ASUS JAPANが画面折りたたみ式PC(フォルダブルPC)「Zenbook 17 Fold OLED UX9702AA」(以下、「Zenbook 17 Fold OLED」)を日本で発売する。今年1月のデジタル見本市「CES 2022」で発表した同社初のフォルダブルPCで、国内ではレノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Fold」(13.3型モデル、16.3型モデル)に次ぐ、3台目のフォルダブルPCだ。そんな「Zenbook 17 Fold OLED」の完成度をチェックしよう。
本日、2022年12月1日に日本で発売される「Zenbook 17 Fold OLED」
「Zenbook 17 Fold OLED」は、17.3型の折りたためる有機ELディスプレイを搭載するフォルダブルPC。開くと17.3型(2560×1920)の大画面のタブレット端末として、折りたたんでBluetoothキーボードと組み合わせれば12.5型(1920×1280)のノートPCとして利用できる。それ以外にも、17.3型の大画面タブレット端末+BluetoothキーボードでデスクトップPCのようなスタイルで使ったり、12.5型×2の2画面+Bluetoothキーボードを組み合わせたり、多彩なスタイルで利用可能だ。同社では以下の6つのモードでの使い方を提案している。
ASUS JAPANが提案している6つの使い方
フォルダブルPCの魅力は、大画面を折りたたんでコンパクトに持ち歩けることだろう。「Zenbook 17 Fold OLED」も17.3型の大画面を12型クラスのモバイルノート並みのフットプリントで持ち歩ける。重量は本体のみが約1.53kg、本体とBluetoothキーボードが約1.83kg。折りたたんだときの厚みは約23.1〜34.4mmと厚みはあるが、フットプリントがコンパクトなので持ち運びはしやすそうだ。バッテリー駆動時間は約12時間と極端に長くはないが、持ち運び用としては必要十分といったところ。
開いた状態だと、17.3型の大画面タブレットとして利用できる。開いた状態の本体サイズは378.5(幅)×287.6(奥行)×8.7〜13.3(厚さ)mm
折りたたみ時は、開いた状態の約半分のサイズで、持ち運びしやすくなる。ヒンジの裏側には人工皮革が使われている。手帳のような雰囲気で、触り心地もいい。折りたたみ時の本体サイズは287.6(幅)×193.5(奥行)×23.1〜34.4(厚さ)mm
右側がヒンジだが、曲がる機構のためどうしても厚みがでてしまう
実際に使ってみて便利だったのが、17.3型の大画面タブレット端末+BluetoothキーボードでデスクトップPCのように使うモード。デスクトップPCを持ち運んで、どこでも大画面で作業できるのが便利だった。13型クラスのモバイルノートと比べると、17.3型はデスクトップが広く、マルチタスクもはかどる。何より、これが持ち運びやすいというのがフォルダブルPCのいいところだ。
画面を開いて本体を立てれば、デスクトップPCのように利用できる。久しぶりに17型クラスで作業したが、デスクトップが広くて作業がしやすかった。13型前後のモバイルノートに慣れている筆者にとって、この広い作業スペースはうれしい
背面にはキックスタンドが搭載されている。角度は60°の1段階。もう少し自由に角度を変えられると便利かもしれない
単体では縦向きで自立はしないが、化粧箱を使えば縦向きでも利用可能。縦向き派も安心だ
17.3型の大画面タブレットとして使う場合、手に持って長時間使うのは現実的ではない。軽く折りたたんで本のようなスタイルで使う「リーダーモード」は、形こそ本のようだが、約1.53kgあるため、本や手帳のような感覚で使うのは難しい。現実的には、背面のキックスタンドを使って、自立させて使うのが基本になるだろう。17.3型のタブレットは初めて体験するサイズ感だが、タブレットというよりも外付けディスプレイという感じだ。1人で使うというよりも、数人で画面を見ながら作業するといった用途が実用的かもしれない。
「リーダーモード」は電子書籍などを読むのに便利だが、1.5kgと重いので長時間手に持っての読書は厳しい
Bluetoothキーボードを下のディスプレイの上に置いたノートPCモードは、いい意味で普通のノートPCと変わらない使い勝手だ。タスクバー部分がちょうどカーブしており、光りの反射で見えにくいときもあるが、実用上には問題ない。意外と便利と思ったのが、ASUSの言うところの「拡張モード」。キーボードをディスプレイの上に置かず、手前に設置した使い方だ。上下に2画面があり、マルチディスプレイで作業できる。画面を上からのぞき込むような姿勢でなければ、手前側(下側)のディスプレイが見にくいのが難点だが、奥行きのある場所であれば、作業スペースを広く確保できて、作業がはかどる。
