レビュー

EPOS「GSX 1000 2nd edition」は音質・サラウンドにこだわる有線ゲーミングヘッドセット派のマストアイテム!

今やヘッドホン・イヤホン・ヘッドセット市場で大きな地位を占めるゲーミング関連のデバイス。EPOSが手がける「GSX 1000 2nd edition」は、数年前から同社が取り組む“ゲーミングDAC”と呼ばれる新ジャンルデバイスの代表モデルだ。ちなみに、オリジナルの「GSX 1000」はEPOSの前身に当たるゼンハイザーコミュニケーション社から2017年に登場していて、意外と歴史ある製品カテゴリーでもある。

今回はそんなEPOS「GSX 1000 2nd edition」をレビューしつつ、“ゲーミングDAC”という製品カテゴリー全体についても解説していきたい。

EPOSのゲーミングDAC「GSX 1000 2nd edition」をレビュー

EPOSのゲーミングDAC「GSX 1000 2nd edition」をレビュー

近年、“ゲーミングヘッドセット”が大きな盛り上がりを見せている。当初はゲーミングデバイスメーカーが中心に製品展開を行っていたが、今では大手オーディオメーカーも本腰を入れて参戦し、製品数もぐんぐんと増え続けている。その大きなけん引役となっているのがPCゲーマーで、そのなかでも中心的な人達がFPS/TPSゲーマーと呼ばれるコアユーザーだ。

ゲーミングヘッドセット黎明期は、足音を正確に聴きわけ、ゲームプレイをいかに有利に進められるかという部分が重要なファクターだったが、最近ではより高音質で快適にゲームのサウンドを体験したいというニーズも増え、7.1ch対応などのバーチャルサラウンド音響の考え方も徐々に広まりつつある。また、FPS/TPSゲームではボイスチャットによる声のコミュニケーションも重要なため、マイク機能の切り替えや調整を手元でより簡単に操作できるようにしたいという要望も増えているようだ。

そんなゲーミングヘッドセットだが、利便性を重視し、ハイエンドモデル中心に専用のUSBドングルを活用した2.4GHzワイヤレス接続が増えているいっぽうで、音質や遅延、価格面で有利なこともあり、標準的な3.5mmステレオミニプラグを採用する製品も根強く残っている。そういったお気に入りの有線ヘッドセットでも、専用ハードウェアを介してバーチャルサラウンド化でき、マイク機能の切り替えや調整も手元で簡単に操作できるというゲーマーの求める機能を外付けのハードウェアとしてまとめあげた製品が“ゲーミングDAC”と呼ばれるジャンルの製品であり、今回紹介する「GSX 1000 2nd edition」というわけだ。

ゲーマーの求める機能を外付けのハードウェアとしてまとめあげた「GSX 1000 2nd edition」

ゲーマーの求める機能を外付けのハードウェアとしてまとめあげた「GSX 1000 2nd edition」

「GSX 1000 2nd edition」は音声入力にUSBを使用し、音声出力に3.5mmステレオミニ端子を使用する、いわゆるUSB DAC/アンプだ。USB DACとしての音声フォーマットは48kHz/16bit固定。一般的なUSB DAC/アンプと異なるのは、PCからは7.1chサラウンド対応デバイスとして認識されることで、サラウンド機能は「GSX 1000 2nd edition」の内蔵DSPで実行される。7.1ch信号を入力した上でバーチャルサラウンド化でき、PCゲームのサラウンド音声信号を正しく再現できるサラウンドデバイスでもあるのだ。

本体のみで音質の細かなカスタマイズが可能

前置きが長くなったが、さっそく「GSX 1000 2nd edition」を触っていこう。

「GSX 1000 2nd edition」のセットアップ自体は付属のUSB Type-C(USB A to C)ケーブルで接続するのみと非常に簡単。基本操作にPCソフトウェアを導入する必要はない(ファームウェア更新用のソフトウェアのみあり)。なお、Windows環境ではドライバー導入も必要ないが、7.1chサウンドデバイスとして認識されているかはしっかりと確認しておいたほうがよいだろう。あとは背面の3.5mmのステレオミニ端子にゲーミングヘッドセットやヘッドホン、イヤホンやマイク、スピーカーといった接続したい機器を接続すれば準備完了だ。

