まるで床上に浮いているかのような感覚で、自由自在に操作できるホバー式掃除機「BALMUDA The Cleaner」の発売から約1年半。待望の軽量コンパクトタイプ「BALMUDA The Cleaner Lite」が、2022年5月に登場しました。今回は、この新しいBALMUDA The Cleaner Liteの実力を徹底検証! 自宅でのリアルな使い勝手と合わせてチェックしたいと思います。
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氷の上をすべるような軽さ!小さくなったのに集じん性能がアップした「BALMUDA The Cleaner Lite」
近年、多くの掃除機メーカーは「掃除中のストレス、掃除を始めるストレスをいかに軽減するか」を課題に掲げ、製品開発を進めています。そこでバルミューダが出した答えは、「フロアワイパーやほうきのような操作感を再現すること」でした。2020年に登場したBALMUDA The Cleanerは、平行する2本のロールブラシを逆向きに回転させることで床面との摩擦を低減する仕組みのホバー式掃除機。まさに「すべる」ようにヘッドが前後左右に移動する掃除感覚は、当時、圧倒的に斬新でした。
2020年10月に発売された初代モデルのBALMUDA The Cleaner。前後だけでなく左右、斜めなど、方向を問わずヘッドを動かしながら掃除機がけできることが画期的でした
いっぽう、実際に使ってみると、いくつかネックとなる点が見えてきたのも事実。なかでも気になったのが、3.1kgという標準質量。掃除中はともかく、掃除を始める際に充電スタンドから持ち上げたり、掃除後にスタンドにセットしたりするときに、この重さが少なからず負担になります。また、掃除中ヘッドを左右にスイングする際、やや「重み」を感じるのも残念なポイントでした(最も、首振りしてからスイングすればほぼ問題ないのですが、使い方にコツが必要です)。
それが新登場のBALMUDA The Cleaner Liteでは、標準質量が2.2kgと、従来モデルから約29%も軽量化。なおかつロールブラシの改良などにより、コンパクト化しているにも関わらずゴミ除去性能は42%も向上したと言います。
待望の新モデル、BALMUDA The Cleaner Liteは 2022年5月19日より発売。本体カラーは、ホワイト(C02A-WH)のほかに、ブラック(C02A-BK)も用意されています
ということでここからは、このBALMUDA The Cleaner Liteについて、そうした軽量化のメリットをどれくらい実感できるのか、そのほかの細かい使い勝手や吸引性能はどうなのか、順番にチェックしていきたいと思います。
まずは初代モデルであるBALMUDA The Cleanerと、新モデルBALMUDA The Cleaner Liteのスペックを比較しましょう。初代モデルの高さが1,240mmなのに対し、新モデルは1,170mmとひと回りコンパクトに。初代モデルは小柄な人が使うにはやや大きかったですが、新モデルは小柄な人が快適に使えて、かつ背の高い人も決して使いづらくない絶妙なサイズ感だと思います。また、ヘッドのサイズも横幅が300mmから275mm、奥行きが165mmから150mmへと小型化。ヘッドの高さも約10mm薄くなって、より細かい場所掃除に対応できるようになりました。
新モデルのBALMUDA The Cleaner Liteは、高さが70mm小型化したほか、モーターやダストカップが収納された本体もスリムになり、よりスマートに部屋置きができるようになったと感じます
ヘッドは横幅や奥行きもさることながら、厚みがかなり薄くなったのも印象的
ハンドルを寝かせられる角度も比較。わずかながらBALMUDA The Cleaner Liteのほうが低くハンドルを寝かせることができ、家具の下などがより掃除しやすくなりました
両モデルのヘッド裏面の比較。BALMUDA The Cleaner Liteは、ロールブラシに新たにゴム製のブレードフィンを装着。ゴミをよりパワフルにかき込むことができるようになりました
