レビュー

ゲームや動画視聴に強い、お手頃ハイエンドスマホ「Xiaomi 12T Pro」レビュー

シャオミの「Xiaomi 12T Pro」は、19分の超急速「神ジューデン」に対応する、最新のハイエンドスマートフォン。ディスプレイやカメラも高性能で、それでいて8万円台(2023年2月3日時点の価格.com最安価格)という比較的安価な価格が魅力の製品だ。特徴を詳しくレビューしよう。

シャオミの、国内ラインアップではフラッグシップとなるハイエンドスマートフォン「Xiaomi 12T Pro」

シャオミの、国内ラインアップではフラッグシップとなるハイエンドスマートフォン「Xiaomi 12T Pro」

機能にメリハリをつけることで8万円台のプライスを実現

価格の高騰が続くスマートフォンの中でも、特にハイエンドモデルは値上げが顕著だ。なかには、15万円や20万円を超えるものまである。しかし、今回取り上げる「Xiaomi 12T Pro」は、約6.7インチの有機ELディスプレイを搭載するハイエンドモデルながら8万円台(2023年2月3日時点の価格.com最安価格)という割安な価格で注目を集めている。

この低価格を実現しているのはワケがある。詳しくは後述するが、機能性にメリハリをつけることで価格を抑えていると思われる部分があるのだ。たとえば、ボディはIPX3の飛沫防水とIP5Xの防塵に対応しているもの、水没には非対応。前モデル「Xiaomi 11T Pro」と同じくFeliCaポートを備えつつ、ハイエンドスマホでは一般的な気圧センサーは省略されている。といったように、細かい点では価格なりの妥協が見られるのだ。

サイズは約76(幅)×163(高さ)×8.8(厚さ)mmで、重量は約205g。約6.7インチの大画面ディスプレイを搭載していることもあって、なかなかの大型ボディだ。背面は樹脂製で、全体的にカジュアルな雰囲気に仕上がっている。ハイエンドモデルとしてはもう少し高級感があってもよかったと思う

サイズは約76(幅)×163(高さ)×8.8(厚さ)mmで、重量は約205g。約6.7インチの大画面ディスプレイを搭載していることもあって、なかなかの大型ボディだ。背面は樹脂製で、全体的にカジュアルな雰囲気に仕上がっている。ハイエンドモデルとしてはもう少し高級感があってもよかったと思う

ボディ下面に、USB Type-Cポートを配置する。ヘッドホン端子は非搭載

ボディ下面に、USB Type-Cポートを配置する。ヘッドホン端子は非搭載

電源ボタンとボリュームボタンは左側面に配置する

電源ボタンとボリュームボタンは左側面に配置する

カメラ部分の盛り上がりは大きめで、背面を下に置いた場合の安定感はさほどよくない

カメラ部分の盛り上がりは大きめで、背面を下に置いた場合の安定感はさほどよくない

動画視聴に強い大画面ディスプレイや「Harman Kardon」監修のステレオスピーカーを搭載

本機のスペックで注目したいのがディスプレイだ。搭載する約6.7インチの有機ELディスプレイは性能が高く、解像度は、前モデル「Xiaomi 11T Pro」のフルHD+表示から2712×1220表示に高精細化している。リフレッシュレートは30Hz・60Hz・90Hz・120Hzの4段階の可変式で、タッチサンプリングレートは480Hz。ゲーム用途としても十分な性能だ。

さらに、このディスプレイは約680億色の表示(12ビット階調)や、Dolby Vision、HDR10+に対応。動画の超解像補正やAI HDR補正およびフレームレート補間(MEMC)、静止画の色調補正機能なども搭載している(プリンストールの「ギャラリー」アプリ使用時のみ)。

2712×1220表示のディスプレイは、120Hz駆動や各種の補正機能を備えるなど高性能なもの。保護ガラスに「Corning Gorilla Glass 5」を使用しており、キズにも強い

2712×1220表示のディスプレイは、120Hz駆動や各種の補正機能を備えるなど高性能なもの。保護ガラスに「Corning Gorilla Glass 5」を使用しており、キズにも強い

