量4570mAhのバッテリーを備え、連続通話時間は、「AQUOS sense6」の約1910分から約2130分へ延びた。いっぽう、連続待受け時間は約790時間から約710時間に短くなっている(いずれもドコモ版の値)。なお、充電時間は140分から130分に短縮されている。
実際にバッテリーの持続性をテストしてみたが、3Dゲームなど3時間ほど行ってもバッテリーは20パーセント程度しか減らなかった。待受け状態が多い場合でもバッテリーの消費は少なめで、1日に45分ほどのペースで使用してみたところ、フル充電で8日間バッテリーが持った。
また、本機は、電源周辺の補助機能として、ACアダプターからバッテリーを介さずに給電する「ダイレクト給電」や、充電容量に上限を設けることで、過充電によるバッテリーの劣化を抑える機能を備える。これらの機能を使うことで、3年間使用しても、新品時と比較しても90パーセントのバッテリー容量を維持できるとしている。
左が検証中のバッテリーの消費のペース。1日に45分ほどのペースで約7日使用したところ、消費したバッテリーは85パーセント。1週間以上のバッテリー持ちは余裕でクリアしている。右は「インテリジェントチャージ」の設定画面、「ダイレクト給電」もこちらから設定を行う
本機に搭載されるSoCは、ミドルレンジ向けの「Snapdragon 695 5G」で、メモリーは6GB、ストレージは128GB。1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットが備わっている。OSは、Android 12だが、シャープの方針に従い、発売後最大2回のOSバージョンアップと、3年のセキュリティアップデートの配布が予定されている。
定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)」の総合スコアは389456(内訳、CPU:122319、GPU:98773、MEM:66065、UX:102299)だった。なお、本機と同じSoCと同容量のメモリーを備えるオッポ「OPPO Reno7 A」のスコア、382147(内訳、CPU:118672、GPU:98534、MEM:60562、UX:104379)と比較しても同水準を維持している。バッテリー節約を目的とした処理性能の制約はないようだ。
実際に使ってみても処理性能は十分で、SNSやWeb閲覧ならかなりスムーズに動作する。また、3Dを使ったゲームは「ウマ娘 プリティーダービー」(Cygames製)や、「Pikmin Bloom」(Niantic製)のような、スペック要求がそれほど高くないものであれば十分快適に動作する。
AnTuTuベンチマークの結果。左が本機「AQUOS sense7」のもの。左は同じSoCを搭載し、メモリー容量も共通となるオッポ「OPPO Reno7 A」のもの。バッテリー持ち重視の本機だが、処理性能は犠牲になっていないようだ
体感速度もさることながら、前モデル「AQUOS sense6」と比べるとメモリーの容量が4GBから6GBに、ストレージ容量が64GBから128GBにそれぞれ増量された点は注目したい。近ごろは製品を長く使う傾向にあるため、これらの容量アップは長期的な使い勝手を向上させる効果が期待できる。
本機の注目ポイントであるメインカメラに迫ろう。「AQUOS sense7」の標準カメラは、「AQUOS sense6」よりも66パーセント大型化した1/1.55インチのイメージセンサーを使うことで画質性能を高めている。メインカメラは、有効画素数約5030万画素の標準カメラ(35mm換算の焦点距離は23mm)と、約800万画素の広角カメラ(同15mm)のデュアルカメラで、望遠カメラは非搭載となった。また、指摘されることの多かったオートフォーカスの性能も、標準カメラについてはセンサー全面のPDAF(位相差オートフォーカス)に強化され、速度と精度が向上し、構図の隅までしっかりピントが合うようになっている。
メインカメラは、標準カメラと広角カメラのデュアルカメラ。標準カメラは全面PDAF対応の大型のイメージセンサーを採用することで、画質とオートフォーカスの性能アップを実現している
以下に、本機のメインカメラを使って撮影した静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のまま、AIオートを使い、シャッターを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。
建物の中を撮影。感度はISO1400以上だが、陰影が適切に再現されており、暗部のノイズも少なめだ。鮮やかさを強調しすぎずクセのない仕上がりだ
撮影写真(4096×3072、2.26MB)
上と同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。露光時間が1/15秒で手ブレが発生するぎりぎりの露出となった。標準カメラよりも露出が多めで、ホワイトバランスの違いもあるため、平面的な印象を受ける
撮影写真(4096×3072、1.79MB)
明るめの夜景を撮影。こちらも感度はISO3500というかなりの高感度だが、地面やコンクリート壁周辺部分までディテールがしっかり残っている。シャッター速度も1/60秒を確保しているので手持ち撮影でも手ブレは抑えられている
撮影写真(4096×3072、3.26MB)
上と同じ構図を広角カメラで撮影。15mmの焦点距離を生かして構図に収まった空中回廊のおかげで迫力が増す。ただ、標準カメラと感度性能が異なるため、細部の解像感はほどほど
撮影写真(4096×3072、1.47MB)
バラを接写。スマホのカメラでは色飽和が起こりやすい被写体だが、色の再現性も高く、立体感も維持されている
撮影写真(4096×3072、3.14MB)
「AQUOS sense7」の標準カメラは、ミドルレンジとしてはかなり良好で、幅広い構図に対応できる。また、オートフォーカスが速く正確なのもよい。1点気になったのが、標準カメラと広角カメラの切り替えにかかる時間で、これが改善されればさらに使い勝手が向上するだろう。デュアルカメラというスペックはライバル機と比較して見劣りするが、この標準カメラは、本機を選ぶ理由としては十分なものだ。
販売ルートや価格を見てみよう。冒頭で触れたように、本機は、NTTドコモ、au、UQ mobile、楽天モバイルの通信事業社に加えて、格安SIM事業社や家電量販店でも発売される。各販売ルートで、型番とプリインストールされる通信事業社向けのアプリは異なるものの、どの販売ルートでも5Gと4Gともに対応する周波数帯は同じで、各社のプラチナバンドやコアバンドにもれなく対応している。nanoSIMカードスロットとeSIM対応も同じで、もちろんSIMロックもかかっていない。
各販売ルートの価格を以下にまとめた。一括払いなら楽天モバイルが安価だが、端末の下取りを条件にした端末購入補助「スマホトクするプログラム」を使用するとauもかなり割安、MNPならUQ mobileも魅力的だ。条件によって価格が異なるので、どこが最安とは一概に言いにくい状況となっている。
昨今のスマートフォンは、性能と価格のバランスを重視した、コストパフォーマンスにすぐれたモデルが人気を集める傾向が強い。「AQUOS sense7」と同じミドルクラスのライバル機を見ても、やはりコスパを追求した製品が並んでいる。
そうしたミドルクラスのスマートフォンの中には、90Hzや120Hzの駆動に対応するディスプレイを備えたモデルもある。より高いリフレッシュレートを備えたディスプレイは、より滑らかな映像表示が可能で魅力的だ。その点、本機のリフレッシュレートは60Hzにとどまっており、「もうひと声」というのが正直なところかもしれない。
しかし、本機は、ディスプレイのリフレッシュレート以外の充実度が際立っている。タフネス仕様の小さなボディに、長時間のバッテリー持ちや、高品質なデュアルカメラ、特に標準カメラという魅力が備わっており、「ミドルレンジスマホの良品」と評せる製品だ。基本スペックを比較しただけではわかりにくい、使い勝手にすぐれたスマートフォンと言えるだろう。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。