レビュー

「Xperia 10 V」を旧モデルと比較! サウンドやカメラを強化した“みんなのXperia”

2023年7月上旬より順次発売が始まっている「Xperia」シリーズの主力モデル「Xperia 10 V」。比較的現実的な価格ながら、カメラの改善やステレオスピーカーの搭載で、「Xperia」らしさが強化されている。旧モデル「Xperia 10 IV」と比較したレビューをお届けしよう。

「Xperia 10 V」とその前身となる「Xperia 10」 IVを比較。強化されたところと変わらない点はどこだろうか?

「Xperia 10 V」とその前身となる「Xperia 10」 IVを比較。強化されたところと変わらない点はどこだろうか?

わずかに大きくなったディスプレイとボディ

ハイエンドスマートフォンは今や20万円以上の価格帯が主流。分割払いや端末購入補助を駆使しても、買うには勇気が必要かもしれない。その結果、機能と価格のバランスを重視したミドルレンジスマートフォンが近ごろ人気だ。

今回取り上げる「Xperia 10 V(エクスペリア・テン・マークファイブ)も、そんなミドルレンジスマートフォンのひとつ。NTTドコモ、au、UQ mobile、ソフトバンク、楽天モバイル、MVNO各社、メーカー直販といった多様なルートで発売される期待の製品だ。

そのボディサイズは約68(幅)×155(高さ)×8.3(厚さ)mmで、重量は約159g。前モデルよりも幅が1mm、高さが約2mm大きくなったが、重量については2gほど軽い。なお、背面のデザインはほとんど変わっていないが、表面のマット加工を改良することで汚れが目立ちにくくなっている。

左が「Xperia 10 V」、右は「Xperia 10 IV」。背面のデザインに大きな変更はない

左が「Xperia 10 V」、右は「Xperia 10 IV」。背面のデザインに大きな変更はない

両モデルの高さを比較。2mmの違いがあるが使い勝手や持ちやすさに大きな影響を与えるほどではない

両モデルの高さを比較。2mmの違いがあるが使い勝手や持ちやすさに大きな影響を与えるほどではない

側面に備わる指紋センサー一体型の電源ボタン

側面に備わる指紋センサー一体型の電源ボタン

誤作動防止のため、触れただけでは反応しない、押し込み式指紋認証を設定できるようになった。なお、初期設定でオフになっており、「設定」→「セキュリティ」→「押し込み式指紋認証」のトグルで切り替える

誤作動防止のため、触れただけでは反応しない、押し込み式指紋認証を設定できるようになった。なお、初期設定でオフになっており、「設定」→「セキュリティ」→「押し込み式指紋認証」のトグルで切り替える

ディスプレイは6.0インチから6.1にわずかに大型化しつつ、最大輝度も向上している。そのいっぽうで縦長でノッチやパンチホールのないフルHD+の有機ELディスプレイである点は変わっていない。なお、リフレッシュレートとタッチサンプリングレートも60Hzから据え置きだ。画面の大型化は本機の進化点のひとつだが、旧モデルと並べても違いは感じにくい。ただ、輝度が向上したことで、より見やすくなっている。

サウンド機能を見ると、ステレオスピーカーをついに搭載。スピーカーの配置は「Xperia 1」シリーズと同じく左右対称かつボディ前面に搭載されており、高い定位感が魅力だ。

ディスプレイは0.1インチだけ大型化しているが、シリーズの持ち味であるコンパクトさを損ねるほどではない

ディスプレイは0.1インチだけ大型化しているが、シリーズの持ち味であるコンパクトさを損ねるほどではない

「Xperia 1」シリーズや「Xperia 5」シリーズと同じような、左右対称に配置されたステレオスピーカーを搭載する

「Xperia 1」シリーズや「Xperia 5」シリーズと同じような、左右対称に配置されたステレオスピーカーを搭載する

ヘッドホン端子も引き続き搭載。ストリーミング音源などで利用可能なソニー独自の立体音響技術「360 Upmix」に対応している

ヘッドホン端子も引き続き搭載。ストリーミング音源などで利用可能なソニー独自の立体音響技術「360 Upmix」に対応している

機能面では、もちろんFeliCaポートを備えており、おサイフケータイを利用可能、NFCポートはマイナンバーカードの読み取りが確認されている。防水はIPX5/8、防塵はIP6Xという高性能なので、継続した水没に耐えることもできる。また、MIL規格に対応するタフネス仕様のボディではないものの、ディスプレイの保護ガラスに「Corning Gorilla Glass Victus」が使われているため、カギなど金属による傷への耐久性が期待できる。

