長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第11回は、近年、衣類乾燥機としての需要が伸びつつある「除湿機」について、その最新トレンドを解説する。
除湿機という家電製品はかなり以前から存在している。一般社団法人 家庭電気文化会によれば、日本国内で初めて家庭向けの除湿機が発売されたのは1967年のこと。その当時の除湿機は、家の中の湿気対策が目的。それまでの風通しのよい日本家屋から気密性の高い洋風家屋へと、日本の家屋の建築が移り変わっていく過程で生じてきた部屋の湿気と、それにともなう結露やカビの発生を抑制するために生まれた家電製品だった。
しかし、それから50年以上が経った今では、家屋の建築方法も様変わりしている。断熱などのために屋内の気密性は十分に保ちつつも、外気の入れ替えはしっかり行える設計が一般的になり、室内の湿気が常に気になる家屋も以前ほどはなくなってきた。これにともなって、除湿機の需要も下降気味に推移していたのだが、ここ数年、その動きが少し変わってきた。それまでの「部屋の中の湿度を下げる」という目的から、むしろ「部屋の中を乾燥させ、さらに衣類を乾かす」という、衣類乾燥機としての役割を各メーカーとも強く打ち出すようになり、洗濯物の部屋干しニーズの高まりもあって、除湿機の存在が改めて見直されるようになってきたのだ。
【図1】価格.com「除湿機」カテゴリーの過去1年間における閲覧者数推移
図1は、価格.com「除湿機」カテゴリーの過去1年における閲覧者数推移を示したものだが、やはり梅雨時の6〜7月あたりにかけて需要が急増していることがわかる。このように、除湿機と言えば、夏季中心に活躍する季節家電という側面が強いが、その主な利用用途は「梅雨時の部屋の湿気対策」から「梅雨時の洗濯物の部屋干し対策」へと変化している。また、コロナ禍の3年で、洗濯物を部屋干しするようになった家庭が増えたからか、2020年、2021年の2年は特に除湿機の需要が急増している(図2)。このように、コロナ禍がひとつの契機となって、衣類乾燥機としての除湿機ニーズが高まってきたことは間違いないだろう。
【図2】価格.com「除湿機」カテゴリーの過去3年間における閲覧者数推移
なお、除湿機には大きく分けて「コンプレッサー式」と「デシカント(ゼオライト)式」の2種類があり、それぞれに長所・短所がある。エアコンのように冷媒を使った熱交換を行うコンプレッサー式は、暑い夏場のほうが性能を発揮しやすい。いっぽう、吸湿剤で湿気を集め、それを熱風で乾かすデシカント式のほうは、温度が低い冬場のほうが性能を発揮しやすい。そのため、同じ除湿機でも、主に使うシーズンによって、選ぶ製品が変わってくるのだが、衣類乾燥機として1年中使うとなると、どちらの方式も一長一短が出てくる。そこで最近着目されているのが、この2方式をひとつにまとめた「ハイブリッド式」の除湿機だ。2つの機能をひとつにまとめたこのハイブリッド式なら、夏場でも冬場でも効率よく除湿できる。除湿機が徐々に衣類乾燥目的で使われるようになった結果、最近では、主に需要の高い夏場に活躍するコンプレッサー式と、1年中使用できるハイブリッド式が人気の中心となり、主に冬場に使うデシカント式の除湿機は、徐々に製品数自体が減っている状況となっている(図3参照)。
【図3】価格.com「除湿機」カテゴリーにおける、タイプ別割合(2023年4月3日時点)
上記で述べたように、除湿機には大きく分けて「コンプレッサー式」と「デシカント(ゼオライト)式」の2種類があり、さらにこの2つをひとつにした「ハイブリッド式」を加えた3方式が中心となっている。ほかにペルチェ素子を用いた「ペルチェ式」もあるが、衣類乾燥には向かないため今回は割愛する。また、衣類乾燥機としての用途が増してきた現在では、特に梅雨時の洗濯物の部屋干し対策に便利なコンプレッサー式と、1年中使えるハイブリッド式の2種類が主流になってきており、デシカント式は以前に比べると人気を落としている。
