中国のゲーミグスマートフォンメーカーNubia Technologyの最新モデル「REDMAGIC 8 Pro」をレビュー。国内ではいち早く登場した「Snapdragon 8 Gen 2」搭載機だ。最高レベルの処理性能を備えながらバッテリー持ちが良好で、普段使いでも魅力を実感できる、コストパフォーマンスの高いゲーミングスマホに仕上がっている。
最高レベルの処理性能と良好なバッテリー持ちを両立した「REDMAGIC 8 Pro」
2019年に国内で正規販売が開始されてから4世代目となる「REDMAGIC 8 Pro」は、約76.35(幅)×163.98(高さ)×9.47(厚さ)mm/重量約228gという、かなり大型・重量級のハイエンドスマートフォンだ。
まず、本機の大きな特徴であるディスプレイを見てみよう。2480×1116のフルHD+表示に対応する約6.8インチの有機ELで、ディスプレイの下にフロントカメラを埋め込む技術「UDC:Under Display Camera」を採用する。これによって、ノッチやパンチホールのないディスプレイが広がる4辺狭額縁を実現している。UDCはディスプレイの画質に不利と言われるが、カメラを埋め込んだ場所は高輝度で薄い色を表示させた場合にうっすらわかる程度で、かなり完成度は高い。なお、最大輝度は前モデルの700nitから1300nitに高められ、屋外でも鮮明に表示できるようになった。
パンチホールや切り欠きもないUDCディスプレイを採用することで4辺狭額縁を実現している
カメラの収まるパンチホール部分は、輝度を高めて薄い色を表示させると位置がうっすらわかる程度。画質への影響はほとんど気にならない
生体認証は、ディスプレイ指紋認証となっている。認証速度はかなり速い。認証精度は9割ほど
ゲームにおける使い勝手に直結する性能では、タッチサンプリングレートは前モデルの720Hzから960Hzに向上している。そのいっぽうで、リフレッシュレートは165Hzから120Hzにスペックダウン。なお、本機の直接のライバルとなるASUSの「ROG Phone 7」は、タッチサンプリングレートは720Hzで、リフレッシュレートは165Hz。ざっくりと言えば表示のなめらかさでは「ROG Phone 7」が、操作性では本機が有利と言える。
なお、Androidスマートフォンでは、ゲームアプリで120Hz、144Hz、165Hzといった高速リフレッシュレートに対応させるにはソフトウェアの改修が必要だ。120Hz対応タイトルが徐々に増えているが、144Hzや165Hzに対応するものはかなり限定されるのが現状である。いっぽう、タッチサンプリングレートについてはアプリの改修は必要ない。
ボディを見てみよう。背面はガラス、側面は金属なので質感は上々で、特に背面のデザインは、ゲーミングスマホらしい主張は強いものの、色使いが黒と金の2色に抑えられたことで洗練された印象を受ける。ゲーミングスマートフォンの特徴のひとつである側面のショルダーボタン「ショルダートリガー」は、520Hzのタッチサンプリングレートにした静電式のものを「L」と「R」の2個を備えている。
機能面を見ると、熱処理を重視した設計のため防水・防塵には対応していない。FeliCaも非搭載だがNFCには対応している。センサー類を見るとハイエンドスマホでは搭載されることの多い気圧センサーの搭載が見送られている。
今回の検証機のカラーバリエーション「Void」は、透明のガラスを背面に使った中身が透けるデザイン。もう1色の「Matte」は、中が透けないマット処理が施されている
右側面の左右の隅にショルダーボタンを搭載。赤いスイッチは「ゲームスペース」への切り替えスイッチで、中央やや右に見えるのは電源ボタン。電源ボタンの左に通風口が設けられている
左側面にボリュームボタンを配置。その隣にあるのは通風口。電源とボリュームのボタンが左右で分かれている
「ゲームスペース」は、通知の制限などもゲームに最適化された設定に切り替わる
サウンド機能を見てみよう。2個のスピーカーを備えておりステレオ出力に対応している。もちろんヘッドホン端子も備えている。「DTS:X Ultra」に対応し、ヘッドホンなどを接続した場合にバーチャルサラウンドを再生できる。なお、左右の側面に配置されるスピーカーホールは、横持ちの場合に手でふさぎやすい。加えて、音量をかなり大きくできるが、解像感やゲームにおいて重要な音場の再現性はさほど高くない印象を受けた。
