春の新生活シーズンを前に、iPadの購入を検討している人も多いことでしょう。しかし、iPadは現行で6モデルが販売されているため、購入時にはどれを選ぶべきか悩みがち。本記事では、iPadのラインアップを改めておさらいし、各モデルの特徴や、選び方のポイントについて確認していきます。
iPadの選び方を徹底解説
iPadは、2023年3月時点、Apple Store(オンライン)にて、以下の4シリーズ、計6モデルが展開されています。
・iPad Pro 11インチモデル(第4世代):2022年10月発売、M2チップ搭載
・iPad Pro 12.9インチモデル(第6世代):2022年10月発売、M2チップ搭載
・iPad Air(第5世代):2022年3月発売、M1チップ搭載
・iPad(第9世代):2021年9月発売、A13チップ搭載
・iPad(第10世代):2022年10月発売、A14チップ搭載
・iPad mini(第6世代):2021年9発発売、A15チップ搭載
上位モデルの「iPad Pro」と「iPad Air」は、Macシリーズでもおなじみの「M」シリーズのチップセットを採用しており、PC顔負けの処理性能の高さを誇ります。エンコードやデコードなどメディア処理のための専用回路である「メディアエンジン」によって、動画編集作業などを効率的に行えることもポイントです。
いっぽう、そのほかのモデルではiPhoneでも使われている「A」シリーズが採用されています。ただ、モデル間でチップセットの世代に差はありますが、一般的な作業ではその性能差を意識する必要はほぼありません。最も古い「A13」チップでも、「iPhone 11」シリーズに搭載されたものと同じ。一般の用途でアプリ使用や動画編集などを使って困ることはまずないと言えます。
具体的な機種をチェックしていくと、最上位モデルは「iPad Pro」の2機種です。「iPad Pro」には、12.9インチと11インチの2種類が用意されていて、ディスプレイなど仕様においてなどわずかに差も設けられています。なお、インチ数はディスプレイの対角線の長さを意味します。
「iPad Pro」
「iPad Pro」よりも安価に入手できる選択肢としては「iPad Air」や無印の「iPad」があります。無印の「iPad」については、使用できるアクセサリーが一部制限されるなど、上位モデルとの差分はやや大き目です。なお、無印の「iPad」は最新の第10世代モデルのほか、前世代の第9世代も併売されています。
「iPad Air」
「iPad(無印)」
「iPad mini」は、ほかの機種に比べてひと回り以上コンパクトです。ゆえに想定できる用途もやや特殊だと言えます。価格は、無印の「iPad」よりも少し高めです。
「iPad mini」
次項からは、それぞれのモデルについて、主にどんな特徴を持っていて、どのような用途に適しているか、解説していきましょう。
ラインアップの中で最上位のモデルが、12.9インチの「iPad Pro」です。「MacBook Air」の画面サイズが13.3インチですから、12.9インチというのはそれよりもほんの少し小さいくらい。モバイルノートPCくらいの表示領域が確保できます。
Apple Storeにおける端末価格は、最小構成で172,800円(税込。以下同)。キーボードや「Apple Pencil」を揃えるとさらに数万円かかりますので、予算としては20万円台を想定しておく必要があります。
12.9インチモデルの検討をおすすめするのは、職業として、あるいは趣味として高いレベルでクリエイティブな作業を行う人です。たとえば、漫画やイラストを描く作業や、カメラで撮影した写真のディティールを確認するモニターとしての用途、動画編集作業、CAD系アプリなどでの図面確認などが該当するでしょう。大きくてキレイなディスプレイがいちばんの魅力です。
クリエイティブな作業を高いレベルで行うのに最適な「iPad Pro(12.9インチ)」
いっぽう、イラスト制作や動画編集などに挑戦したいものの、「12.9インチモデルは高すぎて購入できない」という場合には、11インチの「iPad Pro」が候補に上がってきます。画面サイズはひと回りコンパクトになりますが、こちらは最小構成で124,800円から。周辺機器を揃えても20万円弱で済みます。画面サイズや最大輝度の差に目をつぶれば、12.9インチモデルと共通点が多く、コストパフォーマンスは高めです。
価格をより抑えたい人は「iPad Pro(11インチ)」も候補
11インチモデルは、重量が466g〜と、12.9インチモデル(682g〜)と比べて200g以上軽いこともメリット。MacBookなどとの2台持ちを検討する人にとっては、携行時の負担が軽くなります。
