シャープ「AQUOS R8」は、「効率型ハイエンド」という新しいコンセプトで商品化されたAndroidスマートフォン。NTTドコモから8月10日に発売される、2023年夏の最新モデルだ。ボディ、ディスプレイ、カメラ、基本性能の特徴を詳しく見ていこう。
フラッグシップモデル「AQUOS R8 pro」と同じ最新のSoCを搭載しながらも軽くて使いやすいのが本機の注目点だが、実際に使ってみてその完成度の高さに驚いた。
フラッグシップモデル「AQUOS R8 pro」と同じく、2023年夏のハイエンドモデルとして登場する「AQUOS R8」。カラーバリエーションはブルー(本画像)とクリームの2色
「AQUOS R8」を使ってみて特に印象的だったのは、ボディが軽くて持ちやすいことだ。約6.39インチの大きなディスプレイを搭載しながらも、重量は「AQUOS R7」「AQUOS R8 pro」より15%程度軽い約179gに抑えられている。
約179gの軽量ボディを実現。ブルーカラーはシックな雰囲気で、シーンを選ばずに使えそうだ。見る角度によって微妙に色のトーンが変わるのが上質さを演出している
背面メインカメラのレンズを含めてボディ全体の重量バランスがよく、縦に持っても横に持っても上下/左右のどちらかにボディが傾く感じがないのがよい。あまりに軽いフィーリングなので、最初に持ったときに思わず「軽っ!」と口に出してしまったくらいだ。
「AQUOS R8 pro」「AQUOS R7」と比べると幅・高さ・奥行のすべてがわずかに小さく、ポケットなどに入れたときの収まり具合がよいのもポイント。総じて取り回しやすいボディだと感じた。
「AQUOS R8」「AQUOS R8 pro」「AQUOS R7」のボディサイズ/重量は以下のとおり。
AQUOS R8:約74(幅)×159(高さ)×8.7(奥行)mm/約179g
AQUOS R8 pro:約77(幅)×161(高さ)×9.3(奥行)mm/約203g
AQUOS R7:約77(幅)×161(高さ)×9.3(奥行)mm/約208g
本機は軽量ながら堅牢性にもすぐれており、米国国防省制定のMIL-STD-810H規格(耐衝撃落下はMIL-STD-810G)に準拠。IPX5/IPX8相当の防水性能(お風呂防水対応)とIP6X相当の防塵性能も実現している。不意の落下時や水辺での使用時などでも故障が発生しにくいので安心して使える。
さらに、全体的にマットな仕上がりで、アルミフレームの金属感が伝わってくるボディデザインも上質で好印象。斜めにカットした側面はブラスト仕上げ(表面に小さな凸凹を設ける加工)なので持ったときの手触りがとてもよい。ホールドしていると「よいものを持っている」という感覚が手に伝わってくる。
斜めにカットした側面はブラスト仕上げで、ホールド感のよさにもひと役買っている。左側面には、指紋センサーを兼ねた電源キーを装備。バッテリー容量は4570mAhと十分で、待ち受けが主体なら数日はバッテリーが持続するはずだ
「AQUOS R8」は、約6.39インチの有機ELディスプレイ「Pro IGZO OLED」を搭載している。画面解像度は2340×1080(フルHD+)。
「AQUOS R8 pro」「AQUOS R7」の約6.6インチ/2730×1260(WUXGA+)と比べるとサイズ・解像度ともわずかに抑えられているが、ピーク輝度1300nit、コントラスト比1300万:1を達成しており、表示は非常に高品位だ。
「AQUOS R7」と比べてブルーライトを約50%抑制しながらも特定の色がシフトする感じがなく、どの色も正確かつ鮮やかに表示してくれるのがポイント。利用状況に応じてリフレッシュレートを1〜240Hzの間で可変する機能を搭載し、滑らかな表示と低消費電力を両立しているのも特徴だ。このあたりの機能性は「AQUOS R8 pro」と同等である。
さらに、「Dolby Vision」や「HDR10」といったHDR規格と立体音響技術「Dolby Atmos」にも対応。これらに対応したコンテンツを臨場感のある映像・音で楽しめる。
高画質で滑らかな表示と低消費電力を両立した、約6.39インチの有機ELディスプレイ「Pro IGZO OLED」を採用。スマホで撮影した写真・動画をキレイに表示できるだけなく、YouTubeなどの動画コンテンツやゲームも高画質に楽しめるディスプレイだ。なお、インカメラ(約800万画素、35mm判換算で焦点距離26mm相当)はディスプレイ上部のノッチ(切り込み)に備わっている
残像を抑えてスムーズな表示とタッチ操作を可能にする「なめらかハイスピード表示」のほか、目にやさしい表示に切り替わる「リラックスビュー」、屋外など明るい環境下で画面を自動的に明るくする「アウトドアビュー」といった多彩な機能を搭載
ピーク輝度が高く、強い日差しが照りつける状況でも十分な視認性を確保できる
「AQUOS R8」のメインカメラは、有効画素数が約5030万画素の標準カメラ(35mm判換算で焦点距離23mm相当の画角:85度)と、約1300万画素の広角カメラ(35mm判換算で焦点距離17mm相当の画角:118度)のデュアルカメラ仕様だ。
注目したいのは標準カメラで、撮像素子のサイズが1/1.55インチとスマートフォンとしては大きく、レンズにはライカカメラ社が監修した絞り値F1.9の「ヘクトール」を採用。約5030万画素からピクセルビニング(画素混合)で約1300万画素の画像を生成する仕組みだ。
左が広角カメラで、右が標準カメラ。標準カメラは1/1.55インチの大きな撮像素子を搭載しており、その分レンズも大きい。レンズにはライカカメラ社監修の「ヘクトール」を採用している
