CPUやGPUの高性能化により、年々発熱量が増加傾向にあるPCパーツ。温度が高くなりすぎると、CPUやGPUを中心にパフォーマンスが低下してしまううえ、PCパーツの寿命低下や故障にもつながりかねない。特に気温が高い夏場は高温になりやすいため、最適な冷却環境を整えたいもの。そこで今回は、PCケース内のエアフローとして考えられるパターンを複数試し、最適な冷却環境を検証してみた。
前知識として確認しておきたいのは、PCにおける冷却の重要性だ。そもそも、なぜPCを冷却しなければならないのだろうか。それを知るためには、まずPCが発熱する原理から押さえておく必要がある。
PCを構成するCPUやGPUなどの電子(電気)パーツは、電子が流れることによって動作しているが、この電子がパーツ内の半導体や配線を通ろうとすると、これらを構成する原子にどうしても衝突することになる。この衝突によって電子が持つエネルギーの一部が熱に変わるため、電子パーツが動作すると発熱するのだ。
当然ながら、電子パーツをパワフルに動作させるには多くの電子を流す必要があるが、そうするとパーツ内の原子との衝突も増えるため、より激しく発熱することになる。大きな発熱とエネルギーロスをともなうこうした衝突が少なくなるように、メーカーはパーツ内の配線を細くしたり短くしたりすることに日々腐心しているわけだが、基本的には、パーツが高性能であればあるほど、そしてパーツの出力を上げれば上げるほど、パーツは高温になる傾向があると考えてよい。
そして高性能パーツの中には、高負荷時に100度を超えてしまうものもある。これだけの高温になると、やはり劣化や故障のリスクが高まるし、最悪の場合は火災にもつながりかねない。そのため、高温になりやすいCPUやGPUなどは、高温になるほど自動的に出力を落とすよう設計されている。
こういった高温時における出力制限が「サーマルスロットリング」と呼ばれるもので、発熱によるパフォーマンス低下の要因となっている。また、仮にサーマルスロットリングが発動しなくとも、高温になれば、パーツを構成する部品によっては特性が変動して不安定になってしまう。こうした事情があるため、やはりパーツをパワフルに冷却し、少しでも発熱を抑えるに越したことはないのだ。
冷却の重要性が確認できたところで、今回検証に使用するPCパーツをチェックしながら、冷却システムの基礎知識をおさらいしていこう。自作PCでユーザーが選択する必要がある冷却システムには、大きく分けて、ケースに装着する「ケースファン」と、CPUに装着する「CPUクーラー」の2つがある。
ケースファンは、ケースに空気を取り込む吸気ファンと、排熱をケースから追い出す排気ファンから構成される。基本的には、ファンが大きければ大きいほど、そしてファンの回転数(rpm)が多ければ多いほど、冷却性能は高まると考えてよい。ただ、それでは騒音がかなり大きくなってしまうため、120mm以上の大きめのファンを1000rpm前半程度の適度な回転数で回し、静音性とのバランスを取ることをおすすめしたい。
また、ケースによって設置できるファンの数やファンの設置場所が大きく変わるうえ、ケースの内部空間の大きさや形状でエアフローも変わるため、ケース自体もあわせて考慮しなければならない。ゲームやクリエイティブ作業に向いた高性能パーツを使用するのであれば、最低でも、ケース前面に2基、ケース上面に1基、ケース背面に1基のファンが取り付けられるものが望ましいだろう。
今回使用したケースは、フルタワー型ケースのFractal Design「Pop XL Silent Solid FD-C-POS1X-01」。230(幅)×522(奥行)×520(高さ)mmと余裕のあるサイズで、ハイクラスパーツの冷却に適した内部空間がしっかりと確保されているうえ、吸音フォームが貼り付けられたサイドパネルを採用しており、静音性にもすぐれている
Fractal Design「Pop XL Silent Solid FD-C-POS1X-01」には、120mmファン「Aspect 12」が前面に3基、背面に1基付属する。前面のファンを取り外せば、最大140mmファン2基、または最大360mmの水冷ラジエーターが搭載可能。上面には最大140mmファン2基、または最大280mmの水冷ラジエーターが搭載可能だ