ちなみに、「iPad Pro」シリーズの2モデルには、背面カメラに「LiDARスキャナ」というセンサーが搭載されているので、AR系のアプリで空間を認識する精度が高くなっています。特に、軽くて持ちやすい11インチモデルは、ARアプリとの相性がいいことも見逃せません。
イラスト制作や動画作成などクリエイティブな作業はさほど重視せず、もう少し安価にiPadを入手したい、という場合には「iPad Air」が狙い目です。その価格は最小構成で92,800円〜。周辺機器を含めても10万円台なかばで済みます。
「iPad Air」
「iPad Air」の画面サイズは10.9インチ。「iPad Pro」シリーズはカラーバリエーションが2種類しかなかったのに対し、「iPad Air」はカラフルな5色が用意されています。背面に超広角カメラやLiDARスキャナを備えないことを除けば、外観的な差もほとんどありません。コストパフォーマンスを重視するならば、「iPad Air」が最優先候補になるでしょう。
いっぽう、上位の「iPad Pro」と比べて、仕様や体験に差がないわけではありません。たとえば、「iPad Air」以下のモデルはディスプレイのリフレッシュレートが120Hzに対応していないので、「Apple Pencil」を画面上で素早く走らせたときに、線の描画が少し遅れてついてくるような感覚になります(※Apple製品では、これを「ProMotionテクノロジー」の対応、非対応として表現します)。
また、オーディオに関しては、「iPad Pro」シリーズでは4つのスピーカーと5つのスタジオ品質マイクを備えますが、「iPad Air」以下ではステレオスピーカーと2つのマイクに下がります。つまり、イラストを描いたり、動画視聴を内蔵スピーカーで楽しんだりしたい場合には、「iPad Pro」シリーズより体験が少し劣ることになるのです。
こうした特徴を踏まえると、「iPad Air」は、主にiPadをノートPC代わりにしたい人に適している端末だと言えます。たとえば、メインのPCとしてデスクトップタイプの製品を使っていて、モバイル用のサブマシンとしてiPadを考えている人、あるいはiPhoneの操作に慣れているけれど新たにMacの操作を覚えるのは嫌なのでiPadをPC代わりに活用したいと考えている人などにおすすめです。
ノートPCライクな使い方なら「iPad Air」が有力候補
実際、周辺機器をうまく使えば、メールチェックやブラウジング、書類制作などは快適に利用できます。
10万円台なかばでも予算を捻出するのは厳しい、とにかく予算を抑えてiPadを購入したい、といった場合には、無印の「iPad」をチェックしましょう。無印の「iPad」は、「第10世代」と「第9世代」の2モデルが併売されています。
無印の「iPad」は、最新の第10世代と第9世代の2モデルがラインアップ
まず、「iPad(第10世代)」の画面サイズは10.9インチで、「iPad Air」と共通しています。搭載するポートもUSB Type-Cの形状に代わり、ホームボタンを備えない新世代型のデザインに変わっています。カラーバリエーションもポップな4色が用意されています。実売価格は68,800円。周辺機器を含めても10万円前後で収まります。
たとえば、専用に設計された純正キーボードとして、トラックパッドも備えた「Magic Keyboard Folio」(3万8800円)を合わせるなら10万7600円〜です。ゆえに、「iPad Air」と同様にノートPC風の運用を想定している人、なおかつ「Apple Pencil」を重視しない人ならば、「iPad(第10世代)」を検討するとよりコストを抑えられると理解しておきましょう。
「iPad(第10世代)」でも、「iPad Air」と同様にノートPCライクな使い方が可能。ただし、スペックが下がるほか、外部ディスプレイへの画面拡張などは利用できません。
ただし、「iPad(第10世代)」以下のモデルでは、搭載するチップセットが「M」シリーズではないため、外部ディスプレイに接続した際の画面拡張は利用できません。ノートPCライクに運用するうえで、マルチタスクが行いづらいデメリットは理解しておきましょう。
また、対応する「Apple Pencil」が第1世代のままであることにも注意が必要です。「iPad Pro」シリーズや「iPad Air」シリーズ、後述する「iPad mini」シリーズが対応する第2世代では、端末側面にマグネットで固定しながらペアリング・充電を行えますが、第1世代ではLightning端子経由での充電やペアリングが必須です。
USB Type-Cポートを備える「iPad(第10世代)」用に、専用のアダプターが用意されてはいますが、ペンに関する部分の取り回しはあまりいいとは言えません。すでに過去機種で第1世代の「Apple Pencil」を活用してきていて、それを買い替え後にも流用したいという人向けの仕様だと言えます。
