かき混ぜ機能と高火力でプロ並みのチャーハンを作ってくれたパナソニックの自動調理鍋「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」(以下、「オートクッカー」)は、炒め物が得意なだけじゃない! 業界最高クラスの圧力で作る圧力調理を中心に、低温調理や無水料理などいろいろ試してみました。
かき混ぜ機能を搭載した自動調理鍋の多くは、ふたの内側にかき混ぜるためのアームなどを備え、人がコンロで調理するのと同じように上から内なべの中をかき混ぜます。ただ、この構造では圧力調理できるほど密封性を高めるのは難しいそう。そこで、「オートクッカー」は内なべの底に羽根を備え、下からかくはんするスタイルを採用。羽根を取り付ける軸は回転させるため内なべを貫通していますが、その部分から空気が漏れないように設計されています。
ふたの内側は、一般的な電気圧力鍋のような構造
内なべ底の中央に羽根を装備。鍋底をさらうように羽根が回転するので煮詰めるような加熱でも焦げ付きにくく、鍋肌の突起で具材をひっくり返しながらムラなくかき混ぜられるのが特徴です
圧力機能とかき混ぜ機能を搭載した自動調理鍋というだけで珍しいですが、「オートクッカー」は最高圧力約2気圧(200kPa/100kPaゲージ圧)という業界最高クラスの圧力で調理できます。普通の電気圧力鍋の場合、最高圧力70kPaゲージ圧くらいが一般的。一般的に圧力調理は圧力が高いほうが短時間で食材をやわらかくできると言われているので、かなり期待できそう。当然ながら、高圧力で調理し続けるのではなく、メニューや行程に合わせて圧力は調整されます。
さっそく、圧力調理を試してみましょう。圧力の高いほうがやわらかく仕上がるのかが気になるので、最高圧力70kPaゲージ圧の電気圧力鍋を用意し、同じメニューを作ります。選んだメニューは「いわしのしょうが煮」。骨までまるごと食べられるほどやわらかくするには、高圧での調理が必須です。
「オートクッカー」と、最高圧力70kPaゲージ圧のティファール「クックフォーミー ホワイト 3L CY8741JP」でいわしのしょうが煮を作り、仕上がりを比較します
「オートクッカー」でいわしのしょうが煮を作るときには、頭と内臓を取ったいわしとしょうが、調味液を内なべに入れ、中央に切り込みを入れたキッチンペーパーを落としぶたとしてかぶせます。自動メニューから「いわしのしょうが煮」を選択し、分量を選んで調理スタート。なお、ティファールのほうの手順は割愛します
できあがりを見ても、すでに違いを感じます。「オートクッカー」で作ったいわしのしょうが煮のほうが明らかに味が染みてそうですし、やわらかそう
お箸で身を割ってみると、白身だけでなく、背骨まで調味料の染み具合に差が! 食べてみたところ、「オートクッカー」で調理したいわしは骨までやわらかく、味がよく染みているのに身はふっくらとしていました。「クックフォーミー」のほうは、身はやわらかいのですが、骨は硬くて食べにくかったです
一般的な電気圧力鍋での圧力調理は加圧だけですが、「オートクッカー」は圧力調理時にかき混ぜ機能も作動するのが特徴。かき混ぜ機能をプラスすることで、調味液などの染み込みムラが低減されるといいます。また、コンロで煮詰める際、鍋を火に掛けておくだけよりも、おたまなどでかき混ぜながらのほうが早く水分が飛ぶのと同じように、「オートクッカー」もかき混ぜ機能を使うことで余分な水分が飛び、仕上がりがよくなるそう。もちろん、すべての圧力調理の自動メニューでかき混ぜが実行されるのではなく、必要なメニューのみ「圧力×かき混ぜ」で調理されます。
ということで、かき混ぜ機能の有無でどれほど仕上がりが異なるのか、豚の角煮を作って確かめてみましょう。
自動メニューの「角煮」で調理します。ディスプレイの右上に表示されるアイコンでどのような調理が行われるか確認可能。左側のアイコンが「圧力調理」、右側のアイコンが「かき混ぜ」です
本来は羽根を装着した状態で調理するメニューですが、かき混ぜ機能をオフにするため、羽根を付けた状態と取り外した状態で調理しました
圧力のかけ方や温度を同一条件にするため、羽根を取り外したほうも自動メニューの「角煮」で調理。プログラムとしてはかき混ぜが実行されますが、羽根がないので普通に圧力調理したのと同じ状態になるというわけです
写真ではわかりにくいのですが、「かき混ぜ」ありのほうが見た目の色がわずかに濃く、調味液が中までより染み込んでいるように感じました。普通、味をよく染み込ませ、表面の飴色を濃くするためには加熱時間を延ばしますが、かき混ぜる機能を使えば、同じ加熱時間でしっかり味が染み込むのはありがたい!
