先日紹介した日立のドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム」と同じ2022年9月中旬に、同社の縦型洗濯機(全自動洗濯機)「ビートウォッシュ」の最上位モデルもモデルチェンジ。洗浄力をキープしたまま洗濯時間を短縮し、より使いやすいデザインに変わった新モデル「BW-X120H」の特徴を解説します。
日本国内の縦型洗濯機(全自動洗濯機)は一般的に、洗濯槽の底部にあるパルセーター(回転羽根)を回転させることで水流を起こして衣類を動かし、衣類同士をこすれ合わせることで汚れを落とします。「ビートウォッシュ」に採用されている洗浄方法「ナイアガラビート洗浄」も基本的な洗い方は同じですが、その前段階に、少ない水で高濃度の洗浄液を作り、低水位の状態でパルセーターの表面にある凹凸を使って衣類を動かし、「押し洗い」「たたき洗い」「もみ洗い」を行うことで高濃度の洗剤液を衣類の繊維の奥までしっかり浸透させる工程があるのが特徴。そして、その後、洗濯物の量に合わせた高水位にし、パルセーターで水流を起こして衣類を動かして洗浄するとともに、洗剤液を循環させて上部から衣類に散布する「ナイアガラシャワー」が、大流量の洗剤液を通過させることで汚れを落とします。
新モデルは、形状を改良したパルセーター「ビートウィングプラス」を採用することで新たな水流方式「スピード浸透水流」を生み出したのがポイント。この水流で衣類への高濃度洗剤液の浸透が促進され、洗浄力は高いままスピーディーに洗い上げられるようになり、洗濯時間の短縮を実現しました。
パルセーターを変えることで「ナイアガラビート洗浄」が進化
上の写真を見ただけで、前モデルの「ビートウィングX」と新モデルの「ビートウィングプラス」は表面に施された凹凸の形状が変わったことがわかります。しかし、注目してほしいのは中央部。中央部の穴の数を増やした「センターウィング」構造を採用したのが重要なポイントです。
パルセーターの裏面の中央部。「ビートウィングプラス」の中央、円状の仕切りを狭い間隔で配置した部分にたくさんの穴が設けられています。また、「ビートウィングプラス」は中央部の穴の数が増えただけでなく、より中心にまとめた配置になりました
パルセーターの主な役目は水流を作り出して衣類を動かすことですが、それ以外に、パルセーターに設けられた穴から循環水を引き込み、槽内の衣類全体に洗剤液を浸透させる役割もあります。ただ、従来のパルセーターは中央部の穴(中央孔)の数が少ないため、回転するパルセーターの遠心力で水流が外側に引き寄せられ、中央部からしっかりと引き込むことができなかったのだそう。
遠心力で外側に向かう水流を、中央部から引き込めるようにしたのが「センターウィング」構造
下の動画は、前モデルと新モデルで起こる水流をそれぞれ撮影したもの。センターウィングを採用した新モデルのほうが、中央部の水の引き込みが強いことを確認できます。
中央部から洗剤液をしっかり引き込めるようになると、洗濯槽の中央にある衣類に洗剤液が浸透しやすくなります。とはいえ、洗濯運転が始まると衣類は洗剤液に浸るので、それだけで洗剤液は十分浸透するのでは? と思ったのですが、メーカー担当者の話によると、水流で衣類の動きや繊維の間を通過する洗剤液の度合いが変わるので、水流にムラがあると衣類への洗剤液の浸透にもムラが出るのだそう。この課題をセンターウィングで解消した新モデルは、衣類全体に洗剤液の浸透を促進して洗いムラを低減できるようになりました。
この新しい水流方式「スピード浸透水流」と、従来よりも大きな動きで衣類を入れ替えられるように新設計されたパルセーター(ビートウィングプラス)の効果が組み合わさり、前モデルで43分必要だった標準コースでの洗濯時間(洗濯12kg時)が、高い洗浄力を保持したまま35分に短縮。さらに、「ビートウィングプラス」は表面の凹凸の高低差を小さくしているため、布の傷みを抑えた洗い上がりが期待できるとのこと。洗濯による衣類の色あせやほつれなども起こりにくいそうです。
前モデルの「ビートウィングX」と比べ、凹凸の高低差を減らしつつも少しきつめに段差を付けることで、布の傷みを抑制しながら、衣類を大きく動かして洗い上げられるようなったとのこと
前モデルと新モデルで、色あせの差を検証したジーンズ。7.2kgの衣類を入れて標準コースで50回洗った状態ですが、前モデルは全体的に色が落ちているだけでなく、ポケットの縁や股上など生地が分厚い部分の色あせが激しい印象です
色あせやほつれを抑えられるだけでなく、毛玉もできにくいそうです
搭載している主な洗濯コースは前モデルとほぼ同じですが、新モデルには、衣類のからまりを抑えて洗い上げる「シワ低減洗濯コース」が追加されました。洗い工程は標準コースと同じで、衣類をほぐしながらすすぎ、脱水工程で運転時間や洗濯槽の回転数をコントロールすることにより、洗濯物のからまりやシワを抑えるのが特徴。また、最後のすすぎ工程で柔軟剤を衣類に浸透させるときに、標準コースよりもていねいにかくはんして浸透ムラを抑えることで、柔軟剤の効果を引き出します。
洗濯物を取り出す際に手間取らず、干すときにシワ伸ばしをする手間が減らせるのがシワ低減洗濯コースのメリット。シワ低減洗濯コースの洗濯容量は4.5kgですが、3kg以下にするともっとも仕上がりがよくなるそうです
最後に、大きく変わったデザインについて紹介します。液体洗剤・柔軟剤の自動投入機能で使用するタンクの配置が手前から後ろ側に変わり、天面にあった操作パネルを前側配置に変更されました。操作パネルが手前にあるのは使い勝手がよさそうですが、その半面、液体洗剤や柔軟剤の補充はしづらくなりそうな印象を受けるかもしれません。しかし、本体の奥行が前モデルと比べて65mm小さい650mmになったので、そのような心配は無用です。さらに、幅も10mmサイズダウン。それでいながら、衣類投入口は前モデルよりも広くなっており、今回のデザイン変更で使いやすさが向上しました。
サイズは640(幅)×650(奥行)×1,077(高さ)mm。前モデルと比較し、幅と奥行きはサイズダウンしましたが、高さは17mmアップしました。洗濯・脱水容量は12kg
後ろ側の配置に変わった、液体洗剤・柔軟剤の自動投入機能のタンク。本体の奥行きが抑えられたので手は届きやすく、さらに、タンクに装備された補充用の投入口はすりばり状に広がる形状を採用しているため、補充しやすいでしょう
手前に配置した操作部の奥行きをスリム化することで、従来よりも広い衣類投入口を確保
フタには、洗濯中の様子が確認できる透明な強化ガラスの窓を新たに装備
家電流通専門誌で白物家電と家電量販店と流通に関する取材・執筆・編集を担当。趣味は料理、旅行、舞台鑑賞、米国ドラマ視聴など。クラシック音楽の”現代音楽ファン”というと変人扱いされることが悩み。