近年、大風量とスリムな形状を両立したヘアドライヤーが続々と登場していますが、2022年10月に発売されたカドー「baton(バトン)」は棒状のフォルムを採用しており、圧倒的にスリム。業界トップクラスの風量も備えた製品だといいますが、使い勝手や実際の速乾性が気になるので、確かめてみました!
ヒーターに風を当てて温風を出す一般的な熱風式ヘアドライヤーは、送風部にヒーターやファン、モーターを配置していることが多いため、送風部が長いL字型の形状をしています。いっぽう、「baton」は、そうした部品をすべて直線上に配置。高温で発熱するヒーターを電子回路の近くに搭載しても問題がないように、遮熱設計にすることでスティック型の形状を実現しました。さらに、誰もが持ちやすいように、リレー競技で使用するバトンとほぼ同じ38.5(直径)×277(長さ)mmという本体サイズにしたのもポイントです。重量も298g(電源コード除く)と超軽量。詳しくは後述しますが、「baton」の風量と同クラスである大風量モデルのヘアドライヤーの重量は500〜700g程度なので、「baton」はかなり軽いといえます。
プラスチックではなくアルミニウムを採用することで、薄肉成形を実現。溶接加工のない、どこから見てもフラットなボディは洗練された印象です。ちなみに、「baton」にはシルバーのほか、ホワイトもラインアップされていますが、ホワイト色のほうもアルミニウム素材の上に白のコーディングを施しているとのこと
身長約156cmの筆者と、約173cmの編集部スタッフがそれぞれ「baton」を持ってみましたが、握りやすさは上々。すべり落ちそうな不安定な感じもありません
スリムボディの「baton」は置き場のスペースをそれほど取らないのもいいところ
そして、スティック形状は、正しい方法でラクにヘアドライしやすいのもポイント。ヘアドライヤーと髪の理想的な距離は約20cmと言われていますが、一般的なヘアドライヤーは送風部が長いので、サイドから後方にかけては、その距離を確保しようとすると腕が結構疲れる状態になります。また、基本的に髪は前方向に向かって生えているので、流れに沿って後ろから風を当てるほうが髪の広がりを抑え、まとまった仕上がりになりやすいのですが、L字型のヘアドライヤーでは真後ろから風を当てるのはなかなか大変。それに対し「baton」は、ムリに腕を曲げなくても理想的な距離と方向から風を当てることができます。
ヘアサロンで美容師がヘアドライヤーを使って髪を乾かするとき、後ろから風を当てるのと同じように、真後ろから風を当てて乾かすとキレイに仕上がるようです。写真では頭の後ろに「baton」がくるように腕を上げていますが、頭の向きを変えれば、腕を大きく動かさなくてももっとラクに後方から風を当てることが可能
実際に試してみると、これだけの差が。ヘアドライヤーと手ぐしで乾かした状態ですが、それでも後頭部の髪を乾かす際に後ろから風を当てたほうが髪の広がりが抑えられました
「baton」はスリムな形状と軽量化を実現しただけでなく、風の流れを妨げない流路設計や独自のHSDCモーターを採用することで2.0㎥/分というパワフルな風量を備えているのも特徴。大風量を謳うダイソン「Dyson Supersonic Ionic」が2.4㎥/分、パナソニック「イオニティ EH-NE7J」が2.0㎥/分であることからも、「baton」が大風量モデルの部類に入ることがわかります。
風量は「強風」「中風」「弱風」の3段階で切り替え可能。「強風」の時は明るめに、「弱風」の時は暗めにライトが光るので、目視でも風量の強さを確認できます。風量2.0㎥/分の「強風」と比較し、「中風」は2割減、「弱風」は半分の風量になるとのこと
下の動画は、風量「強風」の様子です。想像よりもかなり勢いのある風が出てきて、びっくり! 吹出口が小さめなので風の届く範囲は狭めかと思いきや、結構広範囲に届きました。運転音は少し高音も混じり、小さいとは言えませんが、大風量モデルのヘアドライヤーとしては平均的かも!?
