レビュー

「ChatGPT」と連携可能なロジクール「MX Keys S」「MX Anywhere 3S」レビュー

ロジクールは、入力デバイスのフラッグシップモデル「MXシリーズ」の新製品として、テンキー付きキーボード「MX Keys S アドバンスド ワイヤレス イルミネイテッド キーボード」(以下MX Keys S)と、小型マウス「MX Anywhere 3S コンパクトパフォーマンスマウス」(以下MX Anywhere 3S)を2023年6月8日に発売しました。

両製品とも外観については前モデルとほとんど違いはありませんが、使い勝手に関わる部分が着実に進化しています。また、ロジクール初のマクロ機能「Smart Actions」に対応することで、日常的なルーティンワークを効率化できるようになりました。

今回は両製品の基本スペックと進化点を解説したうえで、「Smart Actions」と、話題の生成系AI「ChatGPT」の連携機能を試しました。

「MX Keys S アドバンスド ワイヤレス イルミネイテッド キーボード」(直販価格19,690円)、「MX Anywhere 3S コンパクトパフォーマンスマウス」(直販価格13,970円)

「MX Keys S アドバンスド ワイヤレス イルミネイテッド キーボード」(直販価格19,690円)、「MX Anywhere 3S コンパクトパフォーマンスマウス」(直販価格13,970円)

「Logi Bolt」対応マウスとキーボードでレシーバーを一本化できる

まずは両製品共通の進化点について触れておきましょう。

最大のトピックは、ロジクールの独自の無線規格「Logi Bolt」に対応すること。これにより「MXシリーズ」の現行モデルはすべて「Logi Bolt」対応になりました。「MXシリーズ」で使用するレシーバーを「Logi Bolt USB レシーバー」に一本化できるのは大きなメリットです。

デスクトップPCはともかく、現在のノートPCにとってUSB Type-Aポートは貴重な資源(端子)。従来の「Unifyingレシーバー」を使わずに、「Logi Bolt USB レシーバー」のみで「MXシリーズ」のキーボードとマウスを接続できるようになりました

デスクトップPCはともかく、現在のノートPCにとってUSB Type-Aポートは貴重な資源(端子)。従来の「Unifyingレシーバー」を使わずに、「Logi Bolt USB レシーバー」のみで「MXシリーズ」のキーボードとマウスを接続できるようになりました

次のトピックとして紹介しておきたいのが、ロジクールの統合ユーティリティー「Logi Options+」にマクロ機能「Smart Actions」が追加されたこと。「Smart Actions」については後ほど詳しく解説します。

加えて、両製品ともにカーボンニュートラル認定製品であることも特徴です。再生プラスチックを一部使用することでカーボンフットプリントを軽減しているうえ、パッケージにはFSC認証(森林認証制度)を取得した材料を使っています。SDGsを標榜する企業や団体なら、この点は製品導入の理由のひとつとなりうるでしょう。

「MX Keys S」はバックライトの調節項目が増加

カラーはグラファイトと新色ペールグレーの2色。「MX Keys Mini」で選べるローズは用意されていません

カラーはグラファイトと新色ペールグレーの2色。「MX Keys Mini」で選べるローズは用意されていません

「MX Keys S」は、テンキー付きの113キー日本語キーボード。本体サイズは430.2(幅)×131.63(高さ)×20.5(厚さ)mm、重量は810gです。キーはシザータイプで、アクチュエーションフォースは60g、キーストロークは1.8mm、キーピッチは実測19mm前後。いずれも正統派の扱いやすいスペックと言えます。

本体内には1500mAhのバッテリーが内蔵されており、バックライトオンで最長10日、バックライトオフで5か月使用可能とうたわれています。本製品はバックライトの設定項目が前モデルよりも増えているので、きめ細かく調節することで、実バッテリー駆動時間を改善できる幅が多いと言えるでしょう。

ワイヤレス接続方式は「Logi Bolt」とBluetooth。最大3台のデバイスに接続可能で、この仕様は「MX Anywhere 3S」も変わりません。

絵文字キーとマイクミュートキーが新たに追加されました

絵文字キーとマイクミュートキーが新たに追加されました

バックライトのオン/オフだけでなく、点灯時間、自動輝度、バッテリー節約モードなどの設定項目が追加されました

バックライトのオン/オフだけでなく、点灯時間、自動輝度、バッテリー節約モードなどの設定項目が追加されました

クリック音が静かになった「MX Anywhere 3S」

6個のボタン(左/右クリック、戻る/進むボタン、ホイールモードシフト、ミドルクリック)とスクロールホイールが用意。サイドボタンを押しながらホイールを回すことで水平スクロールも利用可能。この点は従来モデルと同じ仕様です

