ゴルフの楽しさ伝道師・小倉です。ゴルフを始めるうえでの高いハードルのひとつが、そろえるものが多いこと。特にクラブに関しては、やれウッドだのアイアンだのパターだの……何をどれだけそろえればいいのよ!? いくらかかんのよ!? なんて思っている方も多いことでしょう。
ですがご安心ください! クラブメーカーさんもゴルフというスポーツを多くの人に楽しんでもらいたくて、初心者にも使いやすい魅力的な商品をちゃんと用意しています。それがスターターキット的な役割を果たす「クラブセット」です。今回は、ゴルフギアブランドとして人気の高いキャロウェイの「X HOT パッケージセット」という製品を例に、クラブセットというものはどんなものなのかをご説明していきましょう。
これがクラブセット一式です。スターターキット的な役割とはいえ、内容は充実しています
クラブセットをひと言で言えば、「必要なクラブとそれを入れるバッグ(キャディバッグ)がセットになった商品」です。ゴルフでは、アイアン(後述)を除くほとんどのクラブを単品で買うのに対して、クラブセットにはそれら必要なクラブがほとんど入っています。ですので、クラブをそろえる手間も省けるのがメリットのひとつです。
クラブセットは、だいたい10本程度のゴルフクラブとそれを入れるバッグがセットになっています。各社から発売されていますが、安いもので4万円台、高いものだと10万円を超えるものもあります。しかし、単品クラブが1本で6万〜8万円、もしくはそれ以上の値段がすることを考えると(ドライバーの場合)、クラブセットは価格面で非常にお得であると言えます。
クラブを入れるバッグを「キャディバッグ」と呼びます。クラブを入れた状態で垂直に立つタイプと、バッグを倒すと足が出てきて斜めに自立するタイプの2種類があります。このバッグは垂直に立つタイプですね
この「X HOT パッケージセット」には11本のクラブがセットになっています。ゴルフのルールでは14本まで使用することが許されていますが、初心者の頃は、クラブが多いとかえって迷ってしまうので、最初は11本で十分です。
ゴルフではルールでクラブの本数を「14本」まで使えることになっています。ゴルフは狙った距離を打ってボールを穴(カップ、もしくはホールと呼ばれる。以下カップと呼ぶ)に入れるゲームなので、14本のクラブはすべて飛距離が異なっています。なかにはクラブの種類は違えど、打てる距離が同じようなクラブも存在します。どちらにするかはゴルファーが自分のスイングや好みで選択するのです。
一般的に使われるクラブとその目安の飛距離をまとめてみました。ゴルファーの体力やスイングによってこの飛距離は変わりますが、これは成人男性の平均的な体力でクラブを振ったくらいのスピード(クラブを振るスピードのことをヘッドスピードと呼び、HSと略称します)、毎秒42メートルくらいで打ったときのおおよその目安です。クラブについての記載内容は以下のとおりです。
カテゴリー:カテゴリー名/略称
特徴
カテゴリーに属するクラブ一覧:目安飛距離
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カテゴリー:ウッド/「W」
特徴:平たく大きなヘッドを持ち、飛距離を出しやすい
・ドライバー(1W) 240ヤード
・3W 220ヤード
・4W 210ヤード
・5W 200ヤード
・7W 190ヤード
・9W 180ヤード
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カテゴリー:ユーティリティー/「UないしUT」
特徴:上記ウッドと下記アイアンをかけ合わせたようなクラブ。そのため「ハイブリッド」とも呼ばれる
・2UT 200ヤード
・3UT 190ヤード
・4UT 180ヤード
・5UT 170ヤード
・6UT 160ヤード
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カテゴリー:アイアン/「I」
特徴:平たいヘッドを持ち、飛距離よりコントロール性能を重視
・2I 195ヤード
・3I 185ヤード
・4I 175ヤード
・5I 165ヤード
・6I 155ヤード
・7I 145ヤード
・8I 135ヤード
・9I 125ヤード
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カテゴリー:ウェッジ/「W」
特徴:短い距離を正確に打てるクラブ
