初心者にも扱いやすいことから、人気の高いクロスバイク。高級モデルを選べば高性能な自転車が手に入れられるが、スポーツタイプの自転車が初めてなら、手ごろな価格で性能がいい1台から始めたほうが後悔しないはず。そこで、クロスバイクデビューに役立つ基本情報を解説するとともに、現時点で最適と思える最新エントリーモデルをお教えしよう。
クロスバイクとは、マウンテンバイクのようなフレームとロードバイクのタイヤを組み合わせた、両者の“いいとこ取り”をしたスポーツタイプの自転車。フラットなハンドルは取り回しにすぐれ、前傾し過ぎない乗車姿勢で乗りやすく、700C(29インチ相当)のタイヤと軽量な車体で軽快な走行感が味わえる。さらに、価格も手ごろ。レース向けモデルを基本に開発し、そのモデルからグレードを変更しつつラインアップを揃えていくロードバイクやマウンテンバイクは、エントリーモデルでも10万円近くするが、クロスバイクはレースを前提とせず街乗り専用として開発されるため、スポーツタイプといえど5万円台でも十分な性能を備えたモデルが手に入る。このような理由から、クロスバイクは初めてのスポーツタイプの自転車として人気が高い。
クロスバイクは直線基調のフラットハンドルを装備し、ロードバイクよりもサドルとハンドルの距離が近いため、ロードバイクほど上半身が前に倒れない姿勢で乗れる。一般的なシティサイクルタイプの自転車から乗り換えた際に違和感が少ないのも、クロスバイクの魅力だ
スポーツタイプの自転車なので、ギアの変速段数は多い。ギアを変えるシフターも、ロードバイクよりも使いやすいものが装備されている
ロードバイクと同じ700Cのタイヤを装備したクロスバイクはスピードが出しやすいだけでなく、速いスピードを維持しやすい。路面からの抵抗が少なく、ペダルを踏んだ分だけグンと加速する感覚が味わえるのも楽しいポイントだ
クロスバイクの相場は5万〜30万円程度で、価格はその他のスポーツタイプの自転車同様、フレームやパーツの品質、グレードによって変わってくる。比較的手ごろなモデルはアルミや鉄(クロモリ)製のフレームが主流だが、高級モデルになるとカーボンフレームも選べるようになり、コンポーネント(変速ギアやブレーキなどのパーツをまとめた総称)も、価格が高くなるほど軽量で操作性や耐久性のすぐれたものになるのが一般的だ。さらに、変速段数も価格にあわせて増す傾向。たとえば、シマノ製のコンポーネントの場合、もっとも安い「ターニー」というグレードではリアの変速は7段だが、最高グレードの「デュラエース」では12段となる。価格はターニーグレードのディレーラー(変速するためのパーツ)が1,700円程度なのに対し、デュラエースは24,000円と10倍以上も高い。もちろん、グレードの高いほうが操作性はスムーズでパーツも軽量だが、レースで速さを競ったり、ロードバイクほど長距離を走ることを主としないクロスバイクは、それほど軽さや変速のしやすさにこだわらなくてもいいだろう。
グレードがそれほど高くないフレームやコンポーネントを装着したモデルでも、車重は10kg程度。一般的なシティサイクルが20kgほどあることを考えると、十分軽い
この特集で推奨している5〜8万円台のクロスバイクのグレードは、コンポーネントはターニーのひとつ上に当たる「アルタス」がメインとなり、リアの変速は8段。フレームやフォークはアルミやクロモリ製となるが、十分軽量なので軽快な乗り心地を妨げることはない。なお、2020年頃からスポーツタイプの自転車は価格が上昇傾向にあり、モデルチェンジしていなくても価格が上がっているモデルもある。この傾向は今後も続くと思われ、かつ、パーツの供給が間に合っていないことから自転車全体が品薄な状況でもあるので、好みのモデルを見つけたら早めに押さえておくほうがいいだろう。
