長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第20回は、新米の収穫時期を目前に控え、動きが活発化し始める炊飯器の最新トレンドについて解説する。
暑い夏もようやく終わりが見えてきた。となると、すぐに秋がやってくる。秋と言えば、食欲の秋。なかでも、収穫したばかりの新米を心待ちにしている人も少なくないだろう。そんな新米を美味しくいただくために欠かせないのが、「炊飯器」だ。
【図1】価格.com「炊飯器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)
炊飯器の需要の盛り上がりは、やはり新米の収穫時期と密接に関係している。図1は、価格.com「炊飯器」カテゴリーの過去2年間における閲覧者数推移を示したものだが、いずれの年も、11月くらいから急激なピークが訪れ、年末年始くらいまで需要が続く形となっている。つまり、新米が市場に出回り始める11月くらいに合わせて、炊飯器を新調する人が多いということだ。
このように、炊飯器自体の需要のピークは11月以降になるが、少しでもオトクに炊飯器を買いたいなら、実は今がまさにそのタイミングだ。というのも、炊飯器の新モデルは、多くの場合、6〜9月の間に発売される。つまり、この記事が公開される今がそのタイミングなのである。新モデルが発売されることで、それまで販売されていた製品は型落ちモデルとなり、価格が下がりやすくなる。このタイミングを狙うのが、少しでもオトクに炊飯器を買う賢い方法と言えるのだ。
【図2】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける人気5製品の最安価格推移(過去1年)
図2は、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける人気5製品の最安価格推移を示したもの。いずれのモデルも2022年の6〜9月に発売されており、徐々に価格が下がっていく様子が見て取れる。なお、モデルにもよるが、年末くらいまでには最安価格がかなり下がっており、それ以降になるとそれほど大きく下がっていない。なので、最新モデルを狙うのであれば、年末年始くらいのタイミングまで待って購入するのもアリだろう。
【図3】象印「炎舞炊き NW-FA10」と「炎舞炊き NW-FB10」の最安価格推移
【図4】タイガー「炊きたて JPV-A100」と「炊きたて JPV-G100」の最安価格推移
ただし、少しでもオトクに炊飯器を購入したいなら、今がチャンスだ。この時期、発売されたばかりの最新モデルはまだ販売価格が高めで、1年前の型落ちモデルと比べると、高級モデルの場合1万〜2万円(図3参照)、中級モデルの場合でも1万〜1.5万円(図4参照)程度の価格差が生じていることが多い。しかも、新モデルがすでに6月くらいに発売されているような場合には、型落ちモデルの流通在庫も減ってきていることが予想され、最安価格がじわじわと上がってきている例も散見される。上に例としてあげた、象印「炎舞炊き NW-FA10」(2022年6月発売)の場合、底値だったのは5〜6月の約7万円だが、8月下旬の今では7.4万円程度に上がってしまってる。タイガー「炊きたて JPV-A100」のほうは最新モデル「炊きたて JPV-G100」が8月1日に発売されたばかりなので、最安価格も約2.4万円の底値を付けているが、平均価格のほうはじわりと上がっているので、こちらも価格が上がるのは時間の問題だろう。
いずれの場合も、最新モデルで大きな技術進化がないようであれば、1年前の型落ちモデルを購入しても、炊き上がりのお米の味には大差ない。その分、1万円以上は安く購入できるメリットを考えれば、新米シーズンが訪れる直前の今こそ、まさに炊飯器は買い時と言えるのだ。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年8月22日 時点のものです。
価格.com最安価格:74,000円
発売日:2022年6月21日
ユーザー評価:★4.80(36人)
象印が展開する高級炊飯器「炎舞炊き」の2022年モデル。「価格.comプロダクトアワード 2022」で金賞を受賞しており、ユーザーからの評価も非常に高い。2023年6月に発売された最新モデル「炎舞炊き NW-FB10」は、蒸気センサーの精度が向上したことで火力アップにつながり、お米の甘みもアップしているが、基本機能もかなり近く、現状1.5万円くらい安い型落ちモデルはかなりオトクと言える。