風の温度も「高温(85℃)」「中温(75℃)」「低温(60℃)」の3段階で設定できます。一般的なヘアドライヤーの最高温風温度は100〜120℃以上になりますが、「baton」は熱ダメージや過乾燥を防ぐため、最高温度でも85℃という少し低めの温度設定にしたとのこと。これにより消費電力も抑えられ、1,200Wあることもめずらしくない同クラスの熱風式ヘアドライヤーと比べ、大幅に低い800Wを実現しました。
風温切替ボタンを押すたびに、高温(赤)→中温(橙)→低温(黄)と切り替わり、低温の後、風温切替ボタンを押すと、85℃の温風と冷風(室温の風)が交互に出る「スタイリング」設定になります
さらに、吹出口には遠赤外線を放射するコーディングを施し、温風とともにマイナスイオンも放出。高温過ぎない温風に、遠赤外線とマイナスイオンの効果を組み合わせ、地肌や髪をいたわりながらやさしくヘアドライします。また、遠赤外線には血行促進の効果もあるので、顔に当てればむくみの軽減に、肩に当てればコリの緩和が期待できるとのこと。
吹出口にあるハニカム構造のメッシュ部に遠赤外線を発生させるコーティングを施しています
遠赤効果を期待し、顔や肩に温風を当てる際にもスティック形状は便利。なお、顔に風を当てるのはつらそうに思われるかもしれませんが、風量を「弱風」に設定し、30cmくらい離して使用するとやわらかな風が顔全体に風が当たり、心地よく使えます
吹き出る風はパワフルですが、髪や地肌のダメージを抑えるため、最高温度を低めに設定しているので、実際、どのくらいの時間で髪の毛を乾かせるのか気になります。髪を濡らし、タオルで水分を拭き取ってから「baton」でヘアドライしてみました。
「baton」は本体と吹出口が同じ面にあるので、髪との距離がわかりやすく、理想的な距離と言われる20cmを確保するのも容易
風温は「高温」、風量は「強風」にセットしてヘアドライしてみたところ、ミディアムヘアの筆者の髪は4分41秒で乾きました
使い始めは、小さめの吹出口から出る風が集中的に当たる感覚に違和感を覚えたものの、すぐに気にならなくなりました。吹出口の位置が把握しやすいので当てたい部分にきちんと風を当てられ、操作性は上々。今回、髪を乾かすのに5分弱かかりましたが、本体重量が軽いため、腕の疲れもありません。ちなみに、筆者が普段使用している一般的なL字型のヘアドライヤー(風速1.6㎥/分)では、髪を乾かすのに7分弱かかりました。「baton」の風は直進性が高く、髪の根元にまで届くのと、乾かしづらい後ろ側の髪に風をしっかり当てられることが早く乾かせた理由かもしれません。また、普段は一定時間同じ部分に温風を当て続けていると髪が熱くなったり、頭皮に熱さを感じたりすることがあったのですが、「baton」ではそのような過度な熱さは感じず。むしろ心地いい温かさで、地肌へのダメージの少なさを実感しました。
ある程度髪が乾いたら、風量を「弱風」にして仕上げると、さらにまとまりやすくなります。筆者は温度を「低温」にして仕上げましたが、温冷切替ボタンで冷風(室温の風)に切り替えて使うほうがキューティクルが引き締まるのでよかったかも……
電源コードに360°回転するノンツイスト機構を採用しているのも高評価。本体の持ち方を変えても、コードがからまないのでストレスがありません。ちなみに、消費電力が1,000Wを超えるヘアドライヤーでノンツイスト機構を採用している製品はほぼないのだとか。大きな電流が流れる場合、回転する接点部の耐久性に課題が生じてしまうためなのですが、「baton」は消費電力を800Wに落とせてことで、この課題をクリアし、ノンツイスト機構を実現しました
ちょっと気になったのは、使用後に電源をオフにしても若干ファンが回っていること。電源スイッチをオフにした後、少しタイムラグが生じてからピタッと止まる感じなので、初回は「あれ?」と思うかもしれませんが、致命的な問題ではないですし、そういう仕様だとわかれば気にならなくなります。
スティック型のヘアドライヤーを使うのは初めてでしたが、そのラクさに感動しました。特に、後頭部の髪を乾かすのが圧倒的にラク! ムリに腕を伸ばさなくても、しっかり後方に風を当てられます。操作性が独特なので、なかなか伝えづらいのですが……、たとえば、パンやお菓子の生地を伸ばす麺棒や、食用ラップの芯を「baton」に見立てて動かしてみると、前方、後方、サイド、上部など全方位にラクな姿勢で動かせることがわかるはず。その棒の先端に吹出口があり、温風が出る感じです。当然ながら、それらより「baton」のほうが重量はありますし、吹き出る風の負荷もプラスされますが、動かし方はイメージできるので参考にしてみてください。
操作性以外に、温風の温度についても初めて使ったときに驚きました。最高温度が85℃という温風は、100℃以上の熱風が出るヘアドライヤーと比べるとぬるく感じます。使用する部屋の温度によって温風温度は上下するため、室温が10℃くらいの比較的寒い環境で使ったときには、正直、「この温度でちゃんと乾くの?」と心配になりましたが、それでも普段よりも2〜3分早く乾いたので、使い手側が「高温でないと乾きにくい」という考えを改めないといけないかも。といっても、1回使用して、温風の温度が低めでも早く乾くとわかれば、気にならなくなりますが……。ちなみに、室温が21℃くらいの部屋では、心地よい温かさの温風でした。
なお、今回は使用していませんが、「baton」には「カールブラシ」が付属しています。吹出口にカールブラシを装着すれば、ブローとヘアドライを同時に行うことが可能に。いわゆる“くるくるドライヤー”のような使い方ができるようになります。
カールブラシはマグネットでくっつく仕様なので、着脱に手間はかかりません。また、カールブラシにも遠赤外線を放射するコーディングが施されており、遠赤効果が得られます
このほか、携帯用ポーチも付いています。ホテルなどにあるヘアドライヤーは風量が弱いこともあるので、持参したい人も多いでしょう。「baton」はスリムで軽量なので、持ち運びが苦にならないのもメリットです。
ヘアドライヤー本体と付属のカールブラシを収納できます。収納したポーチのサイズは実測で140(幅)×383(長さ)mm
大阪府生まれ、埼玉県育ち。編集プロダクション「雪か企画」に所属し、持ち前の体力で月に50本以上の記事を制作しています。休日はカフェ巡りや散歩を楽しみ、1日15km以上歩くことも。