前述のように、クロスバイクとしての性能が保障されるのは5万円以上が目安ではあるが、該当する価格帯でも車種により細かい部分が異なり、乗り心地が違ってくる。たとえば、乗車姿勢。クロスバイクは上体が起きたポジションに設定されていることが多いが、最近は前傾姿勢を少し強めたモデルが増えてきている。上体が起きたほうが乗りやすいが、お尻に体重がかかり長時間乗っているのがつらくなることもあるため、長めの距離の通勤・通学に使うのであれば少し前傾が強いモデルほうがいい。ただ、乗車姿勢はパーツを交換することで後からある程度調整することもできるので、初心者は体型に合ったサイズを選ぶことと、乗りやすさを優先して決めたほうがいいだろう。
車種によって前傾姿勢の度合いは異なる。前傾が強いほうがペダルを漕ぐ際に脚だけでなく全身の力を使えるようになるため、よりラクに長距離を走りやすい。また、同じモデルでも複数のサイズが用意されているので、自分の身長に適したサイズの確認をしておこう
タイヤの太さも走行に大きな影響を与えるので、チェックしておくといい。タイヤが太いと安定感と快適性は向上するもののペダルの踏み心地はやや重くなるため、スピードの出しやすさを重視するなら「700×28C」や「700×30C」などの細めのタイヤ、快適性に重きを置くなら「700×32C」や「700×35C」といった太めのタイヤを選ぼう。また、細いタイヤは内部の空気が少ないので、軽快さを維持するためには1週間に1回程度は空気を補充するほうがいいと言われている。空気入れをこまめに行わねばならないなど、メンテナンス面にも差が出てくるため、後々のことも考慮して最初の1台を決めるのが得策だ。
後から太いタイヤに交換することもできるが、フレームやフォークによっては極端に太いタイヤには交換できないこともあるので注意しよう
そして、ブレーキの種類も選べるようになってきたので確認しておきたいところ。5万円台クラスではリムを挟み込むタイプの「Vブレーキ」が主流だったが、最近は制動力の高い「ディスクブレーキ」を装備するモデルが少しずつ登場しているのだ。ディスクブレーキには、ワイヤーを引っ張ってブレーキをかける「機械式」と油圧でブレーキをかける「油圧式」があり、油圧式のほうがより軽いチカラでブレーキを効かせられ、制動力も低下しにくい。そのため、価格も少し高めとなるが、安心して乗りたいなら油圧式ディスクブレーキ搭載モデルを選ぶといいだろう。
ワイヤーを介してブレーキを引く構造の機械式ディスクブレーキは、外からもワイヤーが見える
なお、変速ギアについては、5万円台のモデルはほとんどがリアは8段で、フロント側はモデルによって3段から1段(変速なし)と違ってくる。フロントの変速は1段でも、かなり急な坂を登るのでなければ苦労しないので、変速ギアの段数は多ければいいというものではない。逆に、フロント側については、ギアがない場合、チェーンが外れる心配が少なくなるといったメリットもある。
変速ギアのスペックにある「3×8」などの表記は、「フロント側×リア側」という意味
ここまで説明してきたことを踏まえ、乗り心地も上々で性能も申し分なく、お買い得な5〜8万円台で購入できるクロスバイクを9モデル厳選してみた。このラインアップの中であれば、好みのデザインやカラー、乗車姿勢で選んでも間違いなし!
