レビュー

グラフィック性能はPS5に迫る! 7型ゲーミングUMPC「ROG Ally」速攻レビュー

ゲーミングUMPCにASUSが乗り込んできました! 7型のタッチディスプレイの左右にコントローラーが付いた、見た目は完全に携帯ゲーム機の「ROG Ally(アールオージー エイライ)」です。約608gの軽量ボディに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの据え置き型ゲーム機「PlayStation 5」に迫るグラフィック性能を備えています。

気になる価格は、上位モデルが109,800円、下位モデルが89,800円(どちらも税込の希望小売価格)。2023年6月14日の発売の前にいち早く実機を試せたので、いろいろ遊んでいきましょう!

 ASUS JAPANのゲーミングUMPC「ROG Ally」。見た目は完全に携帯ゲーム機です。発売は上位モデルが6月14日、下位モデルが少し遅れて夏の予定です

ASUS JAPANのゲーミングUMPC「ROG Ally」。見た目は完全に携帯ゲーム機です。発売は上位モデルが6月14日、下位モデルが少し遅れて夏の予定です

「Ryzen Z1 Extreme」のグラフィック性能は8.6TFLOPS!

はじめにラインアップと基本スペックを見ていきましょう。

ラインアップは、上位モデルの「RC71L-Z1E512」と下位モデルと「RC71L-Z1512」の2モデル。違いは搭載するCPUで、上位モデルはAMDの「Ryzen Z1 Extreme」を、下位モデルは同じくAMDの「Ryzen Z1」を搭載しています。CPU以外のスペックは共通で、メモリーが16GB(LPDDR5-6400)、ストレージが512GB SSD(PCI Express 4.0 x4接続)です。

今回は上位モデルをレビューしていますが、注目なのがCPUの「Ryzen Z1 Extreme」です。ゲーミングUMPCはGPU性能にすぐれた「Ryzen」を採用したものが多いですが、この「Ryzen Z1 Extreme」は、記事執筆時点で「ROG Ally」だけに搭載されたスペシャルなCPUなんです。

4nmプロセスルールで製造された「Z4アーキテクチャ」を採用する「Ryzen Z1 Extreme」。内蔵GPUは「RDNA 3グラフィックス」

4nmプロセスルールで製造された「Z4アーキテクチャ」を採用する「Ryzen Z1 Extreme」。内蔵GPUは「RDNA 3グラフィックス」

8コア16スレッドの低消費電力タイプのCPUながら、動作周波数は最大5.1GHz(標準でも3.3GHz)で動作し、GPUの「RDNA 3グラフィック」の処理性能は8.6TFLOPS(テラフロップス)を実現。TFLOPSはゲーム機などの処理性能を表す単位で、前述の「PlayStation 5」は10.3TFLOPSと言われています。つまり、「Ryzen Z1 Extreme」を搭載する「ROG Ally」は「PlayStation 5」に迫るグラフィック性能を持っているというわけです。

なお、下位モデルの「Ryzen Z1」は6コア12スレッドで、動作周波数は基本クロックが3.2GHz、最大クロックが4.9GHzです。テラフロップスは2.8TFLOPSとグラフィック性能は数段落ちます。TDPはどちらも9〜30Wです。

ベンチマークと人気ゲームでその性能をチェック!

「ROG Ally」の性能を定番ベンチマークアプリでチェックしていきましょう。

グラフィック性能を測定する「3DMark 10 Professional」の結果は以下のとおりです。専用GPUを搭載するゲーミングPCに比べるとスコアは劣るものの、内蔵GPUとしては非常に優秀な結果です。しかも、電源接続時とバッテリー動作時で差が小さいのも特筆すべき点でしょう。なお、すべてのベンチマークは、高速な「Turboモード」(TDP25W)で実施しています(手動でTDPを30Wに設定することが可能で、より高速に動作させることもできます)。

3DMark 10 Professional
Turbo(電源接続時)
Port Royal:1151
Time Spy Extreme:1438
Time Spy:3129
Fire Strike Ultra:2083
Fire Strike Extreme:3719
Fire Strike:7119

Turbo(バッテリー動作時)
Port Royal:1264
Time Spy Extreme:1406
Time Spy:2964
Fire Strike Ultra:1985
Fire Strike Extreme:3554
Fire Strike:6767

