こんにちは、オグさんです。今回はフェアウェイウッド(以下、FW)のお話です。FWとは、芝の上から距離が出しやすいクラブであり、これを使いこなせると距離の長いコースでも怖くなくなります。またFWがうまいとパワーやヘッドスピードの差を埋めることもできるので、ぜひとも使いやすいモデルを手に入れておきたいところです。
パー5の2打目や、距離の長いパー3や狭いホールでのティーショットなど、FWを活用するシチュエーションは多岐にわたります
近年のFWは「飛距離性能」をアピールするモデルが多いのですが、本来は飛ばすだけでいいというものではありません。FWには飛距離以外に「狙う」性能も重要です。今回は、飛び(低スピンやボール初速)、つかまり(フックスピンや打ち出し方向)、球の高さ(打ち出し角)、ミスへの強さ(これは私の感覚で)、方向性(打ち出し方向とサイドスピンの量)の5つの評価軸を設定しました。各メーカーの、2023年5月時点でのカタログ掲載モデル12種の主に3番ウッドを試打し、どんなゴルファーが使いやすいクラブなのかをチェックしてみたいと思います。
■目次■
1:「ステルス2 HD」(テーラーメイド)
2:「ステルス2 プラス」(テーラーメイド)
3:「パラダイム」(キャロウェイ)
4:「パラダイムX」(キャロウェイ)
5:「G430 MAX」(ピン)
6:「G430 SFT」(ピン)
7:「TSR2」(タイトリスト)
8:「TSR3」(タイトリスト)
9:「RS JUST」(プロギア)
10:「LS」(プロギア)
11:「ゼクシオ12」(ダンロップ)
12 :「インプレス ドライブスター」(ヤマハ)
■ヘッドスピード別おすすめモデル■
テーラーメイド「ステルス2 HD フェアウェイウッド」#3
ツアープロや上級者が好む、低スピンで強い弾道が打ちやすいヘッドに、つかまり性能を付与したモデルです。飛距離性能は重視したいけど、ボールをつかまえきれない、右へのミスをできるだけ軽減したいゴルファーに向いています。
ツアープロや上級者が好むといっても、決して難しいモデルではありません。打点ズレによる曲がりを抑える「ツイストフェース」や、フェース下部でヒットしてもボール初速が落ちにくくなる「貫通型スピードポケット」など、テーラーメイドの定評あるテクノロジーを搭載。ミスへの寛容性は高いので、ミート率が低めの人でも難しくて使えないことはないでしょう。スピン量が比較的少ないので、グリーンを狙うクラブとして考えるなら番手は#5がおすすめです。
飛び 4
つかまり 3.5
球の高さ 3.5
ミスへの強さ 3.5
方向性(直進性) 4
日本仕様の純正シャフトは、三菱ケミカル製の「TENSEI RED TM50」。クセがなく適度にしなるモデルで、比較的誰にでもマッチします。ジャストフィットを狙わないのであれば、このモデルで十分でしょう。ドライバーのシャフトをカスタムしているのであれば、同じ銘柄、同じ重量に揃えるのがベターです。同じ銘柄がラインアップにない場合は、重量帯だけでも揃えておけば余計なミスを抑えられます。
テーラーメイド「ステルス2 プラス フェアウェイウッド」#3
ヘッドに搭載された可変ウェイトを動かすことで重心位置を変化させ、弾道を調整できるモデルです。「ステルス2」シリーズのFWの中では最もアスリート向けに設計されており、非常にスピンが少なく強い弾道が打てます。その半面、つかまり性能が抑えられており、強振しても左へのミスが出にくいのも特徴です。
可変ウェイトをヘッド後方に動かすとスピン量がやや増えてボールが上がりやすくなり、前方に動かすとスピン量は減って前に飛ぶ強弾道が打てます。ミスへの強さは、アスリートモデルとしては強いと感じますが、ある程度ヘッドスピードのあるゴルファーに向けた設計ということもあり、ミスすると高さが出ず、ドロップ(途中で落下を始める)気味の弾道になることがあります。
ヘッドスピードが高めのゴルファー、左のミスを軽減したいゴルファーにおすすめです。このモデルはテーラーメイドセレクトフィットストア限定での販売です。
飛び 4.5
つかまり 2
球の高さ 2.5
ミスへの強さ 3
方向性(直進性) 3
「ステルス2プラス」の純正シャフトは、三菱ケミカル製の「Diamana TM50」。同シリーズのほかのモデルの純正シャフトより、やや動きを抑えたモデルです。ドライバーを純正モデルのままで使っている、あるいはカスタムモデルでも50g台を使用しているのであればそのまま使用しても差し支えないと思います。ドライバーを60g台のシャフトにしているのであれば、ドライバーに合わせた銘柄や重量帯に揃えたほうがミート率は高まるでしょう。