リーズナブルな価格の高品質なスポーツタイプの自転車を数多く揃えるGIANT(ジャイアント)製のクロスバイクで、迷わず紹介できるのが「ESCAPE」シリーズ。販売価格71,500円(税込)ながら、アルミフレームの軽量な車体にシマノ・アルタスのコンポーネントを組み合わせ、ペダルを踏んだ瞬間に前に出るような軽快な漕ぎ心地が得られる。実は、ESCAPEシリーズはエントリークラスのクロスバイクのベンチマークとなっているモデルで、コストパフォーマンスの高さはバツグン。2022年からはリアセッションを5mm伸長した新フレームを採用し、より快適な乗り心地となった。乗車姿勢は、ややアップライトとなっている。
●「ESCAPE R3」のスペック
・タイヤサイズ:700×30C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:3×8(シマノ・アルタス)
・重量:10.7kg(サイズS)
・サイズ:370(XXS)、430(XS)、465(S)、500(M)mm
・カラー:レッドオレンジ、ブラックトーン、ホワイト、サンバーストイエロー、ブルー
ジャイアント「エスケープ」シリーズの強力なライバルとなる1台が、イタリアンブランド「GIOS(ジオス)」の「MISTRAL」。変速ギアをはじめ、クランク(ペダルにつながるアーム)やブレーキ、ホイールなど走りに関わるすべてのパーツがシマノ製となっているのがポイントだ。シマノのパーツは、重量は少し重いが耐久性や信頼性にすぐれるため、自転車の肝ともいえる随所に採用されているのは大きな魅力だろう。乗車姿勢はアップライトなので初心者にも乗りやすい。
ジオス「MISTRAL」の販売価格は59,400円(税込)
●「MISTRAL」のスペック
・タイヤサイズ:700×28C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:3×8(シマノ・アルタス)
・重量:10.8kg(サイズ520mm)
・サイズ:400、430、480、520mm
・カラー:ジオスブルー、ブラック、ホワイト、グレー
スピードが出しやすいモデルが欲しいなら、ジャイアントの「CROSTAR」が狙い目。前述の「ESCAPE R3」より若干上位グレードのコンポーネントやホイールを採用し、アルミ製フレームの構造を見直すことで「ESCAPE R3」よりも軽量な、10kgという車重を実現。乗車姿勢もやや前傾を強めた設計で、体重がサドルとハンドルに分散されるため長距離も比較的ラクに走行できる。将来的にロードバイクにステップアップしたいにうってつけのモデルだ。なお、2022年モデルはサドルが快適性の高いソフトタイプとなった。
「CROSTAR」の販売価格は79,200円(税込)
●「CROSTAR」のスペック
・タイヤサイズ:700×30C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:2×8(シマノ・アセラ)
・重量:10kg(サイズS)
・サイズ:430(XS)、465(S)、500(M)mm
・カラー:ブルー・レッド、ブラック、ホワイト
日本人の体型に合う、日本国内の道で乗りやすい設計とされた「SHEPHERD」は、サイズに合わせてタイヤサイズを24インチ、26インチ、700Cと変えることで、身長が低い人から高い人まで最適なバランスの車体を選べるようになっている。乗車姿勢はやや前傾が強めだが、長距離を走るためというよりはお尻にかかる体重を分散させて快適性を高めることが狙い。フロント側の変速も1段(変速なし)で、スポーツタイプの自転車初心者が操作で迷わないように配慮している。なお、水平基調のフレーム形状は、このクラスのライバル車にはない特徴。個性が強く見えるが乗ってみると安心感が高いバランスのよい1台といえる。
「SHEPHERD」の販売価格は69,080円(税込)だが、マットディープブルー、マットミント、マットカーキ、シャンパンゴールドは71,280円(税込)となっている
●「SHEPHERD」のスペック
・タイヤサイズ:24×1.35、26×1.35、700×35C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:1×8(シマノ・アルタス)
・重量:9.9kg(24インチ)
・サイズ:24インチ、26インチ、700C
・カラー:マットネイビー、マットブラック、マットダークブラックオリーブ、マットグレー、マットベージュ、マットディープブルー、マットミント、マットカーキ、シャンパンゴールド
