多くの人が関係する、スマートフォンなどのモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。連載第6回は、値上がり傾向の続く映像系サブスクリプションサービスを割安に使える通信事業者の料金プランをまとめた。
※本記事中の価格は税込で統一している。
一定の月額料金を支払うことで多数のコンテンツを利用できる、いわゆる「サブスク」(サブスクリプション)型のサービスは、「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」などの映像配信サービスが日本に相次いで上陸したことで一時大きな盛り上がりを見せ、現在は音楽や雑誌など幅広いサービスにサブスクの仕組みが導入され、すっかり定着するにいたっている。
だがサービスの人気とともに参入事業者が増え競争も激しくなっており、競争力強化でコンテンツの充実を図るため運営コストが増し、月額料金の値上げに踏み切るケースも増えているようだ。その代表例がスポーツの映像ライブ配信サービス「DAZN」で、元々1,925円だった月額料金は、2022年に3,000円へと大幅に値上げ。2023年には当初の倍近い3,700円へと値上げされた(「DAZN Standard」プランの場合)。
ただでさえ値上げラッシュが続いているのに、サブスクまで値上げというのは消費者にとって非常につらいところだが、実はそのサブスクサービスの料金を安くできるかもしれない方法がひとつある。それは携帯電話の料金プランとセットで契約することだ。いくつかの携帯電話各社は、サブスクサービスと一緒に契約することで料金をお得にするプランや割引サービスを提供しており、それらをうまく活用すれば別々に契約するより料金を抑えられるからだ。
セット契約による割引の代表例と言えば、やはりKDDIが「au」ブランドで提供しているセットプランだろう。auでは2018年より、大容量プランと各種サブスクサービスをセットにしてお得に利用できる料金プランを提供している。現在はスマートフォン上のデータ通信が使い放題になる「使い放題MAX」とのセットプランをラインアップしている。
KDDIは大容量プランとサブスクサービスのセットプランの提供に力を入れている。対象のサブスクサービスを利用する大容量プランのユーザーは、そちらを選ぶことでよりお得に利用できる
具体的には、「Amazonプライム」をセットにしたプランや、「DAZN」をセットにしたプランのほか、「Netflix」と「Amazonプライム」をセットにした「Netflixパック(P)」、「Paravi」と「FODプレミアム」をセットにした「テレビパック」、そして「Apple Music」「YouTube Premium」など6つのサービスをセットにした「ALL STAR パック」の計5つが用意されている。「DAZN」とのセットプランを除いて、いずれもテレビ朝日の番組などが見放題になる「TELASA」(月額618円)が付いてくるし、テザリングや海外ローミングを使う際の容量も増えることからいっそうお得感が高い。
※「GEOFORCE NOW Powered by au」はau/UQ mobile(5G料金対応プラン)契約者向けセット割特典適用時の料金(1,650円)で計算
ただし、使い方によってはそれほどお得感が出ない場合がある。大容量プランのみが対象なので少なくとも「使い放題MAX」(割引なしで月額7238円)以上の月額料金がかかることは頭に入れておきたい。auは20GB前後の中容量プランが存在せず、中容量プランがあるサブブランドの「UQ mobile」にはセットプランがないことから、「使い放題は必要ない」という人がセットプランを選べないのは弱みである。
また、料金プランにサービスが紐付いてしまっているのでサービス選択の自由度が低いのも少々残念。「DAZNとNetflixをセットにしたい」というように、好みのサービスを組み合わせられないのは惜しいと感じる人が多いだろう。
そうした弱点をうまくクリアしているのが、NTTドコモが2023年4月より提供開始した「爆アゲ セレクション」である。こちらは対象の料金プラン契約者が、対象のサブスクリプションサービスを同時に契約すると、その料金から最大20%のdポイントを毎月還元するという実質的な割引サービスだ。
NTTドコモが2023年4月より提供開始する「爆アゲ セレクション」は、中・大容量プランで対象のサブスクサービスを契約するとポイント還元が受けられる仕組みだ
では「爆アゲ セレクション」は、auのセットプランと比べどのような点にメリットがあるのだろうか。ひとつはやはり対象の料金プランで、使い放題プランの「ギガホ プレミア」だけでなく中容量の「ahamo」も還元対象となっているのは大きなポイントと言える。
