シャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」と同じ原理で、過熱水蒸気を使用して最初から最後まで“水で焼く”ヘルシオのトースター「ヘルシオ グリエ」に、約2年ぶりとなる新モデル「AX-GR2」が登場。基本構造は変わらないマイナーチェンジではあるが、より使いやすく改良されたのが大きなポイントだ。今回は、そんな新モデルの進化点と、あらためて実感したヘルシオ グリエの魅力をお伝えする。
ヘルシオ グリエ「AX-GR2」と編集部にある一般的なオーブントースターとの比較も行う
一般的なオーブントースターは上下のヒーターで食材を加熱するが、ヘルシオ グリエは、水蒸気を100℃以上の高温になるまで加熱した気体「過熱水蒸気」で焼き上げる。過熱水蒸気は食材に触れると温度差で冷やされて水に戻るのだが、その際に放出される熱で加熱するのだ。その熱量は、通常の熱風より非常に高く、高温の過熱水蒸気で素早く食材の表面を焼くとともに、中心部まで高い熱量を届けるため、食材の水分や栄養素を逃さずに焼き上げることができる。このヘルシオ グリエならではの調理機能はそのままに、新モデルでは操作部の表示が見直され、使い勝手が向上した。
サイズは412(幅)× 306(奥行/ハンドル含まず)× 228(高さ)mmと、前モデルと同じ。基本的なデザインも共通だが、新モデルにはレッド系に加え、ホワイト系が追加された
「トースト」(約250℃)、「弱」(約120℃)、「中」(約180℃)、「強」(約200℃)の4つの加熱モードを搭載しているのも前モデルと同じだが、操作部の表示を変更。過熱水蒸気の量を変えて加熱温度をコントロールするため、前モデルは水滴の数で表していたが、新モデルには「弱/中/強」などの文字表記と、それぞれのモードに適する食材のイラストが記され、わかりやすくなった
ヘルシオ グリエは一般的なオーブントースターとは加熱方法が異なるが、加熱時間はそれほど変わらない印象。加熱モードに適した主なメニューや加熱時間が本体天面に記されているので、これを参考にしながら調理していけば、うまく使いこなせるだろう
なお、過熱水蒸気で調理するため、水を入れた水タンクを本体にセットしてから調理を始めるのが基本的な使い方。本記事ではこの手順は割愛しているが、すべての調理で行っている
ちなみに、水を注ぎスチームを発生させるオーブントースターとヘルシオ グリエの仕組みは別物。スチーム式オーブントースターは庫内のヒーターを使って水をスチームにするため、スチーム量は全体的に少なく、加熱自体は上下ヒーターで行われる。いっぽう、ヘルシオ グリエは専用の装置で生成したスチームを庫内に噴射し、上下ヒーターで最適な温度の過熱水蒸気に加熱。大量の高温のスチームで庫内を充満させるからこそ、最初から最後まで“水で焼く”ことができるのだ。
庫内には上ヒーターと下ヒーターが2本ずつ装備されているが、あくまでも庫内の過熱水蒸気の温度を調整するためのもの。食材への加熱は過熱水蒸気のみで行われる
まずは、オーブントースターとしての実力を確かめるため、普通のトーストを焼いてみる。
ヘルシオ グリエは、過熱水蒸気でパンを包み込んで中心まで高い熱量を与えることでふんわりとさせ、仕上げに高温で余分な水分を蒸発させることにより、サクッとした食感に焼き上げるという。1枚のトーストを焼き上げるのに使用する水の量は約25mL。スチーム式オーブントースターで有名な「BALMUDA The Toaster」の使用水量は5ccなので、水の量がまったく違う(加熱方法が違うので当然だが)。ヒーター加熱と過熱水蒸気による加熱で、どれほど差が出るのかを一般的なオーブントースターと比較してみた。
食パンは2枚までセットできるが、今回は1枚を焼いてみる。庫内有効サイズは259(幅)×232(奥行)×77(高さ)mm
「トースト」モードで、3分30秒加熱する
加熱が始まると、すぐにドアガラスが蒸気で真っ白に! 過熱水蒸気がたっぷり発生している証拠だ
焼き上がったトーストが、こちら。表面はまんべんなく焼き色が付いているが、裏面は手前がちょっと白いまま
焼き上がり具合が若干甘かったかも……と心配しながら食べてみたが、手で割ってみると「ザクッ」という音が立つほどサクサク。それでいて、中はフワフワでやわらかく、もっちりしていて甘みも感じる
編集部にある一般的なオーブントースターでも焼いてみた。サクサク感はこちらもあるが、中のふんわり感やもちもち感はヘルシオ グリエで焼いたトーストのほうが断然ある!
