長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第8回は、冬のボーナスで購入する人が多い大型家電、ドラム式洗濯機の最新トレンドについて解説する。
かつては、テレビ、冷蔵庫とともに「三種の神器」と呼ばれ、今やそれ抜きでは生活が成り立たないほどの必需品となった洗濯機。どの家庭にも1台はある家電製品だけに、新規購入よりも、壊れたから、あるいは古くなってきたから買い替えるという人がほとんどだろう。もちろん、これから春に向け、新たな場所での新生活が始まる人が、引っ越しを機に洗濯機を買い替えたり、大学生や新社会人ならまったく新規で購入することも出てくるだろう。
【図1】価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける閲覧者数推移(過去2年)
図1は、価格.com「洗濯機」カテゴリーの過去2年間の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、ほぼ毎年、年明け1月から3月上旬くらいにかけてピークの山が来ていることがわかる。つまり、洗濯機の需要は毎年1〜3月くらいにいちばん盛り上がるということになるが、これには大きく分けて2つの理由があるように思う。ひとつは、上述したような新生活需要を受けてのもの。この時期に比較的動きやすいのは、学生や新社会人、あるいは転勤を受けての単身赴任者などが必要とする、比較的小型の洗濯機だ。当然ながら、コンパクトで価格も安い縦型洗濯機が、この需要のメイン商材となる。
そして、もうひとつの理由だが、これは、12月に支給される冬のボーナスを受けて、正月明けの1〜2月くらいにドラム式などの大型洗濯機を購入するという人が多いことだ。ドラム式洗濯機は、縦型洗濯機に比べて価格がかなり高く、洗濯容量11〜12kgの各メーカーの主要製品の販売価格は、25万〜30万円程度。このため、まとまった額の冬のボーナスが入ったこの時期に、満を持して購入する人が多いのだ。
以上、2つの理由が重なるため、毎年1〜3月のこの時期、洗濯機の需要は伸びる傾向にあるが、その前半となる1〜2月はどちらかと言えば高価なドラム式洗濯機、後半となる2〜3月はどちらかと言えば価格の安い縦型洗濯機がメインの商材となると覚えておくといいだろう。本記事では、そのうち、前半に盛り上がるドラム式洗濯機のトレンドについてフォーカスするが、価格.comのカテゴリー的な制約のため、以降のデータは、ドラム式・縦型両方の製品が含まれるものであることはご容赦いただきたい。
【図2】価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける洗濯機スタイルの割合
図2は、価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける、縦型洗濯機とドラム式洗濯機の人気の割合を示したもの。「洗濯機」カテゴリーに掲載されている「洗濯機 トレンド」という見出しの付いたトレンド情報の「スペック」(2023年2月13日時点)という項目を見ると、「全自動洗濯機」(乾燥機能のない縦型洗濯機)が51.05%と約半数を占め、「ドラム式乾燥洗濯機」は38.5%ということになっている。乾燥機能を搭載しない「ドラム式洗濯機」もあるが割合は1.15%、その他の製品もほぼ縦型の範疇に入るので、縦型とドラム式の人気割合はほぼ6:4ということになる。
さらに売れ筋製品の人気ランキングを見ると、2023年2月14日時点のランキングでは、ベスト10中、4製品が縦型、6製品がドラム式となっており、上記の結果とは逆転しているような印象を受ける。洗濯機全体のシェアで見ると、縦型のほうが優勢ではあるが、直近のトレンドで見ると、ドラム式のほうがわずかに人気という状況が見て取れる。
実は、このドラム式の人気は、約3年前のコロナ禍が始まったころからのものだ。それ以前は、一般的に洗浄力が高く、コンパクトで、価格も安い、縦型が人気の中心で、洗浄力が比較的低めで、サイズも大きく、価格も高いドラム式は、人気に陰りが出ていたのだ。それが、コロナ禍で世の中のライフスタイルが一変し、人々の在宅時間が増えるとともに、ドラム式の人気が復調したのである。それまで洗濯物は外干しが基本と思っていた層が、コロナの空気感染を恐れたたこともあるだろうし、家族の在宅時間が増えたことで、それまでできていた部屋干しがしにくくなったという事情もあるだろう。いずれにしても、ドラム式が得意とする洗濯物の乾燥需要が高まったことで、ドラム式のよさが再評価され、その人気は今も続いているという状況だ。なお、ドラム式で弱点とされていた洗浄力については、各メーカーの改良もあってかなり改善されており、今やさほどのデメリットとはなっていない。