キャロウェイ「パラダイム フェアウェイウッド」#3
初心者から上級者まで、幅広いゴルファーに対応するモデルです。打点のミスに強く、ボールが上がりやすいにもかかわらず、適度な低スピンの弾道を自然と打たせてくれます。AIが設計した専用の「フラッシュフェース」を採用することで、打点が少々ズレても大きなミスになりづらいのが特徴。装着シャフト次第でどんなゴルファーにも対応できる、懐の深いヘッドに仕上がっています。
チャート数値入力
飛び 3.5
つかまり 3.5
球の高さ 4
ミスへの強さ 4
方向性(直進性) 4
純正シャフトはフジクラ製の「VENTUS TR 5 for Callaway」。純正モデルにしてはややシャキッとした振り味で、ミートしやすいシャフトです。あまり強振しないのであれば十分な性能です。ドライバーと同じように振りたいと考えるなら、ドライバーとシャフトを揃えるのがおすすめ。
このモデルはショートウッドが充実しているのも特徴で、#7以降は、ドライバーより重めの重量帯を選んだほうがミート率は高めやすいでしょう。
キャロウェイ「パラダイムX フェアウェイウッド」#5
「パラダイム」をベースに、つかまり性能を高めたモデルです。つかまり性能をただ高めただけでなく、スライス傾向を持つゴルファーの打点をAIが解析し、あらかじめ打点ズレを予測した設計のフェースを採用しています。その結果、スライス軽減だけでなく安定した弾道が打ちやすくなっています。右へのミスを軽減したいゴルファーにはもちろん、FWの長い番手が苦手なゴルファーにもおすすめしたいモデルです。
飛び 3.5
つかまり 4.5
球の高さ 4
ミスへの強さ 4
方向性(直進性) 4
純正シャフトは「パラダイム」と同じ「VENTUS TR 5 for Callaway」。ミートしやすいモデルなので、あまり強振しないならこれで十分です。ドライバーは苦手ではないのにFWがうまく打てないという人は、ドライバーより1段階重めの重量帯のモデルを試してみてください(例:ドライバーが50g台ならFWには60g台を装着する)。地面から打つFWは、ドライバーと比べて軽すぎることがデメリットになりやすいので注意が必要です。
ピン「G430 MAX フェアウェイウッド」#3
重心位置を深くすることで、打点のミスに強く、ボールが上がりやすく設計されたモデルです。直進性が高く、ツアープロから初心者まで幅広いスキルのゴルファーに対応しています。つかまり性能はニュートラルですが直進性が高いため、ボールをつかまえる技術を持っていない人でも安定した弾道が期待できます。
飛び3.5
つかまり 3
球の高さ 4
ミスへの強さ 4.5
方向性(直進性) 4.5
ピンのシャフトのラインアップは非常に充実しており、30g台の超軽量シャフトから70g台の重量級シャフトまでが用意されています。いわゆる標準シャフトに当たる「ALTA J CB BLACK」は、適度なしなり感とシャキッとした振り心地で、フレックスによって重さが異なるという非常に凝ったシャフト。ヘッドスピードが38m/sから42m/sの間であれば、好みのフレックスで選べば安定したショットが期待できます。42m/s以上のヘッドスピードがあるのであれば、「PING TOUR 2.0 CHROME」がおすすめです。
ピン「G430 SFT フェアウェイウッド」#3
「G430 MAX」よりもさらに上がりやすく、つかまり性能を高めたモデルです。初・中級者に多い、スライスや右へのミスをかなり軽減してくれます。打点のミスにも強いため、振り遅れのミスが多いゴルファーにはぴったり。しかし、つかまり性能が高いため、ある程度ボールをつかまえられる技術を持つゴルファーにとっては左へのミスが起きやすいのも特性のひとつ。
スライス系の弾道が高い確率で出てしまうゴルファーにはよいのですが、ある程度左へのミスが出るようになったらほかのモデルに変えたほうがよいでしょう。上達をサポートしてくれるFWとも言えます。
飛び 3
つかまり 5
球の高さ 4.5
ミスへの強さ 4.5
方向性(直進性) 4.5
兄弟モデルである「G430 MAX」と同じラインアップなので、あまりシャフトにこだわらないのであれば「ALTA J CB BLACK」。もう少しパワーがあるのであれば、「PING TOUR 2.0 CHROME」がおすすめです。
タイトリスト「TSR2 フェアウェイメタル」15度