6個のボタン(左/右クリック、戻る/進むボタン、ホイールモードシフト、ミドルクリック)とスクロールホイールが用意。サイドボタンを押しながらホイールを回すことで水平スクロールも利用可能。この点は従来モデルと同じ仕様です

「MX Anywhere 3S」はコンパクトサイズのワイヤレスマウス。本体サイズは65×100.5×34.4mmで、重量は99g。500mAhのバッテリーを内蔵しており、1回のフル充電で最長70日間、1分の急速充電で3時間使用可能とうたわれています。充電時間は2時間です。

接続方式は「Logi Bolt」とBluetoothで、最大3台のデバイスに接続可能。マウスカーソルを複数のコンピューター間でシームレスに移動し、テキスト、画像、ファイルを貼り付けられる「Logi Flow」機能も引き続き対応しています。

前モデルからの進化点は、まず左/右のクリックボタン。前モデルではカチカチとクリック音が大きめに鳴っていましたが、本モデルは静音化されました。さらにトラッキングセンサーが最高で8000DPIに高精細化され、より正確なトラッキングが可能です。

トラッキングセンサーは200〜8000DPIの間で、50DPI刻みで設定可能

トラッキングセンサーは200〜8000DPIの間で、50DPI刻みで設定可能

「MXシリーズ」の最上位マウス「MX Master 3S」(84.3×124.9×51mm、141g)よりコンパクトかつ軽量です。比較的手の大きい筆者ですが、長時間のPC作業では「MX Anywhere 3S」のほうが疲れは少ないです

「MXシリーズ」の最上位マウス「MX Master 3S」(84.3×124.9×51mm、141g)よりコンパクトかつ軽量です。比較的手の大きい筆者ですが、長時間のPC作業では「MX Anywhere 3S」のほうが疲れは少ないです

マクロ機能「Smart Actions」は、テンプレートが使いやすく実用性が高い

今回、「MX Keys S」と「MX Anywhere 3S」を試用して最も気に入ったのが、ロジクール初のマクロ機能「Smart Actions」です。

マクロ機能自体は昨今珍しいものではないですが、ロジクールの統合ユーティリティー「Logi Options+」には非常にわかりやすいインターフェイスで、すぐに役立つテンプレートが用意されています。今回はその一例として、「ChatGPT」を使ったメールの返信文例作成を試しました。

「Smart Actions」と「ChatGPT」を連携させる方法

「Smart Actions」は右上の項目名から設定します

「Smart Actions」は右上の項目名から設定します

すぐに使えるテンプレートを12個用意

すぐに使えるテンプレートを12個用意

これが「ChatGPTで返信」のテンプレート。Google Chrome以外のブラウザーを使っていなければ、特に手直しする必要はありません

これが「ChatGPTで返信」のテンプレート。Google Chrome以外のブラウザーを使っていなければ、特に手直しする必要はありません

テンプレートが開かれたら、トリガーを設定します。トリガーは「アプリケーション」「デバイス」「システム」と紐付け可能。今回は「MX Keys S」のキーに割り当てるので「デバイス」を選択します。

アプリケーションとシステムは選択肢が出るだけで、現時点では選べません。今後実装される予定です

アプリケーションとシステムは選択肢が出るだけで、現時点では選べません。今後実装される予定です

前の画面でデバイスを選択すると、ボタンの設定画面が表示。下のサムネイルをクリックすると、割り当てるデバイスを変更可能です。今回は右上の「ロック」キーに割り当てました

前の画面でデバイスを選択すると、ボタンの設定画面が表示。下のサムネイルをクリックすると、割り当てるデバイスを変更可能です。今回は右上の「ロック」キーに割り当てました

キーを割り当てると、テンプレートの先頭に「MX Keys, ロックが押されました」とトリガーが追加されます。正しくキーが割り当てられているのを確認したら、「確認」をクリックします。

「確認」ボタンは、「設定終了」「閉じる」「OK」のほうがわかりやすいですよね。最初はちょっととまどいました

「確認」ボタンは、「設定終了」「閉じる」「OK」のほうがわかりやすいですよね。最初はちょっととまどいました

管理画面に新しい「Smart Actions」(マクロ)が登録されたら設定完了。以降は「ロック」キーを押せば、このマクロが実行されます

管理画面に新しい「Smart Actions」(マクロ)が登録されたら設定完了。以降は「ロック」キーを押せば、このマクロが実行されます

それでは今度はマクロが正常に動作するか試してみましょう。まずはメール画面を開いて、返信したい文面を選択します。なお、この際、ブラウザーのURL入力スペースの入力モードが「日本語入力オフ」になっていることを確認してください。日本語入力モードのままだと正常に動作しません。