・PW 110ヤード
・AW 90ヤード
・SW 60ヤード
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カテゴリー:パター −/「PないしPT」
特徴:ボールを転がしてカップに入れるためのクラブ
・PT −
※ヤードはゴルフで使われる長さの単位で、1ヤードは約0.9メートル
ゴルフクラブには大きく分けて5つのカテゴリーがあります。「ウッド」「ユーティリティー」「アイアン」「ウェッジ」「パター」です。それぞれ略称は「W」「UないしUT」「I」「W」「PないしPT」と表記されます。アルファベットの前の数字は「番手」と呼ばれ、数字が小さくなるほど飛距離が出ます。ウッドでいえば、3Wと5Wでは3Wのほうが遠くに飛ばせるのです。なお、ウェッジは「PW」「AW」「SW」など独特の表記をします。
上記のように数多くあるクラブの中から、「クラブセット」の中身は初心者の役に立つ十数本が選ばれています。クラブには初心者には使いにくい番手もありますが、そういうものはクラブセットには入っていないのでご安心くださいね。
<クラブ紹介-1:ドライバー>
「X HOT パッケージセット」に入っているクラブを紹介します。これは「ドライバー」と呼ばれるクラブです
まずは、一番飛距離の出るクラブからご説明しましょう。「ドライバー」です。ゴルフをやらなくてもなんとなく耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか? スープなどをすくうオタマのような形状にボールを打つフェースと呼ばれる面が付いており、「DR」「DW」「1W」などの略称でも呼ばれます。コースでは主にティーイングエリアという整地されたエリアから、地面に刺したティーという台座に乗せたボールを、地面から少し浮かせた状態で打つために使用するクラブです。
主に各ホールの1打目で使用しますが、必ずしもドライバーを使わなければならないわけではありません。逆に、ドライバーでは飛びすぎてしまう距離のホールもあります。
ピンク色のグッズがティー。これにボールを乗せて浮かせ、ドライバーで打ちます
ちなみに表記の「W」はWoodつまり「木」という意味です。昔は今のような金属ではなく、硬い柿の木などを削ってクラブを作っていました。その名残で今でも「ウッド」と呼ばれます。
ドライバーを構えたときの見た目です
ドライバーは、フルスイングするクラブの中では一番長く、ヘッド(シャフトの先に付いている、ボールを打つ部分)は大きく作られています。クラブはフェース(ボールが当たる部分)の真ん中あたりにある重心の中心、つまり“芯”で打つと飛距離が出やすいように設計されています。しかし、クラブが長くなればなるほどクラブのスピードが上がってコントロールしにくくなり、芯で打つのが難しくなっていきます。だから少々芯を外しても飛距離が出るようにヘッドを大きく作っているのです。
<クラブ紹介-2:フェアウェイウッド>
「X HOT パッケージセット」に入っている2本のウッドのうちの1本、5Wです
ドライバーと同じカテゴリー「ウッド」に属するクラブです。ドライバーとの違いは、芝から打つことを前提に設計されていること。芝の抵抗を減らすため、形状はドライバーとそっくりですが、よりヘッドが小さくボールも上がりやすい工夫がなされています。
ドライバー(1W)以外のウッドには、「FW(フェアウェイウッドの略)」という別の呼称があります。ゴルフコースで芝が短く刈られた場所をフェアウェイと呼び、そこから打つウッドなので、フェアウェイウッドと呼ばれています。
上記の表のようにFWにはいくつかの番手があり、ヘッドに書いてある数字が大きくなるにつれクラブが短くなり、ボールが上がりやすく飛距離が出なくなるように作られています。「ドライバーより飛距離は出ないが地面からでも球が上がりやすく、比較的飛ぶクラブ」といったポジションです。2打目以降に使い、目的であるカップまでボールをできるだけ近付けるためのクラブです。
「X HOT パッケージセット」には5Wが入っています。3Wは初心者が使いこなすには難しいので、まずはこの5Wで練習するといいでしょう。
<クラブ紹介-3:アイアン>
鉄やステンレスで作られたクラブが「アイアン」です