AFは、全画素で高速・高精度な像面位相差AFに対応し、スピーディーなピント合わせが可能。「AQUOS R8 pro」の、1画素に8つのフォトダイオードを持つ「Octa PD AF」とは異なる仕組みだが、AFの性能は十分に高い。夜景など暗いシーンで少しピントを外すこともあったが、使い勝手は良好だ。
画質については次項目の写真作例をご覧いただきたいが、標準カメラ/広角カメラともにオートホワイトバランスの精度が高いのが好印象。夕景や夜景など色再現が難しいシーンでも、正確で印象的な色の写真を撮影できる。
標準カメラは、センサーサイズが大きいためより精細感が高く、高感度でもノイズが少ない。さすがに、1インチセンサーを搭載する「AQUOS R8 pro」ほどではないものの、スマートフォンのカメラとしては高画質な部類に入ると言っていいだろう。
さらに、本機は、後述する最新のSoC「Snapdragon 8 Gen 2」の搭載によって処理性能が向上しているのも見逃せない。カメラでは「AQUOS R7」と比較してHDR処理が約40%高速化しており、撮影後の待ち時間が少なく、レスポンスよく撮影を続けられる。
「AQUOS R8 pro」と同様、夜の撮影に適した静止画撮影モード「ナイト」に「星空」と「花火」が追加された(左)。シャッタースピードや感度を設定できるマニュアル撮影にも対応している(中央)。約5030万画素をフルに生かして記録する「ハイレゾ」モードなども備わっている(右)
撮影画面の機能は「AQUOS R8 pro」と変わりなく、ガイド線表示やヒストグラム表示などに対応。画面上のアイコンをタッチすることで「オートHDR」と「オートナイト」のオン/オフを切り替えられる(左)。被写体を自動で判定して画質を調整する機能も備わっている(右)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/847秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オフ
撮影写真(4096×3072、2.8MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO1057、シャッタースピード:1/100秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オフ
撮影写真(4096×3072、3.2MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/498秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オフ
撮影写真(4096×3072、5.2MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO208、シャッタースピード:1/100秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オン
撮影写真(4096×3072、1.8MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/1576秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オン
撮影写真(4096×3072、5.5MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO1280、シャッタースピード:1/100秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オン
撮影写真(4096×3072、4.3MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/268秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オン
撮影写真(4096×3072、2.5MB)
AQUOS R8、ズーム:0.7倍(広角カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/476秒、絞り値:F2.2、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オン
撮影写真(4096×3072、4.2MB)
AQUOS R8、ズーム:0.7倍(広角カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/1400秒、絞り値:F2.2、ホワイトバランス:オート、オートHDR:オン
撮影写真(4096×3072、4.2MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO1868、シャッタースピード:1/20秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、ナイトモード
撮影写真(4096×3072、3.4MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO4678、シャッタースピード:1/33秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、ナイトモード
撮影写真(4096×3072、3.2MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO1119、シャッタースピード:1/50秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、ナイトモード
撮影写真(4096×3072、3.4MB)