文面を選択してからマクロを設定したキーを押します。なお、今回の文面は迷惑メールに振り分けられたものを使用しています

文面を選択してからマクロを設定したキーを押します。なお、今回の文面は迷惑メールに振り分けられたものを使用しています

正常に返信用の文面が「ChatGPT」により生成されました。ちなみに、「:wave:」と「:pray:」は絵文字用の文字列です

正常に返信用の文面が「ChatGPT」により生成されました。ちなみに、「:wave:」と「:pray:」は絵文字用の文字列です

「ChatGPT」は「こんにちは、ありがとうございます!この特別価格の有料放送がとても魅力的ですね。ただ、具体的な詳細を教えていただけますか? 例えば、どのような放送が見放題になるのか、契約期間は何か、他に条件があるかなどを知りたいです。よろしくお願いいたします!」という文面を生成しました。

ただ、この文面だとちょっと前のめりの返信となってしまいます。というわけでテンプレートを少し変更しましょう。

テンプレートでは「ChatGPT」に対して「Please write a draft reply to the text below. In addition, please create it assuming that you will reply with a chat tool such as Slack. Text below:」と指示しているのですが、これを「Please write a draft reply apologizing for your inability to respond to the text below. Also, please prepare on the premise that you will reply with a chat tool such as Slack. Text below:」と変更します。こうすると返信用の文面が下記のように変わります。

文面が「こんにちは!情報を共有していただきありがとうございます。特別価格での有料放送無料見放題は魅力的に聞こえますね! ただ、私の立場からは購入を決定することが難しいです。私がAIであるため、視聴や購入という行為を行うことはできません。それでも、この情報はほかのメンバーにとっては有益かもしれませんね。ありがとうございます!」と変わりました

文面が「こんにちは!情報を共有していただきありがとうございます。特別価格での有料放送無料見放題は魅力的に聞こえますね! ただ、私の立場からは購入を決定することが難しいです。私がAIであるため、視聴や購入という行為を行うことはできません。それでも、この情報はほかのメンバーにとっては有益かもしれませんね。ありがとうございます!」と変わりました

「私がAIであるため、視聴や購入という行為を行うことはできません。」という文章が余計ですが、これは「ChatGPT」に対する私の指示が足らなかったためです。とはいえ、「ChatGPT」だけでなく、さまざまなWebサービスやアプリに対するマクロが手軽に作成できることがおわかりいただけたかと思います。

「Smart Actions」には「朝のセットアップ」「Slackで検索」「コミットされていないコード変更を確認」「インポイントとアウトポイントを設定(Premiere Pro)」など実用的なテンプレートが12個用意されているので、利用のハードルは低いです。また、今後アプリケーションやシステムをトリガーに設定できるようになり、活用範囲も広がることでしょう。「Smart Actions」は「MXシリーズ」を選ぶ、強い後押しになりますね。

USBポートの節約につながる「Logi Bolt」対応は魅力

今回の新製品は、キーボードのスイッチなどが変更されておらず、ハードウェア的にはマイナーチェンジにとどまっていますが、「Logi Bolt」への一本化は待ち望んでいた施策です。同レシーバーに対応したキーボードとマウスなら消費するUSBポートをひとつ減らし、その分をスマートデバイスやカメラなど別の機器との接続に割り振ることができます。

マクロ機能「Smart Actions」は「Logi Options+」に対応している「MXシリーズ」の全デバイスで使えるので旧モデルからの買い替え理由としては弱いですが、新規ユーザーにとっては魅力的な機能だと思いますし、「ChapGPT」との連携も時流に沿ったものと言えそうです。

両製品はロジクールのハイエンドモデルだけに、打鍵感、クリック感は上質。「Logi Options+」はキーボード、マウスのユーティリティーとしては、比較的初心者にわかりやすく作られています。ちょっとお高めであることは確かですが、それだけの操作感と利便性を備えており、使い勝手にすぐれたこだわりのキーボードやマウスを探しているなら、その期待に見合うだけの満足感を得られる製品と言えるでしょう。

ジャイアン鈴木

ジャイアン鈴木

レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。

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