うっかり荷物を置き忘れてしまった。そんなときに頼りになるのが、位置情報を把握できるタグ状のデバイスです。市場でもまだ表記はバラついていますが、「スマートタグ」や「紛失防止タグ」などと呼ばれることが一般的。本稿では、後者の呼び方を使うことにします。
紛失防止タグにはさまざまな種類が存在しますが、2023年のトレンドは、アップルの「探す」ネットワークに対応したサードパーティー製品がいくつか発売されたことです。iPhoneユーザーにとっては、注目しておきたい新ジャンルのアイテムと言えます。
ここでは、こうした「探す」ネットワーク対応の新製品について概要をチェックしつつ、アップル純正の「AirTag」と比べ、どんな違いがあり、どんな人に向いている製品なのかを押さえていきましょう。
アップルの「探す」ネットワークに対応するメリットは、少なくとも3つあります。
1つ目は、設定操作が容易なことです。iPhoneの「探す」アプリから簡単な操作で初期設定が行えるので、サードパーティー製のアプリケーションをインストールする必要がありません。位置情報を確認する際にも、アップル製デバイスを探すのと同様の手順で完了するため、覚えることが少なくて済みます。
サードパーティー製の紛失防止タグをペアリングする場合、「探す」アプリの「デバイスを探す」タブあるいは「持ち物を探す」タブから「+」をタップ。「その他の持ち物を追加」を選択します(左)。ボタン操作などでペアリングモードに切り替えたデバイスが検知されたら「接続」をタップ(中)。そして、名称や絵文字などを設定する(右)で初期設定が完了します
2つ目は、無数のアップル製デバイスで形成される、匿名の暗号化ネットワークを使ってタグを探し出せることです。紛失防止タグは、製品そのものが通信機能を備えているわけではないので、周辺に存在する機器との暗号化された接続が重要。アップル製品のユーザーは世界中に多くいるので、ほかのブランドと比べて、有利なポイントとなり得ます。
iPhoneなどで「探す」アプリを開くと、持ち物の場所がわかり、タグから音を鳴らすこともできます
3つ目は、「探す」アプリに対応したデバイスが手元から離れたときに、通知が表示される「手元から離れたときに通知」という機能が使えること。サードパーティー製品でも、接続するとデフォルトで同機能を使用できます(同機能は、自宅など、手元から離れても例外的に通知をしない場所もカスタマイズできます)。
具体的な製品として基準になるのが、アップル純正の「AirTag(エアタグ)」です。アップルの公式サイトでは、1個入りが4,780円(税込。以下同)、4個入りが15,980円で販売されています。紛失防止タグというジャンルの中では高級な部類に入ります。
「AirTag」の本体
キーホルダーなどに装着するには、別途「AirTag」を固定するためのホルダーを用意する必要があります
「AirTag」本体は碁石のような形状をしていて、キーホルダーやカバンなどに固定したい場合には、固定用のアクセサリーを追加購入しなければなりません。こうしたケースは純正品以外にも、さまざまなメーカーが数百円程度から展開しています。
価格が高い印象のある「AirTag」ですが、価格相応のメリットもあります。特筆すべきは、U1チップを備えたiPhone(11シリーズ以降)ならば、近くにある「AirTag」までの方向と距離を画面で確認できることです。
U1チップ搭載のiPhoneなら、近くにある「AirTag」までの距離・方向がわかります
一般的な紛失防止タグにも、音を鳴らして探す機能がありますが、この方向と距離でモノを探せるのは、「AirTag」ならではのメリットと言えます。
また、動作推奨温度が-20〜60度までと広いことも特徴。本記事で紹介するほかの紛失防止タグは、下が0度や-5度までしか対応していないので、雪国など厳しい環境で使用したい場合には、「AirTag」のほうが安定した動作が期待できるでしょう。防水性能も高く、水深1mで最大30分間耐えられるIP67に対応しています。
「まもサーチTag」は、+Styleが2023年2月9日に発売した紛失防止タグです。公式サイトでの通常販売価格は3,480円。コイン型電池の「CR2032」で最大1年間駆動します。
「まもサーチTag」の表面。中央にボタンが用意されています