ただ、ハイブリッド式は1年中使えて便利ではあるが、そもそもコンプレッサー式とデシカント式でまったくと言ってよいほど除湿方式が異なっているので、共通化できるパーツが少なく、結果としてハイブリッド式の除湿機は、ボディがそれなりに大きく、価格も高くなる。設置スペースや予算を考えると、ちょっと躊躇する人もいるだろう。その点、コンプレッサー式は、一般的に除湿性能が弱まるとされる気温の低い冬期を除けば、最低でも3シーズンは便利に利用でき、価格も安めなので、選ぶ人が多い。図4は、ハイブリッド式モデル2製品(パナソニック「F-YHVX120」、シャープ「CV-PH140」)と、コンプレッサー式モデル2製品(シャープ「CV-P71」、コロナ「CD-S6322(W)」)およびデシカント式モデル1製品(パナソニック「F-YZVX60-H」)の最安価格推移を示したもの。除湿性能などの差もあるので一概には言えないが、単方式の製品に比べて、ハイブリッド式の製品のほうが、価格としてはほぼ倍になっていることがわかる。
これらのことから、コンプレッサー式を第一に考え、余裕があればハイブリッド式を選ぶ、というのが、最近のトレンドと言えるだろう。
【図4】価格.com「除湿機」カテゴリーにおける、ハイブリッド式モデルとコンプレッサー式/デシカント式モデルの価格差
加湿機やエアコンなどと同じく、除湿機にも目安となる対応畳数が設定されている。比較的小型のモデルであれば、木造建築で7〜8畳、鉄筋建築で14〜16畳くらいの製品が多いが、ひとつの部屋で使うのであれば、このあたりがメインの狙いどころとなるだろう。特に、衣類乾燥機として使用するのであれば、あまり広い部屋で使うよりも、6畳や8畳などの限定された空間で使ったほうが早く部屋内が乾燥するので、あまり大きな対応畳数のものを選ぶ必要はなさそうだ。ただ、対応畳数が大きいということは、除湿量が大きい(=パワフル)ということでもあるので、なるべく早く衣類を乾かしたいという方は、主にハイブリッド式で採用されている「木造:10畳以上、鉄筋:20畳以上」といったスペックの製品を購入するのもいいだろう。
なお、除湿機が集めた空気中の水分は、水タンクに溜まり、満タンになると運転が停止してしまうので、水タンクの容量は大きければ大きいほど、長時間連続運転できる。衣類乾燥に使う場合はさほど気にする必要はないかもしれないが、部屋の湿気取りでほぼ1日中動かしておくというような用途の場合、タンク容量が大きなものを選んだほうが、溜まった水を捨てる手間が少なくて済む。なお、ホースを接続することで、風呂場などの水場に連続排水できるモデルもある。
特に衣類乾燥機として除湿機を購入する場合は、風の吹き出し口まわりのルーバーの形状や動きもチェックしておきたい。衣類乾燥を行う場合、洗濯ハンガーなどを使って比較的高い位置に洗濯物を吊すと思うが、この洗濯物に対してどのような風を当てるかが、洗濯物の乾きの良し悪しを決める重要な要素となるからだ。最近多いのは、ルーバーでワイドな気流を作り出し、横1列に干した洗濯物すべてにまんべんなく風を当てるタイプ。ルーバーにスイング機構があるかどうかもあわせてチェックしよう。なお、生乾きのイヤなニオイを抑えるためのイオン放出機能などを搭載したモデルもある。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年4月4日 時点のものです。
価格.com最安価格:20,500円
発売日:2022年3月
ユーザー評価:★4.45(3人)
除湿可能面積目安(60Hz):木造9畳/鉄筋18畳
排水タンク容量:2.5L
