長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第5回は、冬の時期に売れる調理家電「オーブンレンジ」の最新トレンドについて解説しよう。
【図1】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーの閲覧者推移(過去2年間)
図1は、価格.comの「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーの閲覧者推移(過去2年間)を示したもの。いずれの年もピークは1〜2月になっており、冬のこの時期に売れる製品カテゴリーであることがわかる。このカテゴリーに属す製品の多くが、秋口に発売されることを考えると、単に型落ちモデルを狙う人が多いわけでもなく、やはり寒い季節に温かい料理を作るため(温めるため)に、製品の購入・買い換えを行う人が多いように見受けられる。
【図2】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける主要5メーカーの閲覧者推移(過去1年間)
図2は、価格.comの「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける主要5メーカー別の閲覧者推移(過去1年間)を示したものだ。これを見ると、昨シーズンまではダントツの強さを誇っていたパナソニックの人気が落ちてきており、2位グループを形成する東芝、シャープ、日立との差が今シーズンはあまりなくなってきていることがわかる。市場では上記4メーカーがもつれ合いながらシェア争いを続けているという状況だ。なお、今シーズンよりこのカテゴリーに参入した象印が急激にシェアを伸ばしており、上記4メーカーに次ぐ5位につけてきていることにも注目したい。
【図3】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおけるタイプ別製品割合
なお、価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーには、単機能の電子レンジからオーブンレンジ、スチームオーブンレンジなど、さまざまなタイプの製品が登録されているが、図3のようにタイプ別に見ると、「スチームオーブンレンジ(スチーム機能付きオーブンレンジ。スチームオーブンを含む)」が44.27%でトップ、次いで「オーブンレンジ(スチーム機能なし」が32.58%と続き、単機能電子レンジは22.81%という結果になっている。最近では、高温のスチームを使って焼き上げる機能を持つオーブンレンジが増加しており、こちらがスタンダードとなっていることがわかる。
スチーム機能とは、温かいスチームで蒸し料理などが作れるほか、100℃以上の高温スチーム(過熱水蒸気)を使い、食材表面を焼くことができる機能のこと。過熱水蒸気は、元々シャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」に搭載された機能で、一般的なシーズヒーターによるグリルよりも高効率な熱エネルギーを食材に与えられるため、食材表面を短時間でパリッと焼き上げることが可能。これによって、食材内部の水分も失われにくくなるので、表面はパリッと、中はジューシーという、理想的な調理が可能となることから、人気が高い機能だ。加えて、余計な油や塩分を落とす効果もあり、おいしさにプラスして健康面でもメリットが得られるとされている。
このスチーム機能を搭載したオーブンレンジは、従来の「温め(電子レンジ機能)」、「焼き(ヒーターによるグリル・オーブン)」に加えて、「蒸し」「焼き(過熱水蒸気によるグリル)」といった多彩な調理方法を搭載しているので、オートメニューなどによる調理の幅も従来のオーブンレンジに比べてグンと広がっている。
【図4】価格.com「電子レンジ・オーブンレンジ」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯別割合
さらに、売れ筋製品の価格帯で見ると(図4)、24,001〜36,000円が25.10%でトップ、次いで12,001〜24,000円が21.1%で2位。36,001〜48,000円が13.76%で3位となっており、5万円以下の価格帯で半数以上を占めるという結果になっている。上記のタイプ別製品割合と照らし合わせると、単機能の電子レンジの価格帯は1万〜2万円前後が多いので、基本的にはオーブンレンジを多くの人が選択しているということになる。なお、スチーム機能付きのオーブンレンジも、型落ちモデルなどであれば、2万〜3万円台で購入できる例も多く、型落ちなどでお買い得になったスチーム機能付きのオーブンレンジを狙っている人が多いということが見えてくる。
上記のことを総合すると、今最も売れているオーブンレンジは、「5万円以下で購入可能なスチーム機能付きのオーブンレンジ」ということになる。このトレンドに沿って、比較的新しめのおすすめ製品を下記にいくつかピックアップしたので、ご覧いただきたい。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2022年12月20日 時点のものです。
価格.com最安価格:55,000円
発売日:2021年9月1日発売
ユーザー評価:★4.52(10人)
人気のパナソニック「3つ星ビストロ」シリーズのミドルクラスモデル。2021年9月発売のため、すでに生産終了しているが、後継モデルの「ビストロ NE-BS6A」の販売価格と3万円ほどの開きがあるため、5万円台で購入できる本モデルは割安と言える。
スチーム機能を搭載しており、さまざまな自動調理に対応。なかでも、10分程度の加熱で完成する「中華10分」「こんがり10分」「蒸し物10分」「蒸し焼き15分」「煮物10分」といった自動調理メニューを備えているのが特徴。このほか、50の和食メニューも搭載。上級モデルほどではないが、自動調理については、かなりの充実ぶりだ。
