Makuakeでの先行販売が告知されていたLGエレクトロニクスの「SMART Monitor」、「32SQ780S-W」と「32SQ730S-W」のスペックが正式に発表された。Makuakeでの販売は2022年12月22日からで、先行販売終了後に一般販売が開始される見込みだ。
主な製品スペックは以下のとおり。この発表に合わせて、「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」の体験会が実施された。その様子と合わせて製品概要を改めてお伝えしよう。なお、両製品の性能や機能はまったく同じ。「32SQ780S-W」はアーム方式のスタンド、「32SQ730S-W」は通常のデスクトップスタンドが付属することが違いだ。
アーム方式のスタンドが付属する「32SQ780S-W」
「32SQ780S-W」はチルト、ピボット、スイーベル、高さ調整が可能。調整の自由度が高い
「32SQ780S-W」ならば、画面を縦に使う場合もとてもスムーズ
ごく一般的なデスクトップスタンドが付属する「32SQ730S-W」。どちらの製品もVESAマウントに対応する
「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」共通スペック
●画面サイズ:31.5型
●液晶方式:VA
●解像度:3,840×2,160(60Hz駆動)
●表面はアンチグレア処理
●輝度:250cd/u
●映像処理エンジン「α5 Gen5 AI Processor 4K」搭載
●webOS 22 搭載
●HDR10/HLG対応
●DCI-P3を90%カバーする色域
●接続端子:HDMI入力×2(1系統はeARC/ARC対応)、USB Type-C×1、USB Type-A×3、LAN(RJ45)×1
●ワイヤレス接続:Bluetooth(5.0)、Wi-Fi 5(IEEE 80.211a/b/g/n/ac)
■変更履歴:初出時に「USB Type-B×3」と記載していました。正しくは「USB Type-A×3」です。お詫びして訂正します。該当箇所は修正済みです。[2022年12月23日17時20分]
まず「SMART Monitor」とは、簡潔に言えばPCモニターにLGエレクトロニクス独自のwebOSを組み込んだ製品のこと。そのため、製品単体でYouTubeやNetflix、Amazonプライム・ビデオなどを再生可能だ。既存の製品で言えばチューナーレステレビとよく似た仕様だが、LGエレクトロニクスでは「SMART Monitor」を「新しいパーソナルデバイス」と位置づけ、新たな需要に向けた製品展開をする。
付属リモコンのボタンでダイレクト表示できるホーム画面。LGエレクトロニクス製のテレビと同じように、さまざまなアプリが並ぶ。対応が告知されているのはYouTube、Netflix、Disney+、Amazonプライム・ビデオ、Apple TV、U-NEXT、Huluなど。Miracast、AirPlay 2でスマホとの連携もできる
左が付属リモコン(写真は開発中モデルのため、変更の可能性あり)で、右が別売の「マジックリモコン」。付属リモコンによる操作は十字キーで行うシンプルなもの。Netflix、Disney+、Amazonプライム・ビデオ、Rakuten TVのダイレクトボタンが見える
本体への給電は付属するACアダプターで行う
それでは、何がチューナーレステレビと異なるのか? 製品の成り立ちから言えば、テレビから放送波のチューナーを外したのではなく、PCモニターからテレビの仕様に“寄せた”点ということになりそうだ。
しかし、メーカーとしてはもう少し前向きな発信をしている。つまり、コストなどの理由で単にテレビから放送波の受信チューナーを外したという後ろ向きな製品ではなく、現代の需要に合わせて積極的に製品企画/仕様の決定を行った「新しいパーソナルデバイス」であるというのだ。
そういう“気持ち”はともかくとしても、体験会を通じて、確かにこれまでにありそうでなかった製品であるし、独自の利便性があると感じられた。その理由は大きく分けてふたつ。
まずは31.5型で4K(3,840×2,160)解像度という点に注目したい。テレビをベースにして考えると、市場に存在する4Kテレビは40V型から。PCモニターも兼ねたパーソナルユースだと考えると、40V型は少し大きめのサイズだ。その点31.5型は作業用のPCモニターとして大きすぎず、動画の観賞用として小さすぎず、確かにほどよい大きさであると感じる。
現状ではこの大きさのチューナーレス4Kテレビは存在しないわけで、空白地帯をねらったうまい製品企画だなと思う。また、PCモニターとしての側面を意識してのことか、表面処理はアンチグレア。反射・映り込みを減らして、環境を問わず使いやすい製品を目指している。
それだけなればこれまでのPCモニターでこと足りそうだが、「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」はwebOS22を搭載したことで実に“テレビっぽい”製品に仕上がっている。