AQUOS R8、ズーム:1.0倍(標準カメラ)、感度:ISO50、シャッタースピード:1/393秒、絞り値:F1.9、ホワイトバランス:オート、ハイレゾモード
撮影写真(8192×6144、12.7MB)
ちなみに、本機と「AQUOS R8 pro」との違いとして、本機のほうがHDR処理の効果が強いことを付け加えておこう。
注意したいのは、撮影時の画面で見た映像と、実際に記録された画像の印象がかなり異なる場合があること。本機の場合、画面ではハイライトが飛んでいるように見えても、記録画像では強力なHDR処理によってハイライトのトーンがしっかりと出ることが多い。使い慣れてコツをつかめば問題ないレベルだが補足しておきたい。
最後に「AQUOS R8」の基本スペックを紹介しよう。
SoCは「AQUOS R8 pro」と同じ最新の「Snapdragon 8 Gen 2」で、これに容量8GBのメモリーと256GBのストレージを組み合わせている。メモリーの規格はLPDDR5X、ストレージの規格はUFS 4.0で、いずれも「AQUOS R8 pro」と同じ最新規格だ。ハイエンド機にふさわしいハイスペックを実現していると言えるだろう。
以下に、「AQUOS R8」「AQUOS R8 pro」「AQUOS R7」の各種ベンチマークアプリの結果を掲載する。
「AnTuTu Benchmark V10」「Geekbench 6」「3DMark Wild Life Extreme」「AI Benchmark」といったベンチマークアプリを試してみたが、「AQUOS R8」は、「AnTuTu Benchmark(Ver.10)」の総合スコアが130万台、「3DMark Wild Life Extreme」が3600台、「AI Benchmark」が2000台で、前世代の「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載する「AQUOS R7」と比べて1.2〜1.7倍高いスコアを叩き出した。「AQUOS R8 pro」と比べてもほぼ同レベルで、「3DMark Wild Life Extreme」「AI Benchmark」についてはむしろ「AQUOS R8」のほうが結果がよいくらいだ。
「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアが1343844、「Geekbench 6」のシングルコアが2037/マルチコアが5456/GPUが8652、「3DMark Wild Life Extreme」が3636、「AI Benchmark」が2022
「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアが1389721、「Geekbench 6」のシングルコアが2061/マルチコアが5524/GPUが8781、「3DMark Wild Life Extreme」が2762、「AI Benchmark」が2009
「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアが928546、「Geekbench 6」のシングルコアが1721/マルチコアが3784/GPUが5583、「3DMark Wild Life Extreme」が2080、「AI Benchmark」が1598
さらに、本機は「AQUOS R8 pro」と同様、背面のカメラリングを通して効率的に放熱する独自の「サーモマネジメントシステム」を採用しているのも押さえておきたい。さすがにカメラアプリやゲームアプリを長時間動かした際はそれなりにボディが熱くなるものの、極端に熱くなることはなく、またアプリを落としてから熱が下がるのが早い印象で、このシステムによって安定した動作を確保していると感じた。
アドベンチャーRPG「原神」を、フレームレートを60fpsに上げてプレイしてみたが、滑らかな表示のディスプレイとスムーズな動作で快適にプレイできた
「AQUOS R8」の商品コンセプトは「効率型ハイエンド」。効率型というとなんだか難しく感じるかもしれないが、今回使ってみて、この「効率型ハイエンド」というのは「軽快に使えるハイエンド」を意味すると感じた。
「軽快」なのは、ハイエンド機ながら軽量ボディを実現しているのが大きい。とにかく持ったときの感じが軽く、フィーリングがとてもよいのだ。さらに、ハイエンド機らしく基本性能にすぐれ、動画視聴やゲームプレイ、写真・動画撮影、SNS、ブラウジングなど、何をするにしても動作がスムーズで快適なのもポイント。本記事で触れたようにディスプレイとカメラがハイレベルなのも外せない魅力だ。
こうした特徴をまとめると、このスマホはハイエンド機としてあらゆる点がちょうどよいと感じるトータルバランスのよさを実現していると言える。これが、本記事のタイトルにある“買い”の理由。筆者の場合、本機を使えば使うほどに使い心地のよさを実感し、“欲しい”という気持ちが高まっていったほどである。
ハイエンドスマホを使っていて「大きくて取り回しが悪い」と感じている人や、エントリーやミドルレンジクラスのスマホを使っていて「もっと高性能で使いやすい端末がほしい」と感じている人にぜひ手に取ってほしいモデルだ。軽量で持ち運びやすいので、動画視聴やゲームプレイなど負荷の高い使い方だけでなく、普段使いにもぴったりだと思う。
発売日と価格は先日発表されており、発売日は2023年8月10日で、一括支払い時の価格は146,850円(税込)。若干価格が高い印象もあるが、ボディの作りのよさと、発売後に最大で3回のバージョンアップ/5年間のセキュリティアップデートに対応することを考慮すると妥当な金額と言えるのではないだろうか。
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。