さらに、グリル調理に便利な「ビストログリル皿」が付属。皿裏面のフェライトがマイクロ波を吸収して、フライパンのようにアツアツになるため、ヒーター+グリル皿で食材両面をキレイにグリルすることができる。ただ、オーブンの最高温度は250℃。オーブン段数は1段と、このあたりのスペックは標準的だ。
価格.com最安価格:61,110円
発売日:2022年7月上旬発売
ユーザー評価:★4.83(7人)
近年人気を増している東芝「石窯ドーム」の最新ミドルクラスモデル。石窯を模して作られたドーム型の庫内は、パンやピザを焼くのに適した形状で、最大300℃の高火力と相まって、表面をパリッと焼き上げることが可能。さらにオーブンは2段なので、一度に多くの料理を作ることができる。
また、異なる食材を並べて、メインの食材を選んでスタートするだけで、温度センサーが加熱温度や時間をコントロールしながら自動で焼き上げる「石窯おまかせ焼き」機能を搭載するなど、全体的にグリル系の料理にも強い特徴を持っている。搭載している自動調理メニューは108種類。10分以内で調理できる時短メニューも数多く搭載する。
なお、上位モデルの「ER-XD5000」「ER-XD7000」は、オーブンの最高温度が350℃というさらなる高火力モデルとなるので、より本格的なオーブン調理が行いたい方はこちらもチェックいただきたい。
価格.com最安価格:発売日:55,320円
発売日:2022年7月1日発売
ユーザー評価:★2.71(3人)
日立「ヘルシーシェフ」シリーズの最新ミドルクラスモデル。上記「石窯ドーム ER-XD3000」と同様に、最高火力300℃の2段オーブンを備えており、パンやピザ、本格的なオーブン調理などを得意とする。肉の調理にもこだわっており、レンジ・オーブン・過熱水蒸気・グリルを自動で制御して焼き上げる「熱風旨み焼き」を搭載。これはレンジ加熱ですばやく食材の温度を上げ、オーブンと過熱水蒸気の熱風で焼き、グリルで一気に焼き上げることで食材の表面をパリッと、内部のジューシーに調理できる。
また、冷凍した食材をそのまま焼き上げられる「冷凍から焼き物」機能も搭載。このほか、食品の温めの際は、温度センサー以外に重量センサーも搭載しているので、加熱のパワーや時間を高度に制御できるのが特徴だ。これらの機能や10分以内の時短メニュー80種程度を含め、自動調理メニューは全246を搭載。もちろん、過熱水蒸気調理にも対応する。
なお、本製品はWi-Fi機能も搭載しており、スマホアプリとの連携でレシピを追加することも可能だ。上位モデルの「MRO-W10A」との大きな違いは、自動調理メニューの数と、操作部がカラータッチ液晶でないことくらい。基本性能はほぼ同じなので、そこにこだわりがなければ、本製品を選ぶのが賢い選択だろう。
価格.com最安価格:67,500円
発売日:2021年12月16日発売
ユーザー評価:★4.75(5人)
過熱水蒸気調理を一般化したウォーターオーブン「ヘルシオ」の2021年版のベーシックモデル。ベーシックとはいえ人気のウォーターヒート技術はしっかり搭載され、型落ちモデルということで6万円台まで最安価格が下がっているため、今が買い時と言っていい。
他社のスチームオーブンレンジとは異なり、基本的に過熱水蒸気を使った調理を行う「ウォーターオーブン」であるため、温めよりはオーブン/グリル調理に重きを置いている。最高温度300℃の高温の過熱水蒸気で食材を焼くため、表面はパリッと、中はジューシーにという本格的なグリル調理が行える。さらに余計な油や塩分を洗い流してくれるので、健康的な食生活にも役立てられる。
自動メニュー数は130を搭載。冷凍/非冷凍のいかんを問わず、角皿に食材を乗せてキーを押すだけで、自動で調理してくれる「まかせて調理」機能も便利だ。レンジ機能についても、温度センサーのほか、赤外線センサー、らくチン!センサー(絶対湿度センサー)の3つのセンサーの特性を生かしたあたためや解凍が行える。
なお、本製品はWi-Fi機能を搭載しており、スマホアプリとの連携でメニューを追加したり検索したりといったことが可能だ。
価格.com最安価格:46,300円
発売日:2022年9月1日発売
ユーザー評価:★4.16(11人)
今年2022年9月に発売された、象印初のオーブンレンジ。それほどひんぱんに使わない機能をそぎ落とし、毎日使うのに十分な機能を高いレベルで提供するということに主眼を置いて作られた本製品は、上記のモデルのようなスチーム調理機能などは搭載しない、純粋なオーブンレンジとなる。
特徴的なのは、レンジ機能とグリル機能を自動で使い分けつつ、最適な調理を行う「芯までレジグリ」機能。レンジ加熱で食材の芯まで温めた後、グリル調理に切り替えて表面にこんがり焼き色を付けるといった調理を自動で行ってくれる(手動で「グリル調理→レンジ加熱」の設定も可能)。同様に、レンジ加熱→グリル調理で揚げ物の温め直しが揚げたてのように仕上げる「揚げ物サクレジ」機能も搭載。なお、この機能を最大限に生かすためのセラミック角皿も付属しており、マイクロ波を透過させつつ本格的なグリル調理が行える。このほか、ボウルを浮かせた状態でセットすることで、ムラを抑えたレンジ加熱で調理する「うきレジ」機能も搭載。
オーブンの最大温度は250℃で、自動メニュー数は36と少なめ。操作系はシンプルにまとめられており、インテリアのじゃまをしないデザインになっているのも特徴と言える。
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価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。