動画の再生に際して、「AI HDR補正」、フレーム補間「MEMC」、「超解像」という3種類の補正機能を利用できる

動画の再生に際して、「AI HDR補正」、フレーム補間「MEMC」、「超解像」という3種類の補正機能を利用できる

ディスプレイ指紋認証に対応。認証速度はかなり速い。精度も高く、検証期間中に認証が通らなかったことは1度もなかった

ディスプレイ指紋認証に対応。認証速度はかなり速い。精度も高く、検証期間中に認証が通らなかったことは1度もなかった

サウンド機能は、高級オーディオメーカーである「Harman Kardon」監修のステレオスピーカーを備えるほか、Dolby Atomsにも対応。このサウンド機能と上記のディスプレイの組み合わせはかなり強力で、動画視聴やゲーム用途の適性は高いと言えよう。

ただし、ヘッドホン端子が非搭載なのと、USB Type-Cのヘッドホンジャック変換アダプターが同梱されていない点には注意。有線ヘッドホンを使用したい場合は、別途変換アダプターを購入する必要がある。

「Snapdragon 8+Gen 1」を搭載した現状の国内最速Androidスマホ

続いて、基本性能を見てみよう。搭載されるのは、クアルコムの2022年型ハイエンドSoC「Snapdragon 8+ Gen1」だ。メモリーの容量は8GBで、ストレージはソフトバンク版が256GB、一般流通版(いわゆるSIMフリー)は128GBで、microSDカードはいずれも非対応だ。OSは、Android 12をベースにした「MIUI 13」を使用する。「MIUI 13」は、デフラグや仮想メモリー機能を備えるなど、OSの内部まで改良が加えられている。設定画面の構成やプルダウン画面が通知と機能呼び出しで分かれているなど、操作性も独特で、Androidの標準的な操作が好まれる傾向の日本では評価が分かるかもしれない。アイコンや文字サイズを大きくする「シンプルモード」も用意されているが、本機は、スマートフォンを使い慣れた人のほうが魅力を感じやすいのではないだろうか。

搭載するSoC「Snapdragon 8+ Gen1」は、「Snapdragon 8 Gen1」をベースに、動作クロックを1割ほど向上させつつ、製造工場をサムスンから効率にすぐれると言われるTSMCに変更することで発熱を抑えている。定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク バージョン9.X」を使い、実際の処理性能を計測したところ、総合スコアは1031535(内訳、CPU:245722、GPU:453681、MEM:158161、UX:173971)となった。なお、「Snapdragon 8 Gen1」を搭載するシャオミ「POCO F4 GT」のスコアは969419(内訳、CPU:218997、GPU:422716、MEM:164745、UX:162961)なので、総合スコアは約6〜7%、サブスコアに目を向けるとCPUとGPUはそれぞれ10%ほどスコアが向上しており、クロックアップした分の性能向上が確認できる。

AnTuTuベンチマークの結果。左が「Xiaomi 12T Pro」で、右が「Snapdragon 8 Gen1」を搭載する「POCO F4 GT」のもの。CPUとGPUがクロックアップした10%分スコアが向上している

AnTuTuベンチマークの結果。左が「Xiaomi 12T Pro」で、右が「Snapdragon 8 Gen1」を搭載する「POCO F4 GT」のもの。CPUとGPUがクロックアップした10%分スコアが向上している

実際に本機を使ってみた限り、体感での動作速度はきわめて速く、Androidスマートフォンとしては現状で最高レベルを実現していると感じた。熱耐性も高いようで、要求されるスペックの高さ知られるゲーム「原神」を高画質に設定して1時間ほどプレイしてみたが、動作は概して安定していた。また、120Hz駆動と480Hzのタッチサンプリングレートも体感速度の向上には有効だ。ハイエンドとしては少なめな8GBのメモリーについては、そこまで決定的ではないものの、複数の大作ゲームを平行しつつ切り替えて遊ぶような状況では、アプリが早めに自動終了する場合があった。

気になったのは、一般流通版の128GBのストレージだ。ゲームを中心に近ごろのアプリは一部で大容量化が進んでおり、上述の「原神」では20GBを軽く超える。加えて、本機は、後述するように2億画素のカメラを備えているので、ストレージの消費も多くなりやすい。256GBのストレージを搭載するソフトバンク版ならさほど気にならないが、一般流通版と比べて5万円近い価格差があるのが気になるところである。