続いてCPU性能を測定する「CINEBENCH R23」と「CINEMABENCH R20」の結果です。

マルチコア:14260シングルコア:1779

CINEBENCH R23
マルチコア:14260
シングルコア:1779

マルチコア:5847シングルコア:693

CINEBENCH R20
マルチコア:5847
シングルコア:693

8コア16スレッド、最大クロック数5.1GHzのパワーが結果に出ています。ちなみに、Valve「Steam Deck」(CPUは「AMD APU」)の「CINEBENCH R23」の結果はマルチコアが4067、シングルコアが990(関連記事)。「ROG Ally」のほうが、マルチコアのスコアは3倍近く高いです。

パソコンの総合性能を測定する「PC Mark 10 Professional」の結果。総合スコア7000越え! 「Essentials」と「Productivity」は1万越え、「Digital Content Creation」も8000オーバーと、UMPCとしては超ハイスコアです

パソコンの総合性能を測定する「PC Mark 10 Professional」の結果。総合スコア7000越え! 「Essentials」と「Productivity」は1万越え、「Digital Content Creation」も8000オーバーと、UMPCとしては超ハイスコアです

定番のベンチマークアプリの結果は上々ですが、本題はPCゲームがどれだけ快適に楽しめるかです。まずはエレクトロニック・アーツが手掛ける人気バトルロイヤルゲーム「Apex Legends」。自動設定でのフレームレートは60〜75fps。動きは滑らかで、7型で楽しむ分には画質的にも文句なしです。もう少しヘビーなEpic Gamesの「フォートナイト」は、自動設定で50〜60fps前後にてプレイできました。レンダリングを「パフォーマンス」(画質より滑らかさを優先したモード)にすれば、100fps前後まで上がるので、高リフレッシュレートのディスプレイの恩恵を受けられます。

「Apex Legends」は60fpsオーバーでプレイ可能

「Apex Legends」は60fpsオーバーでプレイ可能

「フォートナイト」も自動設定で50〜60fps前後にてプレイできます

「フォートナイト」も自動設定で50〜60fps前後にてプレイできます

CD Projekt REDのヘビー級タイトル「サイバーパンク2077」も自動設定で十分プレイ可能でした。クイックプリセットは「中」設定で、50〜70fpsと幅はあるものの、全体的に滑らかな動き。AAAタイトルが快適に遊べるという売り文句も納得です。8.6TFLOPSを実現した「ROG Allyは、ゲーミングUMPCのひとつ壁を越えた感があります。

「サイバーパンク2077」の自動設定は、クイックプリセットが「中」でした

「サイバーパンク2077」の自動設定は、クイックプリセットが「中」でした

「ROG Ally」のリニアタイムモニターでFPSを確認すると50〜70fpsでした。7型ディスプレイで楽しむ分には、クイックプリセット「中」でも高品位な画質かつ滑らかに楽しめます

「ROG Ally」のリニアタイムモニターでFPSを確認すると50〜70fpsでした。7型ディスプレイで楽しむ分には、クイックプリセット「中」でも高品位な画質かつ滑らかに楽しめます

動作音や熱の対策は、ゲーミングPCを数多く手掛けるASUSだけに抜かりはありません。デュアルファンを搭載していますが、動作音は「パフォーマンス・サイレントモード」時で20dB、ゲームプレイ時などに利用する「Turboモード」時でも30dBに抑えられています。「サイバーパンク2077」プレイ時やベンチマークアプリを実行中のときも、ファンの音は控えめでした。

熱に関しては、通気孔部分は熱を感じますが、ホールドする部分は熱くならず、快適にゲームをプレイできます。また、本体を逆さにしても冷却性能を維持できる「アンチグラビティヒートパイプ」により、寝転がって遊んでも高い冷却性能を発揮できるとのことです。

「アンチグラビティヒートパイプ」により、重力に影響を受けることなく、システムを冷却できるとのこと

「アンチグラビティヒートパイプ」により、重力に影響を受けることなく、システムを冷却できるとのこと

軽くて薄い! 完全に携帯ゲーム機です

続いて本体をチェックしていきましょう。ディスプレイは7型のタッチ液晶。解像度は1920×1080のフルHDです。リフレッシュレートは最大120Hzで、設定で簡単に60Hzに変更可能。輝度は最大500ニトで明るい屋外でも視認性は高め。表面には頑丈なコーニングの「Gorilla Glass Victus」が使われています。

7型のタッチ液晶は、Windowsを利用するのには狭いですが、ゲームを遊ぶのには問題ないサイズ感です。応答速度は7ms、リフレッシュレートは最大120Hz。IPS液晶で視野角が広く、ソファにくつろいで使ったり、寝転がって使ったり、いろいろな姿勢でも高画質でゲームを楽しめるでしょう