味をより染み込ませるために長時間煮込む必要がないので、加熱し過ぎでお肉が硬くなることはありません。箸で簡単に割れ、身はほろほろとやわらかです
なお、手動で圧力調理をする際も、素材や調理に合わせて圧力とかき混ぜ機能を設定可能。圧力は「低圧(20kPa/約105度)」「中圧(70kPa/約115度)」「高圧(100kPa/約120度)」の3段階、混ぜる頻度は「混ぜる」「たまに混ぜる」「混ぜない」の3パターンから選べます。
硬い物や火が通りにくいもの、すじ肉や魚の骨までやわらかく煮たいときは「高圧」、火の通りやすい物、形を崩さず煮たいときは「中圧」、煮崩れしやすい物や歯ごたえを残して煮たいときは「低圧」と、素材と調理の目的で圧力を設定。混ぜる頻度は、調味液が濃く少ない料理は「混ぜる」、やわらかい材料や水分の多い料理は「たまに混ぜる」、くずれやすい材料やたっぷりの煮汁で煮る料理は「混ぜない」というように、料理に合わせて選びましょう
電気圧力鍋で圧力調理をする際には、基本的に、本体内の圧力を下げる減圧が終了するまでふたを開けられません。「圧力表示ピン」と呼ばれるピンが付いているので、そのピンが下がった状態になるまで待ってふたを開けるのが一般的ですが、「オートクッカー」には圧力表示ピンはなく、ディスプレイの表示で状態をチェックします。
一般的な電気圧力鍋にはピンがあり、ピンが上がっているときは圧力が高い状態。安全にふたを開けられる状態まで圧力が下がるとピンが下がります
「オートクッカー」にはピンが付いていないので、ちょっと離れたところからはふたを開けられる状態になったかは確認できません
ディスプレイに調理の進行状況が表示されるので、ここでチェックしましょう。写真右の「減圧中」のときはまだ圧力が高い状態なので、ふたは開けられません
なお、電気圧力鍋の中には、手動で強制的に本体内の空気を排出して減圧させる機能を備えたモデルもあります。「オートクッカー」の場合、自動メニューでは強制減圧はできませんが、手動調理では可能。ただし、「手動排気」で減圧時間を短くすると少し硬い仕上がりになったり、粘りけやとろみのある物は吹きこぼれたりする可能性があるので、自然に圧力が下がるのを待つほうが出来栄えもよく、安全に調理できるので、あまり多用しないようにしましょう。
手動調理の圧力調理では、「減圧中」表示の画面でOKを長押しすると、調整弁を開いて排気をうながし、減圧時間を短くする操作に進めます
前回紹介したかき混ぜ機能を使った炒め物や上述の圧力調理のほか、「煮込み調理」「無水調理」「低温調理」「蒸し調理」「圧力蒸し」「煮詰め」などの調理に対応しています。今回は、その中から気になるものをいくつかを試してみました。
水を使わずに食材に含まれた水分を使って調理する無水調理は、素材の旨みたっぷりの料理が作れます。調理法は知っているものの作ったことはないので、やってみたい! 無水調理でよく耳にする「無水カレー」を作ってみましょう。
羽根を装着した内なべに、薄切りにした玉ねぎとトマトの水煮(カットトマト缶)、鶏もも肉、調味料をセット。水は一滴も入れていません
トマト缶は水分量が多いので、約40分後にできあがったカレーは、ちゃんと水分のあるカレー!
