2023年2月1日発売予定のパナソニックの自動調理鍋「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」(以下、オートクッカー)をメディア向け体験セミナーで見てきました。オートクッカーは、圧力機能と鍋の中をかき混ぜる機能を兼ね備えているのが特徴。味がたっぷり染み込んだトロトロの豚の角煮やパラパラのチャーハン、長時間炒めて作る飴色玉ねぎ(上の写真がこれ!)も“おまかせ”で作れます。
オーブンレンジ、ホームベーカリー、トースターの3カテゴリーだった「ビストロ」シリーズに、「オートクッカー」も仲間入りしました。「オートクッカー」の市場想定価格は88,000円前後(税込)
「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」(以下、オートクッカー)は、電気圧力鍋とかき混ぜ機能を搭載した自動調理鍋が合体したような調理家電です。電気圧力鍋は圧力調理がメイン機能なので、煮込み調理が中心。最近は、無水調理や低温調理など幅広い調理に対応する製品が多く登場しており、なかには炒め調理ができるものもありますが、自動で鍋の中をかき混ぜる機能は搭載していないため、フタを開けた状態でお箸などを使って手動で炒める使い方となります。いっぽう、かき混ぜ機能を搭載した自動調理鍋は圧力機能を搭載していないので、圧力調理はできません。そのため、これまでは圧力調理をしたいなら電気圧力鍋しか選択肢はなく、自動かき混ぜ機能を優先するなら圧力調理をあきらめるか、別途、電気圧力鍋を購入しなければなりませんでした。そうした課題を解消してくれるのが「オートクッカー」です。
サイズは330(幅)×336(奥行)×260(高さ)mmで、重量は8.2kg。調理容量は2.4L(満水容量は4.2)となっておおり、2〜6人分の調理が可能です
「オートクッカー」のフタを開けた様子。内なべの中央に羽根が付いており、この羽根を回転させて内なべの中の食材をかき混ぜます
鍋の中をかき混ぜる羽根などの機能を電気圧力鍋に追加すれば簡単に作れそうに思われるかもしれませんが、高い気密性を確保しながらかき混ぜ機能を搭載するのは、かなり大変だったようです。かき混ぜ機能を備えた電気調理鍋といえば、シャープ「ヘルシオ ホットクック」シリーズやハイアール「ホットデリ」のように内フタ部分にかき混ぜ機構を搭載しているのが主流ですが、この構造では隙間ができるため、圧力鍋としての性能が担保できるように「オートクッカー」は内なべの底に羽根を搭載する仕様を採用。羽根を回転させるための軸を内なべの中央に貫通させなければならず、その軸の部分から空気が漏れない設計を実現したのもポイントなのだそう。
この“下かくはん”の構造は、鍋底からさらうようにかき混ぜることができるため、ミートソースなどのように調味液を煮詰める調理で焦げ付きを抑えられるのもメリットです。さらに、最大1,285Wと高火力なのも特徴(シャープ「ヘルシオ ホットクック」の2.4Lタイプ(KN-HW24G)の消費電力は800W)。高火力であることが特に効果を発揮する炒め物では、蓄熱性の高い内なべで焼き色を付けつつ、かき混ぜ機能で水分を飛ばして仕上げます。短時間で炒められるので、シャキッとした食感が残る野菜炒めや、パラパラのチャーハンも簡単に作れるとのこと。
同社ホームベーカリーの回転技術を応用した、下かくはん機能を採用。独自の羽根と鍋肌にあるリブ(突起)で食材をひっくり返しながらかき混ぜます。羽根は取り外し可能
本体底部には、加熱用のヒーターと内なべの温度を検知するセンサーを搭載
より多くの食材を高火力で加熱して、短時間で水分をとばせるように、内なべは底面を広めにとった少し高さが低い形状を採用
撮影禁止だったため写真や動画では紹介できませんが、「オートクッカー」でチャーハンを作る実演を見ることができました。羽根がしっかりと鍋底をはらい、横の突起で食材がひっくり返っています。そして、仕上がりはダマのないパラッとした見事なものでした。
また、長時間炒めて作る飴色玉ねぎもお手のもの。手作業で作るには、焦げないようにつきっきりでかき混ぜ続けなければなりませんが、「オートクッカー」ならおまかせできるので楽ちんです。下の動画は飴色玉ねぎを作っている様子ですが、低めの火力でじっくりムラなく加熱できるように、ゆっくりとかくはんするプログラムにしているのだそう。メニューに応じて羽根の回転方向や速さ、火力制御は異なり、ひとつのメニューの中でも行程に応じて調節されるので、ずっとこの調子で炒め続けるわけではありません。