下面には、左からスピーカーホール、USB Type-Cポート、SIMトレーを配置する
ヘッドホン端子はボディ上面に配置される。写真右側に見えるのはスピーカーホール
「DTS:X」に対応しており、イヤホンやヘッドホンを接続した際にバーチャルサラウンド再生が行える
本機の性能面では、最新のハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 2」に空冷ファンを含む強力な冷却システム「ICE 11.0」を組み合わせている。「Snapdragon 8 Gen 2」は、前世代の「Snapdragon 8 Gen 1」と比較して処理性能は35%向上しつつ、電力効率は40%も向上している。メモリーとストレージは、カラーバリエーション「Void」が16GBのメモリーと512GBのストレージを、もうひとつのカラーバリエーション「Matte」が12GBのメモリーと256GBのストレージを採用。microSDメモリーカードは非搭載。OSはAndroid 13をベースにしたREDMAGIC OS 6.0を使用している。
実際の処理性能を定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン9.x)」を使って計測したところ、総合スコアは1306053(内訳、CPU:275899、GPU:571556、MEM:265752、UX:192846)となった。なお、前モデル「REDMAGIC 7」における同アプリのスコアは1011767(内訳、CPU:219897、GPU:441963、MEM:169407、UX:180500)だったので、SoC単体の35パーセントの性能向上には届かないが、約30%の速度がアップした。なお、ゲームで重視されるグラフィック性能を示す「GPU」も約30%向上している。
「AnTuTuベンチマーク」の計測結果。左が本機で、右が前モデル「REDMAGIC 7」のもの。体感速度を示すサブスコア「UX」が伸び悩んでいるが、ゲームにおいて重視されるグラフィック性能の指標「GPU」は約30%向上している
本機の高性能は、超重量級ゲーム「原神」を最高画質にして60Hzのリフレッシュレートを維持するといった場合に威力を発揮する。また、空冷ファンを組み合わせた冷却システム「ICE 11.0」は端末表面の温度を最大摂氏16度まで下げることができる(空冷ファンは「Void」モデルのみ搭載)。前世代の「Snapdragon 8 Gen 1」や前々世代の「Snapdragon 888」搭載機は発熱問題がついて回ったが、本機は長時間駆動し続けても発熱はそこまで顕著ではなく、フレームレートはかなり安定している。
なお、空冷ファンの駆動音は、細かく回転数をコントロールされており、SoC自体の発熱が少ないことも相まって、ゲーム中では風切り音がわずかに聞こえる程度。騒音が気になるのは同梱の充電器を使った急速充電中くらいだった。
これらの特徴から、バランス重視のミドルレンジスマホとさほど変わらない感覚で使うことができる。大画面スマホとして普段使いしやすい端末と言えるだろう。
最高画質の「原神」がスムーズに安定して動作する。リズムゲームやサードパーソン・シューティングゲームでも切れのよい操作を体感できる
駆動中のファンはLEDで赤青緑黄のLEDでライトアップされる
本機は3000mAh×2のデュアルセルバッテリーを内蔵している。バッテリー持ちの指標をメーカーは公表していない。
実際のバッテリー持ちは、ハイエンドスマートフォンとしてはかなり良好である。検証中1日に3〜5時間のペースで主にゲームで利用したが、48時間で1回の充電で済み、拍子抜けするほどバッテリーの消費ペースが遅い。なお、ゲームをせずに、SNSやWebコンテンツの確認、動画を視聴するといった用途でなら3日以上のバッテリーが持続した。
同梱の充電器とケーブルを使うことで65W(USB PD PPS)の急速充電が行える。充電時間も40分程度と短めだ。USB PDは汎用規格なので、サードパーティー製のモバイルバッテリーや充電器を使いやすいのも利点と言えるだろう。
同梱の充電器は、USB PD PPS規格の65W出力に対応する。GaN半導体を使用しているため、高出力の割にコンパクト