広角カメラの画質を改善

これまで、「Xperia 10」シリーズの欠点として、カメラの性能があまりよくないことを指摘する意見が多かった。しかし、「Xperia 10 V」では、広角カメラを中心に基本性能の強化なされている。

メインカメラは、約4800万画素の広角カメラ(記録画素数は約1200万画素。35mm換算の焦点距離26mm)、約800万画素の超広角カメラ(同焦点距離16mm)、約800万画素の望遠カメラ(同焦点距離54mm)という組み合わせのトリプルカメラだ。注目は広角カメラ。イメージセンサーのサイズが従来の1/2.8インチから1/2.0インチに大型化したことで感度性能が約60%向上している。

超広角、広角、望遠のトリプルカメラ。広角カメラの性能強化が図られている点が注目だ

超広角、広角、望遠のトリプルカメラ。広角カメラの性能強化が図られている点が注目だ

以下に、静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のまま、シャッターを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。

広角カメラで撮影

明暗差の大きな構図で撮影を行った。ホワイトバランスに違いがあり、「Xperia 10 V」のほうが肉眼の印象に近い。構図中央部分のハイライトを比べると「Xperia 10 V」のほうが少し飽和している部分が少なく、暗部のノイズも少なく総じてクリアだ撮影写真(Xperia 10 V:4000×3000、5.5MB、Xperia 10 IV:4000×3000、3.8MB)

明暗差の大きな構図で撮影を行った。ホワイトバランスに違いがあり、「Xperia 10 V」のほうが肉眼の印象に近い。構図中央部分のハイライトを比べると「Xperia 10 V」のほうが少し飽和している部分が少なく、暗部のノイズも少なく総じてクリアだ
撮影写真(Xperia 10 V:4000×3000、5.5MBXperia 10 IV:4000×3000、3.8MB

超広角カメラで撮影

曇りの日中を撮影。ホワイトバランスに違いがあり「Xperia 10 V」のほうが肉眼により近い。ただ、周辺部分の流れや解像感はよく似た傾向のため、レタッチで修正できる程度の違いと言えるだろう撮影写真(Xperia 10 V:3264×2448、2.4MB、Xperia 10 IV:3264×2448、2.3MB)

曇りの日中を撮影。ホワイトバランスに違いがあり「Xperia 10 V」のほうが肉眼により近い。ただ、周辺部分の流れや解像感はよく似た傾向のため、レタッチで修正できる程度の違いと言えるだろう
撮影写真(Xperia 10 V:3264×2448、2.4MBXperia 10 IV:3264×2448、2.3MB

広角カメラで撮影

LED照明の店内で撮影。いずれも、「Xperia」らしい発色の誇張を抑えた肉眼の印象に近い仕上がりだ。ノイズのあらわれ方、米粒などのディテールの解像感にも大きな違いは見られず、このくらいの明るさでは、はっきりとした優劣は見られない(Xperia 10 V:4000×3000、6.51MB、Xperia 10 IV:4000×3000、3.64MB)

LED照明の店内で撮影。いずれも、「Xperia」らしい発色の誇張を抑えた肉眼の印象に近い仕上がりだ。ノイズのあらわれ方、米粒などのディテールの解像感にも大きな違いは見られず、このくらいの明るさでは、はっきりとした優劣は見られない
撮影写真(Xperia 10 V:4000×3000、6.51MBXperia 10 IV:4000×3000、3.64MB

広角カメラで撮影

明るめの夜景を広角カメラで撮影。両機でかなりはっきりと違いが現れる。ハイライトの扱いや、階調表現、街路樹のディテールの扱いで「Xperia 10 V」の圧勝と言っていいだろう。(Xperia 10 V:4000×3000、4.7MB、Xperia 10 IV:4000×3000、4.12MB)

明るめの夜景を広角カメラで撮影。両機でかなりはっきりと違いが現れる。ハイライトの扱いや、階調表現、街路樹のディテールの扱いで「Xperia 10 V」の圧勝と言っていいだろう
撮影写真(Xperia 10 V:4000×3000、4.7MBXperia 10 IV:4000×3000、4.12MB

望遠カメラで撮影

ピンクと白の複雑なグラデーションを持つアンスリウムの一種を撮影。花の発色にはっきりとした違いがあり、Xperia 10 Vは露出を控えてより濃厚に、Xperia 10 IVは飽和気味だが淡い色彩となっている。肉眼の印象に近いのはXperia 10 IVのほうだった(Xperia 10 V:4000×3000、2.68MB、Xperia 10 IV:4000×3000、2.9MB)

ピンクと白の複雑なグラデーションを持つアンスリウムの一種を撮影。花の発色にはっきりとした違いがあり、Xperia 10 Vはやや濃厚に、Xperia 10 IVは飽和気味だが淡い色彩となっている。肉眼の印象に近いのはXperia 10 IVのほうだった
撮影写真(Xperia 10 V:4000×3000、2.68MBXperia 10 IV:4000×3000、2.9MB

