選び方・特集

ゲーミングヘッドセットの新トレンド“ノイキャン対応”。JBL、SteelSeries、ソニーの3製品を一斉レビュー

ゲーミングヘッドセットの上位モデルに新しいトレンドが誕生しようとしている。それは周囲の騒音を低減する“アクティブノイズキャンセリング機能”への対応だ。

音楽リスニング用のワイヤレスイヤホン・ヘッドホンではすでに定番機能入りを果たした、リスニング時に周囲の騒音を低減させるノイズキャンセリング機能(通話マイクのノイズキャンセリングとは別ものであることに注意)。ゲーミングヘッドセットの一般的な利用シーンは自宅のパソコンの前がほとんどで、周囲の騒音レベルはさほど大きくないので必要ないのでは?と思っている人も多いかと思うが、冬場や夏場であれば室内のエアコンの音は聴こえてくるし、室外から聞こえる自動車の走行音、キーボードのタイプ音などの騒音はそれなりに存在するので、ノイズキャンセリング対応であるに越したことはない。

今回は、2022年7月に発売されてトレンドのけん引役となったソニー「INZONE H9」に加え、9月発売のSteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」、11月発売のJBL「Quantum 910 Wireless」の3製品を一堂に集め、ノイズキャンセリング機能や使い勝手、音質を詳しくチェックしてみた。

写真左から、SteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」、JBL「Quantum 910 Wireless」、ソニー「INZONE H9」。今回はノイズキャンセリング機能を搭載したワイヤレスゲーミングヘッドセット3モデルの一斉テストを実施した

写真左から、SteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」、JBL「Quantum 910 Wireless」、ソニー「INZONE H9」。今回はノイズキャンセリング機能を搭載したワイヤレスゲーミングヘッドセット3モデルの一斉テストを実施した

JBL「Quantum 910 Wireless」

まずは、11月25日に発売されたばかりのJBL「Quantum 910 Wireless」からチェックしていこう。本製品は、JBLのゲーミングヘッドセットラインアップの中でも最上位モデルに位置づけられる製品で、オーディオ面ではハイレゾ認定の50mm径ダイナミック型ドライバーと、周囲の中低域の騒音を低減するアクティブノイズキャンセリング機能を搭載。パソコンとはUSBドングルを活用した2.4GHzワイヤレス接続に加え、Bluetooth接続や3.5mmアナログ有線接続にも対応しており、2.4GHzワイヤレス接続とBluetooth接続、Bluetooth接続と3.5mmアナログ接続の同時利用も可能となっている。なお、今回はUSBドングルを使った2.4GHzワイヤレス接続を活用している。

JBL「Quantum 910 Wireless」を装着したところ

JBL「Quantum 910 Wireless」を装着したところ

パソコンとはUSBドングルを活用した2.4GHzワイヤレス接続に対応。もちろん有線接続も可能だ

パソコンとはUSBドングルを活用した2.4GHzワイヤレス接続に対応。もちろん有線接続も可能だ

実際にJBL「Quantum 910 Wireless」を装着してみたが、重量は今回取り上げる3製品の中で最も重い420gとやや重量感がある。ヘッドセットとしてホールド感もしっかりあるが、これは頭のサイズ次第といったところ。ゲーミングらしいRGBイルミレーションもド派手だ。なお、イルミネーション機能も含め、各種設定は専用のパソコン用ユーティリティソフト「JBL QuantumENGINE」から行える。

50o径の大口径ドライバー搭載でパッドも大きめ

50o径の大口径ドライバー搭載でパッドも大きめ

今回の特集のテーマであるJBL「Quantum 910 Wireless」のノイズキャンセリング性能はというと、なかなか優秀だ。エアコンの音が響いている部屋で試聴すると、元々の遮音性が高くてノイズキャンセリング機能無効状態でもエアコンの音は遠くに聴こえるが、有効にするとかなり無音に近い状態となる。若干キーンとした音はあるものの、ノイズキャンセリングの静寂効果を実感しやすい。なお、中域の音はある程度通るようなので、家族に呼ばれる声などは比較的よく聴こえそうだ。

パソコン用のユーティリティソフト「JBL QuantumENGINE」から各種カスタマイズが可能だ

パソコン用のユーティリティソフト「JBL QuantumENGINE」から各種カスタマイズが可能だ

まずは音楽コンテンツでJBL「Quantum 910 Wireless」のサウンドをチェックしてみたが、中域が少しマイルドで、音の臨場感、広がりが頭の遠くにまで広がるようなタイプのようだ。ゲーミングでもナチュラルな空間が広がるし、音楽リスニングでも歌声に厚みがあり心地よい。低音はボリューム感があり、音楽リスニングだとライブ感がしっかり出てくる。ベースの音質はもちろん、ユーティリティソフトでイコライザーも調整できるうえ、「より広がりあるサウンド」という設定からバーチャルサラウンド機能の「JBL QuantumSPHERE 360」と「DTS」も利用できるが……こちらは音楽リスリングには非推奨だ。