ということで、BALMUDA The Cleaner Liteの操作性をチェックしてみましょう。掃除を始めて最初に感じるのは、一般的なコードレススティック掃除機とは一線を画す独特な操作性。初代モデルと同様、床上にヘッドが浮いた状態で、ハンドルを少し前に押すだけでヘッドが「スーッ」と移動していきます。
何よりメリットだと思ったのは、重量が3.1kgから2.2kgに軽量化された恩恵も大きく、長時間掃除し続けても手首や腕がほとんど疲れないこと。そもそも多くのコードレススティック掃除機は、手元にモーターやバッテリーがある「上重心」構造なため、どんなに軽量なモデルでも長時間掃除をし続けていると手首にだんだん負荷を感じるようになります。いっぽう、BALMUDA The Cleanerシリーズはモーターなどが本体下部にある「下重心」構造で、しかも重みのある下部分がホバークラフトのように浮いているため、基本的に掃除中は持ち手にほとんど負荷がかかりません。ヘッドの首振りも超スムーズで、スティック状の持ち手を軽くひねるだけでヘッドが360°自在に回転します。
本当にフロアワイパーのように動かせます。テーブルの脚まわりの掃除は、ヘッドを脚元に当ててそのまま持ち手を左右にクルリとひねるだけ
ヘッドが脚まわりにスムーズに回り込みます。軽量を売りにするコードレススティック掃除機のヘッドも首振りは軽いですが、持ち手をひねる際に本体の重みが手首にかかります。その負荷がないだけで、家具まわりなど細かい場所の掃除もよりストレスなく行えました
吸引モードは、「標準モード」と「強モード」の2種類を搭載しており、電源ボタンを長押しすることで切り替え可能。ボタンがひとつだけというシンプルなデザインは、わかりやすさもあって好印象です
ヘッドを首振りなしに左右にスイングする動きに関しては、初代モデルのような負荷もありません。それでも前後の動きに比べるとわずかに力を入れる必要はありましたが、首振りしながら左右に移動すれば、負荷はほぼ感じませんでした。なお、「浮いている」とはいえヘッドを前後に細かく移動したり、ゴミのある場所に「サッサッ」とヘッドを移動させようとするときは、ヘッドの重さが少々感じられます。
ちなみに、フローリング以外の走行性については、畳の場合「すべる」感覚は減るものの、問題なく掃除できました。いっぽう、カーペットでは、毛足が長めのものや素材が軽いものだとヘッドが生地を吸い込み、走行性は悪くなる印象。毛足短めなフランネルタイプ(しっかり重さのあるもの)ならなんとか対応できそうです。
なお、スティック部は初代モデルと比べるとかなり床面近くまで倒せるようになり、公式では80°の角度まで下げられて、高さ約18cmまでのソファ下に入るとされています。ただそれでも限界はあるため、筆者宅にあるソファの下は奥まで一気には掃除できませんでした
ちなみに、BALMUDA The Cleaner Liteの連続運転時間は標準モードで約30分、強モードで約10分。バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで4時間かかります。バッテリーは着脱式なので、予備のバッテリーを購入すれば最長計1時間の掃除も可能。
バッテリー下の着脱ボタンを押して、バッテリーの取り外しができます
続いては、BALMUDA The Cleaner Liteのゴミ吸引能力をチェック。フローリングの床面にカラーサンド、糸ゴミ、フェルトの毛を撒いて、それぞれを「標準モード」で掃除してみました。
まずは、散らばったカラーサンドをキレイにします。下の動画のように、一度通過した場所はほぼ除去できました。ただ、走行後に床を触ってみるとややざらつきが。砂は比重が大きいので、どうしてもわずかな取り残しが出てしまうようです。しかし、「強モード」を使えば、そうした取り残しはなかったですし、通常のハウスダストなら「標準モード」の吸引力でもしっかり除去できるでしょう。
カラーサンドのように比重が重めのゴミでも、「強モード」で吸引すれば取り残しなくバッチリ
次は、糸くずにトライ。きちんと吸い取れるだけでなく、掃除後にブラシに糸がからまらないかも気になります。
ヘッドを前に動かすとヘッドの端に吸いきれずについてくる糸があり、失敗かも!? と思ったのですが、ヘッドを前後/左右に動かすうちに外れてすべて吸い込むことができました(上の動画参照)。
掃除後にヘッドの裏を確かめてみると、ロールブラシへのからみつきはほぼナシ!