もうひとつは、対象のサービスを複数組み合わせてもポイント還元の恩恵が受けられること。対象サービスは、「Netflix」「YouTube Premium」「Disney+」「DAZN for docomo」のほか、2023年4月12日に「dTV」からリニューアル予定の「Lemino」の有料プラン「Leminoプレミアム」の計5つで、これらのうち1つ、あるいは複数を組み合わせて契約しても各サービスに応じたポイント還元が受けられるのだ。
注目してほしいのは「Netflix」の対象サービスで、auのセットプランではHD画質が上限の「ベーシック」プランしか選べないのに対し、「爆アゲ セレクション」ではUHD 4K対応の「プレミアム」やフルHD対応の「スタンダード」といった上位プランも還元対象となる。加えて「ギガホ プレミア」や「ahamo」以外のプラン、具体的には「ギガライト」の契約者に対しても、「Netflix」をセットで利用するとポイントが還元される「Netflix限定特典」も用意されており、「ベーシック」以上のプランを契約していれば少なくとも10%のポイント還元を受けることが可能だ。
ただし、auのセットプランと比べて還元額が少ないのはデメリットでもある。「DAZN」を例にあげると、auの「使い放題MAX 5G/4G DAZNパック」は月額料金が9,768円と、「使い放題MAX」とDAZNを別々に契約するより1,170円お得になるが、「爆アゲ セレクション」における「DAZN for docomo」の毎月の還元額は673ポイント(673円相当)。割引の度合はauに軍配が上がる。
多くの人が気になるのはNTTドコモとau、どちらのプラン・割引を選ぶべきか? ということだろうが、それぞれのサービスの性格を考慮するに、同じサービスを長く使い続けるならauのセットプラン、契約するサービスをひんぱんに変えるならNTTドコモの「爆アゲ セレクション」を選ぶのがよい、ということになるだろう。
たとえば「Amazonプライム」は、「Amazonプライム・ビデオ」だけでなくAmazonで買い物をする際にも多くのメリットが得られるので、長期間にわたって契約している(したい)のであれば、auの「Amazonプライム」が付いたプランがお得だ。いっぽうで「Netflixで見たかった作品が終わったが、今度はDisney+で見たい番組が始まった」というように、契約するサービスを都度変えることが多い場合はサービスに左右されない「爆アゲ セレクション」にメリットを感じるはずだ。
ここまでNTTドコモとauのセットプランについて触れてきたが、ではソフトバンクと楽天モバイルはどうなのか? というと、現在のところサブスクサービスとセットで契約して割引になる仕組みは用意されていない。ただ料金プランに自社系列のサブスクサービスが無料で利用できる特典が用意されていることが多く、それらを利用している人にはお得感が高い。
ソフトバンクの場合、ソフトバンク・ワイモバイルブランドの料金プラン契約者は「Yahoo! Japan」の「Yahoo!プレミアム」(月額508円)の、すべての特典を利用できる仕組みが用意されている。それゆえ「Yahoo!ショッピング」などでのポイント還元特典が受けられるほか、「PayPay」の限定クーポンや、110以上の雑誌が読み放題の「読み放題プレミアム」も付いてくる。バスケットボールの「Bリーグ」の試合が見放題になったりもするので有効活用したい。
ソフトバンクやワイモバイルは2017年より、「Yahoo!プレミアム」のサービスを追加料金なしで利用できる特典を提供している
オンライン専用の「LINEMO」には同様の特典はないが、こちらはLINEとの連携に力が入れられていることから、「スマホプラン」(月額2,728円)の利用者であれば「LINEスタンプ プレミアム」の「ベーシックコース」(月額240円)が無料で利用できる。LINEのスタンプをひんぱんに利用している人にはメリットだ。
「LINEMO」はLINEとの連携を重視しており、LINEの通信量をカウントしないだけでなく、「LINEスタンプ プレミアム」の「ベーシックコース」が追加料金なしで利用できる
楽天モバイルの場合、2023年4月より「Rakuten UN-LIMIT VII」の契約者に対し、「NBA Rakuten」の「ベーシックコース」(月額990円)と「Rakuten パ・リーグSpecial」(月額702円)の専用プラン「NBA BASIC PASS for 楽天モバイル」「Rakuten パ・リーグSpecial for 楽天モバイル」が追加料金なしで使えるようになる。これらはそれぞれNBAの一部試合、そしてプロ野球のパ・リーグの公式戦を視聴できるサービスなのだが、楽天モバイル契約者はそれらを無料で利用できることからファンにはメリットが大きいだろう。
このように、携帯電話サービスとサブスクサービスをセットで利用すれば、料金的にも大きなメリットが得られることがわかる。上手に節約するなら、携帯電話とサブスクサービスを別々に契約するのではなく、一緒に契約できる料金プランや割引サービスを検討するとよいだろう。
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。