「Xperia 10 V」の広角カメラは、高感度性能やホワイトバランス、ダイナミックレンジがかなり改善されているようだ。また、ホワイトバランスも正確になっており、総じて明るく鮮やかで肉眼に近い印象の撮影ができる。レスポンスも改善され、きびきびとした撮影ができる点も美点だ。

カメラに注目するなら、「Xperia 10 V」のほうが総じて高い満足度が得られるだろう。

SoCは「Xperia 10 IV」と共通。ベンチマークテストも体感速度もほとんど変わらない

処理性能や通信性能など基本的な性能を見てみよう。搭載されるSoCは「Snapdragon 695」で、6GBのメモリー、128GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットという組み合わせだ。この点で「Xperia 10 IV」と変わりはない。なお、プリインストールされるOSは、1世代新しいAndroid 13だが、「Xperia 10 IV 」もAndroid 13の配布が行われているので、実際は違いがない。

定番のベンチマークアプリ、AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)のスコアは、「Xperia 10 V」が465601、「Xperia 10 IV」が465319だった。詳細は以下の画像を参照していただきたいが、総合スコアはもちろん、CPU、GPU、MEM、UXの各サブスコアも数値はとても似ている。

アプリの起動や切り替えの際のスムーズさやスクロールのなめらかさといった体感速度の点でも違いを見分けるのは困難で、速度の点で優劣はないと判断してよさそうだ。なお、「Xperia 10 IV」のOSはバージョンアップ前のAndroid 12だった。

AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)の結果。左が本機、右は「Xperia 10 IV」のもの。総合スコアとサブスコアいずれもとてもよく似ている

AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)の結果。左が本機、右は「Xperia 10 IV」のもの。総合スコアとサブスコアいずれもとてもよく似ている

引き続きバッテリー持ちは良好で使いこんでも3日以上は持続

内蔵されるバッテリーは容量5000mAhで、前モデルと同じだ。バッテリー持ちに関する指標をau版の新旧モデルで比較すると、連続通話時間が約2910分から約2930分へ20分ほど伸びたが、連続待ち受け時間は約830時間から約820時間に10時間ほど短くなっている。

ただし、いずれもかなり良好な電池持ちであることは確かで、検証に際して待ち受けが主体であれば、検証から5日経過した時点でバッテリーは37%しか消費しておらず、計算上は2週間の電池持ちが期待できる。またゲームを1日に2時間程度やりこんでも24時間で32パーセントのバッテリー消費で済んでおり、こちらも計算上は3日のバッテリー持ちが見込めることになる。また、発熱の少なさも魅力で、熱を感じたのはベンチマークテストを行った場合くらいだった。バッテリーの残量をいちいち気にしなくてよいのも魅力だ。


充電性能を見ると前モデル同様に最大18WのUSB PD規格の急速充電に対応しており、同規格に対応する充電器を使用したところ、手元の時計ではフル充電にかかる時間は2時間10分ほどで、中国メーカーを中心にした急速充電対応製品と比較するとざっと倍の時間がかかる。

「Xperia 10 V」を軸に、価格優先の「Xperia 10 IV」、性能優先の「Xperia 5 III」が選べる

本機の魅力は比較的現実的な価格の「Xperia」であることで、必ずしも性能やコスパで選ばれるわけではないだろう。競合となるのはやはりXperiaの中になると考えられる。

本製品と価格帯の近い「Xperia」として有力なライバルとなるのは、今回比較対象とした前モデル「Xperia 10 IV」だ。この両機は、少しだけ大きくなったボディ、ステレオスピーカー、向上したカメラ性能という違いはあっても、基本性能は同じ。「Xperia 10 IV」は近ごろ積極的な値下げが行われているためコスパは急激に高まっている。

そして、もうひとつ有力なライバルが近ごろ現れた。それは2021年秋登場の小型ハイエンド「Xperia 5 III」だ。こちらも、値下げで、メーカー直販サイトでは79,200円(税込)という、本機との価格差は約1万円まで接近。そして36回まで分割払いの手数料は無料という好条件が提示されている。「Xperia 5 III」は、今でも十分すぎるほど高性能で、カメラやディスプレイも魅力的だ。ただし、性能優先の設計なのでバッテリー持ちは本機より格段に劣る点には注意がいる。

「Xperia 10 V」を軸に、価格優先の「Xperia 10 IV」と性能優先の「Xperia 5 III」。この3機種は楽しい製品選びが期待できる組み合わせと言えそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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