FPS/TPSゲーマーが気になる定位感については、音空間の左右の移動感、距離感は比較的よく聞こえる。足音が浮き上がる感じがあり、特に離れた距離の音の方向感、距離感がつかみやすい。RPGでも同傾向があり、キャラのボイスやエフェクトの効果音は若干響きが付くようだ。

なお、バーチャルサラウンド機能の「JBL QuantumSPHERE 360」と「DTS」を活用すれば音の背後への回り込みもより体感しやすぐなるが……「JBL QuantumSPHERE 360」は音質への影響が若干大きめ。デモの出来は非常によいので、この精度が実際のゲームタイトルでも発揮されることに期待したい。なお、付属マイクによるキャリブレーションも利用可能だ。「DTS」もやや音質に影響があるが、自然に空間が広がるのでRPGにはアリ。FPS/TPSゲーマーは“オフ”がよさそうだ。

SteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」

SteelSeriesの最上位にあたる多機能ヘッドセットが「Arctis Nova Pro Wireless」だ。最大の特徴は、ハイレゾUSB DAC機能を内蔵したベースステーションが付属すること。DAC付属=有線接続……と思ってしまいがちだが、ワイヤレスステーション機能を一体化しているので、2.4GHzワイヤレス接続のUSBドングルのかわりがベースステーションと思ってもらえばいい。DAC側のLINE IN/OUTや2系統目のUSB端子、ヘッドホン側の3.5mm入力端子は、PS5などの据え置きゲーム機を接続するのに使う目的のものだ。なお、2.4GHzのワイヤレス接続のほかにBluetooth接続にも対応しており、これらは同時接続が可能。もちろん、3.5mmアナログ有線接続にも対応する。ちなみに、SteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」はワイヤレスヘッドセットのバッテリーを交換できる機能を有しており、取り外したバッテリーをベースステーションに挿し込んで充電できるのも特徴だ。バッテリーは標準で2つ付属する。

SteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」を装着

SteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」を装着

USB DAC内蔵のベースステーションに2.4GHzワイヤレス接続用の機能が統合されている。大型のノブが付いており、手元での音量操作にも便利だ

USB DAC内蔵のベースステーションに2.4GHzワイヤレス接続用の機能が統合されている。大型のノブが付いており、手元での音量操作にも便利だ

実際にSteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」を装着してみる。ドライバーユニットは40o径で、ヘッドホン重量は公式スペックには載っていないが、実測で約340g。本体サイズは今回テストした3製品の中で最も小型で側圧も強めになっている。イルミネーションなどがなく、精悍なブラックの本体はゲーミングらしくない落ち着いたデザイン。各種設定はパソコン用ユーティリティソフト「SteelSeries GG」の中にある「Engine」と「Sonar」という項目からカスタマイズが可能だ。

40o径のドライバーユニットを搭載。イヤーパッドは若干タイトな作りだ

40o径のドライバーユニットを搭載。イヤーパッドは若干タイトな作りだ

ノイズキャンセリング機能は、ワイヤレス接続時に電源ボタンから有効にできる(有線接続時には無効になる)。実際に効果を体験してみると、あまり強力なタイプではなくエアコンの高域側の音の尖りを抑え、ボリュームダウンする程度。周囲の騒音がうるさいと効果を体験しづらいかもしれない。また、エアコンの風が直接あたるとウィンドノイズが発生した。ベースステーションの操作で調整が可能なので、必要に応じてカスタマイズしてみるとよさそうだ。

パソコン用ユーティリティソフト「SteelSeries GG」の中にある「Sonar」から音質などを設定可能

パソコン用ユーティリティソフト「SteelSeries GG」の中にある「Sonar」から音質などを設定可能

音楽コンテンツを使ってSteelSeries「Arctis Nova Pro Wireless」の音質をチェックしてみたが、クリアな歌声、やマイルドな楽器の再現とリズムの刻みでナチュラル系のサウンド。中低域の音分離はやや弱いが、これは有線接続では解消されるのでワイヤレス接続の特性のようだ。音質設定はパソコン用ユーティリティソフト「SteelSeries GG」の中にある「Engine」と「Sonar」の項目からカスタマイズ可能(両者は排他使用)で、基本的なイコライザーは「Engine」、ゲーミング関連も含む高度なイコライザーは「Sonar」から設定する形だ。「Sonar」から有効にできる「SPACIAL AUDIO」は“パフォーマンス”と“距離”を調整でき、好みに合うように調整すると、意外と音楽リスニングでも楽しめ、空間オーディオ的な使い方も可能だ。