ケースファンの側面には、大抵の場合、空気の流れる方向が矢印で示されている。この矢印を確認して、正しい方向で装着しよう
ケースファンの端子には4ピンのものと3ピンのものがある。4ピンのものはパルス信号で回転数を制御するPWMコントロール、3ピンのものは供給電圧で回転数を制御するDCコントロールだ。PWMコントロールのほうが緻密な制御が可能だが、マザーボードの端子も4ピンである必要がある。また、DCコントロールの場合も、マザーボードの端子によっては対応していない。その場合は常時フル回転になる
CPUクーラーには、一般的な空冷クーラーと、より強力な水冷クーラーがある。前者の空冷クーラーは、CPUの熱をヒートパイプ経由でヒートシンクに伝え、そのヒートシンクを冷却ファンで冷やす構造だ。後者の水冷クーラーは、CPUの熱を、チューブを流れる冷却液(クーラント)でラジエーターに伝え、そのラジエーターを冷却ファンで冷やす構造となっている。いずれも、ヒートシンクやラジエーター、冷却ファンの大きさ、そしてファンの回転数が冷却性能を左右するという点では同じだ。
ただし、冷却性能は圧倒的に水冷クーラーのほうがすぐれているため、ハイクラスのインテル「Core i7 プロセッサー」やAMD「Ryzen 7 デスクトップ・プロセッサー」以上を使用するのであれば、ぜひ水冷クーラーを導入したいところ。
なお、CPUクーラーの仕様には、対応するCPUの熱設計電力「TDP」が明示されているものもある。使用するCPUの消費電力を調べて、それ以上のTDPに対応している製品を選べば間違いない。なお、インテル製CPUの場合はブースト時の消費電力「MTP」を、AMD製CPUの場合は電力リミットの「PPT」を、TDPに代わる指標として考えることを推奨する。
今回は、MTPが190Wと高い「Core i7 12700Kプロセッサー」を使用するため、280mmの大型ラジエーターを装備した簡易水冷クーラー、ARCTIC「Liquid Freezer II 280」をチョイスした。
ARCTIC「Liquid Freezer II 280」は、一般的な27mm厚のラジエーターではなく、38mm厚の大型ラジエーターを採用。通常の280mmラジエーターよりも高い冷却性能を発揮できる
熱伝導率が高い銅製ベースプレートを採用しているうえ、CPUウォーターブロックの先端に40mmのVRM冷却ファンを搭載。パワフルな冷却を後押ししてくれる
CPUクーラーの端子は基本的に4ピン。温度に応じて緻密に回転数を制御するPWMコントロールが可能だ
今回は、ケースに付属する120mmファン4基のうち3基と、280mmラジエーターを備えるARCTIC「Liquid Freezer II 280」を使用し、ケースの前面、上面、背面にそれぞれを装着。配置や吸排気の方向を組み替えた、4つの主要なエアフローのパターンを試しながら、冷却性能をチェックする。冷却性能の指標としては、最大の発熱源となるCPUとGPUの温度を採用。ゲーミングベンチマークプログラム「3DMark Time Spy」の動作中のCPUとGPUの温度を測定し、エアフローによる違いを検証した。なお、いずれも室温を約26度に固定したうえで検証を行っている。
今回使用した自作PCのパーツリスト。CPUに高性能な「Core i7 12700Kプロセッサー」を、GPUにパワフルなZOTAC「GAMING GeForce RTX 3070 Twin Edge OC」を採用しており、ゲームやクリエイティブ作業も軽快にこなせるハイクラスマシンに仕上がっている
ARCTIC「Liquid Freezer II 280」のラジエーターをケース上面に設置した状態。このように厚みがあるラジエーターを使用する場合は、マザーボードやメモリーと干渉しない、サイズにゆとりのあるケースを選ぶ必要がある
CPUに装着したARCTIC「Liquid Freezer II 280」のCPUウォーターブロック。このように、水冷クーラーを使用すると、空冷クーラーよりCPUまわりに空間ができるため、エアフローの面でも有利だ