下のディスプレイの上にBluetoothキーボードをマグネットで固定すれば、一般的なノートPCと変わらない使い勝手だ。キーボードは英語キー
拡張モードは、Bluetoothキーボードをディスプレイの上ではなく、手前に置いた使い方。上下に2つディスプレイを並べたスタイルで使える
スマートフォンを含むフォルダブル製品の気になるポイントは、折りたたみ部分。どうしても折りたたみ部分が波立っていたり、変に光りを反射していたりする場合がある。画面が大きくなると、それが余計に目立つ。「Zenbook 17 Fold OLED」を2週間ほど試したが、画面がオフだと波立っているのが見えるが、画面がオンの状態では目立ちにくかった。
専用に開発した折りたたみ式ヒンジは3万回以上の開閉テストを実施。キモになる部分なので、このあたりはしっかりテストを繰り返しているのだろう。すぐ壊れるような印象はなく安心感のある動きだった。
専用に開発されたヒンジは複雑な機構でありながら、見た目は非常にシンプル
フォルダブル製品は折りたたみ部分が波立つように見えることがあるが、本モデルは波立ちが控えめ。画面をオンにしている状態だとほとんど波立っているようには見えない。壁紙などを含めて、工夫されている
ディスプレイは同社が力を入れている有機EL。開くと17.3型で解像度は2560×1920の2.5K。アスペクト比はPCとしては珍しい4:3で、アップルの「iPad」と同じだ。DCI-P3 100%、応答速度0.2msとハイスペックで、表示品質もさすがのクオリティだ。ノートPCモードのときは1920×1280の12.5型。アスペクト比は3:2でSurfaceなどと同じだ。
「ScreenXpert」の「Landscape Mode」でウィンドウの配置も簡単だ。どこに何のウィンドウを表示しているか迷子になっても大丈夫だ。この辺は2画面PCをいくつか手がけている同社ならではだ。
「Landscape Mode」でウィンドウのレイアウトを一発で整理できる
CPUはCore i7-1250U、P-core 1.1GHz/4.7GHz (2コア) / E-core 0.8GHz/3.5GHz (8コア)、メモリーはLPDDR5-5200の16GB、ストレージは1TB SSD(PCI Express 4.0 x4)で、ノートPC(ノートPCではないが)としては最高クラスのスペックだ。ファンは内蔵されており、ユーティリティアプリ「MyASUS」にてファンモードを調節できる。日常的な作業でファンが回ることはほとんどなく、動作音は静かだ。
パソコンの総合性能を測定するベンチマークプログラム「PCMark10 Professional Edition」の結果は「5183」。高性能なノートPCに近いスコアだ
ネットワークはIEEE802.11ax準拠の無線LAN(Wi-Fi 6)とBluetooth 5.1を搭載する。外部インターフェイスはThunderbolt 4(USB Type-C)×2、マイク入力/ヘッドホン出力を搭載。本体がスリムなので、外部インターフェイスは最小減だ。
写真上から上部、右側面、左側面(折りたたみ時)。外部インターフェイスはThunderbolt 4ポートが上部の左端、右側面の下にレイアウトされている。Bluetoothキーボードも付属のACアダプターで充電可能
「Zenbook 17 Fold OLED」は、完成度の高いフォルダブルPCだった。折りたたみ部分もキレイに処理されており、フォルダブルであることを意識することなく、好きなサイズや形状で作業することができる。開くと17.3型と大画面なので、デスクトップPCに近い感覚で作業できるので、持ち歩けるデスクトップとして、広い画面で作業をしたい人には最適なモデルだ。狭い場所や膝の上では12.5型のノートPCとして使えるのも、フォルダブルPCならでは。
市場想定価格は649,800円(税込)と高額で、誰でも気軽に手を出せるモデルではないが、パソコンの新しい形にチャレンジするASUSらしい、チャレンジングなモデルとして「Zenbook 17 Fold OLED」をチェックしてみてほしい。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!