もっちり感が全然違ったので、もしやトーストに残っている水分量が違うのでは? と計量してみると、ヘルシオ グリエで焼いたトーストのほうが2g重い! たった2gの差だが、食感や味わいは大きく異なる
ヘルシオ グリエは、普通のトースト以外のパンを焼くのも得意。一部が焦げ付きやすいアレンジトーストも、きちんとパンの中心部まで熱を届けながら、具材はほどよい焼き色で仕上がる。今回、冷凍したアレンジトーストも試してみたが、通常のものと焼き上がりに差は感じられなかった。
食パン(6枚切り)にピザソースを塗り、ピーマンと玉ねぎ、チーズをトッピングしたピザトーストを焼く。これと同じものを冷凍し、凍ったままの状態でも焼いてみた。なお、チーズなど下に落ちそうなものをトーストする時は付属のトレイに載せるようにと取扱説明書に記されていたのに気付かず、今回は進めてしまった。実際に使用する際には気をつけよう
「トースト」モードで、普通のピザトーストは6分、冷凍したピザトーストは8分加熱。加熱時間が長いので冷凍したピザのほうにはチーズに焼き色が付いたが、どちらも焦げることはなく、パンの中も熱々だ。そして、トーストの時同様に、パンの周囲はカリッとしていて、中はモチッとしている
※正しくは、トレイに載せて調理します
冷凍しておいたピザトーストは、パンの中まで熱々にしようとするとクラスト(耳の部分)やピーマンが焦げるのではないかと思っていたが、何ら不満のない焼き上がり。食パンにソースを塗り、具材を載せた状態で冷凍保存しておけば、忙しい時にもパッとピザトーストを食べられる。
このほか、フランスパンを使ったガーリックトーストも、「トースト」モードで絶妙な食感に焼き上がった。一般的なトースターの場合、表面が硬くなりすぎることがあるが、ヘルシオ グリエはサクッと崩れる感じはありつつも、適度なやわらかさとしっとり感もある。
「トースト」モードで4分加熱したガーリックトースト。この食感はレストランで出てくるようなレベル!
「トースト」モードのように焼き色を付けて焼き上げるだけでなく、ヘルシオ グリエは、あたためるように焼き上げることもできる。モードは「中」と「弱」が、あたために該当。クロワッサンや惣菜パン、ロールパンなどは、180℃でパンの表面は焦がさずにサックリ、中はふっくらとさせる「中」モード、生食パンやサンドイッチ用パン、白パンなどは、さらに低めの120℃で水分をたっぷり補いながら加熱し、焼き目を付けずにふわふわに仕上げる「弱」モードを選ぶといい。今回は試していないが、冷凍したパンも凍ったままの状態で焼き色を付けずにあたためることが可能だ。
冷凍室で保存しておいたサンドイッチ用パン(10枚切りの食パン)を「弱」モードであたためてみる
「弱」モードで3分加熱したが、焼き色はまったくついていない
加熱前と変化がないように見えたが、触ってみるとふわふわ!
