長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第10回は、高度経済成長期の頃から家電・三種の神器の一角をなす「冷蔵庫」の最新トレンドと買い時について解説する。
毎日の暮らしの中で欠かせない生活必需品の冷蔵庫。新生活需要が高まるこの時期には、やはり冷蔵庫を買い替える人が多くなる。とはいえ、本当の冷蔵庫の需要ピークは春ではなく、夏に訪れる。図1は、価格.comの「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける、過去2年間の閲覧者数推移を示したものだが、これを見ると、毎年6〜8月の夏季に大きなピークが来ており、その次のピークが2〜3月の新生活需要になっていることがわかる。
【図1】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける閲覧者数推移(過去2年)
実は、冷蔵庫を買い替えるきっかけとして多いのは、使っていた冷蔵庫が壊れるタイミングと言われている。冷蔵庫の冷却システムの要となるのは、冷媒を圧縮するコンプレッサーだが、夏になり気温が上がると、このコンプレッサーにかかる負荷も高くなる。冷蔵庫のコンプレッサーは24時間365日通電して動いている高負荷パーツであるため、どうしてもある程度の期間で寿命を迎える運命にあるが、ある程度弱ってきたコンプレッサーが、高温の夏になって負荷が高まった瞬間に寿命を迎え、壊れてしまうケースが多い。そこで、あわてて新しい冷蔵庫を購入する人が夏になると増加するため、冷蔵庫の買い替えピークは、一般的に夏季に訪れるというわけだ。
しかし、生活必需品の冷蔵庫だけに、壊れてから新しい製品が届くまでに何日も待つということはなかなかしにくいもの。しかも、冷蔵庫が大活躍する夏季なら、なおさら待てない。そうなると、どうしても、近場のお店ですぐに入手できる製品を選んでしまいがちだが、こういう買い方をすると、後で後悔することにもなりかねない。やはり、自分のライフスタイルに合った冷蔵庫を購入するなら、冷蔵庫が壊れる前に、さまざまなポイントをしっかり検討してから購入するのがベストと言える。
では、いつが冷蔵庫の買い替え時なのか? ズバリ言おう。それは今のこれからの時期、つまり「春」である。それも、できれば4〜5月くらいの時期に購入するのがベストだ。その理由は、以下のとおり。
・多くの冷蔵庫は11〜4月の時期に発売される。つまり、この時期は、前モデルが型落ちとなって、価格が下がりやすい。
・上記の期間のうち、年末年始や2〜3月の新生活需要期は、どちらかというと価格が落ちづらい。逆に、3月を過ぎて4月に入ると、価格が一気に下がりやすくなる。
・上記のように、6月以降は夏の需要期に入るため、価格が下がりづらくなる。加えて、型落ちモデルの流通在庫が減ってくるので、入手しづらくなる。
【図2】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける人気5製品の最安価格推移(過去1年)
図2は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける現在の人気5製品の最安価格推移を示したものだが、今人気の5モデル中3モデルが昨年の4月発売となっており、最安価格的にはきれいな右肩下がりとなっていることがわかる。つまり、4月発売のモデルであれば、次モデルの発売近くのこの時期が価格的には狙い目となる。同様に、1〜2月発売のモデルであれば、すでに新モデルが発売され、旧モデルが型落ちとなった今がまさに狙い目だ。
【図3】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける人気メーカー別の閲覧者数推移(過去2年)
では、価格.comにおける、冷蔵庫の人気メーカーはどのようなものだろうか。図3は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける、人気メーカー5社別の過去2年間の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、主要5社の中でも、三菱電機がこの2年で大きく人気を伸ばしていることがわかる。これとは対照的に、パナソニック、東芝、日立、シャープの4社はほぼ横ばいか、あるいは若干人気を落としつつ、僅差での2位グループを構成しており、なかなかの混戦模様。国内主要メーカーの中でも三菱電機の人気の強さが大きく印象づけられる結果となっている。
三菱電機の冷蔵庫がここまで高い人気を得るようになった理由は、いくつかある。ひとつめは、比較的コンパクトなボディながら、庫内容量が広いこと。三菱電機では、薄型断熱構造「SMART CUBE」を採用することで、冷蔵庫の設置面積は変えずに庫内容量のアップを実現。庫内もフラットなので、収納力も十分高く、扱いやすいと評判だ。もうひとつは、人気の「切れちゃう瞬冷凍A.I.」や「氷点下ストッカーD A.I.」などの冷蔵・冷凍機能の充実。また「全室独立おまかせA.I.」に代表されるセンシングとAIを組み合わせた温度管理機能によって、省エネ性が高いことも忘れてはならない。さらには、ブラウンを基調としたカラーのモデルが多く、現代のキッチンデザインにマッチしやすいことなどがあげられる。