中級者からツアープロまで、ボールをつかまえられる技術を持ったゴルファーほど扱いやすいと感じるモデル。タイトリストのクラブは、トーナメント競技などの厳しい環境の中で結果を出すことを最優先に設計されています。
打点のミスにはそれなりに強く、スイングの再現性の高いゴルファーであれば十分使えます。つかまり性能はニュートラルで、曲がりは多少抑えられますが、スイングなりの弾道が飛んでいきます。弾道に影響するほどの補正能力は、あえて搭載していないのでしょう。
放たれる弾道は低スピンのライナー系。振れば振るだけ飛距離につながりますが、制御の効いた飛びでコントロールすることが前提に設計されている印象があります。
飛び 4
つかまり 2.5
球の高さ 3
ミスへの強さ 3.5
方向性(直進性) 3.5
タイトリストがオリジナルで開発した「TSP111」は、適度なつかまりとクセのない挙動を持つモデル。もうひとつの「TSP310」は加速感のあるシャフトで、どちらも安定感を重視したシャフトです。
ヘッドスピードがさほど高くないなら、この2本のどちらかを選んでおけば大きな不満は生まれないと思います。
タイトリスト「TSR3 フェアウェイメタル」15度
中級者からツアープロまで、弾道をある程度自分で操作して打っていきたいプレイヤー向けのモデル。「TSR2」同様、ある程度技術のあるゴルファーが、厳しい環境で結果を出すために設計されています。
つかまり性能は「TSR2」よりも少し抑えられており、左へのミスを恐れずにしっかりと振れ、かつボールをコントロールしやすい設計です。
極端な操作性は持っておらず、球を曲げようとしても適度に曲がるだけの印象です。このあたりはツアープロからのフィードバックによるものでしょう。
球質は低スピンの強弾道。パワーのある人が自分でスピンをかけることは可能でしょう。ソールには重心距離を調整できる機能が搭載されていて、つかまり性能を微調整できます。弾道に明確なイメージや好みがあるプレイヤーにとって、自分の理想の弾道を追い求めるのにとてもよいヘッドです。
飛び 4
つかまり 2
球の高さ 3
ミスへの強さ 3.5
方向性(直進性) 3
「TSR2」同様、タイトリストが専用に開発した「TSP」シリーズのシャフトをラインアップします。そのほか、プレミアムシャフトとしてグラファイトデザイン社製の「DI」シリーズなどを用意しています。
「DI」はつかまりを抑えつつクセがない振り味が特徴で、多くのツアープロが愛用しています。左へのミスを抑えたいなら候補に入るシャフトです。
プロギア「RS JUST フェアウェイウッド」#3
ツアープロやアスリートが求める適度な操作性を持ちつつ、アマチュアでも使えるミスへの寛容性と上がりやすさを持ち合わせたバランスのよいFWです。フェース面の重心点をフェースセンターに近付けた設計で、芯付近で打ったときの飛距離性能が高く、芯を外したときも飛距離ロスが少なくミスの幅が少ない印象があります。
つかまり性能はニュートラルですが、弾道は直進性が高く、思ったより曲がりませんでした。腕前関係なく扱いやすいと感じるFWに仕上がっています。
飛び 4
つかまり 3
球の高さ 3.5
ミスへの強さ 4
方向性(直進性) 4
純正シャフトは、三菱ケミカル製の「Diamana for PRGR」。ヘッド同様バランスがよく、クセがないモデルです。フレックスに合わせて重量を変化させた、凝った設計も特徴のひとつ。
シャフトに細かくこだわらないのであれば、この純正モデルで十分だと思います。ドライバーでカスタムシャフトを装着している人は、ちょっと物足りないと感じるかもしれません。
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プロギア「LS フェアウェイウッド」#3
ヘッドスピード40m/sのゴルファーを対象に、「ゴルフをシンプルにやさしく変える」をコンセプトに設計されたFW。#3と#5が同じ長さに設定されており、ほかのモデルより短い#3はとてもミートしやすかったです。打点のミスにも強く、つかまり性能は適度にある程度。直進性の高い弾道が安定して打てるモデルです。
ヘッドスピードを限定して設計していることもあり、ヘッドスピードが速めの人は別のモデルがおすすめです。
飛び 3
つかまり 3.5
球の高さ 4.5
ミスへの強さ4.5
方向性(直進性)5
「LS」のFW専用に設計された、フジクラ製の「SPEEDER NX FOR PRGR」を採用。クセがなく自然なしなりを持つシャフトで、ヘッドスピード40m/s前後ならこのシャフトで十分満足できるでしょう。
ダンロップ「ゼクシオ12 フェアウェイウッド」#3
