ダイソン初の水拭き機能を搭載したコードレススティック掃除機「Dyson V12s Detect Slim Submarine(SV46 SU)」が2023年6月28日に発売されました。近ごろ続々と登場している、吸引と水拭きができる掃除機と同じようなものを想像していたのですが、それらとは異なるスタイルを採用。発表会で実際に触った所感を交えつつ、本製品の特徴を紹介します。
水拭きができる点がフォーカスされますが、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」は、あくまでも床面のゴミを吸い取るコードレススティック掃除機であるというのが大前提。付属の「Submarineウェットローラーヘッド」に付け替えると、水拭き掃除ができるようになる仕様です。最近登場している、ハイアール「MIZUKI」やAQUA「WIPEL」などのような水拭きできる掃除機は、吸引機能と水拭き(乾拭き)機能を備えた構造となっており、大半の製品が、吸引掃除と拭き掃除を別々に行うことはできません。その点、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」なら、普段は普通の掃除機として使用可能。パイプを取り外してハンディスタイルにし、付属の「毛絡み防止スクリューツール」を装着してマットレスやソファなどを掃除することもできます。
床面のゴミを吸引掃除する通常の状態。サイズは250(幅)×234(奥行)×1,095(高さ)mmで、重量は2.2kg。静電気の発生を抑える「カーボンファイバーブラシ」を備えた「Fluffy Opticクリーナーヘッド」が、フローリングの溝に入ったホコリも取り除きます
ペットの毛や人の髪の毛が絡みにくい円すい型のブラシを備えた「毛絡み防止スクリューツール」は、ソファなどのやわらかい素材だけでなく、階段に付着したホコリや毛を取り除くのにも役立ちます。このほか、「コンビネーションノズル」や「隙間ノズル」といったツールも付属
水拭きしたくなったら、「Submarineウェットローラーヘッド」に交換。水拭きについての詳細は後述します
複数のツールが付属しますが、充電ドックも同梱されているのでまとめて収納できます。充電にかかる時間は約3.5時間。「Submarineウェットローラーヘッド」は独立した形となりますが、下に敷くトレイが付いています
ベースの掃除機は、「Submarineウェットローラーヘッド」に対応するか否かが異なる以外は、2023年4月に発売された「Dyson V12 Detect Slim Absolute」と同じです。毎分最大125,000回転するデジタルモーターがゴミをパワフルに吸引。「Fluffy Opticクリーナーヘッド」は光を照射して床面の微細なホコリを可視化する機能を搭載しているので、汚れの取り逃しを減らせます(下の動画参照)。
通常の吸引掃除の性能については、「Dyson V12 Detect Slim Absolute」の記事でご確認ください。
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では、水拭きの仕組みを見てきましょう。上述のとおり、最近登場している水拭きできる掃除機は、汚れを拭き取るだけでなく、液体はもちろん、殻を含んだ卵やラーメンなど落としたりこぼしたりしてしまった大きめの固形物も吸い取る吸引機能を搭載しています。それに対し、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」は吸引機能は非搭載。「Submarineウェットローラーヘッド」を装着すると吸引は動作しない仕組みになっており、給水タンクから水を送って「ウェットローラー」(モップ)を濡らしてモップに床面のゴミや汚れを吸着させ、ウェットローラーに含まれた汚れと水をステンレス製のスクレイパーでかき取って汚水トレイに排出します。人が雑巾を使って水拭きするような掃除方法ですが、約900回転/分の速度でウェットローラーが回転するため、皮脂汚れやこびり付いたがんこな汚れも落とすことが可能。それと同時に、キレイな水をモップに毎分18mL供給しているので、常にキレイな状態のモップで拭き掃除できるそうです。
給水タンクや汚水トレイ、モップなど水拭きに必要なものは「Submarineウェットローラーヘッド」に搭載。ウェットローラーにはモーターが内蔵されており、毎分約900回転します。ちなみに、ウェットローラーヘッドは使用状況にもよりますが、6か月ごとの交換が目安。2023年7月7日時点ではまだ別売品は販売されていませんが、3,300円(税込)程度で8月頃に販売をスタートする予定だそうです
「Submarineウェットローラーヘッド」は、給水タンクや汚れトレイがあるパーツとウェットローラーがあるパーツに分けられます。写真の親指近くにある赤いボタンを押しながら引き抜くだけで分離可能。掃除前に水を入れたり、汚れた水を捨てたりするのに必要な動作です
給水タンクだけを取り外すことはできないので、キャップを外して、この状態で水を入れます。給水タンクの容量は300mL。およそ66畳分に相当する最大110uの床面を水拭きできるそうです
ウェットローラーを外した状態の「Submarineウェットローラーヘッド」の上側のパーツ。ウェットローラーに接するように配置されている銀色のパーツ(スクレイパー)がウェットローラーに含まれた汚れや水をかき取り、汚水トレイに排出します。その上部には水が出る穴が8つあり、給水タンクから送られた毎分18mLの水がウェットローラーを均一に濡らす仕組み