こうしたさまざまな長所を持った三菱電機の冷蔵庫だが、ここ2年ほどで一気にダントツとも言える人気を誇るようになったのは、コロナ禍で買い置き需要が増し、より大容量の冷蔵庫が求められるようになったことで、こうした同社の冷蔵庫の長所が多くの人の目に付くようになったものと思われる。製品のラインアップも多く、自分に合った製品を探しやすいのも特徴と言えるだろう。
この三菱電機を追う2位グループの各メーカーもそれぞれの個性や特色を持っている。パナソニックは、一般的には背面下部に設置されるコンプレッサーを、あえて背面上部に持ってくるトップユニット方式を採用しており、最下部に来るフリーザーや野菜室を広めに取れるのが特徴。-3度で肉や魚を微凍結する「微凍結パーシャル」も人気がある。東芝は以前からブランド名の「VEGETA(ベジータ)」の名のとおり、野菜室の機能を重視してきた歴史があり、野菜の鮮度を気にする人からは絶大な支持がある。また日立は、肉や魚を凍らせないぎりぎりの温度(約-1度)で、鮮度や食感や風味を守って保存する「特鮮氷温ルーム」が人気。最近は、カメラ付きのスマホ連動製品も増えてきた。シャープは、以前から大型の冷凍室「メガフリーザー」や、左開きにも右開きにも対応する「どっちもドア」などが特徴。同社が得意とする「プラズマクラスター」による消臭効果も冷蔵庫には最適な機能だ。
なお、上記5社のほかに、容量300L台以下の中型・小型冷蔵庫に限って言えば、AQUA、ハイアール、アイリスオーヤマなどのメーカーも比較的ラインアップが多く、価格が安いこともあって、特に単身者や若年層の夫婦世帯などを中心に人気がある。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年3月14日 時点のものです。
価格.com最安価格:197,480円
発売日:2022年4月29日発売
ユーザー評価:★4.56(8人)
都市部のマンションなどのキッチンにも収まりやすい幅650mmでありながら、547Lの大容量を実現した三菱電機の2022年モデル。人気の「切れちゃう瞬冷凍A.I.」や「ひろびろ氷点下ストッカーD A.I.」などの冷蔵・冷蔵機能を搭載するほか、AIが家庭ごとの生活パターンを学習して、部屋別に最適な運転する「全室独立おまかせA.I.」を搭載し、クラス最高レベルの省エネ運転を実現する。冷蔵庫の様子を管理可能なスマホ連携機能も搭載。売り出し価格は40万円近かったが、今では約半額の20万円弱で購入可能と、非常におトク感が強い。
価格.com最安価格:193,700円
発売日:2022年2月下旬発売
ユーザー評価:★4.31(5人)
トップユニット採用のパナソニック製冷蔵庫の2022年モデル。コンプレッサーを上部に配置することで、最下部の野菜室は105Lという大容量を確保。-3度で肉や魚の鮮度を保持しつつ保存できる人気の「微凍結パーシャル」をはじめ、冷蔵室右下のクーリングアシストルームでは、業務用レベルの急速冷凍「はやうま冷凍」や、たった3分であら熱が取れる「はやうま冷却」を利用可能。「室温」「湿度」「収納量」「ドア開閉」など計7種類のセンサーで、各部屋の使い方・運転状況を見極めて省エネ運転を行う「AIエコナビ」に対応するほか、スマホ連携も行える。ナノイーXによる消臭・除菌も魅力のひとつだ。
価格.com最安価格:184,800円
発売日:2022年3月下旬発売
ユーザー評価:★4.87(5人)
東芝「VEGETA」の2022年版ハイグレードモデル。シリーズの特徴ともなっている、真ん中に設置された野菜室には、湿度を最適に保つ「ミストチャージユニット」を活用し、約10日間新鮮に保存できる新開発の「使い切り野菜BOX」を設置。「ミストチャージユニット」には脱臭効果のある銅イオンを採用しており、ニオイ移りも抑制する。さらに、野菜室やチルドルームに搭載している、野菜表面に付いた菌の繁殖抑制に効果的な「UV-LED」を増設。除菌効果がアップし、野菜や果物をより清潔に保存できる。このほか、肉や魚などの生鮮食品の表面に氷の膜を作り、凍らせないで保存する「氷結晶チルド」や、水分をたっぷり含んだ冷気で、冷蔵室の湿度を約85%に維持し、食品の乾燥を防ぐ「うるおい冷蔵室」など、独自の技術を満載。AIが使用パターンを学習し、最適な省エネ運転を行う機能やスマホ連携機能も備える。
価格.com最安価格:178,999円
発売日:2022年2月17日発売
ユーザー評価:★4.49(4人)
本体幅650mm、奥行651mmに収まる容量485Lの2022年モデル。約2度の温度と約80%の湿度に保つことで、冷蔵室全体をチルドルームとして使える「まるごとチルド」を搭載しており、ラップなしでも乾燥や変色を抑えて食品をおいしく保冷する。このほか、凍らせない約-1度の温度帯で肉や魚の鮮度を守りながら保存する「特鮮氷温ルーム」や、プラチナ触媒によって野菜などから放出されるエチレンガスを分解し、眠らせるようにして保存する「新鮮スリープ野菜室」などを搭載。スマホ連携機能などはないが、基本性能のしっかりしたお値打ちモデルだ。
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価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。