初心者から中級者まで、パワーのないアベレージゴルファーが気持ちよくプレーするためのフェアウェイウッド。軽量で軽い力で振れるように設計されており、パワーに自信がなくても軽やかに振れます。非常にボールが上がりやすいので、ボールを安定して目標に運べます。
つかまりもよいので、オートマチックにいい弾道を打たせてくれる感じです。打感にははじき感があって気持ちよく、「キンッ」という打音が「飛ばした!」という気持ちよさを演出してくれます。1発1発の弾道に深くこだわらず、楽しくプレーしたい人にはとてもよいクラブだと思います。ただし、FWが苦手だからといってFWだけ軽いモデルを選ぶと、ほかのクラブにも影響が出ますから注意が必要です。
飛び 3.5
つかまり 4
球の高さ 4.5
ミスへの強さ 4.5
方向性(直進性) 4
「ゼクシオ」シリーズはクラブとしての完成度を追求して開発されているため、シャフトは純正として開発されている「MP1200」のみ。非常にクセがなく振りやすい仕上がりなので、大きな不満を抱くことはまずないでしょう。もし不満を感じるなら、もう少ししっかりとした設計のFW「ゼクシオX」がおすすめです。
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ヤマハ「インプレス ドライブスター フェアウェイウッド」#3
初心者から中級者に向けて、飛距離性能に特化して作られたFWです。重心位置を非常に低くすることで高弾道低スピン弾道を実現し、飛距離性能の高い球質を実現しながら、高い慣性モーメントにより直進性にもすぐれています。
上級者が好むようなすっきりした形状に仕上げることで、見た目にもこだわるゴルファーも視野に入れて開発されています。つかまり性能を適度に抑えることで、幅広いゴルファーに対応するFWに仕上がっています。
飛び 4.5
つかまり 3.5
球の高さ 3.5
ミスへの強さ 3.5
方向性(直進性) 4
シャフトは、FW専用のフジクラ製「SPEEDER NX FOR Yamaha M423f」を装着。基本的にこのモデルのみですが、フレックスに合わせて重量を変えた設計で、フレックスによって振り味が結構変わります。Sフレックスはかなりシャキッとした振り味で、それなりに振れる人でも頼りなく感じることは少ないでしょう。楽に振りたいのであれば、SRかRがおすすめです。
たくさんのFWを試打してみて、モデルとしての特性はもちろん、仕上がりというか性能に違いを感じました。そこで、いくつかのヘッドスピード別で「狙うFW」「飛ばすFW」を自分なりに選出してみました。ぜひ参考にしてみてください。
<狙うFW>
LS(プロギア)
ゼクシオ12(ダンロップ)
G430 SFT(ピン)
<飛ばすFW>
インプレス ドライブスター[Rフレックス](ヤマハ)
パラダイム X(キャロウェイ)
ステルス2 HD(テーラーメイド)
<狙うFW>
LS(プロギア)
G430 MAX(ピン)
G430 SFT(ピン)
<飛ばすFW>
パラダイム(キャロウェイ)
インプレス ドライブスター[Sフレックス](ヤマハ)
ステルス2 HD(テーラーメイド)
<狙うFW>
RS Just(プロギア)
パラダイム(キャロウェイ)
TSR2(タイトリスト)
<飛ばすFW>
RS Just(プロギア)
ステルス2 プラス(テーラーメイド)
TSR3(タイトリスト)
ヘッドスピード37m/s以下は高さが出やすくスピン量が適度に入るものを選びました。狙うクラブは、グリーンに直接落としてもランが少ない弾道が打てることが条件。 特に、最近の飛距離を重視したモデルはスピンがかなり少ないので、飛び系のモデルでグリーンに直接落として止めるのは至難の技でしょう。
飛ばす3番と狙う5番を、あえて別ブランドで選ぶのもありだと思います。そのときは、重さのフローを確認してから購入するようにしてください。もっとこだわるなら、リシャフトして振り心地を揃えることをおすすめします。ヘッドスピードが48m/s以上あるパワーヒッターは純正シャフトでは軽すぎるケースが多いので、こちらはリシャフトが必須です。本稿で述べたモデルの特性を踏まえてヘッドを選んでみてください。
今回の試打は、とても楽しかったです。「飛距離重視なら、このモデルにあのシャフト入れて〜」なんて考えながらやっていたので、取材の時間はあっという間に過ぎました。また機会があったら比較試打をやりたいですね!
写真:野村知也、富士渓和春
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。