電気調理鍋と言えば、具材と調味料をセットして、ボタンひとつで加熱調理を行い、家事の負担を軽減してくれる便利な調理家電として大人気です。これまで圧力を加えて時短料理が可能なモデルや、鍋のふたなどに内部をかき混ぜる機能を搭載して自動でかくはんするモデルなど、さまざまな種類の電気調理鍋が登場していますが、「鍋が自動で回転する」電気調理鍋があるのをご存じでしょうか?
2022年9月に発売されたアイリスオーヤマの「自動かくはん式調理機 CHEF DRUM」(以下、「シェフドラム」)は、内なべを回転させて食材をかくはんする、とてもユニークな電気調理鍋。1台で炒めたり揚げたり煮たりと多彩な調理ができるということで、今回実際に使って調理はもちろん、使いやすさやお手入れのしやすさなどもチェックしたので、ぜひ参考にしてください。
「シェフドラム」の詳しい機能の紹介の前に、「どんな風に調理するのか気になって仕方ない!」という方もいるのではないでしょうか。機能説明よりも調理の様子が気になる方は、まずはこちらの動画をチェックしてみてください。
「シェフドラム」は、一般的な電気調理鍋と同じく本体下部のヒーターで内なべを加熱して調理を行う構造になっており、「炒める」「揚げる」「焼く」「煮る」「無水調理」「茹でる」「発酵」「低温調理」「スロー調理」の9つの調理が可能。簡単なボタン操作で、メニューに最適化された温度や加熱時間で調理する自動メニューを108種類搭載しています。一般的な電気調理鍋は内なべの底を加熱するため、熱の通りにムラが出やすいところが難点でしたが、この問題を解消するのが「シェフドラム」の一番の特徴でもある内なべの自動回転機能。しかも、ただ内なべが回転するのではなく、本体を0度、30度、50度の角度で3段階に傾けることができ、傾けた状態で内なべが自動回転することで、なべを振ったり、かき混ぜたりする動作を再現し、ムラなくかくはんできるのがポイントです。
本体サイズは370(幅)×279(奥行)×343(高さ)mmで、重量は7.2kg。調理容量は2.0L(傾き30度の場合)、満水容量は4.5L(傾き0度の場合)。1〜6人分(カレーの場合のみ最大8人分)の調理が可能です
本体を3段階に傾けることが可能。本体取っ手の左側にある「ラッチボタン」を押すことで、角度を調節できます
内なべは、人工ダイヤモンドをフッ素樹脂コーティングに配合しており、食材や調理の汚れなどがこびりつきにくく、お手入れも手軽に行えます
自動メニューの選択のほかに、「回転」や「温度(手動)」ボタンで、手動モードで調理するときの温度調節や回転の有無を設定可能。また、自動メニューによっては「予約ボタン」から予約設定もできて便利です
ふたの取っ手部分を下にして垂直に立てることができるだけでなく、ふたに付いた水滴などがこぼれづらい作りになっているなど、細かな使いやすさに配慮されているところもポイントです
本体底部には加熱用のヒーターと内なべの温度を検知する温度センサーを搭載
ここからは付属のレシピブックに掲載されているメニューを実際に自動調理してみましたので、できあがりの味はもちろん、準備や調理工程などをレポートしたいと思います。
まずは揚げ物調理の中でも、子どもも大人も大好きな唐揚げを作ります。と言っても、用意するのは鶏もも肉と調味料のしょうゆと酒、片栗粉とサラダ油だけ。鶏肉を一口大に切ってから調味料につけ込み、片栗粉をまぶしたら準備はほぼ完了です。肝心の揚げ調理の工程ですが、内なべに300mlのサラダ油を注ぎ、ふたを閉めてから自動モードをセットして、予熱を開始します。数分で油が適温になるので、あとは鶏肉をなべに入れてふたを閉めてスタートボタンを押すだけ。
実際に使ってみるとわかるのですが、サラダ油300mlという少量の油でカラッとおいしく揚げられるのは、内なべが自動回転するおかげと言ってよいでしょう。調理時も油を予熱して適温にしてくれるのが意外と便利で、油が高温になりすぎて、衣が焦げてしまったり、低温で中まで火が通らなかったりという心配も不要。また、ふたを閉めた状態で揚げ物ができるので、油の飛び散りを最小限に抑えることができて、後片付けが楽なのは本当に助かります。
小さな子どもがいる家庭だと、調理中に子どもが近くにきてまともに料理ができないなんてことは日常茶飯事ですが、「シェフドラム」であれば安心です
調理時間は6分ほどですが、外はカリッ、中はジューシーなバツグンの仕上がりでした
続いては煮物の定番料理、肉じゃがを作ってみます。揚げ物は簡単においしく仕上がりましたが、煮物はちゃんと具材に味が染み込むのか、気になるところです。一番気になるのは、内なべが回転することで、じゃがいもなどが煮崩れしてしまうのでは……ということです。