PCとはUSB Type-Cで接続(USB A to Cケーブルが付属)。ヘッドホン出力、マイク入力、スピーカー出力の各端子は独立するPC仕様

PCとはUSB Type-Cで接続(USB A to Cケーブルが付属)。ヘッドホン出力、マイク入力、スピーカー出力の各端子は独立するPC仕様

PCに接続してスピーカーとして認識したデバイスを選んで「構成」を選択

PCに接続してスピーカーとして認識したデバイスを選んで「構成」を選択

7.1chスピーカーとしてセットアップしていく

7.1chスピーカーとしてセットアップしていく

「GSX 1000 2nd edition」の基本操作は、本体天面の大型ダイヤルとダイヤル内側に搭載されたタッチパネルを使う形。直感的な音量操作と、タッチパネルに表示されるアイコンをタッチするだけの簡単な操作で音響効果を素早く切り替えられるのがウリだ。

手元のダイヤル操作で直感的に音量操作ができるだけでも利便性抜群

手元のダイヤル操作で直感的に音量操作ができるだけでも利便性抜群

チャット音声の音量調整ホイールは本体横に配置されている

チャット音声の音量調整ホイールは本体横に配置されている

「GSX 1000 2nd edition」のタッチパネルに用意された設定ボタン

「GSX 1000 2nd edition」のタッチパネルに用意された設定ボタン

タッチパネルに表示されるボタンから調整できる項目は下記のとおりだ(写真左上から時計回り順)。

・Output device
ヘッドセット/スピーカータップで出力先をヘッドセットとスピーカーを切り替えできる

●EQ presets
音質モード。タップで無効/e-Sports/Music/Storyを切り替えできる

●Directional Sound
サラウンド時のサラウンドの聴こえ方。前方重視、後方重視、フラットと切り替え可能

●2.0 Stereo/7.1 Surround Sound
出力時のステレオ出力とバーチャルサラウンド7.1chの切り替え

●Sidetone level
ヘッドホン出力時に自分の声の取り込みレベルを調整できる

●Reverbation level
リバーブ、つまり残響音の設定。バーチャルサラウンド7.1ch出力時のみ利用可能

以上の設定ポイントを押さえつつ、次章から実際の効果の具合をレポートしていこう。

「GSX 1000 2nd edition」の音質とサラウンド体験をチェック

まず、「GSX 1000 2nd edition」を使った音質からチェックしていこう。ヘッドセットは純正の組み合わせを想定し、同社の有線・開放型ハイエンドモデル「H6」を用意した。

「GSX 1000 2nd edition」に「H6」を接続してチェックを開始

「GSX 1000 2nd edition」に「H6」を接続してチェックを開始

まずは音楽リスニングを体験してみたが、ナチュラルで繊細・高解像、伸びや歌声も美しいEPOSらしい高音質サウンドが耳に飛び込んでくる。PCのヘッドホン出力と比較してみると、音のS/Nの高さ、純度の高さがまるで違う。さすがUSB DAC/アンプと呼ぶべき、とても優秀なサウンドだ。

ちなみに、ゲーミング用途だけでなく、音楽リスニングなどにも「EQ presets」は切り替え可能。初期設定からe-Sportsに切り替えると低域をカットした高域強調、Musicは低域重視、Storyはさらに映画的な重低音重視なサウンドにシフトする。

ゲーム以外のコンテンツを楽しむときも、タッチパネルから各種設定を切り替えできる

ゲーム以外のコンテンツを楽しむときも、タッチパネルから各種設定を切り替えできる

もちろん「2.0 Stereo/7.1 Surround Sound」も設定可能で、7.1 Surround Soundに切り替えると前後方向のサラウンドをプラスしてくれる。さらに、7.1 Surround Sound設定時は「Directional Sound」と「Reverbation level」も調整可能。単純な音質としてはやはり2.0 Stereoで「EQ presets」などを一切かけない状態がよいが、これも聴く音源次第。たとえば、7.1chにしつつ空間を狭めたいなら「Directional Sound」で前方重視、少しライブ感がほしいなら「Reverbation level」を1段階のみ追加と、自分好みにカスタムして聴けるところが本機の面白さだ。

「GSX 1000 2nd edition」さえ使っていれば、手持ちのヘッドセットだけでなく、ヘッドホンやイヤホンでもなんでもサラウンド化できるわけで、映画などの映像コンテンツ視聴との相性も抜群だ。Windowsアプリ版のNetflixではきちんとサラウンドで視聴可能で(音源上の扱いは5.1ch)、音もしっかりと背後まで回り込む。ゲーミング以外にもエンタメ目的で導入もアリだ。