ケース前面には3基の120mmファンが装着可能だが、上面には2基までしか装着できないため、エアフローパターンの条件を等しくするため、今回は2基の装着とした
なお、検証環境をなるべく安定させるため、ケースファンとCPUクーラーの回転数はともに最大のまま固定した。
UEFIでケースファンとCPUクーラーの回転数設定が可能。GIGABYTEの冷却システムユーティリティ「Smart Fan 6」では、「Normal」のほか、「Silent」「Manual」「Full Speed」が選択できる。なお、アプリケーションをインストールすれば、OS起動中に「Smart Fan 6」を操作することも可能だ
「Full Speed」に設定すると、CPUクーラーは1500rmp前後、ケースファンは1200rpm前後で稼働した
ここからは、エアフローのパターンごとに検証結果を確認していこう。上面にラジエーターを設置した場合と、前面にラジエーターを設置した場合のそれぞれで、「前面吸気&上面・背面排気」と「上面吸気&前面・背面排気」のパターンを試した。
まずチェックしたのは、上面に排気ラジエーターを設置したうえ、前面に吸気ファン2基、背面に排気ファン1基を設置したパターン。上面にラジエーターを設置できるケースでは、最も一般的なエアフローを実現するものだ。仮に空冷CPUクーラーを採用する場合でも、基本的にはこれと同様のエアフローパターンが主流である。
前面から吹き込む空気はちょうどGPUの真横に当たり、そこから上面と背面に熱気が流れていくことになる。以前は前面付近にストレージベイが並んでいるケースが多かったが、このケースでは下部の仕切りの下にストレージを格納するデュアルチャンバー構造のため、前面からの気流が衰えにくい
このパターンでは、CPUの最高温度は80度、平均温度は48度、GPUの最高温度は79度、平均温度は64.1度となった。CPU、GPUともに、安定して動作する目安となる80度以下に収まっており、健全な冷却が機能している印象が強い。あえて欲を言えば、CPUの最高温度が80度にぎりぎりだが到達してしまっているので、これをもう少し抑えられたらベターだろう。
茶色の折れ線がCPUの温度、青色の折れ線がGPUの温度を示している。なお、グラフ上では一定間隔で温度が記録されるため、CPUの最高温度が80度に達していないように見えるが、実際には右上付近のピーク時に80度に達している
なお、メモリーの最高温度は40.8度、平均温度は37.7度、SSDの最高温度は51度、平均温度は47度。これらも安全圏内にしっかりと留まっている。「3DMark Time Spy」のスコアも13403と高く、パーツ本来のポテンシャルは十分に発揮できていると言えそうだ。
まずはこれらの結果を基準として頭の片隅に置きつつ、以降のエアフローパターンの結果を確認していってほしい。
次に、ラジエーターとケースファンの設置場所は変えずに、ラジエーターファンを反転させて吸気に、前面ファン2基を反転させて排気に変更したパターンをチェック。この場合、ラジエーターを冷却した空気、つまり排熱を、そのままケース内に吹き込ませることになる。加えて、エアフローもケース内で反対方向に分散してしまうため、このエアフローパターンが採用されることは多くない。
ラジエーターの冷却を行いながらケース内に吸気し、前面と背面から排気する構図。これを見るとケース内の空気が正反対の方向に分散しており、スムーズなエアフローでないことがよくわかる
ところが、蓋を開けてみると意外な発見があった。CPUの最高温度が74度、平均温度が43度と、相当すぐれたレベルに留まっていたのである。ひとつ前に検証した@のパターンでは、CPUの最高温度は80度で、平均温度は48度。実に5度前後もCPUの発熱を抑えられたことになる。考えてみればこのパターンでは、ラジエーターが吸い込む空気は完全にフレッシュな外気。片や@のパターンでは、ケース内の各パーツの排熱をふんだんに含んだ空気でラジエーターを冷やすわけだから、これだけ歴然とした差が出るのも当然かもしれない。
