実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
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初めてのアルプス! この夏、標高3,000m級の高山に挑むなら用意しておきたい登山用品

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本格的な夏を前にして盛り上がる登山気分。特に日本アルプスや八ヶ岳などの標高3,000m級の峰々が並ぶ山域は真夏でも気温が低くて過ごしやすく、梅雨明けは天候も安定している。初心者が挑戦するのには絶好の時期なので、これから準備をしておくといい。

ちなみに、標高3,000mを越える山は日本に21座。日本一の高さを誇る標高3,776mの富士山を別格として、第2位の北岳(3,193m)、第3位で並ぶ奥穂高岳と間ノ岳(3,190m)、第5位の槍ヶ岳(3,180m)と、その中には日本百名山だけで13座もある。また、標高2,999mの剱岳など、標高2,900m台の山も11座あり、同様に百名山は7座。まさに名山ばかりだ。ちなみに八ヶ岳連峰の最高峰は標高2,899mの赤岳で、2,900mにわずか1m足らない。

しかし、何をもって「高山」とその他の山を線引きすればいいのか? ここでひとつの目安となるのが「森林限界」という言葉だ。実は「森林限界を超えた場所」があるかどうかで、必要となる山道具、あると便利な山道具が、おのずと決まってくるのである。

気温は標高が100m高くなるにつれて約0.6℃ほどずつ下がっていく。そのため、標高3,000m地点は海岸付近に比べると、それだけで計算上は約18℃も低く、夜になると気温は1桁台になり、状況によっては凍り付くこともあるほどだ。夏でもそのような状況なのだから冬季の寒さはひとしおで、標高が高い稜線部分には数メートルの雪が積もり、その重さと強烈な季節風などによって背の高い木は育つことができず、生えているのは地をはうようにして繁茂するハイマツ程度。枝を伸ばした木があるかどうか、その境目を森林限界という言葉で表現しているわけだ。標高が低い山ならば山頂でも森林限界を超えることはないが、高山では山頂どころか稜線や尾根の上も森林限界を超えてしまう。

森林限界を超えると、地面は土ではなく岩や小石ばかりになり、足を中心に体への負担が大きくなる。木が繁茂していないので、悪天候になれば体はダイレクトに強烈な風雨にさらされる。つまり森林限界を超えた高山は、低山に比べて「気温が低い」「岩場が多い」「風雨にさらされる」「足腰への負担が大きい」といった特徴があるのだ。そんな視点から山道具選びを見ていくと、低山以上に重要になってくるアイテムがいくつかピックアップできる。

すべての基本! 安定して歩けるブーツを選ぼう

森林限界を超えた高山を目指す際、安全性を大きく左右するアイテムは、何と言ってもブーツである。高山に向くブーツは、低山向けのトレッキングブーツよりも、ソール、アッパーともに硬いライトアルパイン系のブーツだ。グリップ力が高いソールは岩場では細かい突起をとらえて滑らず、曲がりにくいアッパーは足首をまっすぐに支えて不安定な場所でも体のバランスをしっかりと取りやすい。その結果、不整地での転倒や岩場での滑落の危険は減少する。

ラ・スポルティバ「トランゴSエボ GTX」

ライトアルパイン系ブーツの大定番とも言えるモデルで、このカテゴリーとしては軽量な片足約700g。足首の部分には厚みのあるクッション材が封入され、見た目よりも足当たりがやわらかく、足入れもしやすい。また、足首のホールド感を維持しながらも関節部分の動きを妨げない3Dフレックスシステムが導入され、傾斜地でも自由に足を動かせる。ソールのグリップ力も申し分なく、岩場でも安心して行動できる。

サイズは37〜48(23.7〜30.3cm)、カラーはイエローとレッドをラインアップ

サイズは37〜48(23.7〜30.3cm)、カラーはイエローとレッドをラインアップ

スカルパ「ミラージュGTX」

発売と同時に人気を博したベストセラー。全体のフォルムがスマートなばかりか、シューレースをかける部分に金属製のフックやアイレットを極力使わず、シンプルなデザインとなっている。それゆえに、岩場でもブーツが引っかかることが少なく、行動中の安全度は高い。アッパーは丈夫なスウェードと軽量なナイロンを適材適所で組み合わせて片足760gを実現しているが、足に吸い付くようなフィット感で、実際にはそれ以上に軽く感じる。