実際に、どのように水拭きされるのか実演が行われました。下の動画で拭き取っているのは、水性クレヨンで付けた汚れとこぼしてしまったコーヒー。人が雑巾を使って拭いても取れなかった汚れが、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」なら簡単にキレイに! 吸引機能は搭載されていないものの、液体(コーヒー)は広がることなく取りきれ、掃除後にヘッドを持ち上げても水や汚れが垂れることもありませんでした。なお、水拭きの際、水だけでなく、泡立たないタイプの床用洗剤や重曹水などを給水タンクに入れることも可能。また、床に重曹などを撒き、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」で拭き取るという使い方もできます。
水拭き掃除した後に汚水トレイを見ると、コーヒーを拭き取ったので茶色い水が溜まっていました。汚水を捨てる際はヘッドから引き出しますが、汚水トレイにふたは付いていないのでこぼさないように注意しましょう
汚水タンクの容量は360L。こぼした液体などを回収することも考慮して、給水タンク(300mL)より少し大きめに設計されています。ただし、満水になっても運転は停止しないため、大量の液体を拭き取った後も水拭き掃除を続けたい場合は、汚水トレイを引き出して確認したほうがいいでしょう。
なお、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」の水拭きは吸引しないため、米粒サイズ程度の食べかすであればウェットローラーで吸着できるそうですが、吸引と水拭きを同時に行う掃除機のように大きな固形物を吸い取ることはできません。部屋全体を掃除する際には、まず通常の吸引掃除を行った後に、ヘッドを交換して水拭きをするのがよいそう。しかし、そのおかげで、溜まった汚水は、人が雑巾で水拭きしたときに出るような汚れで済みます。液体も固形物も吸い取れるのは掃除しているときは楽ですが、お手入れがネック。皮脂や泥汚れなどと食品が混じった汚水をどこに捨てるのか悩んだり、シンクの水切りに捨てるのが正解だろうと思うのですが、そのシーンを想像したり、溜まった汚水を見てゾワッとすることがありました。もちろん、普通に床面を水拭きするだけなら「Dyson V12s Detect Slim Submarine」で水拭きしたときに溜まる汚水と変わりませんが、製品によっては、汚水が溜まるタンクが洗いにくそうな構造のものも。そうしたお手入れの面で、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」は洗いやすく、不快感が少ない印象です。
このほか、電動モップや電動モップクリーナーと呼ばれるものの中にも水拭き機能を搭載した製品があります。水を前方に噴射したり、給水タンクの水でモップを濡らしたりしながら振動するモップで拭き取る仕組みなので、汚水は溜まらず、お手入れは楽。しかし、モップを洗浄する機能は搭載されていないため、モップが汚れたままで掃除を続けることになるのが気になるところ。また、この手のタイプは基本的に拭き掃除専用なので、吸引掃除はできません。水拭きできる掃除機は普通の掃除機よりも気になるポイントが多くあり、そのポイントも人によって違うので、優先したい部分とネックとなる部分の両方を考慮して選ぶ必要がありそうです。
「Submarineウェットローラーヘッド」にあるパーツは分解して洗浄可能。ウェットローラーは希釈した家庭用洗剤を使って水洗いすることもできます。「Submarineウェットローラーヘッド」の上部側(給水タンクや汚水トレイが付いていないほう)のパーツの裏面も水洗いできますが、パイプとの接続部などは濡らさないようにしましょう
洗ったパーツ(特にウェットローラー)は、清潔に使用するため、24時間程度乾かすことが推奨されています。ただ、普通に水拭き掃除をする場合は、1日1回の使用で十分なので問題ありませんが、液体をこぼすなどのアクシデントは突然起こるもの。そんなときはどうしたらいいかダイソンの担当者に聞くと、ウェットローラーは必要以上に水を含まないように設定しているので、洗ってから24時間経ってなくても使って大丈夫とのことでした。
最後に、使い勝手について書き切れなかったことをまとめておきます。
吸引掃除と水拭きができるタイプのコードレススティック掃除機は、給水タンクと汚水を溜めるタンクを本体に搭載しているため、ボディにボリュームがあり、家具などの下が掃除しにくい傾向。いっぽう、「Dyson V12s Detect Slim Submarine」は給水タンクなどをヘッドに集約するとともに薄型設計にしているので、家具の下に23.6cm以上の高さがあれば1m奥までヘッドが届くそうです。
水平まで寝かせることはできませんが、家具の下を掃除しやすそう。この状態でも比較的楽にヘッドを前後左右に動かせました
家具の脚まわりもスルスルと動かして掃除でき、小回りもいい印象(下の動画参照)。「Submarineウェットローラーヘッド」を装着した状態で本体重量3.2kgと、水拭き機能を搭載したコードレススティック掃除機としては軽い点も操作性に寄与してそう
普通の吸引掃除と水拭き掃除の両方ができる掃除機ですが、運転モードの切り替えは不要。ヘッドを交換すると、ヘッドに合わせた運転モードに自動で切り替わります。
「Submarineウェットローラーヘッド」に交換すると……
本体上部にある液晶ディスプレイに水滴のアイコンが表示されます。吸引掃除と水拭き掃除を操作部で選ぶ必要はなく、水拭きのモードは1種類なので運転モードの選択も不要。給水タンクに水を入れてヘッドを交換し、電源ボタンを押すだけです
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。アウトドアからオタク系まで意外と幅広くイケちゃいます。