※動画はデモモードで動かしているためフタを開けた状態で作動していますが、通常はフタを閉めて調理します
飴色玉ねぎは自動メニューに用意されているので、スライスした玉ねぎを内なべに入れるだけ。玉ねぎ5個分を炒めても、飴色玉ねぎは写真に写っているくらいの分量になってしまうのですから、この作業は本当におまかせしたい……
試食のオニオングラタンスープには、飴色玉ねぎがたっぷり入っていました。感覚的には玉ねぎ2個分くらい。トロトロでおいしかったですし、飴色玉ねぎを作る工程を見た後だと、なんだか贅沢に感じます
ちなみに、このかき混ぜ機能は、ポテトサラダやコロッケのたねのように具材に火を入れてつぶす工程まで行なう調理にも対応します。
ここからは圧力機能について見ていきましょう。一般的に、圧力調理は高い圧力をかけたほうが短時間で食材をやわらかくできると言われています。「オートクッカー」は、電気圧力鍋業界最高クラスの約2気圧を実現。2気圧で調理すると、1時間の加熱で魚の骨まで丸ごと食べられるやわらかさになるとのこと。もちろん、すべて2気圧で調理するのではなく、メニューに応じた3段階の圧力で調理します。また、圧力調理時にも必要に応じてかき混ぜ機能が作動するのが特徴。たとえば、豚の角煮の場合、圧力調理にかき混ぜ機能をプラスすることで、味の染み込みムラが低減し、余分な水分も飛び、よりおいしく仕上がるといいます。
自動メニューは、メニューに合わせて圧力を「高圧(100kPa/約120℃)」「中圧(70kPa/約115℃)」「低圧(20kPa/約105℃)」の3段階で切り替え。骨付きの魚やすじ肉など硬い物や火の通りにくい物は「高圧」、火が通りやすい物やわらかい物は「中圧」、煮崩れしやすい物、特に火の通りやすい物は「低圧」で調理します
手動調理時も、選択できる圧力は3段階。さらに、かき混ぜ機能も3つのパターンから選べます。根菜や調味液が濃く少ない料理は「混ぜる」、やわらかい食材や水分の多い料理は「たまに混ぜる」、くずれやすい食材やたっぷりの煮汁で煮る料理は「混ぜない」というように選ぶといいとのこと
ホテルニューオータニが監修した、豚肩ロース肉と豚肉スペアリブを使った「エスニックスパイス角煮」を試食しましたが、フォークを軽く入れるだけでほろりと肉がほどけるほどやわらか。味もしっかり染み込んでいます
圧力を細かく設定することはできませんが、圧力調理はある程度慣れないとベストな圧力値を設定するのは難しいので、3段階で選ぶくらいのほうが使いやすそう。また、IoT機能を搭載しており、スマートフォンの専用アプリ「キッチンポケット」からメニューを本体に送信して追加できます。プリインストール以外の自動メニューが使えるので、手動調理を使わなくてもさまざまな圧力調理が楽しめるでしょう。
上述の「エスニックスパイス角煮」もスマホアプリからダウンロードできます
なお、本体に登録できる自動メニューの数は30メニュー。25の自動メニューがプリインストールされていますが、スマホアプリ上のメニューリストで登録したいレシピを選んで編集すると、本体に登録されている自動メニューも同じメニュー構成に変更できます。つまり、本体の自動メニューを自由にカスタマイズできるということ。調理家電の自動メニューはたくさん入っていても、ライフスタイルや好みなどによって使わないものもがでてきますが、購入後にメニューを入れ替えられるので長く快適に使い続けられそう。
プリインストールされている自動メニューをすべて削除し、自分が使いたい自動メニューに変更することが可能。使用頻度が高いメニューを本体に登録しておけば、スムーズに調理できます
今回紹介した「圧力調理」と「炒め調理」のほか、「煮詰め」「煮込み調理」「無水調理」「低温調理」「蒸し調理」「圧力蒸し」といった調理にも対応。スマホアプリには、圧力をかけて炊く「お急ぎごはん」と圧力をかけずに炊く「ごはん」という2種類の炊飯メニュー(白米を最大5合まで炊飯可能)も用意されているので、炊飯器のように使うこともできます(ただし、炊飯メニューでは保温不可)
家電流通専門誌で白物家電と家電量販店と流通に関する取材・執筆・編集を担当。趣味は料理、旅行、舞台鑑賞、米国ドラマ視聴など。クラシック音楽の”現代音楽ファン”というと変人扱いされることが悩み。