過熱水蒸気でパンを包み込み、パンに適度な水分を与えながら低温で加熱する「弱」モードは加熱前よりも水分量が増えると聞いていたので計量してみると……1gではあるが重量がアップ。一般的に加熱すると水分が蒸発し、重量は減るので、過熱水蒸気による過熱は別物だと実感させられた
あたためたパンでサンドイッチを作ってみた。クラム(パンの白い部分)はとろけるような食感で、クラストまでやわらいので、ちょっといいところのサンドイッチを買ってきた気分。いつも食べているサンドイッチより、噛む力も少なくて済む印象だ
このほか、クロワッサンとカレーパンもあたためてみた。
「中」モードで加熱したが、焼き色は付いていない。しかし、クロワッサンは外側の層がサクッと軽やかな食感となり、あたためられたことで内側からバターの風味がジュワッとあふれるような仕上がりになった。そして、カレーパンは揚げたてのような食感に復活! しっかりと中心部に熱が届いているので、中のカレーは熱々で、最高においしい
パンを焼いたり、あたためるのも上手だが、ヘルシオ グリエを購入した人が絶賛するのが、揚げ物や惣菜のあたため直し。作りたてのような食感やおいしさに仕上がるだけでなく、脱油効果があるのも過熱水蒸気を使った加熱の特徴だ。
惣菜をあたためる際には、付属のトレイを使用。シリコンコーティングが施されているので、こびり付きにくく、油汚れも簡単に洗い流せる
ただ単にヘルシオ グリエで加熱してあたため直しても違いがわからないので、スーパーで購入した焼きサバをヘルシオ グリエ、電子レンジ、一般的なオーブントースターであたため、仕上がりの差をチェックしてみる。
ヘルシオ グリエでのあたためは、「強」モードで5分加熱。なお、トレイにアルミホイルを敷くと、お手入れがラクになる
あたため直す前と焼き色はほぼ変わらないものの、皮目はパリッと感が復活。あたためる前はパサついていた身がふっくらし、ジューシーな仕上がりだ
編集部にある一般的なオーブントースターであたためた焼きサバは、見るも無惨な姿に……。パリッと感はあるが、身の水分も蒸発したのか、ヘルシオ グリエであたためたサバと比べるとジューシーさが少ない
電子レンジであたためた焼きサバは想像どおりの仕上がり。十分あたたかいが、皮のパリッと感はなく、残念な気持ちになる。身のジューシーさも戻ってこなかった
ヘルシオ グリエのウワサどおりの実力に大満足した筆者は、串揚げ専門店「串カツ田中」で購入し、数時間経った串揚げをあたため直してみた。
「強」モードで5分加熱。ヘルシオ グリエは串が刺さった状態で加熱できる
ふやけていた衣は「サクッ」と音を立てるほどまでに復活。キスはふわふわ感が増し、やわらかい食感に仕上がっていた。お店で出てくるのと変わらない食感と味わいなので、テイクアウトして家でゆっくり食べるのもいいなぁ
食材を焼いたり、あたためたりするだけでなく、ヘルシオ グリエでは、おかずやスイーツなども作ることが可能。過熱水蒸気で加熱するため、種類や状態の異なる食材を一緒に並べ、同時に調理できるのも特徴だ。こうした調理は従来モデルでもできることなので、進化点とは言いづらいが、新モデルは付属のメニュー集にある調理に役立つメニューを拡充。これまでよりもヘルシオ グリエでの調理を体験しやすくなった。
メニュー集にはないオリジナルの料理を作ってみる。冷蔵庫にあったぶりの切り身と、じゃがいもブロッコリーを並べて味付けしただけと、超簡単な作り方だ
「強」モードで約15分加熱して完成。野菜と魚という種類の異なる食材だったが、どちらも火の通りに不足はない。野菜は均一に火が通り、甘みも引き出され、ぶりは生の切り身の状態から、ふっくらとジューシーに仕上がっていた
前述のぶりと野菜のグリルは冷蔵と常温の食材を同時に調理したが、ウォーターオーブン「ヘルシオ」の「まかせて調理」のように冷蔵/冷凍/常温と状態の異なる食材も同時調理できるのではないか?と気になった筆者。ヘルシオ グリエでは推奨されていない調理方法だが、試してみることにした。
