PCの入力デバイスの中でも、操作性を大きく左右するマウスは重要なツールだ。どんなに高性能なPCを使っていても、感触、感度、正確性、安定性がイマイチなマウスを利用していたら台なしになる。
とはいえ、1,000円を切るような低価格なワイヤレスマウスが販売されている状況で、高価格なハイエンドモデルに手を出しにくい人は多いことだろう。そこで、今回レビューするのが、ロジクールのエントリー向けマウス「SIGNATURE M750/M650/M550」だ。希望小売価格が3,960〜5,280円(税込)と、ちょいと高めの設定だが、それに見合う価値があるのかチェックしていこう。
ロジクールのエントリーマウス「SIGNATURE M750/M650/M550」をレビュー。細かなスペックの異なる3モデルが用意されている
今回レビューするロジクールのエントリー向けマウスは、「SIGNATURE M750」「SIGNATURE M650」「SIGNATURE M550」の3モデル。ロジクールはもっと安価な製品も用意しているが、この3モデルはエントリー向けながら、高い機能性を備えるモデルとして位置づけられている。
共通して搭載されているプレミアム機能は、正確な操作と高速スクロールが可能な「SmartWheel」。このスクロールホイールには軽いクリック感が与えられており、1行ごとのスクロールを正確にコントロール可能。また、勢いよく弾くように回転させれば、高速スクロールに切り替わる。繊細にもダイナミックにもスクロールを操作できるのが便利だ。
スクロールホイール横には「SmartWheel」の文字が印字されている。1行ごとのスクロールと高速スクロールに切り替え操作は必要ない
オフィスやカフェなどの静かな環境でありがたいのが、ロジクール独自の静音技術「SilentTouch」。クリック感を残しつつ、従来のマウスに比べてクリック音が90%低減されている。実際操作しても、無音と感じられるくらいクリック音は小さい。
50cmの距離から簡易騒音計でクリック音を計測しようとしたが、環境音以下の音量だった
本マウスが、ロジクールの最も安価なマウスと大きく異なる点が、最新ワイヤレス技術「LogiBolt」とBluetooth接続に両対応していることだ。「Logi Bolt USBレシーバー」も標準で同梱されており、別途購入する必要はない。エントリー向けであっても、よりセキュアで安定性の高い「LogiBolt」に対応している点は本製品最大のアドバンテージだ。
「Logi Bolt USBレシーバー」は実売価格で1,200円前後。エントリー向けであるため少しでもコストを削減したかったはずだが、ロジクールは「Logi Bolt USBレシーバー」の同梱にこだわった。それだけ「LogiBolt」の普及に力を入れているということだろう
「SIGNATURE M750/M650/M550」の電源を入れると、最新のWindows 11環境であればBluetoothの設定画面が立ち上がる。セットアップで迷うことはない
さて、「M750」「M650」「M550」はどのような点に違いが設けられているのだろうか? それぞれのモデルには、ボディが少し大きい「L(Large)」モデルが用意されている。その3つを追加して、6モデルの違いを下記の表にまとめたのでご覧いただきたい。
なお「M750」「M750L」「M650」「M650L」「M550」「M550L」には、それぞれグラファイト、オフホワイト、ローズ、ブルー、レッドの5色が用意されている。
「M750」「M750L」「M650」「M650L」にはサイドボタンが用意されている。デフォルトでは「進む」と「戻る」が登録されているが、設定・管理ユーティリティーソフト「Logicool Option+」を使えば、キーボードショートカットを含め多彩な機能を割り当てられる。生産性向上を望むならサイドボタン搭載モデルを選ぶことを強くすすめたい。
左から「M750」「M650」「M550」。「M550」以外にはサイドボタンが装備されている
サイドボタンには、「進む」「貼り付け」「音量を上げる」「やり直し」以外にもキーボードショートカットや、さまざまなアクションを割り当てられる
