圧倒的なコスパを武器に国内でも快進撃を続けるシャオミ。「Redmi 12C」は、そんなシャオミが手がける、19,800円からという低価格が魅力の新しいエントリースマホだ。高コスパで知られた前モデル「Redmi Note 11」および「Redmi Note 10T」との違いに着目したレビューをお届けしよう。
物価上昇や先行きの見えにくい経済状況といった背景もあり、エントリー向けのスマートフォンが近ごろ増えている。「Redmi 12C」もそうしたエントリー向けの製品として2023年3月16日に発売された。注目なのはその価格で、3GBメモリー+64GBストレージモデルが19,800円、4GBメモリー+128GBストレージが23,800円という価格は、コストパフォーマンスの高さで知られる前モデル「Redmi Note 11」の発売当初における24,800円(いずれも税込)よりもさらに安い。
そんな本機のボディは、サイズが76.41(幅)×168.76(高さ)×8.77(厚さ)mm、重量が約192gと大きめで、ディスプレイも6.71インチと広い。このディスプレイは、1650×720のHD+表示に対応した液晶で、リフレッシュレートは60Hz、HDRも非対応という最小限のスペックだ。前モデル「Redmi Note 11」では、90HzのリフレッシュレートとフルHD+表示に対応した有機ELディスプレイを、エントリークラスまで価格の下がっている「Redmi Note 10T」は90Hz駆動とフルHD+表示に対応した液晶ディスプレイをそれぞれ搭載している。これらと比べると本機は性能をかなり切り詰めていることがわかる。
ディスプレイは60Hz駆動とHD+表示に対応する液晶。「Redmi Note 11」などと比べると、見劣りは否定できない
ボディの背面素材は樹脂製で、IPX2の防滴仕様と、IP5Xの防塵仕様に対応している。FeliCaは搭載されておらずおサイフケータイは利用できないが、生体認証として背面に指紋認証センサーを備えている。スピーカーはモノラルでヘッドホン端子を搭載するが、バーチャルサラウンドを実現するDolby Atmosには非対応だ。なお、「Redmi Note 11」ではステレオスピーカーを、「Redmi Note 10T」はFeliCaにそれぞれ対応していた。
外部接続を見てみるとNFCが非搭載。なお、充電などに使うUSBポートは、主流のUSB Type-Cではなく、スマートフォンはおろかケータイでも近ごろ見かけなくなった旧式のmicroUSBだ。
接続端子は、現在主流のUSB Type-CではなくmicroUSB。コスト削減としても、かなり割り切ったものだ
手にした実機は、ディスプレイと側面のつなぎ目に段差があり、近ごろのスマートフォンが重視するボディ全体の一体感に欠けたもので古さは否定できない。加えて、ケースが同梱されないので、別途用意する必要がある。
ディスプレイの発色自体はクリアで、大画面の割に解像度が低いことが原因による表示の粗さは心配するほどではなかった。むしろ、照度センサーの反応が遅いうえに最大輝度が低めで視野角が狭いほうが気になった。
液晶ディスプレイは、最大輝度がさほど高くない。直射日光の下では明るさの不足を感じるかもしれない
背面は編み目のパターンが刻まれた樹脂素材。高級感には乏しい
ディスプレイと側面のつながりに一体感が乏しく、近ごろの流行とはズレを感じるデザインだ
かなり厳しめの評価となってしまったが、前モデル2機種がコストパフォーマンスを追求しているのに対して、こちらは絶対的な低価格を追求しているという違いがその原因だろう。以下に、「Redmi 12C」「Redmi Note 11」「Redmi Note 10T」の基本性能を表にまとめた.