ただし、残念ながらGPUの最高温度は81度、平均温度は69.2度。@のパターンより、平均で約5度も熱くなってしまった。CPUの排熱が、GPU周辺にこもる形になってしまったからだろう。SSDも最高温度53度、平均温度50度と悪化。GPUへの依存度が高い「3DMark Time Spy」のスコアに至っては、@のパターンより500以上も低い12875にまで落ちてしまった。これでは、少なくともGPUを多用するマシンには、決してふさわしくないエアフローと言うほかない。
茶色で示されているCPUの温度は、@のパターンよりも全体的にすぐれた水準で推移。いっぽう、青色で示されているGPUの温度は打って変わって、大幅に上がってしまった。序盤の低負荷時ですら50度台後半に達してしまっている
それでも、メモリーは最高温度38.8度、平均温度36.2度と、@のパターンよりも逆に温度を下げてきた。これは、ラジエーターの気流を最も強く受ける位置に、ちょうどメモリーがあるからかもしれない。
ここからは、ラジエーターを前面に設置した場合を見ていこう。まずは、前面のラジエーターから吸気し、上面ファン2基と背面ファン1基で排気するパターンだ。上面に通気口がないケースを使用する場合、このように前面にラジエーターを配置することはしばしばある。そしてこのパターンでは、エアフローのラインは@のパターンと同様にスムーズになるため、気流の勢いが効果的に働くことは期待できるだろう。ただし、直前に検証したAのパターンと同様に、ラジエーターの排熱をケース内に取り込む形になるため、その弱点が与える影響にも注目したい。
前面から吸い込んだ気流がGPUにダイレクトに当たる構図は望ましいが、ラジエーターの排熱がケース内にこもることは懸念点だ
今回もフレッシュな外気でラジエーターを冷やすため、CPUの温度はAのパターンと同様になるかと思いきや、最高温度は77度で、平均温度は46度。@のパターンよりは低い温度になっているが、Aのパターンよりは3度ほど高温だ。ラジエーターが取り込む空気はAのパターンと同様のため、CPU周辺のエアフローの違いがCPUの温度をやや上げたものと思われる。おそらくは、GPUなどの排熱がCPU周辺を通過する影響が大きいのだろう。
いっぽう、GPUの最高温度は80度、平均温度は66.7度。@のパターンほど低温ではないものの、Aのパターンほど高温でもない。@のパターンと同様にGPUに理想的な形で気流が当たるため、それなりに温度が抑えられるものの、その気流がラジエーターの排熱を含んでいるため、やや抑え切れていないといったところか。なお、「3DMark Time Spy」のスコアも同様に、@のパターンほど高くなければ、Aのパターンほど低くもない、13133だった。ある意味で、バランスにすぐれているとは言えそうだ。
茶色で示されているCPUの温度は比較的低めだが、青色で示されているGPUの温度はやはり全体的に少し高めになっている
また、メモリーの最高温度は42.5度、平均温度は40.1度で、SSDの最高温度は53度、平均温度は50度だった。安全圏ではあるものの、メモリーがやや高温気味になっているのは、やはり各パーツの排熱を受けやすいエアフローの最後の部分に位置しているからだろう。
次に、ラジエーターとケースファンの設置場所は変えずに、前面のラジエーターファンを反転させて排気に、上面ファン2基を反転させて吸気に変更したパターンをチェック。このパターンも、前面にしかラジエーターを設置できないケースでしばしば見られるもので、@のパターンと同様に、ラジエーターの排熱がケース内にこもらない点はメリットと言えるだろう。ただし、エアフローがスムーズでなく、ケース内で分散してしまうあたりが懸念される。
冷たいままの空気を上面から取り込めるが、Aのパターンと同様に、エアフローはケース内で反対方向に分散してしまう格好だ
結果を見ると、@のパターンに近い傾向があるものの、全体的により悪かった。特に、CPUの最高温度が81度、平均温度が50度と高いことが難点。やはりエアフローが分散したことで、GPUなどの排熱が効率的に排出されず、ラジエーターを冷やし切れていないと見える。GPUも、最高温度が80度、平均温度が64.8度と、@のパターンほど低温ではない。そのため、「3DMark Time Spy」のスコアも13104に留まった。