食べてみると、トマトや玉ねぎなどの旨みをたっぷり感じる味わい。約40分加熱しましたが、鶏肉もやわらかです。手軽に作れますし、ひんぱんに食べたくなるおいしさ
付属の蒸し板を使って「ふかしいも」を作ったり、肉まんなどを温め直したりすることもできます。蒸しものといえば……、茶碗蒸し! 初めて作りますが、上手にできるのでしょうか。
羽根は不要なので取り外し、内なべに蒸し板をセットして水を投入。具材と出汁を入れた器を置き、自動メニューの「茶碗蒸し」で調理します。なお、「茶碗蒸し」はプリインストールされていないので、スマホアプリ「KitchenPocket」から「オートクッカー」本体に送信しました
人生初、自分で作った茶碗蒸し。すが入っていない、見た目も上出来な茶碗蒸しです。ツルンと滑らかな口当たりと喉ごしで大満足
そして、もうひとつ、蒸し板を使って作る料理で気になるものを見つけました。鶏むね肉を加熱して作る「サラダチキン」です。コンビニやスーパーでよく買うのですが、結構高いので、家で作れたらコストが抑えられそう。
塩と砂糖をすり込み、30分ほど寝かせた鶏むね肉2枚を蒸し板に載せ、水(1,800mL)を入れます。蒸し板を使うので蒸すと思っていたのですが、鶏むね肉は完全に水の中にある状態。蒸すのではなく、低温で茹でるようです(低温調理ってやつですね)。電気圧力鍋や電気調理鍋では一般的な方法ですが、ジッパー付き保存袋に入れて作ることが多いので、食材をそのまま水に入れて作るのは初めて!
自動メニューの「サラダチキン」を選択して調理します
約1時間25分後に調理終了。できあがりブザーが鳴ったらふたを開け、内なべを取り出して、鶏むね肉を水の中に入れたまま30分放置し、粗熱を取ります
粗熱を取った鶏むね肉に包丁を入れると、しっとりとしており、この段階で成功を確信。食べると予想どおり、ぱさついた部分はなく、プリっと弾力もあり、食感も味もパーフェクトです。ジッパー付き保存袋に入れなかったので旨みが流出してしまわないか心配していましたが、それに関しては問題なさそう。コンビニで買うよりも安上がりなので、これはいい!
電気圧力鍋や電気調理鍋ではできることなので珍しくはありませんが、「オートクッカー」でもごはんを炊けます。白米の炊飯は、圧力をかけて炊く「お急ぎごはん」と圧力をかけないで炊く「ごはん」が用意されているので、好みに合わせて炊き分け可能。玄米も自動メニューの「玄米」で炊けます。
準備は一般的な炊飯器と同じ。内なべに洗米した米と水を入れ、自動メニューの「ごはん」で炊きます。浸水工程も炊飯プログラムに組み込まれているので、事前に米を水に浸しておく必要はありません
弾力があり、粒立ちを感じるちょうどいい炊き上がり。保温はできませんが、冷凍保存してしまえばいいので、炊飯器としても使えそう
圧力調理では高い圧力をかけたほうが食材はやわらかく仕上がるので、今回検証したいわしのしょうが煮のやわらかさの差は予想どおりでしたが、ただ、やわらかいだけでなく、煮崩れすることなくきれいな仕上がりだったのが好印象でした。さらに、かき混ぜ機能の有無で仕上がりに違いが出るかテストした豚の角煮では、味の染み込み具合に差が出てびっくり。高圧力で調理する分、加圧と減圧に時間がかかるため、今回比較した最高圧力70kPa ゲージ圧の電気圧力鍋と比べるとトータルの調理時間は15分ほど長くかかりましたが、つきっきりでいなくていいので、この程度の時間の差なら気になりません。圧力調理はある程度時間をかけて作るので、同じくらい時間を使うなら、より味が染み込んでいたほうが絶対にいい。普通の電気圧力鍋にも「オートクッカー」と同じ最高圧力100kPaゲージ圧の製品もありますが、圧力調理中に自動でかき混ぜてくれるのは「オートクッカー」のみ。「かき混ぜ機能×圧力」の効果は魅力的だと思います。
また、前回のレビューで紹介したように、「オートクッカー」はチャーハンのように高火力で炒める調理や、あめ色玉ねぎのようにじっくりかき混ぜながら炒める調理も“おまかせ”できます。一般的な電気圧力鍋でも低温調理や無水調理などいろいろな調理ができますが、そうし多彩な調理に加えて、かき混ぜ機能を使った調理もできるのは唯一無二。価格は約77,000円と安くはありませんが(2023年8月24日時点の価格.com最安価格)、電気圧力鍋と自動調理鍋のどちらの機能も使えると考えると一考の価値はあるのではないでしょうか。
編集プロダクション「雪か企画」に所属し、日々、さまざまな記事作りに奮闘中。休日はゲームやギター、料理、サウナなどを楽しんでいます。