【図3】価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移(過去2年)
では、価格.comでは、どのメーカーの洗濯機が人気なのだろうか。図3は、価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける過去2年間の主要メーカー5社の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、2年前くらいまでは、パナソニックと日立が首位を争う2強状態で、次点で東芝、シャープが続く感じだったが、その後、日立がしばらくシェアを落とし、代わりに東芝、シャープが上がってくるといった形で、4つのメーカーが入り乱れる4強時代へと移り変わっていることがわかる。直近の状況を見る限りでは、しばらくシェアを落としていた日立が再び首位に躍り出るような展開もあり、やや人気が下がってきたパナソニックの動きや、東芝の安定した人気もあることから、特に上位3メーカーの首位争いが激しくなっているようにも見える。
【図4】価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける、ドラム式洗濯機・主要モデル5製品(洗濯容量11〜12kg)の閲覧者数推移(過去6か月)
さらに上記のシェア争いを、ドラム式洗濯機に限った形で見てみよう。図4は、価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける、ドラム式洗濯機の主要モデル5製品の閲覧者数推移を示したもの。いずれも洗濯容量11〜12kgの最新モデルとなっている。これを見ると、まず東芝「ZABOON TW-127XP2L」が一番人気となって、発売以降安定した人気を保っているが、昨年末頃から今年の初頭にかけて、日立の「ビッグドラム BD-STX120HL」および「ビッグドラム BD-SG110HL」が人気のピークを築いている。これに次いで、パナソニック「NA-LX129BL」、シャープ「ES-X11A-L(ES-X11A-SL/ES-X11A-TL)」が徐々に伸ばしているという状況だ。この例は、各メーカーの洗濯容量11〜12kg対応モデルの中でも人気の高い製品を比較したものなので、一概には言えないが、おおむね今のドラム式洗濯機の4強が入り乱れた状況が理解できる一例と言える。
【図5】価格.com「洗濯機」カテゴリーにおける、ドラム式洗濯機・主要モデル5製品(洗濯容量11〜12kg)の最安価格推移(過去6か月)
上記の5製品を少し違う角度から眺めてみよう。図5は、図4と同じドラム式洗濯機・主要モデル5製品の最安価格推移を示したものだ。これを見ると、東芝、日立、シャープの各製品は、発売開始から徐々に価格が下がっており、機能的にクラスが異なる日立「ビッグドラム BD-SG110HL」を除いて、25万円前後の最安価格に落ち着いてきていることがわかる。これに対して、パナソニック「NA-LX129BL」の最安価格は発売からほとんど下がっておらず、年明けまでは36万円台、1月下旬になってから少し落として33万円台という最安価格を維持している。競合製品と比べると10万円近くも高い価格になるが、これは、パナソニックが昨今開始している「指定価格制度」によるものと考えられる。価格が下がらないパナソニックの製品に対して、10万円近く値を下げている他社製品という図式と、上述した図3の各モデルの人気推移を合わせて見てみると、販売価格と人気の相関性が見えてくる。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年2月14日 時点のものです。
価格.com最安価格:246,999円
発売日:2022年9月上旬発売
ユーザー評価:★4.39(5人)
東芝のドラム式洗濯機のフラッグシップモデル。微細なウルトラファインバブルとそれより大きなマイクロバブルの2種類の泡を洗濯水に混ぜ合わせ、洗濯物の繊維の奥まで洗剤を送り届け、きれいな洗い上がりを実現し、黄ばみや黒ずみなども防止する。2021年に大きなモデルチェンジをはたした「ZABOON」だが、これ以降、この「抗菌ウルトラファインバブル洗浄EX」機能が多くの消費者にうけ、安定した人気を誇っている。もちろん液体洗剤・柔軟剤の自動投入にも対応し、温水洗浄にも対応する。なお、乾燥はヒートポンプ除湿乾燥を採用。新型のヒートポンプユニットなどの採用で、7kgの洗濯物を約96分で洗濯〜乾燥までできるスピーディー乾燥を実現している。このほか、UV温風除菌などの機能も備え、清潔性にも配慮。大型のカラー液晶タッチパネルで操作もわかりやすく、余計なボタンなどが出ていないため、デザインもスタイリッシュで、東芝伝統の静音モーターによる静音性も魅力だ。