これはアイアンと呼ばれるクラブです。ウッドと違い、オタマのような奥行きがありません。なぜならウッドとアイアンでは役割が異なるからです。ウッド類は、飛距離を出したいクラブなのでボールの高さを出したり、多少ミスをしても曲がりにくくしたりするためにあのような形をしていますが、アイアンはそれほど飛距離を必要としません。むしろ飛距離よりも、狙った距離と方向を"正確に打てるように"設計されています。言い換えれば、アイアンはできるだけ遠くに飛ばすことを目的としたクラブではありません。きちんと飛距離を打ち分けることがいいスコアを出すポイントになるため、アイアンはクラブセットの半分近くの本数を占めています。
アイアンは、より細かい距離の打ち分けを同じ力加減のスイングでできるように本数が多く用意されています。そのほうが、1本のクラブでさまざまな距離を打ち分けるよりも簡単だからです
ウッド同様ヘッドには数字が表記されており、数字が大きいほどボールが上がりやすく距離が出ないように設計されています。近年の一般的なアイアンは#5(5番)からセットになっていて、この「X HOT パッケージセット」も#5(5番)から入っています。まったく不足はないでしょう。
アイアンは複数本のセットになっており、この「X HOT パッケージセット」も5番から9番まで、5本のアイアンが入っています。
アイアンはゴルフの目的であるカップに近付けるためのクラブです。複数本のアイアンを使い分けて、カップまでの距離を打ち分けるのです。
<クラブ紹介-4:ウェッジ>
アイアンとは異なり、アルファベットが書かれているのが「ウェッジ」です
アイアンとほぼ同じ形状ですが、少し用途が違うのがウェッジです。「ウェッジ」とは「くさび」のことで、形状が似ていることからそう呼ばれています。目標を正確に狙うように設計されているのはアイアンと同じですが、より短い距離からの打ちやすさを追求し、ボールの状況が悪くても(芝が薄かったり、逆に芝が伸びていたりする場所などからでも)打ちやすくなっています。カップのあるグリーン(芝が非常に短く刈られた場所)の周囲から、ボールをカップに寄せるのが主な用途です。
ヘッドには数字ではなく「P」や「S」などのアルファベットが記載されており、「PW」(ピッチングウェッジ)、「SW」(サンドウェッジ)と表記します。「PW」のピッチングとはピッチショット(ボールを高く打ち出し、転がりを抑えてグリーンを狙うショット)に適したクラブとしてこういった名前が付いています。「SW」のサンドは文字どおり砂のある場所、バンカーからの脱出等に適した設計がなされています。
X HOT パッケージセットにはP、A、Sの3本のウェッジが入っています。P、A、Sの順にボールが上がりやすく、飛距離が出ないように設計されていて、AはAW(アプローチウェッジ)の略称。Pよりさらにボールを上げてグリーン上で転がりを抑えたいときに使用します。Sはバンカーから脱出するのに最も適したクラブですが、長い芝にボールが入り込んでしまったときなどにも効果を発揮するウェッジです。
<クラブ紹介-5:パター>
今までのクラブと構造がまったく異なるクラブが「パター」です
パターは、目標であるカップの周りのグリーンやその付近で主に使うクラブです。ボールを空中に飛ばすほかのクラブと違い、ボールを正確に転がすことを目的に設計されています。ボールをカップインさせるには、距離と方向のどちらがズレてもいけないので、いい結果を出すにはとても重要なクラブです。
打ち出す方向に対して正確に構えやすくするためにヘッド形状や白線など入れるなど工夫がされています
<シャフトについて>
棒状の部分が「シャフト」です
ゴルフクラブの棒状の部分を「シャフト」と呼びます。ゴルファーがクラブを持ってスイングするとシャフトがしなり、しなったシャフトが戻ることによってクラブヘッドに勢いが付くのです。シャフトが長いほどクラブのヘッドには強い遠心力がかかって加速し、ボールを遠くに飛ばせるエネルギーが生まれます。
同じクラブでも、素材と硬さによって異なるシャフトがいくつか用意されていることがほとんどで、ゴルフクラブを買う際にはシャフトのチェックが重要になります。それはクラブセットも同様です。
シャフトの素材は大きく2つで、カーボンとスチール(鉄)があります。カーボンは軽く作りやすく、しなるポイントを細かく設計できるのが特徴です。スチールシャフトは重く作りやすくしっかりした振り心地になりやすいのが特徴で、主にアイアンやウェッジ、パターに採用されています。
シャフトにはフレックス(硬さ)の表記があります