続いて、「iPad(第9世代)」は、まだ正面にホームボタンを備えた旧世代デザインのモデルです。価格は、49,800円〜と非常に安価に入手できますが、ホームボタンによほどのこだわりがなければ、長期的な運用を想定するうえで「iPad(第10世代)」や「iPad Air」を検討したほうがよいでしょう。
いっぽう、「家族共用の電子書籍ビューアーとしてリビングに設置しておきたい」や「小〜中学生が使ううえで、壊れてもいい端末として購入したい」のように、導入後の用途が限定されるのであれば、検討する価値は大いにあると言えます。
最後の「iPad mini(第6世代)」は、画面サイズが8.3インチで、製品名のとおり、ほかの機種と比べるとひと回りコンパクトです。実売価格は78,800円〜と、先述の「iPad(第10世代)」などと比べて少し高めなので、コスト重視で選ぶ端末というわけでもありません。
たとえば、小型のポーチやバッグに入れての携行しやすさを重視する場合には、「iPad mini」のサイズ感がメリットになります。「Apple Pencil」も第2世代に対応しているので、手書き中心のビジネス手帳として運用するのはアリでしょう。また、両手で長くホールドしていやすいため、電子コミックやストリーミング動画用のビューワーとして、あるいは「Apple Arcade」を遊ぶためのゲーミング機として、適していると言えます。
「iPad mini」は、ほかのシリーズと比べて、手書きのノートや手帳代わりでの利用がメイン。そのほか、エンタメ用マシンとしてもすぐれています
いっぽう、「iPad mini」は、現行のラインアップの中で唯一、Smart Connector(スマートコネクタ)端子を備えていないモデルであることは理解しておきましょう。Smart Connectorはキーボードなどアクセサリーの接続に用いられる端子であり、これに対応した周辺機器はペアリング操作や充電管理などが不要になるメリットがあります。
「iPad mini」ではこれを利用できないので、もし物理キーボードを使いたい場合には、うまくワイヤレスキーボードや有線キーボードなどを活用する必要があります。
つまり、画面が小さく、Smart Connector対応のキーボードケースなども用意されていないため、「iPad mini」はノートPCのような運用にはあまり向きません。
本体のカラー以外に、購入時に選択することになる仕様について補足しておきます。まず、「容量(ストレージ・ROM)」は、その端末にどのくらいの量のデータを保存できるのかを意味する値です。容量が大きくなるほど高価になるので、想定用途に適したバランスのいい容量を選びましょう。
たとえば、「iPad Pro」シリーズの2モデルは128GB、256GB、512GB、1TB(=1000GB)、2TB(=2000GB)の5種類を選択できますが、積極的に映像制作を行う想定ならば1TB以上のモデルを選ぶのがおすすめです。その場合、実売価格は236,800円〜となり、最小構成の124,800円と比べて2倍近く高額になります。
「iPad Air」は、64GBモデルと256GBの2種類を選択できます。最小構成だと92,800円で済みますが、64GBのストレージではクリエイティブ系の作業への挑戦は難しく、OSのアップデートなどでも容量確保に苦労することになるでしょう。特殊な事情がない場合、256GBモデル(116,800円〜)を選ぶことをすすめます。その場合、11インチ/128GBモデルのiPad Pro(12万4800円〜)を視野に入れてもよいでしょう。
続いて、「Wi-Fiモデル」と「Wi-Fi + Cellularモデル」の違いについてです。これは別途通信プランを契約することで、iPad単体でモバイル通信ができるかどうかの違いを意味しています。「Wi-Fi + Cellularモデル」の場合には、価格が+24,000円ほど高くなりますが、想定用途によっては追加しておくべき仕様です。
たとえば、「iPad Proで編集した動画を、そのまま現場で動画投稿サービスにアップロードしたい」「iPad AirをノートPCのように使って、さまざまな場所でメールチェックをするつもり」「旅をしながらiPad miniを持ち歩いて地図表示や情報検索などをしたい」といった想定ならば、単体で通信できたほうが便利です。
そして、こうした「容量」や「Wi-Fi + Cellular」といった特徴は、一度購入したあとに増設で対応することはできません。どうしても初期費用はかかりますが、後悔しないように、少し背伸びするくらいの構成にして注文することも考えておきましょう。
パソコン・家電からカップ麺に至るまで、何でも自分で試してみないと気が済まないオタク(こだわり)集団。常にユーザー目線で製品を厳しくチェックします!