サイズは#37〜#48(23.7〜30.3cm)、カラーはパインとレッドをラインアップ

サイズは#37〜#48(23.7〜30.3cm)、カラーはパインとレッドをラインアップ

アゾロ「シラーズ GV Men's」

ライトアルパイン系ブーツとしては比較的柔軟で、トレッキングブーツに近いモデル。化学繊維「ショーラーケプロティック」を中心にスウェードで補強したアッパーは、剛性のわりに軽く、片足690gという軽量性に貢献している。また、シューレースをしっかりと留められるように、甲の部分にはアルミ製の金具が採用されている。他のアルパイン系ブーツよりもソールのつま先の湾曲が強く、前に蹴りだしやすい形状となっているのも特徴だ。

サイズはK6.0〜K10.5(25〜29.5cm)、カラーはブラック×ニコチンをラインアップ

サイズはK6.0〜K10.5(25〜29.5cm)、カラーはブラック×ニコチンをラインアップ

快適さは寒さ対策にあり!防寒着は必須アイテム

3,000m級の高山は麓との標高差が大きく、日帰り登山で行ける場所は限定されるため、多くの場合は山小屋やキャンプ地で夜を過ごすことになる。しかも、山では早朝から行動し始めるのが常だ。ゆえに、肌寒い朝晩を快適に過ごすにはボリュームのある防寒着を用意しておきたい。圧縮率が高くてコンパクトに収納できるダウンや、多少湿っていても暖かさをキープする化繊の中綿が入ったジャケット類がいいだろう。夏でも低体温症になりかねない高山では、万が一遭難してしまった場合、防寒着の有無が生死を分ける可能性もある。

ザ・ノース・フェイス「サンダーラウンドネックジャケット」

ダウンと化繊を特殊な製法でミックスしたハイブリッドダウンを使用。ダウンのボリューム感と保温力に加え、遠赤外線を利用した保温効果と撥水力が高い化繊の特徴を組み合わせ、薄手でも暖かいジャケットに仕立てている。首周りのデザインは、最近のアウトドア用防寒着に増えているラウンドネック。襟がないので、他のジャケットの下に重ね着しても首が苦しくならず、着用感がいい。

サイズはS・M・L・XL・XXL、カラーはコズミックブルーとブラックをラインアップ

サイズはS・M・L・XL・XXL、カラーはコズミックブルーとブラックをラインアップ

モンベル「プラズマ1000 アルパインダウン パーカ」

最大の特徴は、1000フィルパワーの超高質ダウンを使用していること。フィルパワーとは圧縮したダウンの復元力を示す数値で、この数値が高いほど重さのわりに保温力が高くなるのだが、一般的に高質とされるものでも700〜800フィルパワー程度。このことからも、いかに本製品がすぐれているのかがわかる。また、表面の生地も驚くほどの薄手で、その結果、236gという超軽量を実現。表面は、ダウンがかたよりにくく、熱をためやすい格子状のパターンとなっている。

サイズはXS・S・M・L・XL、カラーはブラック、パイングリーン、レッドブリックをラインアップ

サイズはXS・S・M・L・XL、カラーはブラック、パイングリーン、レッドブリックをラインアップ

ファイントラック「ポリゴン2ULジャケット」

表面が少々まだらに見えるのは、ファインポリゴンという保温素材が透けて見えているため。この素材は一般的な防寒着に使用される綿のようなものではなく、化繊のシートであり、多くのしわを持つことで保温力がアップする。雨や汗などによる濡れに強く、通気性も確保されていて蒸れにくいので、小屋やテント場に滞在している時はもちろん、行動中の着用にも適している。

サイズはS・M・L・XL、カラーはメタル、クリムゾンレッド、エーデルワイスをラインアップ

サイズはS・M・L・XL、カラーはメタル、クリムゾンレッド、エーデルワイスをラインアップ

歩行をラクにしてくるトレッキングポールを使うのも手!