若干の不安はありつつも、食材と調味料を準備したら、あとはなべに入れてスタートボタンを押すだけ。調理時間は35分ほどですが、実際作ってみると、火加減や焦げ付きなどを考える必要もなく、ほったらかしたままほかの料理の準備や作業ができるのはとにかく便利です。とくに煮込み料理など時間がかかる料理との相性のよさを感じました。肝心の仕上がりですが、気になっていたじゃがいもの煮崩れもなく、しっかり中まで味も染み込んだ見事な出来でした。
火を使わないので、つきっきりで鍋を見ている必要もなく、火の消し忘れや吹きこぼれの心配がなのがうれしいポイントです
心配していたじゃがいもも煮崩れなく、中までしっかりホクホクで味も染み込んでいました
揚げ物、煮物ときて、次は炒め調理を試してみることに。作るのは中華料理の定番、麻婆豆腐です。肉じゃがの煮崩れは大丈夫でしたが、さらにやわらかい豆腐の場合は型崩れせずに無事に作れるのかチェックします。
食材と調味料を投入し、調理を開始してからわずか9分で完成し、とても手軽な印象です。気になる豆腐の状態ですが、内なべは絶えず回転していましたが、型崩れもほぼなく、仕上がりもバッチリです。
甜麺醤と豆板醤を使った麻婆豆腐は濃厚で辛みもありますが、子どもでも食べやすい味にまとまっています。個人的には挽肉が崩れ過ぎない方が好みですが、大人も満足な味わいです
豆腐は崩れやすいので気になっていましたが、調理中ずっと回転していたにもかかわらず、ほとんど崩れることなく、食べ応えもバッチリでした
続いて作るのは炒飯です。こちらもレシピブックの分量通りの食材と調味料を準備して調理を開始。ふたを閉めて調理するメニューが多いのですが、炒飯の場合はふたを開けたまま自動調理が行われるので、できあがりまでの様子を見ることができ、とても面白いです。
調理工程の動画を見てもらうとわかりますが、調理を開始して数分でご飯がダマになります。ダマになることはレシピブックにも記されており、調理後に混ぜほぐしながら盛り付ければよいので、問題ありません。基本的には、しっかりかくはんされているので、仕上がりの味のバラつきなどもなくおいしいのですが、ダマになってしまうのが少しもったいなく感じました。
調理時間は約15分。途中でダマになってしまいますが簡単にほぐれます
パラパラな食感とまでは言えませんが、ふたを開けながらかくはんするので、余計な水分が抜けて、おいしく仕上がります
最後に紹介するのが低温調理です。高タンパク、低カロリーで食べ応えもあり、ダイエットのお供としても人気のサラダチキンを作るのですが、調理時の温度管理が難しく、しっかり中まで火が通らないと危険ですし、加熱しすぎるとパサパサした食感になるので意外と難しいメニューでもあります。
下準備は簡単で、皮を取った鶏むね肉に調味料を揉み込んでから、耐熱性の密封袋に入れて、ハーブや黒こしょうなどを入れてなじませるだけ
内なべに水を注いだあとは、耐熱性の密封袋に入った鶏むね肉を入れて自動調理をスタート
約92分で完成です。しっかり時間をかけて熱を通しているので、パサパサにならず、想像以上にジューシーな仕上がり。家族のウケもバツグンでした
半年ほど「シェフドラム」を使って一番感じたことは、誰が使っても、ほうっておいてもおいしく仕上がる安心感と便利さは偉大だということです。これは多くの自動調理鍋にも言えることかもしれませんが、期待している調理をしっかりこなしてくれることへの満足感は、やはり重要だと思いました。
個人的なポイントを上げるとすると、ひとつは唐揚げなどの揚げ物調理が簡単で片付けまで含めて、とにかく楽なことです。これはぜひ一度試していただきたいのですが、少量の油でカラッと揚げ物ができるのは、自動で内なべが回転する「シェフドラム」の特徴を生かした調理のおかげだと思います。そして、ふたをして調理ができるので、油はねが少なく後片付けが楽なのがとにかくありがたいです。
もうひとつポイントを上げるとすれば、子どもウケが最高だということ。小さな子どもがいる家庭だと、ただでさえ料理は大変なのに、調理中に子どもが近くに来てまともに料理ができないなんてことは日常茶飯事です。それが「シェフドラム」であれば、回っている様子をずっと眺めてくれるので、本当に助かります。また、子どもが手伝うと言い出して困ってしまうことも往々にしてあると思いますが、「シェフドラム」であれば、火を使うこともなく具材を入れてスイッチを押すだけなので、小さな子どものお手伝いも安心です。
いっぽう、気になった点のひとつは本体サイズです。一般的な自動調理鍋よりもやや背が高くサイズが大きいので、設置場所を選びます。購入を検討されている方は、まず設置場所の確保が最優先になります。あとは内なべが重いので、調理の後片付けや洗うときに注意が必要です。
気になる点もありますが、自動調理のバリエーションも豊富で、ほったらかしで調理してくれる便利さは満足できるものなので、悩んでいる方は価格.comの口コミを参考にしたり、量販店などで実機をチェックしたりしてみてください。
家電製品から文房具など、さまざまな商品を検証するモノ雑誌の編集経験を活かして、今日も気になる製品をレビューします。