「Redmi 12C」の基本性能を見てみよう。MediaTek社のエントリー向けSoC「Helio G85」を採用し、メモリーとストレージは上述のように、3GBメモリー+64GBストレージと、4GBメモリー+128GBストレージの2モデルが用意される。なお、microSDXCメモリーカードスロットを備えており、最大1GBまでストレージを増設できる。プリインストールされるOSは、Android 12をベースにしたMIUI 13だ。
実際の性能を定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(Ver.9.5.8)」を使用して計測したところ、総合スコアは218406(内訳、CPU:66464、GPU:39910、MEM:49078、UX:62954)となった。なお、「Redmi Note 11」の総合スコアは247,150(内訳、CPU:83,811、GPU:38,281、MEM:65,190、UX:59,868)で、「Redmi Note 10T」は287,468(内訳、CPU:94,241、GPU:64,836、MEM:53,388、UX:75,003)。これらと比べると処理性能はむしろダウンしている。特に、日常的な動作に影響する「CPU」の値が下がっているのは注意したいところだ。
AnTuTuベンチマークの結果。左が本機、中央は「Redmi Note 11」、右は「Redmi Note 10T」のもの。基本性能は新製品である本機のほうが低い結果となった
体感速度は、WebブラウザーやTwitterアプリをスクロールさせる場合でも引っかかりを感じるほか、アプリの起動もあまり早くない。こうした点を踏まえると日常的に使うよりもサブ機のほうが適していると言えそうだ。
なお、初期状態からひととおりソフトウェアのアップデートを終わらせた状態で29GBほどストレージを消費していた。今回使ったのは4GBメモリー+128GBストレージモデルなので容量に余裕があるが、3GBメモリー+64GBストレージモデルの場合、microSDカードでストレージを増設して、カメラの撮影データなどはそちらに待避させておいたほうがよさそうだ。
ちなみに、MIUIは、シンプルさよりも高機能を追求しているので、日本で人気のある「Pixel」シリーズや、「Xperia」シリーズ、「AQUOS」シリーズのようなAndroidの標準的な画面デザインとはコンセプトが異なる。独自の機能として、仮想メモリー機能を備えており、ストレージの一部を1GB・2GB・3GBの3段階でメモリーとして利用できる点は、特に3GBメモリーモデルで重宝するだろう。
「Redmi 12C」のメインカメラは約5000万画素の広角カメラのみ。ポートレート撮影用の補助レンズを備えるがこちらは撮影には使用しない。フロントカメラは約500万画素だ。メインカメラはHDR撮影機能や長時間露光のナイトモードを備える。
メインカメラは広角カメラとポートレート撮影用の補助レンズの組み合わせ。映像の記録に使われるのは広角カメラだけだ
静止画の作例を以下に掲載する。なお、初期設定のままカメラ任せで撮影しているが、HDRやナイトモード使用している場合はその旨を記載している。
順光の日中を撮影。菜の花の鮮やかさや春のかすんだ青空の雰囲気など色の再現性は良好。画像補正が青空を極端に強調しない点も好ましい
木漏れ日を撮影し、明暗差のある構図への耐性を調べた。HDRは動作していないが、暗部のディテールは比較的保たれている。逆光によるフレアやゴーストは抑えられており、1万円台の製品としては想像以上によく写っている
明るめな夜景を撮影。ハイライトに白飛びが見られるが、路面に敷き詰められたブロックやデッキを囲む手すりのディテールはよく残っている。これくらいの明るさなら余裕で対応できるようだ
光量の乏しい郊外の景色をナイトモードで撮影。空に浮かぶ給水塔がしっかり確認できるし、手ぶれも抑えられている。価格帯を考えればこちらもかなり鮮明だ
シングルカメラである本機は、スペックを見る限りあまり期待は持てないかもしれない。しかし、実際に撮影してみると、明暗差のある構図や暗所でも想像以上に健闘し、1万円台の製品としてはかなり使いやすいと感じた。特にトリプルカメラを搭載する「Redmi Note 11」と比べた場合、画質は断然本機のほうが有利だ。気になった部分として、ホワイトバランスが今ひとつ安定しない点と手ぶれにそれほど強くない点があったが、それらも、しっかりと構えて多めに撮影するといった使い方でカバーできるレベルにある。
通信性能を見てみよう。4Gは、国内4キャリアの主要周波数帯やプラチナバンドに対応しているし、緊急災害速報にも対応している。本機は5Gには対応していないが、4Gがネットワークの主流である現状を考えれば通信性能は十分だろう。サブ機として使う場合でも、好きなSIMカードを好みの組み合わせで利用できるはずだ。
2基のnanoSIMカードスロットと独立したmicroSDXCメモリーカードスロットを備えるトリプルスロット仕様を採用。eSIMには非対応だ
「Redmi 12C」は容量5000mAhの内蔵バッテリーを採用している。シャオミはバッテリー持ちに関係する指標を公開していないが、待受主体であれば1日に30分程度の利用で1週間以上のバッテリー持ちが可能だった。また、ボディの発熱が低めなのも美点だろう。
いっぽう、充電性能だが、最大で10Wの入力にしか対応しておらず、手元の時計で計測したところフル充電にかかる時間は2時間半以上とかなり長めだ。
製品パッケージには10Wの出力に対応した充電器が含まれている。microUSB充電器を追加で用意する必要はない
シャオミはコスパに定評のあるメーカーだが、コスパ(価格と性能のバランス)よりも絶対的な安さを重視した「Redmi 12C」は少し異色の製品かもしれない。加えて、本機の前身となる「Redmi Note 11」や「Redmi Note 10T」は、発売から1年経過したこともあって価格.comの最安価格が18,000円以下で推移しており、2023年3月末時点における価格.com最安価格では本機のほうが割高である。現状の価格を見ると、本機を選ぶ理由を見つけにくいのも確かだろう。
注目してほしいのはカメラで、前モデル「Redmi Note 11」のメインカメラは、広角、超広角、マクロ、深度センサーというかなりぜいたくな構成だが、その反動で個々の性能はあまり高くない。その点、本機は実質シングルカメラではあるが扱いやすさは段違いで、カメラに関する満足度はむしろ本機のほうが高そうだ。
本機のようなエントリースマホは価格次第で立ち位置が大きく変わる。今後の価格推移で魅力を増す余地はまだ多いはずだ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。