なお、スピーカーについても手元にあったCreative「Pebbles v2」で音楽を流してみたが、スピーカー出力時で設定できるのは「EQ presets」のみのようで、効果そのものはヘッドホン出力端子とおおむね同じ。音質はスピーカー次第だが、サウンドは空間志向寄り。なお、スピーカー出力端子も音量可変での出力となっており、音量調整を接続機器側でなく手元の「GSX 1000 2nd edition」から操作できるのは便利だ。

スピーカー併用派もワンボタンで出力先を切り替えできるので便利

スピーカー併用派もワンボタンで出力先を切り替えできるので便利

続いてPCによるゲームのサラウンドも体験してみた。まずは『Apex Legends』。言わずと知れたバトルロイヤル系ゲームの代表作だが、本作はPCでプレイしてもゲーム内の音はサラウンド化されておらず、2chのステレオのみで制作されている。

『Apex Legends』はサウンドとしては2chステレオだが、7.1ch化と相性がよい

『Apex Legends』はサウンドとしては2chステレオだが、7.1ch化と相性がよい

実際に「GSX 1000 2nd edition」で「2.0 Stereo/7.1 Surround Sound」を切り替えつつ足音の聴きとりやすさを確認してみると、2chのステレオによる聴こえ方も悪くないが、前後方向が加わる7.1chのほうが圧倒的に位置を把握しやすい。足音の帯域もクッキリして鳴るところもプラスだ。「EQ presets」は低音が不要かつ足音を強調したいならe-Sportsの設定を使ってもよいが、個人的にはデフォルトのほうが気に入った。

次に、PC版の『DEATH STRANDING』をプレイ。本作はサラウンド制作されているタイトルで……実際にゲームのサラウンド体験してみてみると驚いた。完全に背後まで回り込む音場の再現性は、まさに映画のような距離感のあるサウンドフィールドだ。雨音の高さの再現まで異次元なほどの没入感をもたらす。そして、ムービー部分の臨場感はまるで映画館で体験しているようだ。

サラウンド制作の『DEATH STRANDING』は臨場感抜群。有線ヘッドセットでもここまでリアルな体験を楽しめるというのは、「GSX 1000 2nd edition」ならでは

サラウンド制作の『DEATH STRANDING』は臨場感抜群。有線ヘッドセットでもここまでリアルな体験を楽しめるというのは、「GSX 1000 2nd edition」ならでは

サラウンドヘッドホンではなく、「GSX 1000 2nd edition」のようなゲーミングDACでこれほどのサラウンド効果を得られるというのは正直驚き。競技性のないゲームなので、「Reverbation level」を引き上げて臨場感重視でプレイしてもいい。

【まとめ】音質にサラウンドにもこだわる有線ゲーミングヘッドセット派のマストアイテム

EPOS「GSX 1000 2nd edition」のサウンド体験としては以上のとおり。さすがにサラウンドの7.1chの体験はとても優秀で、ゲーミングヘッドセットで音の定位感、臨場感をアップしたいという人はぜひ試していただきたい。ゲーミングDACを導入することで、有線ヘッドセットの音質がPCのアナログ出力のクオリティに依存することがなく、高品位なヘッドホン出力が保証されるところも万人向けだ。

操作性という面でも、ゲーミングDACはとても優秀だ。僕はマウス近くの位置に「GSX 1000 2nd edition」を置いて検証したが、音量を少し調整したいという時に手を伸ばしてダイヤルで直感的に操作できるのはやはり便利。そして、「2.0 Stereo/7.1 Surround Sound」を切り替えたり、「EQ presets」を操作したり、また「Sidetone level」変えたりと、ちょっとしたカスタマイズ機能が、PCソフトでなく手元でできるところが直感的で扱いやすい。

ゲーマーの求める音質、サラウンド、操作性のすべてが1台揃うのがゲーミングDACの魅力

ゲーマーの求める音質、サラウンド、操作性のすべてが1台揃うのがゲーミングDACの魅力

ゲーミングヘッドホンは音質重視で有線派、だけどサラウンドや操作性にもこだわりたい−−。そんな人はEPOS「GSX 1000 2nd edition」の導入を検討してみてほしい。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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