7型のタッチ液晶は、Windowsを利用するのには狭いですが、ゲームを遊ぶのには問題ないサイズ感です。応答速度は7ms、リフレッシュレートは最大120Hz。IPS液晶で視野角が広く、ソファにくつろいで使ったり、寝転がって使ったり、いろいろな姿勢でも高画質でゲームを楽しめるでしょう

本体サイズは280(幅)×111.38(奥行)×21.22〜32.43(高さ)mm、重量は約608g。片手でも持てる軽さで、どこにでも気軽に持ち運べるでしょう。本体は、開発に5年もかけたというほどこだわった形状です。表面傾斜2度、コーナー傾斜14度であらゆる手のサイズにフィットするとのこと。筆者はそれほど手が大きいほうではありませんが、しっかりホールドできて無理なくすべてのボタンに指が届き、スムーズに操作できました。

見た目は完全に携帯ゲーム機です

見た目は完全に携帯ゲーム機です

背面には小指や薬指で押しやすい位置にマクロボタンが2つあります。ROGのロゴマークは通気孔にもなっています。外装は樹脂ですが、サラッとした表面加工が施されており、ゲームに熱くなってもベタつきません

背面には小指や薬指で押しやすい位置にマクロボタンが2つあります。ROGのロゴマークは通気孔にもなっています。外装は樹脂ですが、サラッとした表面加工が施されており、ゲームに熱くなってもベタつきません

左右のスティック、左右のバンパー/トリガーに無理なく指が届く、絶妙なサイズ感。608gと軽量なので長時間遊んでも腕は疲れにくいでしょう

左右のスティック、左右のバンパー/トリガーに無理なく指が届く、絶妙なサイズ感。608gと軽量なので長時間遊んでも腕は疲れにくいでしょう

5年の開発期間で作られたモックアップの一部。PCメーカーでありながら、本気で携帯ゲーム機を作ろうという気概が感じられます

5年の開発期間で作られたモックアップの一部。PCメーカーでありながら、本気で携帯ゲーム機を作ろうという気概が感じられます

コントローラーの完成度が高く、カスタマイズも自由自在

コントローラーは左右にスティックがあり、左に方向ボタン(十字ボタン)、右にA/B/X/Yボタンが配置されています。上部には左右バンパーとトリガー、背面にマクロ1/2ボタンがあります。スティックは軽すぎず重すぎず、思い通りにキャラクターの移動や視点の変更が可能。トリガーも気持ちよく引けます。バンパーを押すとカチカチと音はしますが、全体的に操作音は静かなので、電車の中で遊んでも迷惑にはならないと思います。

スティックやボタン類は気持ちよく操作できます

スティックやボタン類は気持ちよく操作できます

背面はマクロボタンがあります。ホールドする部分はグリップしやすい形状。通気孔に指がかからず、熱く感じることはありません

背面はマクロボタンがあります。ホールドする部分はグリップしやすい形状。通気孔に指がかからず、熱く感じることはありません

ゲームプレイ中に、ゲームを終了することなく、動作モードを変更したり、画面録画したり、各種調整ができる「コマンドセンター」が用意されています。画面の輝度や音量もここで設定可能。FPSリミッターやリアルタイムモニターなど便利な機能もここからすぐに呼び出せます。

「コマンドセンター」は本体のコマンドセンターボタンを押すと、いつでも表示されます

「コマンドセンター」は本体のコマンドセンターボタンを押すと、いつでも表示されます

「コマンドセンター」に表示する項目は、ASUSのゲーム用統合ソフト「ARMOURY CRATE」の「設定」からカスタマイズできます

「コマンドセンター」に表示する項目は、ASUSのゲーム用統合ソフト「ARMOURY CRATE」の「設定」からカスタマイズできます

画面左の2つの小さな白いボタンの下の「ARMOURY CRATEボタン」を押すと、「Game Library」が起動します。インストールしたゲームやランチャー類が一覧表示され、ここからゲームを起動可能。ゲーム機として使う場合は、この画面をメインに使うとよさそうです

画面左の2つの小さな白いボタンの下の「ARMOURY CRATEボタン」を押すと、「Game Library」が起動します。インストールしたゲームやランチャー類が一覧表示され、ここからゲームを起動可能。ゲーム機として使う場合は、この画面をメインに使うとよさそうです

最初にゲームを起動すると、「ゲームパッドモード」と「デスクトップモード」のどちらで起動するかを選ぶ画面が表示されます

最初にゲームを起動すると、「ゲームパッドモード」と「デスクトップモード」のどちらで起動するかを選ぶ画面が表示されます

「ゲームパッドモード」では、ボタンの割り当てをカスタマイズ可能。スティックはデッドゾーン、外部しきい値を設定できます。また、振動の強度も設定できるなど、細かな部分まで自分好みにカスタマイズを楽しめます。