「まもサーチTag」の裏面。スピーカーと電池収納部のカバーがあります
本体に穴が空いているので、アクセサリーを追加することなくキーホルダーのリングなどに固定できます
「まもサーチTag」は、スマホと本体の接続が切れた場所と時間を 、アップルの「探す」の地図上に表示できます。いっぽう、U1チップには対応していないので、方向と距離での捜索はできません。
そのほか、Bluetoothの接続範囲内(約50m)に「まもサーチTag」がある場合は本体から音を鳴らせること、IPX5の防水性能を備えていて多少の雨なども耐えられることなどもポイントです。
「Eufy Security SmartTrack Card」は、Ankerが2023年2月28日に発売した紛失防止タグです。カード型の薄い形状をしていて、サイフのカード用ポケットなどに収納できるのが特徴。付属のクリップを活用すれば、重要な書類に固定することもできます。
「Eufy Security SmartTrack Card」の本体
正面に、ペアリング時などに使用する物理ボタンがあります
サイフのカードポケットに収納できるサイズ。厚みは2.4mm
「Eufy Security SmartTrack Card」の通常価格は3,900円。最大3年使用でき、電池交換には対応しません。執筆時点では公式サイトで製品をカートに追加することができましたが、Amazonなど販路によっては在庫切れ状態になっているようです。2023年3月中旬には公式サイトでも売り切れていたので、購入希望の際には、家電量販店など複数の販路を確認しつつ、製品を確保するのがいいでしょう。
裏面に紛失時連絡用のQRコードが表記されています。アップルの「探す」アプリを使用する場合は、SmartTrackのQRコード読み取りではなく、アプリ内の「見つかった持ち物を識別」から確認する必要があります
パスポートなどの紛失に備えたい場合には、付属のクリップを使って固定できます。書類側をクリップで固定し、タグ側を粘着テープで留める仕組みです
「Eufy Security SmartTrack Card」も、U1チップへの対応はないものの、位置情報を確認したり、音を鳴らしたりといった機能を備えます。
ちなみに、同製品はアプリ「Eufy Security」を使ってAndroidデバイスとペアリングすることもできます。その場合、カード側からBluetooth接続圏内(約80m)にあるスマートフォンの音を鳴らして、スマートフォンの捜索が行えます(iOS端末では非対応)。
なお、Ankerは同デバイスのほかに「Eufy Security SmartTrack Link」というカード型ではない紛失防止タグも販売しています。同製品もアップルの「探す」ネットワークやAndroid用アプリに両対応。コイン型電池の「CR2032」で駆動し、裏面にQRコードを搭載します。
アップルの「探す」ネットワークに対応したサードパーティー製の紛失防止タグは、アップル純正の「AirTag」よりも安価に入手できます。「探す」アプリを通じた登録手順も容易で、使い勝手は良好です。
いっぽう、U1チップによる方向・距離での精緻な探索ができるのは、純正の「AirTag」のみです。たとえば、「家の中でカギをどこに置いたか忘れた」といった事態に対応したければ、少々コストがかかっても「AirTag」を選んだほうがいいでしょう。ただし、紛失防止タグから音が鳴らせればそれで十分という人は、サードパーティー製品を選択することで、コストを押さえられます。
また、動作温度や防水性能についても「AirTag」のほうが対応範囲が広いことを認識しておきましょう。
そのうえで、カード型の製品が欲しいならAnkerの「Eufy Security SmartTrack Card」一択です。いっぽう、キーホルダーなどに装着したい場合には、+Styleの「まもサーチTag」と、Ankerの「Eufy Security SmartTrack Link」を比較検討するといいでしょう。
スマートフォンや、タブレット、スマートウォッチなどを軸に、最新ガジェットやサービスなどについて取材。Webメディアや雑誌を中心に、速報や製品レビュー、コラムなどを寄稿している。Twitter:@kira_e_noway