木々が生い茂る登山道よりも岩が多い高山の登山道は、硬い地面から足へ強い衝撃が伝わる。特に体重がかかりやすい下り道では、膝への負担は相当なものだ。そんな時こそ、トレッキングポールの出番である。体の左右に突くことで体のバランスを取りながら、体重と荷重を腕にも分散。いわば2本足歩行の人間が動物のような4本足歩行になり、体の負担と疲労が激減するばかりか、転倒の防止にもなる。使い慣れるまではじゃまに感じる人もいるが、自分の体のように使えるようになれば、これほど強い味方はないだろう。

レキ「ジャーニーSPD」

フック上のパーツを使って長さの調整を行うスピードロックシステムを採用し、3本のアルミ製ポールをつなぎ合わせて67〜135pの間で伸縮可能。スキンストラップは肌なじみのいい薄手で、手首に心地よく荷重を分散してくれる。さらに、グリップ部分はやわらかく、長時間使っていても手の平が傷まない。1本281gと特別軽くはないが、買い求めやすいリーズナブルな価格で、コストパフォーマンスにすぐれる。

使用時の長さは67〜135cmで、重量は1本281g

使用時の長さは67〜135cmで、重量は1本281g

ブラックダイヤモンド「ディスタンスFLZ」

身長に合わせて3種類の長さから選ぶことができ、かつ、スライド式のロック機構で、さらに15〜20cmの長さ調整が行える。汗ばんだ手やグローブをしたまま握っても滑って落としにくいようにグリップには細かな溝が刻まれ、雪の中に先端が沈み込むことを防ぐために取り付けるスノーバスケットも付属され、使いやすさは申し分ない。また、アルミ製のシャフトは3つに折ることができるので、コンパクトに収納できる。

使用時の長さは95〜110(415g)、105〜125(445g)、120〜140(475g)cmの3種類が用意されている
※( )内は2本分の重量

グリップウェル「折りたたみ式ストック ラピッド・カーボン」

アルミよりも軽量なカーボン製のシャフトで1本232gと軽いだけでなく、径が細く、重量バランスもよいので、手に握って振った時の取り回しがラク。使用時の長さは、ワンタッチ式のレバーロックで100〜120pの範囲で変えられ、一般的な日本人の身長であれば男女ともに使いやすい。収納時は3本に折れ、付属の面ファスナーのテープでしっかりとまとめることができる。

使用時の長さは100〜120cmで、重量は1本232g。カラーはレッド、ブルー、ブラックをラインアップ

長さ(使用時/収納時)は100〜120cm/37cmで、重量は1本232g。カラーはレッド、ブルー、ブラックをラインアップ

余力があればそろえておこう! その他の役立つ3アイテム

ここまで紹介した3カテゴリーのうち、ブーツと防寒着は必ず準備しておいてほしいアイテムだが、トレッキングポールはマストではない。とはいえ、使うと体の負担は大幅に軽減されるのでできれば用意しておくといいだろう。もちろん、このほかにも高山に有用な道具もある。必須アイテムというわけではないが、特に役立つものを紹介しておこう。

【サポート系ウェア】C3fit「エレメントエアーロングタイツ」

腰回りから足首まで、部位によって着用した時の圧力が異なる生地を使い、関節や筋肉の動きを理想的なものにすることで、体の持つ力を最大限に活用できるようにサポート。疲れを軽減できるので、怪我をする恐れも減らすことができる。勾配差がある高山ではぜひ試してみてもらいたい。なお、本製品は通気性もよく、夏でも使いやすいタイプ。フロント部分にファスナーがついているので、同種のモデルよりも着脱しやすいのも高ポイントだ。

【ハイドレーションシステム】ソース「WXP LP 2.0ℓ」

ハイドレーションシステムの中でも人気のあるモデル。長いチューブが付いた大型水筒をバックパックに収め、チューブにあるバルブから水を飲めるようになっており、行動中にいちいち荷物を降ろさなくても、こまめに水分補給ができる。荷物が大きく重くなりがちな高山の登山時には、とても役立つ。なお、行動中でも水を補給しやすいスクリューキャップが装備されているほか、水筒の上部も大きく開閉するようになっており、洗浄や乾燥も行いやすい。

サイズは7.5(幅)×17(奥行)×33cmで、重量は230g

サイズは7.5(幅)×17(奥行)×33(高さ)cmで、重量は230g

【ウインドシェル】マウンテンハードウェア「ゴーストライトジャケット」

内側に着た衣類が透けて見えるほど薄い生地で仕上げられた本製品の重量は、わずか87g。防水性ではないのでレインウェアとしての着用は想定していないが、撥水性と防風性は高く、肌寒さを感じる時の行動着として有用だ。折りたたんで胸のポケットに収納できるパッカブル仕様で、持ち運びも容易。登山だけでなく、自転車やランニングなどに使うのもいいだろう。

サイズはS・M・L、カラーはStone、Manta Grey、Dark Citron、Altitude Blueをラインアップ

サイズはS・M・L、カラーはStone、Manta Grey、Dark Citron、Altitude Blueをラインアップ

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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