ミリ波とNTTドコモのn79に非対応。ドコモ系5G対応SIM利用時には注意が必要

通信性能は、ソフトバンク版と一般流通版で共通で、nanoSIMとeSIMに対応したデュアルSIMスロットを搭載。4Gについては国内4キャリアすべての主要周波数帯やプラチナバンド、緊急災害速報やSUPL(110番発信の際などで相手に正確な位置を伝える機能)に対応している。

いっぽう、5Gについては、高周波数のミリ波帯には対応しておらず、低周波数のSub-6帯についてもNTTドコモの使用するn79には対応していない。n79はNTTドコモの5Gでは主要周波数帯なので、同社の5G対応SIMを使った場合、エリアや通信速度に影響は少なからずあるだろう。

nanoSIMとeSIMに対応したデュアルSIM機で、2個の電話番号を使い分けるDSDV機として運用できる

nanoSIMとeSIMに対応したデュアルSIM機で、2個の電話番号を使い分けるDSDV機として運用できる

画質が大幅に改善し、使い勝手にも配慮された約2億画素のメインカメラ

本機は、ハイエンドスマートフォンらしくカメラにも力が入っている。メインカメラは1/1.22インチセンサーを使った約2億画素の広角カメラ、約800万画素の超広角カメラ、約200万画素のマクロカメラという組み合わせのトリプルカメラだ。

広角カメラは、4個あるいは16個のサブピクセルを仮想的にひとつにまとめるピクセルビニング機能を備えることで、高画素化で低下する感度性能を補っている。また、毎秒30コマの連写機能や、動く被写体を追尾する「モーショントラッキング」機能を追加するなど、オートフォーカスも強化されている。

約2億画素の広角カメラなど3基のカメラを搭載する

約2億画素の広角カメラなど3基のカメラを搭載する

広角カメラ(標準モード)で撮影

約1250万画素の初期設定で撮影。光量を確保しつつ明暗差を吸収している。ファイルサイズは4MB程度と少なく、かつ撮影のレスポンスも良好なので、日常の撮影で使いやすいだろう<br>撮影写真(4096×3072、4.2MB)

約1250万画素の初期設定で撮影。光量を確保しつつ明暗差を吸収している。ファイルサイズは4MB程度と少なく、かつ撮影のレスポンスも良好なので、日常の撮影で使いやすいだろう
撮影写真(4096×3072、4.2MB)

広角カメラ(200MPモード)で撮影

200MPモードで撮影。上と同じ構図だが多少アンダー気味に仕上がった。なお、元データは約45MBときわめて大きくなった<br>撮影写真(16384×12288、45.3MB)

200MPモードで撮影。上と同じ構図だが多少アンダー気味に仕上がった。なお、元データは約45MBときわめて大きくなった
撮影写真(16384×12288、45.3MB)

上記作例の切り出し画像(900×600)

上の作例の構図中央を900×600で切り出した等倍の画像。駅舎のレンガブロックや石製の窓枠の装飾もしっかりと写っている

上の作例の構図中央を900×600で切り出した等倍の画像。駅舎のレンガブロックや石製の窓枠の装飾もしっかりと写っている

広角カメラで撮影

窓から景色を望む明暗差の大きな構図。オートHDRが動作している。遠景のハイライト、室内の暗部ともにディテールは保たれている<br>撮影写真(4096×3072、3.8MB)</small>

窓から景色を望む明暗差の大きな構図。オートHDRが動作している。遠景のハイライト、室内の暗部ともにディテールは保たれている
撮影写真(4096×3072、3.8MB)

超広角カメラで撮影

超広角カメラで撮影。広角カメラの作例と同じようなトーンに仕上がっている。一部にフレアが現れており、明暗差にはそれほど強くないようだ

超広角カメラで撮影。広角カメラの作例と同じようなトーンに仕上がっている。一部にフレアが現れており、明暗差にはそれほど強くないようだ
撮影写真(3264×2448、2.18MB)

広角カメラで撮影

明るめな夜景を撮影。全体的にクリアな描写で、路面の舗装もしっかり解像しており、かなりハイレベルな仕上がりだ。同程度の光量で50ショットほど撮影してみたが、光学式手ブレ補正を備えていることもあって、明らかな手ぶれがみられたのは2枚だけだった