コンプレッサー式を中心に除湿機を展開するシャープの小型モデル。幅30cmに収まるコンパクトなボディながら、7.1L/日(60Hz)の定格除湿能力を持ち、2kgの洗濯物ならおよそ180分で乾燥できる。シャープならではの「プラズマクラスター7000」も搭載し、部屋干し特有のニオイも抑制可能。吹き出し口は上側に付いているが、ルーバーを動かすことで、下方にも乾いた空気を放出でき、脱衣所のバスマットや床などの乾燥にも使える。連続排水ホースも接続可能。
価格.com最安価格:18,700円
発売日:2021年4月15日
ユーザー評価:★4.40(7人)
除湿可能面積目安(60Hz):木造8畳/鉄筋16畳
排水タンク容量:3L
17.0(幅)×36.5(奥行)×53.3(高さ)cmというコンパクトボディを実現したコロナのコンプレッサー式除湿機。定格除湿能力は6.3L/日(60Hz)で、2kgの洗濯物ならおよそ136分で乾燥できる。少量の洗濯物なら、さらに短時間で乾燥可能。たとえば給食着なら約33分、ワイシャツ1枚なら約38分で乾燥できるという。上下にワイドスイングするルーバーを備え、95度の角度で上下に広い風を送り出せる。水タンク容量が3Lと大きく、水捨ての回数が減らせるのも利点だ。
価格.com最安価格:52,280円
発売日:2022年5月11日
ユーザー評価:★4.47(14人)
除湿可能面積目安(60Hz):木造13畳/鉄筋25畳
排水タンク容量:3.2L
長年、ハイブリッド式の除湿機を手掛けてきたパナソニックの2022年主力モデル。定格除湿能力10L/日(60Hz)のパワフル乾燥で、約2kgの洗濯物なら75分で乾かせるという。消臭効果などが期待できるパナソニック独自の「ナノイーX(48兆)」も搭載し、部屋干し特有のニオイも抑制可能。ワイドルーバーによって約165cmのワイド送風が可能なほか、ルーバーの左右半分ずつを独立して動かすこともでき、それぞれ異なる気流を送り出すことで、洗濯物の間にしっかり乾いた風を届けるという。「価格.comプロダクトアワード2022」の除湿機部門にて銀賞を受賞するほどユーザーの評価も高い。
価格.com最安価格:40,800円
発売日:2022年3月
ユーザー評価:★4.00(2人)
除湿可能面積目安(60Hz):木造16畳/鉄筋33畳
排水タンク容量:3.6L
シャープのハイブリッド式除湿機(2022年モデル)。定格除湿能力13L/日(60Hz)というハイブリッド式ならではの季節を問わないパワフル乾燥で、約2kgの洗濯物なら、梅雨時で約64分、冬期でも約80分で衣類を乾かせるという。イオン濃度の高い「プラズマクラスター25000」も搭載し、部屋干し特有のニオイも抑制可能。広角ワイドルーバーの採用で、約165cmのワイド送風が可能なほか、左右上下にスイングさせることで、さまざまな気流を生み出せる。タンク容量も3.6Lと大容量で、連続排水ホースも接続可能。これだけの内容で4万円強で買えるコスパのよさにも注目したい。
価格.com最安価格:40,700円
発売日:2022年5月11日
ユーザー評価:★4.68(3人)
除湿可能面積目安(60Hz):木造8畳/鉄筋16畳
排水タンク容量:2.4L
横に長い形状を採用したハイブリッド式除湿機。この形状は、衣類乾燥に特化した形状で、洗濯ハンガーに吊された洗濯物の真下に設置して、衣類を乾燥できる。定格除湿能力は6.5L/日(60Hz)とやや控えめだが、47(幅)×25(奥行)×33.5(高さ)cmというコンパクトなボディは大きな魅力。約100cmのワイド送風に対応したスイングルーバーを採用し、約2kgの洗濯物なら97分で乾かせるという。パナソニック独自の「ナノイーX(48兆)」も搭載し、部屋干し特有のニオイも抑制可能。コンパクトでパワフルな衣類乾燥除湿機を求めている人には注目の1台だ。
価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。