茶色で示されているCPUの折れ線が、これまでのエアフローパターンのものよりも一段と高く盛り上がっていることがよくわかる
また、メモリーの最高温度は41度、平均温度は38.9度で、SSDの最高温度は53度、平均温度は51度。全体的にすぐれた部分がなく、Aのパターンと同様に、あまり採用すべきでないエアフローと言えそうだ。
最後に、CPUクーラーやケースファンの回転数を落とした場合の冷却性能をチェックしてみた。今回は、@と同じエアフローパターンを採用。@ではファンの回転数を最大の「Full Speed」のまま固定していたが、ここでは最も回転数が低い「Silent」に設定して検証した。
「Smart Fan 6」で「Silent」に設定。もちろん高温になるにつれて回転数は上がるが、そこまで温度が高くない状態では、かなり回転数が抑えられる
結果が@よりも全体的に悪化することは想定内だったが、思いのほか差が大きく出た。特にCPUでは、最高温度が85度、平均温度が51度と、@と比べて最大5度もの開きがある。温度上昇にともなってCPUクーラーの回転数も上がるわけだが、回転数が上がるまでにはしばらく時間がかかるため、温度上昇時に冷却がワンテンポ遅れ、十分に間に合っていないのだろう。GPUはそこまで顕著ではないが、最高温度80度、平均温度66.5度という結果で、1〜2度の悪化が見られた。「3DMark Time Spy」のスコアも13071に留まり、@よりも300以上落ちている。
茶色で示されているCPUの折れ線を見ると、高温時にかなり急激に突き上がっており、冷却が追いついていないことがわかる
また、メモリーの最大温度は43度、平均温度は38.8度で、SSDの最大温度は55度、平均温度は49度。全体的に、思ったよりも温度が上がってしまっている。ただし、今回の「Silent」の場合、静音性が圧倒的に高くなることは見過ごせないメリットだ。それでも、最大5度程度も温度が上がってしまっては、やはり物足りなさを感じてしまう。もし静音性とのバランスを考えるなら、「Normal」に設定することを推奨したい。もしくは、平常時は「Silent」に設定し、ゲームなど高負荷のかかる作業を行う場合に、OS上のアプリケーション経由で、一時的に「Full Speed」に設定するというのもひとつの手だ。
エアフローの違いによって冷却性能に顕著な差が生じることは、今回の検証結果からしても間違いない。とりわけ結果に大きな影響を及ぼしたのは、CPUクーラーのラジエーターだ。最大の発熱源であるCPUの排熱はすさまじく、ケース内に吸気する方向で設置すると、GPUなどに無視できない悪影響を与えてしまう。しかし同時に、ケース外に排気する方向でラジエーターを設置すると、今度はケース内の排熱がラジエーターに向かうことになってしまい、CPUの温度が高くなる。つまり、CPUとGPU双方にとってベストなエアフローの構築は困難だとも言えるだろう。
それでも、どのような場合にも効果的だと確認できたこともある。それは、ケース内のエアフローがスムーズなラインになっていることだ。「上面吸気&前面・背面排気」ではエアフローが分散してしまい、冷却効果が衰えてしまう。やはり、「前面吸気&上面・背面排気」という構図が望ましいのだ。
これらのことから、GPUの冷却を優先するなら、@前面吸気&上面・背面排気(上面ラジエーター)を採用すべきで、CPUの冷却を優先するなら、B前面吸気&上面・背面排気(前面ラジエーター)を採用すべきと言えるだろう。今回テストした「3DMark Time Spy」はGPUへの依存度が高いため、@のパターンで最もすぐれた成績が出た。ただし、逆にGPUを酷使する作業をあまり行わないのであれば、Bのパターンのほうが効果的な場合もあるだろう。もちろん、使用するケースやパーツによっては別の正解もありうるだろうが、全体的に共通する部分が多いはず。冷却システムを見直す場合は、今回の検証結果をぜひ参考にしてほしい。
ライター、編集者、画家。学習院大学文学部哲学科卒業。制作会社で経験を積んだのち、コンテンツ制作会社の株式会社理感堂を設立。PC、ICT、芸術文化など、幅広い分野で書籍や記事の執筆・編集を手がける。