「M750」「M750L」のみで利用できるのが、最大3台のデバイスに接続してワンタッチで切り替えられる「Easy-Switch」と、マウスカーソルを画面の端に移動させることで別のPCが操作可能となる「Flow」。「Flow」は異なるOSを搭載したマシン間でもマウスとキーボードをシームレスに切り替えられる便利機能。予算に余裕があり、今後複数マシンでマウス、キーボードを共有する可能性があるのなら、「M750」「M750L」を選ぶべきだろう。
左から「M750」「M650」「M550」。「M750」にのみ底面に「Easy-Switch」ボタンが用意されている
「Flow」を使うと、最大3台のデバイスでキーボードとマウスを共有できる。異なるOS間でもテキスト、画像、ファイルを転送可能だ
「M750」「M750L」のみで利用できるもうひとつの機能が、ボタンによるDPI変更。両モデルにはスクロールホイールの手前にボタンが配置されている。このボタンを押すことでDPIを切り替え、マウスの移動速度を変更できるのだ。普段はハイスピードに設定しておいて、繊細な作業では速度を落とす……といった使い分けができるわけだ。
「M750」「M750L」は上面のボタンに「ポインタ速度を変更」が設定されている。DPIの変更を使わないのなら、ほかのアクションやキーボードショートカットを割り当てられる
最後に、マウスとしての基本機能と使い勝手についても触れておこう。前述のとおり「M750」「M650」「M550」は機能が差別化されているものの、「操作感」はまったく変わらない。マウスの滑りはもちろんのこと、ボタンのクリック感、スクロールホイールの回転具合なども同一。つまり最廉価の「M550」でも上質な操作感を得られるわけだ。
「M750」「M650」「M550」のサイズ感はこんな感じ。マウスとしては平均的な大きさだ
左から「M750」「M650」「M550」。大きさは同じだが、内部パーツが異なるので重量は微妙に違っている
底面には摩擦係数が低い樹脂製のソールが貼られている
左右ボタンのストロークは非常に浅いが、しっかりとしたクリック感が与えられている
見た目の高級感という点でも「M750」「M650」「M550」で違いはない。ただし、今回オフホワイト、ブルー、レッドの3色を借用したが、質感はオフホワイトが最も高いと感じた。グラファイトとローズの現物を見ていないが、今回の3色からであればぶっちぎりでオフホワイトがおすすめだ。
今回借用したのはオフホワイト、ブルー、レッドの3色。個人的にはオフホワイトが最も質感が高いと思う
安価なマウスでは電池蓋の開け閉めがしにくい製品もあるが、本製品はロジクール製だけに作りがしっかりとしている
設定・管理ユーティリティーソフトは上位モデルと同様に「Logicool Option+」を使用。「M750」「M650」「M550」それぞれで設定できる項目に違いはあるが、同じユーザーインターフェイスで管理できる。またソフトウェアアップデートにも対応する
筆者は個人的にロジクールのフラッグシップモデルのひとつ「MX Anywhere 3」を使っているが、今回の3製品を試用してみて、マウスとしての基本機能については十分満足できたし、価格に見合う価値のある製品だと感じた。
ただし、スクロールホイールの操作感については「MX Anywhere 3」のほうが上。ギュイーンと勢いよくスクロールホイールを回転させたいのなら、「MX Anywhere 3」を選ぶべきだが、左クリック、右クリックの静音性については「M750」「M650」「M550」に軍配が上がる。
また、「M750」「M650」「M550」は乾電池駆動のため電池の入れ替えが必要だが、電池寿命は「Logi Bolt USBレシーバー」利用時で最大24か月と十分長い。充電池の経年劣化を心配する必要がないのはメリットとも言える。
「M750」「M650」「M550」はエントリー向けだが、機能性や操作性にこだわりたい人に自信を持ってすすめられる。ただし「M750」と「M550」の価格差は1,320円なので、選択は慎重に。タブレットやスマホでもBluetooth接続で利用できるので、個人的にはマルチデバイス対応の「M750」がイチ押しだ。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。