価格.com最安価格:239,550円
発売日:2022年9月中旬発売
ユーザー評価:★3.26(7人)
2022年にビッグモデルチェンジした、日立のドラム式洗濯機のフラッグシップモデル。大流量のシャワーをプラスしながら洗浄する伝統の「ナイアガラ洗浄・すすぎ」を装備し、ドラム式洗濯機の中では比較的洗浄力に定評がある。液体洗剤・柔軟剤の自動投入にも対応。前モデルでは洗剤液を温風で温めてミストにして吹きつけていたが、本モデルからは洗剤液をヒーターで温める仕組みに変更。これによって高温にできるようになった。また、高速の風で洗濯物をからめず、シワも寄らない仕上がりにする「風アイロン」も人気だ。ただ、ヒートポンプ乾燥でない点には注意したい。
そしてモデルチェンジによって、乾燥フィルター清掃の手間を大幅に削減する「らくメンテ」に対応したのも大きなポイント。乾燥フィルターをなくし、乾燥時に出るホコリも「大容量糸くずフィルター」で一括して処理するようになったことで、1か月に1回程度のメンテナンスで済むようになったという。また、大型のカラー液晶タッチパネルの搭載したことにより、操作性やデザイン性がアップした。
価格.com最安価格:294,314円
発売日:2022年10月1日発売
ユーザー評価:★4.50(2人)
パナソニックのドラム式洗濯機としては、「NA-LX129BL」というフラッグシップモデルがあるが、競合製品と比べて販売価格が10万円近く高いことと、本モデルとの機能差は「ナノイーX槽カビ菌除菌」や操作部程度なので、比較的値ごろ感のある「NA-LX127BL」を推したい。
パナソニックのドラム式洗濯機は、スタイリッシュな外観が人気。東芝や日立が採用する液晶タッチパネルは本モデルには搭載していないが、ひと目で設定がわかる操作性のよさはメリットでもある。洗浄では、パナソニック独自の温水泡洗浄を搭載。洗剤液をヒーターで暖め、さらに泡の状態にすることで浸透力を上げ、繊維の奥に染み付いた黄ばみやニオイの元を洗い流すという。同社が始めた液体洗剤・柔軟剤の自動投入はもちろん、おしゃれ着洗剤の自動投入にも対応。乾燥機能では、ヒートポンプ乾燥を採用しており、大風量によって6kgの洗濯物を約98分で洗濯〜乾燥まで完了するスピーディー乾燥にも対応。スチームで、衣類のシワやニオイを取り除く「シワとり・消臭」コースも搭載する。
価格.com最安価格:246,999円
発売日:2022年11月17日発売
ユーザー評価:★4.41(5人)
シャープのドラム式洗濯機のフラッグシップモデル。洗濯容量は他メーカーと比べるとやや少なめの11kgとなる。見た目では、鏡面仕上げで上部にタッチパネルを備えた前面パネルが特徴。この前面パネルは全体が開くようになっており、デザイン性にこだわった仕様だ。
洗浄面では、シャープ独自の「マイクロ高圧洗浄」を搭載。水道水を微細な水滴にして、高圧シャワーノズルから噴射することで衣類表面や繊維内部の汚れを落とす。液体洗剤・柔軟剤の自動投入機能も搭載。乾燥機能では、ヒートポンプ乾燥にサポートヒーターを加えた「ハイブリッド乾燥」を採用し、カラッとした仕上がりと省エネ性を実現している。また温度センサーと湿度センサーで洗濯物の乾き具合を感知して、AI制御で布質にあわせた最適な乾燥運転を行うことで乾燥ムラを抑え、厚手の衣類もしっかり乾燥するという。このほか、乾燥フィルターの自動お掃除機能も搭載し、メンテナンスの手間も削減。洗濯物の除菌・消臭だけでなく、ドラム内部のカビ菌の繁殖を抑制するシャープならではのプラズマクラスターによる清潔機能も人気の理由だ。
価格.com最安価格:197,500円
発売日:2022年11月17日発売
ユーザー評価:★4.67(12人)
旧三洋電機のDNAを引き継いだAQUAの最新主力モデルは、製品名にもあるようにドラム槽を真っ直ぐ配置。ドラム槽をななめに配置するよりも、洗濯物のシワや洗いムラなどが抑えられるという。また、洗濯容量12kgクラスでは最小のコンパクトボディを実現し、また、販売価格は他メーカーより5万円程度安く、非常にリーズナブル。それでいながら、液体洗剤・柔軟剤の自動投入機能や、温水ヒーター、UV除菌、ヒートポンプ乾燥といった最新トレンドはしっかり押さえている。特に特徴的なのは、頻繁に水洗いしない衣類などの除菌・消臭・シワ伸ばしが行える「エアウォッシュ」機能。超音波で発生させたミストと温風、そしてUVを組み合わせることで、ダウンジャケットやスーツ、ぬいぐるみなどの除菌や消臭ができるという。このほか、洗剤量や洗濯時間を自動で調整する「AIウォッシュ」機能も搭載する。
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価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。