通信性能を見てみよう。5Gの対応周波数帯はn77とn78で、いずれもNSA方式とSA方式の両方に対応している。ただし、NTTドコモの使用するn79には対応していないため、同社の5G専用周波数帯エリアでは制約がある。いっぽう、4Gの対応周波数帯には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが運用しているプラチナバンドや主要周波数帯に対応しているので、通信エリアに不満はないだろう。なお、eSIMには非対応で、nanoSIMカードスロットを2基備えたDSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)機となっている。
Wi-Fi 7にも対応している。Wi-Fi 7はWi-Fi 6と比較して理論値で4倍以上の46 Gbpsという通信速度を実現する。加えて、低遅延やジッタ(遅延のゆらぎ)の改善もはかられており、ゲーム向けとしても適している期待の新規格だ。なお、規格自体は2024年の標準化を目指している最中で、この夏にTP-Linkがドラフト版のWi-Fi 7に対応したルーター「Archer BE900」を発売する予定となっている。
2基のnanoSIMカードスロットを搭載。eSIMには対応していない
カメラの性能を見てみよう。メインカメラは約5000万画素の広角カメラ(焦点距離24mm)、約800万画素の超広角カメラ(焦点距離14mm)、約200万画素のマクロカメラ(焦点距離27mm。いずれも35mm換算の数値)のトリプルカメラ。なお、ディスプレイ下に埋め込まれたフロントカメラは約1600万画素だ。メインカメラは、8Kの動画撮影。オートトラッキングオートフォーカスや、オートHDR、AIシーン認識に対応している。
メインカメラは、広角、超広角、マクロのトリプルカメラ。ハイエンドスマートフォンとしては一般的な構成だ
以下に、メインカメラで撮影した静止画の作例を掲載する。いずれも、初期設定のままシャッターを押すだけの撮影を行っている。
明るめの夜景を撮影。回廊部分の手すりや路面のブロックの解像感も申し分ない。ホワイトバランスがアンバーに寄っている
撮影写真(4080×3060、4.08MB)
上と同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影した。ぱっと見て広角カメラとホワイトバランスにズレがあることがわかる。超広角カメラはシアン寄りで、全般に白っぽい仕上がりになった
撮影写真(3264×2448、0.27MB)
電球色の店内でパスタを撮影。こちらもアンバー寄りの色かぶりが見られる
撮影写真(4080×3060、2.87MB)
同じ構図を超広角カメラで撮影。こちらもシアン寄りで、カメラ間のホワイトバランスにズレが見られる
撮影写真(3264×2448、1.65MB)
本機の超広角カメラと広角カメラは、カメラ間のホワイトバランスにズレが目立ち、チューニング不足を感じる面もある。ゲーミングスマートフォンという用途を考えればこれで十分だが、カメラを重視する場合は気になるのではないだろうか。
本機のライバルはASUSのゲーミングスマートフォン「ROG Phone 7」(2023年4月18日時点では国内未発表)だ。この両機は、SoCが共通しているしボディやディスプレイもほぼ同じサイズで、コンセプトもよく似ている。機能性も一長一短で、どちらが有利とは言いにくい。
「ROG Phone 7」のヨーロッパにおける価格は12GBメモリー+256GBストレージモデルが999ユーロ(2023年4月18日時点のレートで換算すると日本円で約147,000円)、16GBメモリー+512GBストレージモデルが1,199ユーロ(同約176,000円)。いっぽう本機は「Matte」モデルが103,800円、「Void」モデルが128,800円(いずれも税込)。「ROG Phone 7」はまだ国内未発売の製品なのであくまでも参考ではあるが、比べると本機のほうが割安だ。2023年4月18日現在、2023年に発売されたハイエンドなゲーミングスマートフォンとして最強のコストパフォーマンスを実現していると言ってもいいくらいのプライスである。それでいて、普段使いもこなせるバッテリー持ちも兼ね備えており、割安なハイエンドスマホとしても選びやすいモデルと言えそうだ。
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