明るめな夜景を撮影。全体的にクリアな描写で、路面の舗装もしっかり解像しており、かなりハイレベルな仕上がりだ。同程度の光量で50ショットほど撮影してみたが、光学式手ブレ補正を備えていることもあって、明らかな手ぶれがみられたのは2枚だけだった
撮影写真(4096×3072、4.56MB)

超広角カメラで撮影

ノイズが抑えられているうえ、暗部とハイライトの極端な飽和もなく、手堅い仕上がり。ただし、やや発色が抑えられており、広角カメラの作例と比べると鮮やかさに違いが出た

ノイズが抑えられているうえ、暗部とハイライトの極端な飽和もなく、手堅い仕上がり。ただし、やや発色が抑えられており、広角カメラの作例と比べると鮮やかさに違いが出た
撮影写真(3264×2448、2.08MB)

前モデルの「Xiaomo 11T」および「Xiaomi 11T Pro」は、鮮やかさを強調するあまり不自然な部分があったが、本機は一転して堅実な画質だ。特に約2億画素の広角カメラは、ハイエンド機にふさわしい実力を持っている。

いっぽう、今回は作例を載せなかったが、マクロカメラは約200万画素ということもあって、それほど高画質な写真は撮れない。超広角カメラもハイエンドクラスとしては今ひとつで、広角カメラが突出して高性能な印象だ。このあたりも機能にメリハリを付けている部分と言えるだろう。

19分でフル充電できる超高速「神ジューデン」に対応

スマートフォンにとってバッテリー持ちは課題であり続けている。特に、「Xiaomi 12T Pro」のような性能重視のハイエンドモデルはバッテリーの消費が激しい。

本機は5000mAhのバッテリーを内蔵している。バッテリー持ちに関するスペックを見ると、連続通話時間(4G)は約1878分、連続待受時間(5G)は約311時間と、バッテリーの持続性はそれほど高くない。しかし、本機は、ソフトバンクが「神ジューデン」としてアピールしている、同梱の充電器を使った120W急速充電時ならわずか19分でフル充電が行える。(ブーストモード時)。それほど長くないバッテリー持ちを、超急速充電でカバーしている形だ。

充電器は120W出力としては比較的コンパクト。同梱の専用ケーブルは大電流に耐えるように太めなので、取り回しには多少の注意が必要だろう

充電器は120W出力としては比較的コンパクト。同梱の専用ケーブルは大電流に耐えるように太めなので、取り回しには多少の注意が必要だろう

実機で試した限り、ブーストモード時は、スペックどおり19分台で充電が完了した。また、通常モード時でも約25分でフルチャージが行えたことを付け加えておこう。

ちなみに、前モデル「Xiaomi 11T Pro」は5000mAhのバッテリーを17分で充電できたので、本機のほうが実は2分ほど充電時間が延びている。これは、「Xiaomi 11T Pro」は2500mAh×2のデュアルセルバッテリーだったのが、本機は5000mAh×1のシングルセルに改められていることが原因だ。

19分の「神ジューデン」は初期設定ではオフになっており、設定→バッテリーとパフォーマンス→バッテリー→充電速度のブースト→「充電速度のブースト」トグルをオンにすることで利用可能となる

19分の「神ジューデン」は初期設定ではオフになっており、設定→バッテリーとパフォーマンス→バッテリー→充電速度のブースト→「充電速度のブースト」トグルをオンにすることで利用可能となる

目の肥えたユーザーの期待に応えられる実力。得意と不得意を把握して選びたい

ハイエンドスマートフォンには、快適な動画視聴やゲームプレイ、高品質なディスプレイ、高画質なカメラなどのハイスペックが求められるが、本機は目の肥えたユーザーの期待に応えるだけの実力がある。「Snapdragon 8 Gen1」搭載機で指摘されていた発熱問題はいくらか改善されているのも見逃せない点で、近ごろのハイエンド機の中では完成度の高い部類に入ると言えよう。魅力は、ソフトバンクが積極的にアピールしている「神ジューデン」だけではないのだ。

そのいっぽうで、水没には耐えられないボディ、ストレージとメモリーの容量が少なめで、ヘッドホン端子がなく、超広角カメラやマクロカメラの性能はほどほどと、価格を抑えるためにスペックを限定したと思われる部分が見られる。本機を選ぶに当たっては、ある程度割り切った部分があることを理解しておこう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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