糸くずの掃除がうまくできたので、フェルトの毛も同じ要領で掃除してみました。
床上からすべてのフェルトの毛がなくなったので吸い取れた……と思いきや、こちらはロールブラシに大量にからみついて、きちんと吸い込めていませんでした
このほか、コーナーのゴミ取れ性能をチェックすべく、壁際や部屋角にカラーサンドを撒いて掃除してみたところ、通常のヘッドだけではうまくいかず……。軽い綿ゴミなら壁際でも取り残さずに吸い取れますが、ハウスダストはどうしてもわずかに残ってしまうので、付属の「すき間用ノズル」を使って定期的に掃除するとよりよいと思います。
壁と床の境目部分に取り残しが出たため、すき間用ノズル(詳しくは後述)で追加掃除しました
ゴミ捨てとお手入れについても見ていきましょう。ゴミ捨ての際は、本体からダストカップユニットを外し、カバーを取り外して中に溜まったゴミを捨てます。この辺は、一般的なサイクロン式コードレススティック掃除機と同様ですね。ダストカップ容量は約0.1Lと少なめなので、こまめにゴミ捨てを行ったほうがよいと思います。
ダストカップの両側にある黒いボタンを押しながらユニットを本体から脱着
ダストカップカバーを反時計回りにひねりながら引っ張るとカバーが外れます。着脱の際に回す方向がカップに表示されているのでわかりやすい
あとはゴミ箱などに、ダストカップ内のゴミを捨てるだけ。今回の検証で吸い込んだ疑似ゴミなどが若干カップ底に残りましたが、コンコンと軽く叩くとすぐに取り除けました
お手入れに関しても画期的な機能があるわけではありませんが、特に問題なく手間をかけずに済ませられます。ちなみに我が家には猫が2匹いて、かなりペットの抜け毛は多いほうですが、自宅で日常使いしてみた限りは、特にヘッド内のロールブラシに毛がからみやすいとは感じませんでした。よほどペットを多頭飼いしている家でない限り、ロールブラシのお手入れに追われることはないと思います。
ただ、ダストカップユニットの上部にあるプリーツフィルターのひだの間に入ってしまったハウスダストは、取り除くのがやや面倒。ダストカップ内のゴミの量に比例してプリーツフィルターに付着する汚れも増えるので、お手入れの手間を少なくするためにも、やはりこまめなゴミ捨てを推奨したいです。
ダストカップやプリーツフィルターの掃除は、同梱されているブラシで行います。なお、ダストカップユニットとプリーツフィルターは水洗いも可能
ヘッド裏の2本のロールブラシは、端のブラシロックレバーをスライドさせてブラシカバーを外せば、簡単に取り外せます。ロールブラシも水洗い可能
BALMUDA The Cleaner Liteも初代モデル同様、ハンディ掃除機としても使用可能。その際は、スティックハンドルとヘッドを取り外して、「ハンディ用ハンドル」と「すき間ノズル」に交換します。
ヘッドをノズルに交換し、延長パイプを取り外してハンディ掃除機にするのが一般的な方法ですが、BALMUDA The Cleaner Liteは構造上、スティックハンドルをハンディ用ハンドルに付け替えなければなりません
通常のブラシヘッドで取り切れない壁際のハウスダストや家具のすき間、卓上のホコリなどは、ハンディ掃除機にチェンジして捕集。ハンディ時の重さは、従来モデルより約430g軽い1.17kgになり、サイズもスリム化してかなり扱いやすくなりました
ハンディ掃除機として使っている際に少々気になったのは、電源ボタンの位置。持ち手に対して直角な位置にあるため、やや操作しづらい印象です
ちなみに、BALMUDA The Cleaner Liteには、新たにハンディ掃除用のツールボックスが同梱。ハンディ掃除機として使う際のハンディ用ハンドルとすき間ノズルを入れ、充電スタンドのスペースに収納できるのは便利です
また、家中を徹底的に掃除したいなら、布団やソファの掃除に使える「ファブリックノズル」や、深いすき間の掃除に適した「マイクロノズル」などがセットになった別売のノズルセット「C-T100」(価格は9,800円/税込)を使うとよいでしょう。