カーボン製に匹敵する性能のアルミ製のフレームを開発し続け、力を入れている「Cannondale(キャノンデール)」が手がけた本製品は、リアタイヤを支える部分をしならせた「SAVEマイクロサスペンション」構造がポイントだ。この構造により、路面からの衝撃が吸収され、硬いといわれるアルミフレームながら快適な乗り心地を実現。クイックなハンドリングに加え、強めの前傾姿勢で全身の力を使って進んでいく感覚が気持ちよく、スポーツタイプの自転車らしさを存分に味わうことができる。販売価格74,800円(税込)ながら、機械式のディスクブレーキを装備しているのも魅力だ。
●「QUICK5」のスペック
・タイヤサイズ:700×35C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:2×7(シマノ・ターニー)
・重量:11.9kg
・サイズ:SM、MD、LG、XL
・カラー:エメラルド、マットブラック
ロードバイクに採用されているものと同じ軽量なアルミパイプを使用し、軽さと剛性の高さを両立した軽快な走りが味わえることから人気の高い「RAIL」シリーズの原点となるモデルで、快適性とコストパフォーマンスが高い。それほどきつくない前傾姿勢で乗れ、長時間乗っても疲れにくいサドルや握りやすい形状のグリップが装備されているので、通勤や通学にも使いやすいだろう。また、「RAIL 700A」にはライトやスタンドが標準装備されているのもポイント。日常使いを目的に最初の1台を選ぶ人にとっては、こうした配慮が選択時の大きなアドバンテージとなるかもしれない。
「RAIL 700A」のメーカー希望小売価格は56,100円(税込)
●「RAIL 700A」のスペック
・タイヤサイズ:700×32C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:3×8(シマノ・アルタス)
・重量:11kg(サイズ480mm)
・サイズ:400、440、480mm
・カラー:マットガンメタル、マットホワイト
走行性能に定評がある「SIRRUS」シリーズのエントリーグレードだが、上位グレードと同じ高品質なアルミフレームを採用しており、ペダルを漕ぐ動きに応じてグイグイ加速する感覚を味わえる。やや前傾のポジションとなるものの体重がハンドルとサドルに分散されるので、ロングライドも快適。少ない力で強力な制動力を発揮し、雨天でも制動力に差が出にくい油圧式のディスクブレーキを装備しているのもメリットだ。
「Sirrus 2.0」の販売価格は88,000円(税込)
●「Sirrus 2.0」のスペック
・タイヤサイズ:700×32C
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:2×8(マイクロシフト)
・重量:非公開
・サイズ:S、M、L、XL
・カラー:グロスホワイトマウンテン、ライムストーン、サテンブラックリフレクティブ
クロスバイクのタイヤの多くに採用されている700Cサイズではなく、近年のマウンテンバイクで主流の27.5インチで1.75(45mmに相当)幅の太いタイヤを装備。かつ、クロモリ製のフロントフォークで振動吸収を重視した「GRAVIER」は荒れた路面での高い安定感が望めるほか、軽めのオフロードも走れてしまう。そんな走破性を備えながら、タイヤの外径は700×28Cと同等なので、一度スピードを乗せてしまえば維持もしやすく、街乗りで不満を感じることはないはずだ。
「GRAVIER」の販売価格は71,500円(税込)
●「GRAVIER」のスペック
・タイヤサイズ:27.5×1.75インチ
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:3×8(シマノ・アルタス)
・重量:11.3kg(サイズS)
・サイズ:430(XS)、465(S)、500(M)、555(L)mm
・カラー:サテンブルー、サテンライト、サテンコズモネイビー
一般的な自転車は駆動力をチェーンで伝えるが、本製品はカーボンベルトを採用。注油の必要がなく、メンテナンスの手間が省けるのがメリットだ。さらに、リアの変速は内装式となっている。ここで紹介している他のクロスバイクは外装式であるため、動いている時にしか変速できないが、内装式は停車中でもギアチェンジが可能。変速段数は5段と少ないがスタート・ストップが多い街乗りでは利便性が高い。700Cサイズよりも外径の小さい27インチタイヤを装着しているので、どちらかというと街乗りをメインターゲットとしたモデルと言えるだろう。
「ORDINA F5B」のメーカー希望小売価格は70,000円(税込)
●「ORDINA F5B」のスペック
・タイヤサイズ:27×1-3/8
・フレーム素材:アルミ
・変速ギア:1×5(シマノ・ネクサス)
・重量:14.5kg(サイズ480mm)
・サイズ:420mm(NX5B42)、480mm(NX5B48)
・カラー:コバルトグリーン、クロツヤケシ、ホワイト、リバーブルー
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