本機の特徴は、お釜底面に立体的に配置された6つのIHヒーターを使って、お釜内部に激しい対流を起こす「3DローテーションIH構造」。内釜には、蓄熱性と発熱効率が高い「鉄(くろがね仕込み)豪炎かまど釜」を採用し、大火力で得られた熱をしっかり閉じ込め、効率よくお米に伝えることで、ふっくら美味しいご飯が炊き上がる。炊き上がりの感想をアンケートで応えていくだけで、自分好みの炊き上がりに近づける「わが家炊き」メニューも好評だ。
価格.com最安価格:70,700円
発売日:2022年7月21日
ユーザー評価:★4.73(22人)
タイガーが展開する高級炊飯器「ご泡火炊き」の2022年モデル。最新モデルは2023年6月に発売された「土鍋ご泡火炊き JPL-H100-KG」で、こちらも7.8万円くらいから購入可能となっている。
タイガー魔法瓶の創設100周年を記念して作られたシリーズだけあり、同社の炊飯器づくりの技術がすべて注がれていると言っても過言ではない本機。製品名にもあるように、本格的な土鍋釜を内釜に使用し、これに同社が得意とする圧力制御をかけ合わせた「連続ノンストップ加熱」によって、最高温度約280度でごはんの甘みをより深く引き出す。まさしく、かまどで炊いたような炊き上がりが実現可能だ。少量炊きや麦めしメニューなど、タイガーならではの炊飯機能も多数搭載する。
価格.com最安価格:37,795円
発売日:2022年8月1日発売
ユーザー評価:★4.46(6人)
パナソニックが発売する高級炊飯器の2022年モデル。最新モデル「おどり炊き SR-W10A」は2023年9月発売予定で、最安価格でも7.2万円ほど。釜のコーティングに遠赤効果を高めた「遠赤ダイヤモンドハートコート」を採用しているが、基本機能の部分では大きな違いがないことを考えると、現状で半額程度で買える本モデルはかなりお買い得だ。
本機の特徴は、パナソニック独自の細かな温度制御と加減圧制御を組み合わせた「おどり炊き」機能。大火力と可変圧力よって、釜内部の米を踊らせるようにかくはんさせることから、このシリーズ名が付いている。さらに、熱伝導性と保温性にすぐれた「ダイヤモンド竈釜」を採用し、前面が発熱する6段IHとの組み合わせで、大火力を素早く米のひと粒ひと粒に伝えることが可能だ。
価格.com最安価格:24,726円
発売日:2022年8月21日
ユーザー評価:★4.43(50人)
タイガーのラインアップでは、ミドルクラスに当たる普及価格帯モデル。「価格.comプロダクトアワード 2022」では銀賞を受賞しており、ユーザー評価も高い。2023年8月に発売された最新モデル「炊きたて JPV-G100」は、土鍋粉末のコーティング量を増量させて遠赤効果を高め、甘くふっくらとしたごはんを炊き上げるが、基本機能はほぼ違いがないので、現状2万円くらい安い本モデルはお買い得だ。
本機は、ミドルクラス機でありながらも、本格的な土鍋蓄熱コート釜を採用しているのが特徴。同社が得意とする圧力調整機能により、炊き上げ時には約1.25気圧の圧力をかけ、釜の内部を高温にすることで、ごはんの粘り・甘みを引き出す。そのため、高級炊飯器にも劣らない炊き上がりと評する声も多い。ボディもコンパクトで構造もシンプルなので、お手入れしやすいのもメリットだ。
価格.com最安価格:16,700円
2022年9月上旬発売
ユーザー評価:★4.59(23人)
象印「極め炊き」シリーズは、炊飯機能と価格のバランスが非常にすぐれていることで、価格.com上でも長い間人気を維持し続けているシリーズだ。その中でも、現時点で最も人気が高いのが本モデル。上位モデルにある圧力機能は搭載しないが、強火で炊き続け、うまみを引き出す「豪熱沸とうIH」を搭載。ユーザーレビューでも、十分に美味しいご飯が炊けるとする声が多い。30時間美味しく保温できる「うるつや保温」機能も搭載。2万円以下で購入できる炊飯器としては注目の1台だ。
価格.com最安価格:25,746円
発売日:2019年2月1日
ユーザー評価:★4.36(78人)
2019年発売と、発売時期はやや古いものの、今でも高い人気を維持している象印の炊飯器。機能的にはベーシックなマイコン方式だが、デザイン性にすぐれたシンプルでコンパクトなボディが人気の秘密。小さな子どもがいる家庭に便利な「ベビーごはん」炊飯モードなども備わっており、子育て世代からの支持が特に高い。シンプルでコンパクトな炊飯器が欲しい人に注目の製品だ。
価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。