ノズルセット「C-T100」の中身は、マイクロノズル、ファブリックノズル、フラットノズル、ブラシノズル、延長ホース。すべてのアタッチメントをまとめて入れられる専用バッグも付いています
ファプリックノズルは、寝具やファブリック製品の掃除に最適。ヘッドが160°動くので方向転換もしやすいです
家電と壁のすき間や車のシートのすき間などの掃除には、マイクロノズルを使うと便利
ゴム製のヘラが付いて平らな面の掃除に使えるフラットノズルは、テーブルなどの掃除に使いやすかったです。ただ、ヘラと吸込口の距離が離れているため、吸引力が弱まってしまうのはやや残念でした
大幅な軽量・小型化を実現したBALMUDA The Cleaner Liteは、充電スタンドへの着脱時に腕にかかる負担が軽くなったのはもちろん、掃除中の操作感もよりストレスフリーになったと感じました。初代モデルのBALMUDA The Cleanerもすべるような操作感だとはいえ、本体を押し出したり引いたり左右に移動したりする際には、それなりに力を入れる必要がありました。それが新モデルでは、まさに、ほうきやフロアワイパーのような軽さで操作できるようになったのです。
ヘッドが360°動くのも実に快適。ほかのコードレススティック掃除機のように、右に180°、左に180°動くということでなく、ヘッドが無限に回転して掃除の向きを変えられるのです。最初は通常の掃除機のように「こちらがヘッドの前側」という固定観念にとらわれていましたが、この掃除機には「ヘッドの前側/後ろ側」が存在しないのだと気がついてからは、掃除する動きによりムダがなくなりました。本体サイズが初代モデルよりひと回り小さくなったのも、部屋の広さが狭めだったり室内にモノが多い日本の住宅には適していると思います。
ヘッドは前/後の区別がないだけでなく、縦/横の区別もなし。壁際や狭い家具のすき間などでは、幅の小さい横側を縦の位置に変えて、同じ操作感のまま掃除するといいでしょう
ただ、操作性検証のところで触れたように、ヘッドが軽量な他社のコードレススティック掃除機に比べると、ヘッドを細かく動かす動作はやや苦手です。掃除の仕方としては、流れるようにヘッドを移動させながらゴミを吸い取るスタイルがベスト。掃除中の手首や腕にかかる負荷が圧倒的に少なく、いつまでも「ゆるゆる」、かつムダのない動きで掃除を続けられるので、この独特な掃除機の取り回し方を体得すればするほど、掃除の軽快さが増していくと感じます。
BALMUDA The Cleaner Liteは、すべるように掃除できるホバーテクノロジーと、本体・ヘッドの軽さを両立したことにより、これまでにない操作感でなおかつ疲れない、「掃除が楽しめる掃除機」になりました。ホコリやゴミが気になる場所のちょいがけによいですし、家中の床上をまとめて掃除するのにも最適。
特に、床面がフローリング中心の家とは相性バツグン。畳の上ではすべるような快適さは落ちるものの、問題なく掃除できるので、和室と洋室がある家にも好適です。そのいっぽう、カーペットが多い家では、BALMUDA The Cleaner Liteならではの快適な操作感は十分体感できないかもしれません。
ちなみに、(筆者宅もそうですが)犬や猫などのペットを飼っている家は、抜け毛やトイレの砂の飛び散りが気になるもの。BALMUDA The Cleaner Liteは、そういう汚れをストレスなく掃除できるので、ペットのいる世帯にベストマッチと言えそうです(ただし、こまめなゴミ捨ては忘れずに!)。
雑誌やWeb媒体において、生活家電の紹介記事やお試し記事を執筆。家電ジャンルは調理家電から掃除機、美容・健康家電など幅広くこなす。夫婦共働きのため、調理など家事も応分に担当(ただしあくまでダンナ目線)。立食いそばも好き。