冒頭のとおり、最新のテレビ同様にさまざまな動画配信サービスに直接アクセス可能だ。自宅でいちいちPCを立ち上げる習慣のないユーザーにもこの点は歓迎されるだろう。映像処理エンジン「α5 Gen5 AI Processor 4K」を搭載していることも、動画をじっくりと楽しみたいという人には重要なポイント。必ずしも最高画質とは言えないインターネット上の配信動画を、テレビ同様の映像処理エンジンがうまく処理してくれると期待できるからだ。特にダイナミックレンジ(明暗の差)が広いHDR映像の最適化(トーンマッピング)は、家庭用映像表示機器では必須となっている。この最適化の良し悪しが画質につながるわけで、さまざまな映像コンテンツを“うまく見せる”ことに腐心しているテレビの映像処理技術を搭載していることは大きなメリットになるはずだ。
映像モードの設定などはLGエレクトロニクスのテレビと基本的に共通。映画をじっくり見たいと思う場合には「FILMMAKER MODE」や「エキスパート」を選ぶとよいだろう
周辺の明るさに応じた輝度自動調整機能「AI輝度設定」などもテレビ譲りの機能。なお、「α5 Gen5 AI Processor 4K」はLGエレクトロニクスのエントリークラスの液晶テレビ「UQ9100PJD」シリーズなどに採用されている映像処理エンジンだ
「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」の映像入力端子はHDMI2系統。うち1系統はeARC/ARC対応で、サウンドバーやAVアンプとの連携がスムーズ。ここはとても“テレビっぽい”。配信コンテンツの音声仕様は5.1chやDolby Atmosなど年々確実に充実している。こうした拡張性があるだけで趣味の製品としての幅が広がるというものだ。
そのいっぽうで、ノートPCへの給電も可能なUSB Type-C端子を装備するため、USB Type-C同士で接続すれば、映像伝送とノートPCへの給電(最大65W)が同時に可能。ここはいかにもPCモニターっぽい。そのほか、USB Type-A端子は3系統装備し、キーボードやマウスを接続しておけばUSB Type-CでつないだノートPCでも利用できる。
先に発売された画面が曲がる4K有機ELテレビ「42LX3QPJA」にもUSBのハブ機能はあったが、USB Type-C端子は装備していなかった。これはPCモニター由来の製品との違いかもしれないが、より幅広く使いやすいのは「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」だろう。
「32SQ780S-W」とノートPCをUSB Type-Cで接続。デスクトップがとてもすっきりとまとまる
HDMI入力、USB Type-C、電源端子などは本体背面に集約されている
画面の右側面にUSB Type-Aを2系統装備
体験会ではキーボードとマウスを「32SQ780S-W」および「32SQ730S-W」とBluetoothで接続。USB Type-Cで接続したノートPCもスムーズに操作できた
さて、「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」を実際に触れてみて、「チューナーレステレビではない」というメーカーの主張には大いに納得できた。「仕事も遊びもこの1台」というのがキャッチフレーズになっているが、ノートPCとの連携を前提にすると、確かに仕事用にも趣味用にもしっかりと役立ちそうな独自性があると感じられたのだ。
ただし、体験会場はとても明るいオープンスペースだったため、画質の詳細を確認できなかったことはつけ加えておきたい。それでも、配信コンテンツやUltra HDブルーレイプレーヤーで再生した4K解像度の映像を見ると、確かに4Kの意義を実感できたのだが。
「SMART Monitor」はとても面白いコンセプトだと思うし、「α5 Gen5 AI Processor 4K」よりも処理能力の高い映像処理エンジンを搭載した製品も見てみたい。さらに有機ELパネルを使った製品にも期待したいところだ。もとより、極まったAVマニアはソニーのプロフェッショナルモニター「BVM」シリーズを映画観賞用に使っていたりもしていたのだから、テレビ放送が見られないことは取り返しのつかないマイナスというわけでもない。むしろ、テレビ放送を見たい、という人は「SMART Monitor」に「全録」レコーダーを組み合わせるとちょうどよいかもしれないとも思う。
「32SQ780S-W」「32SQ730S-W」両製品のMakuakeでの販売期間は2022年12月22日から2023年1月22日まで。台数が限られているが、最大で約「20%オフ」の割引率とのこと。割引後の価格は、「32SQ780S-W」が68,000円(税込)から、「32SQ730S-W」が59,500円(税込)から。割引率は販売台数に応じて抑えられていくので、気になる人は早めにチェックを。
AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。