カーボン、スチールともシャフトにはフレックスという“しなり量”を示す基準があります。一般的な男性モデルだとおおむね4段階に分かれています。
「R」(レギュラー−標準の硬さ)
「SR」(SとRの間)
「S」(スティッフ−硬い)
「X」(エクストラスティッフ−非常に硬い)
シャフトが硬いということは、しなる量が少ないということです。逆にやわらかいシャフトは硬いシャフトよりも大きくしなります。一般的に、硬いシャフトはクラブを速く振れる体力のある人に、やわらかいシャフトはそれほど力のない人や、ゆったりとしたスイングの人に向いています。
ここで紹介している「X HOT パッケージセット」にはシャフトが「S」のセットと「R」のセット、2種類が用意されます。SはRよりしっかりした(しなりにくい)特性で、アイアンにはスチールシャフトが装着されています。対してRはしなる量がSに比べて大きく、アイアンには軽いカーボンシャフトが付いています。 20~30代の一般的な男性であれば体力もあるので、しっかりした振り心地の「S」でちょうどよいでしょう。逆に体力にそれほど自信がないとか、一般的な女性の場合は「R」でいいと思います。
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テーラーメイド「ロケットボールズ スピードライト Sセット」
アスリートに人気のテーラーメイドブランドのクラブセット。やさしさを追求しつつ、同ブランドらしいスポーティーなデザインが魅力です。クラブ本数は10本(1W・5W・UT・6I・7I・8I・9I・PW・SW・PT)で、キャディバッグとのセットになっています。
シャフトは、ウッドとUTはSフレックスのみとなっており、アイアンにはユニフレックスのスチールが装着されています。リーズナブルな価格で憧れのブランドを最初から手にすることができるセットです。
ブリヂストン「ツアーステージ V002 11本セット WR」
日本の老舗ゴルフギアメーカーであるブリヂストンスポーツのクラブセット。やや軽量に仕上げてあり、パワーに自信のない方にお勧めです。クラブ本数は11本(1W・5W・UT・6I・7I・8I・9I・PW・PS(AW)・SW・PT)で、キャディバックとのセットとなっています。
シャフトフレックスはSとRが用意され、Sは1WからUTまでがカーボンシャフトで、アイアン、ウェッジ、パターがスチールシャフトを装着。Rはパターを除くクラブのシャフトがカーボンシャフトを採用しています。
クリーブランド「PACKAGE SET」
クラブ全体を現代の平均的長さよりも短く設定し、飛距離よりもボールを芯で打つことを重視したモデルです。クラブの本数は11本(1W・3W・4UT・5I・6I・7I・8I・9I・PW・SW・PT)で、キャディバッグとのセットになっています。
こちらのモデルもSとRのフレックスが用意され、Sはアイアンのシャフトがカーボン、Rはパターを除くクラブにカーボンシャフトが装着されています。このままコースに行って十分使える実戦的なセットだと言えます。
ミズノ「メンズゴルフクラブ10本セット/RV-7(キャディバッグ付/カーボンシャフト) 」
やさしさと振りやすさを追求したミズノのクラブセットです。クラブ本数は10本(1W・5W・UT・6I・7I・8I・9I・PW・SW・PT)でキャディバッグとのセットになっています。
シャフトフレックスはSとRがあり、Sのセットはアイアンシャフトがスチールに。またキャディバッグはブラックとネイビーが選べます。Rのセットはすべてのシャフトがカーボンで、バッグはブラックのみとなっています。
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今回ご紹介したクラブセットは練習場からコースまで、すべてのゴルフシーンで使うことができます。ですがあくまで“入門用”ですので、あなたのスキルが上がると物足りなくなってくるでしょう。“外に出るための道具”と割り切っておいたほうがいいかもしれませんね。
本格的にゴルフを続けるのであれば「まずはドライバーから買い替える」など、単品クラブをそろえていくことになると思います。クラブを中心とした用具にこだわるのもゴルフの楽しみのひとつです。これも非常に楽しい世界ですよ!
撮影協力:ユニオンゴルフクラブ
http://union-golfclub.com/
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。