「ゲームパッドモード」ではボタンの割り当てやスティックの調整、バイブレーションの強さなど細かくカスタマイズできます

「ゲームパッドモード」ではボタンの割り当てやスティックの調整、バイブレーションの強さなど細かくカスタマイズできます

上面に搭載される外部インターフェイスは、USB 3.2 Gen2 Type-C(DisplayPort 1.4、電源入力)、「ROG XG Mobileインターフェイス」、microSDXCメモリーカードスロット、ヘッドホン出力/マイク入力。あとは指紋認証センサー付きの電源ボタンと音量調整ボタンが備わっています

上面に搭載される外部インターフェイスは、USB 3.2 Gen2 Type-C(DisplayPort 1.4、電源入力)、「ROG XG Mobileインターフェイス」、microSDXCメモリーカードスロット、ヘッドホン出力/マイク入力。あとは指紋認証センサー付きの電源ボタンと音量調整ボタンが備わっています

底面には外部インターフェイスなどはありません。ちなみに自立はしないので、テーブルなどに置いて使いたい場合はスタンドなどが必要です

底面には外部インターフェイスなどはありません。ちなみに自立はしないので、テーブルなどに置いて使いたい場合はスタンドなどが必要です

右側面。隅のROGロゴ部分はホログラフィーのように、見る角度で光って見えます

右側面。隅のROGロゴ部分はホログラフィーのように、見る角度で光って見えます

左側面も右側と同じ形状です。ホールドする部分は、滑りにくくかつベタつかないように細かなシボ加工が施されています。

左側面も右側と同じ形状です。ホールドする部分は、滑りにくくかつベタつかないように細かなシボ加工が施されています。

ゲーム以外に目を向けると、OSはWindows 11 Home 64ビットなので、キーボードとマウスがあったほうが各種設定などはやりやすいです。今のところ専用のキーボードなどはラインアップされておらず、ワイヤレスキーボードなどを別途準備したいところです。

「ROG Ally」をパソコンとして使いたい場合は、別売の「ROG XG Mobile」と組み合わせるといいでしょう。ハブ機能付きの外付けGPUユニットで、「GeForce RTX 4090 Laptop GPU」搭載モデルの「Radeon RX 6850M XT」搭載モデルがラインアップされています。より大画面&高フレームレートでゲームを楽しみたいという人は購入を検討するといいでしょう。

別売の「ROG XG Mobile」があれば、大画面&高フレームレートでPCゲームをプレイできる。「ROG XG Mobile」の価格は「GeForce RTX 4090 Laptop GPU」搭載モデルが399,800円、「Radeon RX 6850M XT」搭載モデルが124,800円(いずれも税込、公式ストア価格)

別売の「ROG XG Mobile」があれば、大画面&高フレームレートでPCゲームをプレイできる。「ROG XG Mobile」の価格は「GeForce RTX 4090 Laptop GPU」搭載モデルが399,800円、「Radeon RX 6850M XT」搭載モデルが124,800円(いずれも税込、公式ストア価格)

まとめ

ゲーミングUMPCはニッチな市場ではあるが、PCゲームの広がりを受け、より小型のデバイスで楽しみたいという人もいるはずでしょう。また、PCゲームを楽しみたいけど、大きなゲーミングPCを置くスペースがない人(最近は小型のノートパソコンもありますが)にとっても、ゲーミングUMPCはちょうどいい選択肢ではないでしょうか?

「Steam Deck」を購入するという手もありますが、「ROG Ally」はWindowsパソコンなので、「Steam」以外のゲームも楽しめます。「Steam Deck」と比べると、価格が高いと感じるかもしれませんが、「Steam Deck」で安いのはストレージが64GBモデルで
その価格は59,800円(税込、オンラインストア価格)です。ただし、512GBモデルの価格は99,800円なので、「ROG Ally」の上位モデルとの価格差は1万円ほどです。

ゲーミングPC大手のASUSが参戦してきたことで、このカテゴリーの競争激化は必至でしょう。「ROG Ally」は、ASUS初のゲーミングUMPCですが、完成度は非常に高いと感じました。特に上位モデルの「Ryzen Z1 Extreme」のグラフィック性能は高く、ヘビー級タイトルも思った以上に快適に楽しめました。PCゲームにデビューしたい人や、家庭用ゲーム機からPCゲームへの乗り換えを検討している人は、ぜひ「ROG Ally」に注目してみてください。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!

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