食パンとカットした野菜、生卵を入れたアルミカップ、冷凍のからあげを同時に調理してみよう
「強」モードで8分加熱。食パンはきれいに焼き上がり、その他の食材にも火が通っているように見える
冷凍のからあげがあったので、卵は火がしっかり通った状態になるかと思いきや半熟! 箸を入れるととろっと黄身があふれ出し、白身もぷるぷるだ。冷凍のからあげも中まで熱々で、かぼちゃやアスパラガスも理想的な火の通り具合。かぼちゃの加熱にムラがなく、しっとりホクホク食感に焼き上がったのも好印象だ
もちろん、食パンの焼き上がりもパーフェクト。「トースト」モードで焼いた時と遜色ない食感と味わいなので、朝食セットとしてヘビロテしちゃいそう
ちなみに、ヒーターで加熱する一般的なオーブントースターでは、ヘルシオ グリエのような仕上がりは望めない。
一般的なオーブントースターで、トースト1枚を焼いた時と同じ3分で加熱。意外にも冷凍からあげは中まで熱くなっていたが、ヘルシオ グリエで加熱したもののほうがジューシーだった。その他の食材に関しては、完全に加熱不足。卵はほぼ生のままで、かぼちゃはつまようじを刺してみてもまったく刺さらなかった。また、食パンの焼き上がりにも影響したようで、トースト1枚を焼いた時と比べ、表面のカリッと感が少ない
ということで、次は、かぼちゃに火が通るまで加熱してみると……食パンが真っ黒に! 卵は白身までゴムのように硬くなり、黄身はボソボソ。しかも、かぼちゃも端のほうは硬いままだったので、火の通り方にムラができるようだ
ヘルシオ グリエはシャープのラインアップとしては「トースター」に分類される製品だが、一般的なオーブントースターとは別物。焼くことをメインとした調理家電である点は変わらないが、単純においしく焼き上げると言ってしまうのは粗雑な印象で、素材のおいしさを引き立てて加熱しているように感じた。それは、普段使っている筆者所有のオーブントースターが、食材の水分など、おいしさにつながる要素を必要以上に損なってしまっているからなのかもしれないが……。だからか、ヘルシオ グリエは、特別な食材を用意しなくても高い満足度が得られる。特に、惣菜のあたため直しは感動するレベル。作りたての状態によみがえると言っても過言ではないほどなので、中食派の人に、ぜひ、使ってほしい。
また、過熱水蒸気による加熱を体験したことがない人からすると、種類の異なる食材を一度に調理しても、それぞれが最適に焼き上げられることに驚くだろう。過熱水蒸気は温度の低いほうにたくさんの熱を与える性質があるため、異なる状態の食材でも上手に焼き上げることができるのだ。レシピどおりの種類や分量の食材をきっちり用意しなくても、家にある食材をトレイに並べて調理でき、その手軽さは感動もの。一般的なオーブントースターと比べると、若干サイズが大きく、水を入れたタンクをセットする手順が必要だが、仕上がりや加熱のバリエーションなど、総合して考えるとヘルシオ グリエの魅力は大きい。間違いなく、一般的なオーブントースターより使用頻度は高くなるはずなので、買って後悔することはないだろう。
コンビニで売っているサンドイッチを「トースト」モードで加熱してホットサンドにするのがお気に入り。外はサックリ、中はしっとりにパンは焼き上がっているが、具の卵は半熟のままと、絶妙な火の通り具合だ
ヘルシオ グリエであたためた冷凍の今川焼きも、最高においしい! 表面はサクサクで、中のあんこはホクホク。あまりにもおいしくて、編集部員3人で3パック(ひとり1パック)も1日で食べてしまった……
なお、新モデルの大きな進化点は操作部の表示が変更された程度だが、2022年5月15日時点の価格.com最安価格は前モデルより3,000円ほど高いくらいなので、使い勝手がよくなった新モデルを選んだほうがお得だと思う。
編プロでの広告制作、雑誌編集を経てフリーライター/エディターに。家電をはじめ、自動車、ファッション、ビジネス関連など幅広い分野で活動。86年、秋田県出身。「大曲の花火」とグミをこよなく愛する。