FPS/TPSゲームの音の再現性については、高域側などの強調感がなく、どの距離も聴こえてくるので、ゲーミング用としては十分過ぎる性能だ。ここでもやはり面白いのが「Sonar」で有効にできる「SPACIAL AUDIO」。“パフォーマンス”に寄せつつ、“距離”を最大方向に設定すると強調感が出て、足音がさらに把握しやすくなる。ステレオの鳴り方と好み次第で使い分けてもよさそうだ。

RPGのゲームもナチュラルなサウンドとの相性が良好。RPGでも僕は“パフォーマンス”に寄せて、“距離”を最大にする設定が気に入ったので、各自でぜひベストな設定に追い込んでほしい。

ソニー「INZONE H9」

ソニーが2022年にゲーミングデバイス参入を発表し、ヘッドセットラインアップの最上位モデルとして投入したのが「INZONE H9」だ。ゲーミングヘッドセットでは珍しいアクティブノイズキャンセル機能を搭載したモデルとして記憶している人も多いだろう。このモデルもUSBドングルによる2.4GHzワイヤレス接続とBluetooth接続、3.5mmアナログ有線接続に対応。本機も2.4GHzワイヤレス接続とBluetooth接続はデュアル接続対応となっている。

ソニー「INZONE H9」を装着したところ

ソニー「INZONE H9」を装着したところ

パソコンとの接続には、USBドングルによる2.4GHzワイヤレス接続を利用する

パソコンとの接続には、USBドングルによる2.4GHzワイヤレス接続を利用する

「INZONE H9」の外見は白色の本体が特徴的というだけでなく、日本人の頭にもあった耳をすっぽりと覆うような形状で、フィット感も良好。本体重量は330gとなっていて、高機能なヘッドセットと考えると軽い部類だ。なお、各種カスタマイズはパソコン用ユーティリティソフト「INZONE HUB」経由で行える。

厚みのあるソフトフィットレザーと大きめサイズで側圧も弱め

厚みのあるソフトフィットレザーと大きめサイズで側圧も弱め

「INZONE H9」のノイズキャンセリング性能はかなり優秀だ。エアコンの音が響いている部屋で試聴すると、ノイズキャンセリング機能有効時は若干ホワイトノイズは感じられるものの、ゴーと響いていた音がスッと消える。静寂が心地よく、ゲーミング体験にしっかりと没入できる。人の声などの中域もある程度抑えてくれるところもよくできている。

音楽リスニングによる「INZONE H9」のサウンドについては、ヘッドホンで実績のあるソニーらしい優等生なサウンド。「INSONE」シリーズは、ゲーム向けに最適化した立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」が搭載されており、パソコン用ユーティリティソフト「INZONE HUB」の「立体音響」という項目から機能を有効にできるが、これを有効にしなくても音空間の立体感がはっきりと出るし、高域も伸びやかでキツいところまでいかない絶妙なバランスになっており、歌声の再現性も高い。低音も量感だけでなく情報量も見通せるタイプで、普通に音楽リスニングでも通用する。ちなみに、「立体音響」を有効にすると空間のスケールは広がるが、音楽リスニングにはあまり向かない。

パソコン用ユーティリティソフト「INZONE HUB」。「立体音響」はスマートフォンのカメラを使って個人最適化ができる。今回は個人最適化したうえでテストを実施している

パソコン用ユーティリティソフト「INZONE HUB」。「立体音響」はスマートフォンのカメラを使って個人最適化ができる。今回は個人最適化したうえでテストを実施している

FPS/TPSゲームの音の再現性については、はっきりと足音をシャープに立てるサウンドで、位置感、距離感は非常に判別しやすい。ソニーもちゃんとゲーマーの求める音を理解しているのだろう。「立体音響」の設定を有効にすると空間や方向も出るが、無効のステレオ状態でプレイするほうが音の明瞭度は上なので、ここは好み次第といったところ。

RPGも若干高域強めではあるが、「立体音響」の設定を無効にしたステレオ状態でも音空間がそれなりに広がり臨場感もある。やわらかな質感のキャラクターボイスとBGMの再現性もすばらしい。「立体音響」を有効にすると空間のスケールは広がるが、キャラクターのボイスがややぼやけるため、RPGには意外とマッチしなかったことも報告しておこう。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る